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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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しあわせのかたち

気持ち悪い! っていわれたらごめんなさい。

なんか書きたくなっちゃって……。



あ。予約投稿し忘れてました……。もうそのままにしちゃいます。



 プチプチはどうやらこの宿屋の名物料理らしく、大なり小なり色々あるようで。


「失敗した……」


 おすすめなんて選ぶんじゃ無かった……。


「なぁ、これ、どうみても幼---」

「お兄! それ以上言っちゃ駄目!!」


 白いプチプチっていうかブニブニをフォークでツンツン刺しながら思わず呟いたらセリアから速攻で駄目出しされた。

 ……ああ、お前も同じのだもんな。


 食べる手が止まってるのは俺とセリアだけで、他のみんなは割と平気で食っている。

 実際、本物では無いと思う。

 足とかはないし。顔もないし。見た目がッポイだけで。

 でもなぁ……。

 フォークをちょっと突き刺す。

 フォーク越しに感じる感触が、非常に気持ち悪い……。


「…………」


 思わず、周りを、というかニアを見た。嬉しそうに頬張るニア。

 ああ……。俺はなんていけない大人なんだろう。


「ニア~。これ、食べるか?」


 笑顔で白いブニブニが乗った皿を差し出す。


「スキキライしちゃダメなんだよ」

「ぐっ……」


 アタック失敗! どころかカウンターが返ってきた。

 子供に言われると、クリーンヒットするな……。むしろクリティカル……。


「あの……、食べましょうか?」


 さらにはバロンにまで気遣うように言われると……。


「いいよ、うん。頑張って食べるよ……うん」


 いい大人なんだから。と諦める気持ちになった。

 ああ、でも。


「宿は今日中に変えよう」

「異議無し」


 そう思う俺たちはきっと許される。

って、あ、すっかり忘れてた。学校と住む場所どうするかな。


 ゴドーに相談したいんだけど……、神の依り代三人は、今までの経緯を共有するのに忙しそうだし。ゴドー側からとシェーン側からだと流れが全然違うもんなぁ。

 特にシェーン側からすると重犯罪混じっちゃってるし。


「そういや、バロン達はシェーンが神の依り代だったってのは知ってたのか?」

「いえ、知りませんでした」

「俺もです」

「んー……。って事は秘密にしておいた方が良いんだろうな。ゴドーも秘密にしてたし」


 五人はすぐに頷いてくれた。

 ニアも秘密を守るとやる気満々だ。そのやる気が怖いといったら拗ねるだろうか。


「……でも、すんなりいって良かった。昨日、お兄とっても怒ってたから」

「……それはな。母子家庭で育った上に、お前がいたし。それに誰でも良いなんて思ってもないしっ」

「あー、ごめん、怒りぶり返さないで」


 セリアが慌てて止めたので、俺も軽く息を吐く。


「一応、一度は水に流すってゴドーと約束したからな。それに……割とまともだったし」

「まぁ、そうね。それは確かに」

「そりゃそうと、お前ら、家どうすんの? 家事してくれるんなら、デカイ屋敷借りて一緒に住むってのも一応考えては居るけど?」

「え!? いいの!?」

「出来れば二世帯とかがいいんだけどな」

「この世界に二世帯なんてないんじゃない?」

「ないだろうなぁ」

「……あのぉー……」


 俺とセリアの会話にネーアが恐る恐る入ってくる。


「何? なんか要望あり? 有るなら聞くけど?」

「あ、いえ、そうではなく……」


 ネーアの視線が俺たちの手元に移る。


「食べないのなら、食べましょうか?」

「大丈夫、食べるから」

「えっ!? えー……アタシは」

「ニアに窘められたんだから食えや」

「とか言いつつお兄も突くだけで全然食べてないじゃん!」

「しゃあねぇだろ! どう見たってカブトムシの幼虫なんだから!」

「うわぁぁぁぁぁぁん!! 言った! 言っちゃったー! いやだぁぁ、もぉー……食べたくないぃぃ……」


 フォークもナイフも投げだし、手に顔を埋めてセリアは嘆く。

 俺だって嘆きたい。

 これなら昨日のパエリアもどきの方が全然マシだった!!


「はっ! いっそパンに挟めば! 気にならな---」

「土の中にいるみたいだよね」


 画期的アイディア! と喜んだのに、隣から無情な一言が!


「おいぃっ!」

「お兄が言い出したんじゃん!」


 そこからはもう、ぎゃあぎゃあと兄妹の醜い争いが勃発した。

 最終的には「もぉ! コドモじゃないんだからね!」って、ニアに叱られ、代わりに白いプニプニを食べて貰った事により、争いはなくなった。

 が、俺たちいい大人なはずなのに、何やってんだろ……。



「ニアはお姉ちゃんになったなぁ」


 己のガキっぽさに思わず、しみじみと言ったらニアは驚いた顔をして、それから少し唇を尖らせた。何故そこで拗ねる。


「……ニア、そこまでバカじゃないもん」

「ん?」

「ニアにだってわかるもん!」

「えっと、何が?」


 しばし考えたがニアの言う「分かる」が何か見当も付かず、これでさらに不機嫌にならないといいんだけど、と思いながらも尋ねる。


「……おとーさんと、おにーちゃん、どっちがほんとうか、ニアにだってわかるよ」

「え?」


 おとーさんと俺? どういう事?

