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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
55/143

心と体

ぼかしエロ?

いや、たぶん、さらっと読めるはずだ。R15で収まる内容です。たぶん。





 夜も更け、さて寝るかと思ったタイミングで扉がノックされた。

 ゴドーである。


「少しいいか?」


 と声をかけられたら「どうぞ」と気軽に言う仲である。

 喩えこれが真夜中だろうが夜明け前だろうが俺は彼を招くだろう。

 それだけの恩義は十分に感じているつもりである。

 防音結界を張られて、鍵をかけられても俺にはなんの疑問も浮かばない。

 よっぽど大事な話があるんだろうな、くらいで。そういう意味では一番信用してる人だったのだろう。


 仮眠室は仮眠室でしかないので、ベッドとサイドテーブルくらいしか作らなかった。だから話をするのにお互いにベッドに座るのも当然の流れだ。


 うん……。そこまでは普通というか、まぁいつも通りだったよな。うん。


「……」

「……」


 俺は体をベッドに押しつけられたままゴドーを見上げ、ゴドーは俺を抑えたまま俺を見ている。

 沈黙はほんの数秒だったと思うけど、わりと長く感じた。


「……君が、同性とこういうことをするのを好まない事は知っている」


 ……ああ、やっぱり、そういうコトのための動作なんですね、これ。

 実はまだちょっと冗談だっていうの期待してたんだけど。


「じゃあ、なんで?」


 俺の口から出た言葉は思いの外、固く、冷たかった。

 言った本人である俺自身が驚いたぐらいだ。ゴドーの表情が一瞬たじろぐのも当然だろう。でも、肩を抑える手には逆に力が入った。


「喩え、君に嫌われても……。君を殺すよりはずっと良い」

「……は?」

「忘れているのか、忘れたいのかは知らないが、エド、このまま君に盗賊退治をさせるわけにはいかない。もし、このまま君が人を傷つける事に喜びを感じてしまうようになったら……私が君を殺さなくてはならなくなる」


 ゴドーの表情が苦痛に歪む。

 何を言いたいのか分かった。確かに忘れていた、いや、忘れていたかった事だ。


「君はスキルと相性が良すぎる。スキルを封印し、君を無力化する事も叶わないだろう。君は神にすら成れる。そんなステータスの持ち主だ。もしもの場合、私が戦う事になるだろう。他の依り代では分が悪すぎる」


 ゴドーの顔が近づいてきて、思わず俺の体が竦む。

 ちゅっと軽い音をたて、額にキスをされた。


 …………すげぇ子供扱いされた気がして、これはこれでムカつくなんて思う俺も居るのですがねぇ、えぇ。


「大丈夫だ、エド」


 そう言って微笑んだゴドーの表情は、慈愛にも満ちていたが、どこか悲しげでもあった。


「目を閉じて、女性の事でも考えていれば良い」

「…………は?」


 ゴドーが闇系の魔法を使ったのだろう、照明の明かりが塗りつぶされていくように弱々しくなり最終的にはほとんど見えなくなった。

 人影があるぐらいしか分からない。

 もっとも夜目のスキルがあるから俺には十分に見えるが。


「私が女役をやるという意味だ。胸は無いがそこは許してくれ」


 そんな事を言ってきたので、俺はゴドーの頭に手を回し、引き寄せると唇を奪う。


「誰かを代替にするほど落ちぶれていないつもりだぜ」


 そうきちんと告げてもう一度唇を重ねる。

 

 正直言うと俺は神の忠告を深刻に受け止めていなかった。

 でもゴドーは違った。だからゴドーはこういう手に出たのだろう。

 俺に嫌われるのも恨まれるのも覚悟の上で。

 そこまで思ってくれているのなら、と。

 それに……女役しなくていいのなら、ちょっとは気楽だし、一回済ませればゴドーも安心してくれるだろうと考えたのだ。




 そして俺は今、床の上で土下座している。

 額は地面にこすりつけるくらい深々と頭を下げていた。


「……なにを……してるんだ?」


 どこか掠れて、そしてどこか色っぽい声でゴドーが聞いてくる。


「ごめんなさい。ほんとぉーに! ごめんなさい!!」


 俺は謝る。心の底から謝る。全裸だけど気にしてられん!


