???の視点 4
最近短いから……。もうちょっと頑張りたいなって思ったりもして。短いけど投稿してみた。
でも今回の内容、どちらかというと、前話の前が良かったのかなって思うのですが、
携帯でぽちぽち書いて出来上がったのは今さっきだったので……。このタイミングに……。
「お父様! お父様!」
ドレスを身に着けた少女が先を行く父を見つけて声をかけてくる。
移動中に父と会えるとは幸運である。
少女はそう思った。
父は忙しい。子が父に会うだけでも父の予定を確認し、空いている時間に面会予定をねじ込まなくてはならない。
「どうした」
歩きながら父は娘に問う。
娘も理解しているのか、歩幅が全然違うのに必死になってついていき、話を始める。
「私もあのプラネタリウムという石が欲しいですわ!」
出てきた単語に父親は些か、げんなりした。
「駄目だ」
「どうしてですの!? あれは神の貴石ではないのでしょう!? 比較的安価なはずですわ!」
「そういう問題ではない。それに比較的安価などと言えるものか」
「あら。この世に神の貴石を超える宝石はありませんわ」
「……あれは、私達のせいでまだ認めて貰えていないだけだ。たぶんな」
「お父様!」
「駄目だと言ったら駄目だ」
「どうしてですか!?」
「聞き分けろ」
「イヤですわ!」
「やれやれ、何時の世も女子供はうるさいな」
ループしかけていた父娘のやりとりに、第三者の声がかかる。
二人の動きも護衛達の動きも止まる。
娘は声のした方に顔を向け、視線を少し下げると、そこには黒髪黒目とこの国では少し珍しい部類の容姿の人間が立っていた。
「誰ですの?」
娘は不快だと言いたげにその人物に声をかけたが、青ざめたのは父親だ。
「これは初代様! 御用が御座いましたら此方から出向きましたのに!」
父親の、王の言葉に、皆がこの人物の事を理解する。
「気にするな、暇だし構わん。修理依頼を出したのだろ? 気になることが有ったから、吾が来た」
「気になること、ですか?」
「そうだ。神がここ暫く活発に動いてる。何かあったのかも知れん」
「神が……。それは神の貴石の事ですか?」
「それもあるがそれ以外にもある。言ってもお前達には分からないだろうが」
「……詳しい説明を受ける事は……」
「知りたいと言うのであれば教えてやる。ただ場所は移すべきだろうな」
「……分かりました。では執務室へ。宰相を呼んでも宜しいですか?」
「弟か? 呼ばなければ吾の仕事が終わらないだろう? 呼べ」
「はっ」
王は軽く頭を下げ、近衛に視線を向ける。
その近衛は一礼を取った後、廊下を駆けていく。
「移動がてら聞きたいのだが、お前達は神の貴石を見たのか?」
父娘を見て、確信を持ちながらも問いかけた。
王の執務室にて、二つの宝石が初代の前に広げてられる。
「ふむ、なるほど……これが」
石を一つ取り日に透かす。
「作った者には会ったのか?」
「はい。その時にスキルの中身を確認したのですが、中々……。元々『加工』スキルは謎が多く……」
「加工? これに使われているのは『着色』の様だが?」
「「え!?」」
初代の言葉に二人は思わず声を上げる。
「着色のみですか!?」
「……ああ。『透明色』というものが使われているようだ。あと、『蛍光塗料』というのも使われているようだな」
「……初めて聞く物ばかりです」
「吾もだ」
「初代様ですら知らない物を彼が使ったのですか!?」
「長く生きているといっても、全ての情報が入ってくるわけではない。お前達の方が寄り多く知っている事も多い。長く生きていれば吾が知らぬ物の一つや二つ見つけてくるだろう」
「いえ、制作者は短命種なのです」
「短命種?」
「はい」
それから彼らは、集めた情報を情報を全て報告していく。
初代は眉を寄せて情報を整理しているようだ。
そこに控えめなノックが響く。
「あの、お呼びと聞きましたが」
グレイス王女がおずおずと中に入ってくる。
父と会うにしても執務室に呼ばれることは滅多にない。
公私混同をしないためだろう。
それなのにここに呼ばれるという事は、仕事に関係の話だという事だろう。
彼女にとって仕事とは、父の望みのまま結婚することである。
生まれながらにその運命を背負ってきた。
逃げるつもりはないが、少しでも後の方がいいと思ってしまうその仕事が、ついにやってきたのだろうか、と彼女の表情は心なしか硬い。
「来たか。まずは挨拶を。我々の始祖であり、最強の王、ルベルト上皇だ」
「っ!?」
驚きと共に緊張を露わにした王女に初代の感情を読ませない声がかかる。
「挨拶は要らん。必要があれば自ずと覚える」
王女はその衝撃を顔に表したのは一瞬で直ぐに笑みを浮かべる。
役立たずとも、どうでもいい存在とも取れる言葉は今更なのだ。
「プラネタリウムをここへ」
「……はい」
