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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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真夜中の

……短い。短いです。

もうちょっと書き足してからの方が良かったんじゃないかって思うけどそうすると長くなるしと……。

一日中小説書ける環境になればいいのに……。



 ふと目が覚めた。

 壁に向かって寝ていたが、その壁の色が淡いオレンジ色に彩られていた。

 寝返りを打つとテーブルに小さな明かりが一つ。その傍には料理が置かれていると思われる布の膨らみがあった。

 テーブルの向こうのベッドにはゴドーが寝ているようである。


 わざわざ持ってきてくれたのか、と苦笑する。

 お腹が空いたら業務魔法でどうにでもなるのが分かっているのに、律儀というかなんというか。

 せっかくだから食べる事にした。

 イスに座り布を取る時に薄い結界が張ってある事に気づいた。

 触れただけで消えたそれに首を傾げたが、ゴドーが寝返りをうち、目を開けたのを見て、目覚まし代わりかよ。と苦笑する。

 ゴドーは目をこすり、体を起こす。


「寝てても良かったのに」

「うー……そういうわけにも、いかないからな」


 眠そうに言ってベッドから降り、イスを引く。

 俺は麦茶をゴドーの前に置く。


「ああ、ありがとう」

「こちらこそ、ご飯ありがとう」


 返礼するとゴドーは肩をすくめた。


「いらないかもしれないと思ったのだけどな、有ったら食べるかな、と思ってな」

「そうだな。無かったらそのまま寝てたかも」


 スプーンを取り、パエリアのようなものを一掬いする。


「神から伝言だ」

「何?」

「あの騒ぎは予想外だったと。すまなかったと」

「……そう」

「あと、彼の記憶を消して改ざんしたそうだ。君は戦いの後、体調を崩して安静していたという形になってる」

「はぁ」

「……だから彼はもう謝れない」

「……そうだね」

「エド、彼の代わりに私が謝りたい」

「謝らなくていいよ。ゴドーが悪いわけじゃないし」

「神の行動を止めなかった責任は」

「あのさ」


 ゴドーの言葉を遮る。

 強く声をかけたからかゴドーの言葉が止まり、視線が絡む。


「ゴドーは関係ないだろ? それに彼の代わりだというのなら神が謝ったんだろ?」

「それは……そうだが」

「なら、ゴドーが謝るのはおかしいだろ」

「……でも」

「デモもストもなし」

「……すと?」


 思わず前世の言葉が出て、咳払いを一つする。


「とにかく、俺はゴドーに謝ってもらいたいなんて思ってないから。彼の事も一度は水に流す。それでいいだろ」


 異論は認めないとばかりに俺は顔をパエリアっぽいのに戻して食べていく。

 ……なんだろう、この……ちっちゃいグミみたいな食感は……。

俺は頭の中身も夕方の事から料理に切り替えてたが、ゴドーはすぐには切り替わらなかったようだ。


「……ミカ……彼はミカというのだが……。あそこまで本気だったとは思わなかった」


 ……顔も日本人っぽいけど、名前も日本人ぽいなぁ。女の名前だけど。


「驚いた……」

「俺も驚いたよ」


 いや本人以外絶対に驚いていると思うけど。


「……あいつは……どんなつもりで今までを過ごしてきたんだろう……。真実の愛なんて……求めるだけ辛いだろうに」

「……なんで?」


 理由を考えたが思い浮かばず聞き返す。

 あの口ぶりを考えるに神官は結婚出来ないというわけではないだろうし。

 ゴドーは答えようとして一瞬硬直する。口を閉ざし、一呼吸置いてから躊躇いがちに話し出す。


「……神の依り代は……、エドの知らない秘密があって……それで」


 ゴドーの視線が揺れ動く。言い分けを考えるように、逡巡するように。


「いいよ。言いたくないのなら」

「…………すまない」


 ゴドーは口を閉ざした。目は自分の手元を見て、揺れ動いている。

 そういや、夕方も様子がちょっとおかしかったっけ?

 

「なぁ、ゴドー」

「っ」


 声をかけただけでびくりとゴドーは顔を上げた。

 なんでそんなにびくついてるんだろ。言いたくないことを無理矢理聞き出すとでも思われているのだろうか。だとしたらショックだな。


「俺に出来る事があれば言えよ?」

「え?」

「神の依り代だから駄目だって諦める前にさ。出来る事があれば手伝うから、『求めるだけ辛い』なんていうなよ」

「…………」


 ゴドーはしばし俺を見つめていたが、かすかに視線を逸らした。

 どうやら思ったよりも根深い問題のようだ。

 俺はそれ以上いう事は無く、見た目パエリアを食べていく。




「……普通の人として……生まれたかった……」




 ぽつりと、たぶん俺に聞こえないように、それでも心の内を口にしたくて、ゴドーは小さく、かすかに呟いた。

 俺はその心の内を聞こえなかったふりをした。今はまだ。







翌朝、俺たちはテーブルをくっつけて一つにして座り、メニューを眺めている。


「昨日のプチプチ、あれなんてやつ?」

「気に入ったの?」

「……むしろ避けたい」


 セリアの言葉を否定した。


「あれはデザートにするといいと思うんだ、俺」

「あー、そうかもねぇ」


 なんてやりとりをしていると、俺の横に、誰かが立った。

 いや、誰かというのも変か。

 例のミカさんが立った。


「失礼、貴男がエドさんですね?」

「ええ、まぁそうですけど……」


 みんなに緊張が走っているのが分かる。俺もちょっと緊張している。

 彼は俺を見て、少し驚いた後、笑った。


「あれ? 君、気まぐれスキルをよく買ってくれてるよね?」

「ああ、はい、そうですね」

「あはは、そうか。君がそうなんだね。まったく知らない人じゃなくて嬉しいよ。じゃあ、改めて自己紹介を。神の名により、昨日からゴドー達と合流した宣教師、ミカといいます。以後よろしくお願いします」

「あ、はい、エドです。こちらこそよろしくお願いします」


 お騒がせ神官、ミカさんは、ファーストキス騒ぎがないとごく普通のお兄さんでした。

 昨日のアレは……幻だったのか、と思うほど、ごくごく普通のお兄さんでした。

 

どんだけファーストキスを大事にしてたんすか、貴男。



 








時折、なんでこんなネタが入っているんだろう。と思う内容のものがあるのかも知れません。

種だけは蒔いていると思ってます。

芽吹くかどうかは、ストーリー展開まかせ……。(それもどうよ)


あと、何か裏があると思わせて、実は何も無かったっていうのもあったりするのかも……?



追記

『神の名により』について。

なんとなくですが、今回のミカのこのセリフは『神の命により』も『神の名により』の方があってる気がして誤字ったまんまで通してます。

たぶんミカが依り代のせいでそう感じるんだと思うんですけどね。



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