「……君にとって、私との行為は謝るようなことなのか?」


 それは俺の謝罪に傷ついたという言葉だ。ゴドーは何か勘違いしている。でもだ。勘違いされても、間違いなく俺は謝らなくてはならない。


「いや、あのですね、ゴドーさん。流石に時間を止めての行為はまともじゃねぇと思うんだ」

「ああ……うん。君、そんな事も出来るんだなって驚いた」

「でね、記憶があやふやになってるかも知れないけど、たぶん、体感で……三日くらいは、経ってんの……」


 俺はこわごわと言う。

 そう、時を止めて、俺はたぶん、三日間ゴドーを抱き続けてる。

 正直に言うと、記憶があやふやっていうか、…………嘘です全部覚えてます。でも歯止めが全然利きませんでした。

 一度体に火がついたらもうさっぱり。なんかヤバイ薬でもやってんのかってくらい。

 スキルが発動しなかったってことは、これは、つまり、……ヒューモ族にとってはごく普通の事なのだ。


「ああ……うん、それだけ溜め込んでたって事だろ」


 ゴドーはあっさりとそう言ってポンポンと、ベッドに座れと叩いてくる。


「いや、でも、魔法使って回復させて無理矢理ってのはやっ---」

「合意の上のはずだが?」


 俺の言葉を切りゴドーは強い口調で、むしろ叱りる口調だ。


 俺は口を閉ざしたが、それでもやっぱり良心が痛む。

 そんな俺を見て、ゴドーはため息をついた。


「だから、ほどほどでガス抜きをしろと言われたのだろうが……」


 ゴドーは寝転がりながらも、俺へと腕を伸ばしてくる。俺は大人しく立ち上がりベッドに座る。


「いやでも、普通、あんなんなる?」

「……職業上、神官としかしたことがないが、神官は割とあんなだぞ? 流石に時を止められるものは居ないが、半日は拘束されるな。ただまぁ、私達依り代の中にある神の気配に酔った結果なのかもしれないからなんとも言えないが。あれに比べれば全然マシだ」

「半日……。え? 普通に考えたらそっちの方がましだろ? あ、実際の時間が流れてる分色々支障が出るとかそんなの?」

「いや、そうではなく。……エドはずっと私の名前しか口にしなかっただろ? そういう事だ」


 困ったような表情で告げられた言葉に理解する。女の代替にとか言ってたのは、普段からそういう風に扱われていたという事なのだろう。

 神の気配に酔うと言っていた。ずっと神の名前を呼ばれ続けていたのだろうか……。


「私がそうであると知らない人を選んでいるのだがな、毎回そうなる……。……仕方がないのかも知れないが……。精神的には苦痛でもやなければならない程、ヒューモ族が抱える肉体的欲求というのはとても大きいんだ。私達はそういう種族なのだよ、残念ながら」


 ゴドーは俺の背中を撫でながら子供に優しく言い聞かせるように言葉をかけてくる。


「エドにとっては辛いかも知れないが、エドはもうニホンジンじゃなくてヒューモ族なんだ。ゆっくりでもいいから割り切ってくれ」

「…………」


 俺は無言でゴドーの体を回復させる。

 掠れていた声もこれで元に戻るだろう。


「ゴドー……。俺の尻、貰って」

「え?」

「詫びにもなんないけど、貰ってくれ。じゃないとちょっと流石にちょっと……」


 詫びにもなんないし。ただの自己満足だけど、ゴドーの事も考えずに一方的にやってたのは事実だし、このままじゃ駄目だと思う……。

 ほんとなんの詫びにもなんないけど! 一方的に女役を押しつけるよりは、その方がまだ、…………まだましかなぁって……。


「……よく分からんが、エドがそれでいいのなら」


 ゴドーはそう言って俺を抱きしめた。



そして、俺は確かに日本人ではなくヒューモ族なんだなって自覚したよ。

 一切痛みがなかった。ただ気持ち良かった。……嘘です。凄くが三回くらいは付きそうなほど気持ちよかったです。おかげで何の罰にもなんない……。


「はー……」

「失礼なやつだな」

「ああ、ごめん、ゴドーに対するものでも、ゴドーとした事に対するものでもなく、 ヒューモ族としての自分自身に対するものっていうか……。ところで、さ、これって、女も一緒?」