彼女はもたつきながらもネックレスを外し、父と母の神の貴石の隣に並べる。
「これが、誕生日プレゼントの『ぷらねたりうむ』というやつか」
初代はそれも手にし、透かすようにして見て、その表情が険しくなる。
「初代様?」
「……これを、短命種が作ったのか?」
「ええ、彼の言葉を信じるのであればそうです」
「……鑑定はしたのか?」
「しました。しかし大した情報は得られませんでした」
「……だろうな。得られたとしても複数のスキルが使われているぐらいしか分からないかも知れんな」
「複数のスキルですか?」
「正確に言うとスキルから派生する魔法であるが……。お前達はこれを見て何も思わなかったのか?」
「……我らが対応を間違えなければ、それもまた神の貴石となる物だと思いました」
王の言葉に初代は目をぱちくりとさせて、息を吐いた。
「そういう意味で問いたわけでは無い。これを作ったのが短命種という事に疑問を持たなかったのか、と問うたのだ」
「それは……。しかし彼は事実まだ七つにもならぬ子供です」
「……国は、その者をどう扱っていくつもりだ?」
王の言葉にいささか不満を持ったようだが、初代は別の質問をする。
「このまま誰も神の貴石を作れないようであれば、娘の婿の一人にしようと思っています」
「え!? お父様!? エド様は爵位を求めていないと……」
王女は驚いた様に父に尋ね返す。
初代と王の会話に勝手に入るという不作法をしたという事に、言った後に気づいたが後の祭りだ。
しかし初代は気にした様子はなく、むしろ王女にどう返すのか興味があるようだ。
王はそれを受けて、王女に向き直ると答える。
「むろん、神の貴石とは関係の無い理由で囲む。そうだな、グレイス。お前が一番適任だな」
「え?」
「プラネタリウムを気に入り、それをプレゼントした彼も気に入ったという事にすればいい。夫はそれなりの地位の者を用意し、彼はお前のハーレムの一員にすれば、彼はある程度自由だろう。面倒だと言っていた仕事をしなくてもいい。あとは時折彼に神の貴石を皆の前で作って貰えばいいだけだ」
「…………」
王女は言葉もなく父を見つめていた。
「もちろん、先ほども言ったが、このまま彼以外に誰も作れなかったら、の話だ。数年は猶予があるだろう。だが彼は短命種だ。いつ死ぬか分からん。一、二年待っても、成果が出なければ、そうなると思いなさい」
「…………はい。お父様」
重ね合わせた手をきつく強く握りしめるが、王女は笑顔で頷いた。
「下策だ……」
父娘の会話を聞いて初代は微かに口にしたが、それを彼らに聞かせる事はしなかった。
初代からすれば王の案は、下策、下手をすれば悪手になる。
王としての権力が、国の力が通用する事が前提でされている方法だ。しかし、初代からすれば、国の力は確かに巨大だが、絶対ではないのだ。
自身はそれをよく知っている。
高圧的に行って竜の尾を踏むような事にならねばいいが。と彼は思うが、今の王はもう自分では無いのだから口を出すべきでは無いだろうとプラネタリウムを戻す。
「場合によっては見た目だけが短命種という事もある。それは忘れるな」
それでも助言はすべきだろうと彼は王の背にそう声をかけた。
「……彼はその可能性があるのですか?」
「さあ知らぬ。会えば分かるかも知れぬが……。制作者の名前は?」
「エドです。クパン村に住むただのエドです。」
「そうか。『システム』起動せよ。『神の貴石』の『制作者:エド』の現在地を告げよ」
『命令を受信しました。実行します。------失敗しました』
「……再実行」
『命令を受信しました。実行します。------失敗しました』
「……失敗内容を報告せよ」
『『神の貴石』の『制作者』については秘匿扱いとなっております』
初代は舌打ちしたくなった。
事の顛末から考えるに神が気を利かせているのだろう。しかしだとすると、どれだけの貸しがあったのかと、神官二人の不手際の内容が実に気になる所だ。しかしそんな事を調べでもすれば神の怒りを買うのは目に見えている。運良く耳に入る事を願うばかりだ。
「命令変更。『クパン村』生まれの『エド六歳』の現在地を告げよ」
『命令を受信しました。実行します。------情報の閲覧には鍵が掛かっております。合い言葉をどうぞ』
「……は?」
戸惑いの声がそのまま使われたのだろう。
『合い言葉が一致しませんでした。閲覧に失敗しました』
初代はシステムを使うのを止め、そして口角を微かに上げた。
「なるほど……。転生者か」
彼の口元は笑っていたが、その瞳は厳しい眼差しをしていた。
さて、敵か味方か。
「味方ならばよし……」
しかしヒューモ族に徒なす存在だというのならば……。
喩え神の貴石を作れる唯一の存在だとしても、許しはしない。
土日で、ルベとエドが会うところは上げたい!