 首を傾げたらニアは一度言葉を飲み込んだ後、一気に胸の内を語り出した。


「おとーさん、よくいってた。ニアたちは、きれいなおようふくがきれて、おいしーものがたべられて、シアワセなんだって。ニアはそれがほんとうだっておもってた。でも、ちがったの。ネーアおねーちゃんはここにいるほうがたのしそうなの。きれいなおようふくじゃなくても、いろんなおにいちゃんたちにアイされなくても、ネーアおねーちゃんは、いまのほうがずっとわらってるの」

「ニア……」

「ニアにだって、わかるもん」


 ニアの目の縁の水位が上がってくる。


「おにーちゃん、いつもニアに、ほんとうと、うそをおしえるもん。ニアだってかんがえるもん。ニア、バカだけど、そこまでバカじゃないもん!」


 本当と嘘?

『超常識辞典の話だと思います』

 ああ……。こっちは正しくて、こっちはみんなが本当だって思ってるけど間違ってるよって教えてたアレか。


「ニアだって、わらってるか、わらってないかぐらい、わかるもん~……うぁぁぁぁぁん!」


 ニアは本格的に泣き出してしまい、ネーアが抱きしめて慰めようとする。

 でも返ってそれがニアの感情をかき乱したようだ。


「おとーさんは、ニアに、うそをおしえてたの? おねーちゃんたちはどうして? なんで? しあわせじゃなかったの? おとーさんは、おねーちゃんたちにいやなことさせてたの?」


 泣きじゃくりながらネーアに質問していく。ネーアは答えられない。嘘を伝えることも、本当の事を伝えることも、どちらも出来ずにただ抱きしめることしか出来なかった。ニアはそれでも、どうして? と問いかける。

 ニアの脳裏には、きっとネーア以外の、仕事仲間とも言えるみんなの顔も浮かんでいるのだろう。今まで疑ってこなかった真実を、疑って、お父さんと呼び慕っていた人間の事も疑っている。

 それはきっとニアにとってはとても辛い事なのだろう。



「何故にお前は、子供を泣かせている?」

「不可抗力だ」


 話が終わったのだろう、シェーンが眉を思いっきり寄せて尋ねてきたのでそう答えて、ゴドーを見る。


「ニアをなるべく早く学校に行かせてやりたい」

「分かった。すぐにでも神殿に行って、受け入れてくれる学校を探す」

「お願いな」


 ゴドーに再度頼んで俺はニアの所に行き、しゃがみ、ニアと目の高さを合わせる。

 むしろ俺が少し低いくらいか。


「ニア。人にはさ、考え方が色々あって、幸せっていうのも色々あるんだ。ニアが美味しいって言って食べたさっきのご飯だって、俺とセリアは苦手だって思った。それと一緒。学校に行って、いっぱい勉強して、いっぱい色んな人と話しして、楽しい事も、悲しい事も経験しておいで。ニアのお父さんはニアに嘘を教えたのかもしれないけど、もしかしたらお父さんはそれが本当にネーア達の幸せだと思ったのかもしれないよ?」

「……そうなの?」

「……分からない。お兄ちゃんはニアのお父さんじゃないから」


 否定するとニアの表情が落ち込んでいくのが分かる。


「……辛い事も悲しいこともないけど、楽しい事もない毎日が幸せなのか、辛い事も悲しいこともいっぱいあるけどそれ以上に楽しい事もいっぱいある毎日が幸せなのかは人によって違うだろ? お父さんが言っていた幸せってのはきっとそういう事だよ」


 少なくともニアの生活はそうだったはずだ。


「……わかんない……」

「うん。そうだね。ニアにはまだちょっと難しいかな? でもすぐ分かるようになるよ」


 頭を撫でると、ニアは小さく頷いて、まだ少しぐずるものの、泣き止んだようだ。でもネーアをぎゅっと抱きしめている。

 ネーアが母親である事をニアはまだ知らないはずだけど、でも何かを感じ取っているのかもしれない。

 こういう時ニアはネーアの方が落ち着くようだ。


 ネーアも嫌な顔せず、ニアが落ち着くまでは、と抱きしめたまま背中や頭を撫でている。

 ああ、母親なんだな、とこういう姿を見ると思う。

 望んで身ごもったわけでも無いだろうに、それでも愛情を与えるネーアの姿は俺には眩しいというよりも、痛い。


 立ち上がり、ネーアの頭もポンポンと撫でる。

 ネーアはぽかんとしたように俺を見上げたから、ちょっと笑ってしまった。

 きびすを返し、様子をうかがっていたセリアの頭も撫でる。


「なに!?」


 戸惑いの声が聞こえたが、無視する。

 だって言えねぇじゃん。ネーアとお前を重ねて、絶対にそんな目に遭わせたくないなって思ったなんて。


「で、そっちはどういう方針になったんだ?」

「体面的にはミカが、実情はお前とゴドーが指揮を執る。今まで通りだ」

「それでいいんだ?」

「神のご意志は、貴方の観察っぽいので」

「……それはそれで、俺的には辛いんだけどな……」


 肩を竦めて言われた言葉に昨日の神の覗き見を思い出してへこむ。


「じゃあ、今日の予定を決めたいんだけど」


 皿を片付けて貰いながら俺は声をかける。

 予定と言っても、学校のこと、本日の宿の事、これから住む家に、店舗探しだ。

 学校はゴドーに一任するとして、これから住む家と店舗についてはみんなの意見を取り入れたい。

 実現させるかどうかはともかく、忌憚のない意見を聞きたいという事で皆の意見を聞いていると……、何故か向こうからやっかいごとがやってきた。

 

 ルベルト・ホーマン。

 神が注意するようにと言っていた人物が、入ってきたのだ。





 


ルベさん登場。次回は土日のどっちかに更新したいな……。

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