「ん?」

「セリア……」

「ああ、彼女もニホンジンだものな。彼女は君ほどステータスが高いわけではないのだから君ほど強い衝動にはならないと思うが、可能性はあるな」

「…………俺の口からでも流石に言えんよ?」

「私だって言えるわけが無いだろ?」

「……正直、嗜虐趣味が出来たりすると思う?」

「彼女がどれぐらいステータスを伸ばすかにもよるんじゃ無いか? 君、彼女の指輪はまだ例のスキルをつけたままなのだろ?」

「…………」

 

 俺はしばし悩んだ。しばしというか結構悩んだ。

 悩みに悩んだ末、朝一にネーアに事情を話した。拒否権もあるし、断ってくれてもいいと告げて、友達関係が壊れるかもしれないってのもきちんと告げて、お願いをした。

 ネーアは真剣に聞いて、そして微笑んで頷いてくれた。そして、セリアが使っている仮眠室へと入っていった。

 それからどうなったかは、……まぁ、三時間経っても出てこなかった辺りで知れるわけで。

 いや、普通に考えると寝込みを襲われたら反撃の一つや二つって考えるけどさ。

 この体そんなに甘くない……と思う。

 

「【ヒューモ族はね、欲望に忠実なのよ】」


 そう言って目の前の綺麗なオネエさんは言う。

 完全に乗り移っているわけではないのだろう、ゴドーと姿がダブっているように見える。


「……そんな事言ってたら犯罪率が凄い高そうですけど?」

「【そうね。でもね、欲望には忠実でも、強欲では無いのよ】」

「……哲学か何かですか?」

「【フフフ。そういうのじゃないわ。優劣がはっきりしているのよ。一番大事なモノのためなら他の欲望は捨てられるのよ】」

「……つまり……」

「【大事な者が家族であるのなら、家族を不幸にするのを望まないという事よ。でもそれは時折複雑な形になったりもするわ。たとえば、ハーレムを作る者と作らない者がいるわね?】」

「居ますね」

「【ハーレムを作らない者はとても分かりやすいわ。配偶者にした者が一番何よりも大事なのよ】」

「ハーレムを作る人は、皆同等とか妻以外に大事な物が上位にあるとかですか?」

「【そういう場合もあるけど、一番目を守るために、二番目、三番目を作るという事もあるわ】」

「……守るため?」

「【ええそうよ。エドちゃんは回復魔法が色々使えたから、この子の体は壊れずにすんだけど、そうじゃなかったらどうなるかしらね?】」

「う、うぅーん……」


 非常に答えにくいです。


「【もちろん、大前提として、一番目が、二番目三番目の存在を許せるって事に限るけどね。ハーレムの中に男女が混在してたりするのもそういう理由があったりするのよ。一番目が、二番目三番目が同性だと許せないってなるの】」

「……女心って複雑っすね」


 そういうと、目の前の方は声を出して笑い出した。


「【アタクシがなんでわざわざ妻とかじゃなくて一番目、二番目と口にしていると思っているの? 嫉妬深いのにも欲深いのにも、男も女も関係ないのよ? 少なくともヒューモ族にとってはネ?】」


 クスクスと笑って、俺の頬に手を伸ばしてくる。


「【でもね、ハーレムの主がエドちゃんみたいに、とても強い人間だとね、そういうのが起きないの。むしろ、子を産むための存在が、その欲を発散するための存在が沢山いて当然だと思うの。その中の一員であるというだけで至福を感じるの。順番なんて関係ないの。不思議よね?】」

「……不思議もなにも、そういう風に作ったんですよね?」

「【フフフ。秘密よ?】」


 俺の唇に人差し指を置いて、笑う。妖艶に。


「【もちろん、『何よりも自分が大事』って人もいるけど】」


 視線の動きで、明日退治する事になる盗賊達の事を言っているのだと分かった。


「【他にも、一番目のために汚れ仕事を喜んでする者とかも居るわ】」

「……」

「【まあそのうち、エドちゃんにも分かるかもね。心は体にひっぱられるし、体も心にひっぱられる。ステータスが高くなると言うことはそれだけ体が強くなるという事。貴方達は、自分の身を守るために強くなるのでしょう? ならいつまでも日本人ではいられないわ】」

「…………はい」

「【ごめんなさいね? こんな体にしちゃって】」


 そんな風に謝られても、どう返答すればいいのか分からず、俺は曖昧に笑うだけだ。


「【ハーレムを作れる心境になったらハーレムを作るといいわよ】」

「はあ……。それをすすめられるのも変な気分ですが、なりたい言う人居ますかね……」

「【あら、沢山居るわよ。隠ぺいしてても本能でかぎつけるものは居るわ】」


 本能……。


「【だから、ネーアに欲情しちゃうのもバロンに欲情しちゃうのも仕方がないと思うわよ】」

 

 なにがどう「だから」なんですか! っていうかバレてますか! バレてるんですね!!

 俺は顔を両手で押さえて嘆く。


 そう……なのだ。

 実は、あの後から、そういう気分になって仕方がないのだ。

 いくら二人とも顔が好みだからとって、今までこんな事なかったのに、たがが外れてしまったみたいで、俺自身が凄く戸惑っている。

 唯一救いなのは、子供(ニア)セリア()にはそういう感情がわかないって事か。

 あと、マッチョでもあるタンガにも。やれるのなら誰でも良いというわけじゃなくて良かったと本気で思ってる。


「【一時的に発情しやすくなってるだけだと思うわよ。過敏になっているというか、美味しい物をもう一度味わいたいのと同じよ。お代わりしたい、あっちの美味しそうなのもの摘まんでみたいっていった感じかしら?】」

「だからと言ってやったらやったら最低ですけどね」

「【フフフ。同意があれば関係ないと思うけど?】」


 なんて事言うのこの人……いや、神か。


「【まあ今日まではこの子で我慢なさい。一週間経ってもその衝動が起きるようなら、本格的にハーレムを作るか、その子達から物理的な距離を取る方がいいわ。物理的な距離で収まるのなら、ただ体が発散したいだけ、収まらないのなら、それは心が求めているという事ね】」

「……心が……ですか?」

「【そう。『好き』ということなんでしょうね】」

「好き、ですか?」

「【そう。それも結構上位の方で】」


 言い切って、視線を俺の後ろに向けた。

 振り返る前にかの方は言う。


「【終わったみたいね。アタクシも戻るわ】」


 そんな言葉と共に綺麗なオネエさんの姿は重ならなくなり、ゴドーの顔のみがそこにあった。

 お互いにちょっと困ったように笑った。

 そして、俺の後ろから足音が近づいてくる。


「エドオオオオオ!! どういう事よ! どいう事よ! どういう事なのよぉ~~~!」


 怒鳴り近づいてきたセリアは俺を拳で叩き続け、そして仕舞いには泣き出してしまった。


「ね、ネーア……穢しちゃった……」


 ぽつりと呟かれた言葉に、「うん、やっぱり自制効かないよな、あれ」と内心思うのだった。

 ゴドーやツキヨ様? ちゃん? によると最初はそういうものみたいなんだけどな。

 なので家族の成人祝いはスキル、学校の先輩達の成人祝いは娼館代っていう場合も多々あるらしい。

 イヤ絶対おかしいだろ。って思うけど、普通だぞっとわりと真顔で言われた。

 どうしよう。そういう世界なんだと喜べばいいのか、嘆けば良いのか分からん。


 とにもかくにも、セリアにはヒューモ族のやっかいな体質を説明する事から始めるとするか。

セリアを宥めながら、俺はなんとか必死に説明をする。


「……つまり、盗賊団のせいでこういう事態になったわけね?」

「いや、そういうわ---」

「それでいいのよ。じゃないと明日八つ当たりが出来ないじゃない」


 俺の言葉を遮ってセリアは剣呑な目つきでそう口にした。


「……うん。それでいいんじゃないか」


 俺もだんだんそんな気がしてきたから、頷いた。


 見てろよ、盗賊共。俺たちの平穏を壊した罪は重いと知れ。

 


 



さて、これでハーレム作る土台は出来た…かな?



……なんでハーレムものって書いてみようって思ったんだっけ?

とふと思い始めてしまった。いかん。それがあるからこの設定作ったのに……。

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