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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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家族構成

す……すすまなかった……。

ごめんなさい……。



 火柱が上がった時からすると、四十分以上経った頃だろうか、森からセリア達が帰ってきた。


「おー。お帰り」

「ただいま」

「ただいま帰りました」


 俺の言葉にセリアとバロンは返してくれたがニアは唇を尖らせたまま、なんの返事もしてくれない。

 俺の目線に気づいたのだろう。セリアが苦笑を一つした。

 一瞬バロンを見て、腰にある剣の柄をポンポンと叩いた。

 ……あ、ああ、なるほど。生き物を殺したって事に不満を持っているって事か。

 そちらへんの教育は親御さんにお任せしたいんだけどねぇ。


「無事に帰ってきたか。先ほどは一体何があったのだ? エドは心配はないと言っていたが、詳しくは知らんと言っていたし」


 バロンがケガをしていないかシェーンは確認しながら尋ねる。途端にバロンは居心地が悪そうになっていた。


「えっと……その。ケーマンが出たのですが」


 ケーマン? 何ソレ。

『熊みたいなものと覚えておけばいいかと』

 ちょっと詳しく聞くと外見は狸っぽいけどサイズと強さは熊だそうだ。


「倒すついでに丸焼きにすれば調理する手間も省けるのでは無いか、と思いまして」


 恥ずかしそうに言われた言葉に俺の思考が一瞬停止した。


「倒すついでに丸焼き?」

「はい。火力が強くて無理でしたが、でも今度は大丈夫です」


 まて、今度は大丈夫ですだと!?


「上手く焼けました!」


 そう言ってバロンは自作の魔法袋からこんがりと焼けたうり坊のような物を取り出した。

 高らかに掲げられたそれをしばし遠い目で見た俺は、一応、もしかしたら、という淡い希望を持ってシムに尋ねる。


 血抜きをしない方が旨いとか……。

『しません。思いっきり生臭いと思われます』


 シムはあっさりと俺の希望を打ち砕いてくれた。


「……バロン、血抜きって知ってる?」

「いえ、知りません」

「……セリアは?」

「魚でやるやつよね?」

「……魚以外にもするんだけどなぁ……」


 これをこの二人に任せて料理をさせると偉いことになりそうだ、と俺は自分で調理する事にした。

 こんな駄目食材だと料理人スキルが発動しない可能性の方が高いし……。


「三人はタンガやネーアと一緒にスキルの練習してくれ」


 四阿を指さすとネーアとタンガが座ってスキルの練習をしているのが見える。

 ネーアはいつも通り水を生むだけ。

 タンガは、ネーアとは違い、水魔法を唱え、発動する前に待機状態にし、その状態を維持したまま、チャージ、水、チャージ、水と繰り返して貰ってる。そうすると威力も上がるが熟練度も入り易いのだ。もちろんMPはドンドン減ってくからMPポーションがぶ飲み中である。

 お腹がタポタポし始める前に組み手でもして水分消費してくれ、とは伝えてある。

 シェーンはそんな二人を見守る形で傍に、俺とゴドーは離れて時間を潰していた。


 ヌコ? そこら辺の木陰で体を丸くして寝てた。

 で、バロン達が戻ってきたら、俺とゴドーは夕食作りに入ったわけだ。ヌコにも声を手伝えと声をかけたが。


「何言ってるミャ? なんでヌコがそんな事しないといけないミャ?」

「働かざる者食うべからずって言葉知ってるか?」

「何言ってるミャ? 神様が与えてくれた自由をお前が奪ってここに連れてきたミャ。ならお前がヌコの面倒をみるのが当然ミャ」


 何がどう当然なのかぜひとも問い正しいたい所だが、あんまり話してると俺の精神衛生上によろしくないとさっさと引き上げた。

 魔道札という魔法を封じ込めた札を作り、それに『GO HOME!』と書いてシェーンに渡し、シェーンからヌコに渡して貰った。

 神が神がと煩いので、その神を降ろしたシェーンに責任を取って貰った。


「……エド、……あれで、本当に彼女は村に帰れたのか?」

「きちんと説明して使わせたんだろ? なら帰ってるよ」


 これ以上は無理。ホント無理。ああいうタイプの女、マジ無理!


 なんか前世にトラウマでも抱えてるのかってくらい苦手っていうか嫌いだった。

 なので、これ以上は面倒見切れるかとスキルを使用してさっさと帰って貰った。

 その後は知らん。もう一度やっかい払いされたとしても、自己責任だろう。




 夕飯はカレーになった。その方がニオイが気にならないかなって思ったからだ。

 肉の一部は初級剣術持ってるやつらに包丁で叩きを作って貰った。これで剣術と料理の両方の熟練度が入るってくる。ウハウハ、ウマウマである。

 あとはハーブと卵を混ぜてハンバーグを作る。

 ワインでフランベして香り付けまでした。

 それにしても、バロンとセリアを使って手を抜きたかったはずなのに、なんでこんな事になったのやら。

 

「そうだ、セリア、これお前の知り合いかどうか確認してくれ」


 表面を焼きつつ、思い出した俺はセリアに一枚の紙を渡す。

 セリアはその紙を受け取って、思いっきり眉を寄せた。


「……知り合い……だけど」

「関係性は?」

「……………聞いてどうするの?」


 お。本格的に警戒し始めた。


「お前がなんで転生したか分かるかもしれない」

「え!?」


 驚いた様に聞き返して、紙を見た。

 ためらいを見せたが、それでも答える気になったらしい。


「アタシの前世の両親と両方の祖父母の名前がある。あと、漢字が違うけど、お兄ちゃんとアタシの名前がある」

「……漢字が違う?」

「うん。ねぇ、これ、何?」

「俺の前世の家族構成」


 警戒と嫌悪を浮かべたセリアに簡潔に答えた。


「……エドの家族構成?」

「そう」

「え? いすみは?」

「いすみ? 誰それ」

「妹だよ!!」

「妹!? 親父死ななかったのか!?」

「…………お父さん……死んだの?」

「ああ。交通事故に巻き込まれた」


 ハンバーグをひっくり返して蓋をする。あとは蒸らしながら中に火を通す。


 手を動かしながらも俺は一人納得していた。

 なるほど、俺が近しいパラレルワールドの『俺』って事はそういう事か。

 家族構成が違ってたり、歴史ががらっと変わってたり、もしかしたら女で生まれたりするとかがあるのか。


「……えーっと、つまり、エドは……」

「パラレルワールドのお前の兄貴だった」

「あー……納得は出来るかも? 時折、似てるなぁって思ってたから」

「それについては俺も同意だな。まあむしろ今軽く絶望もしたが」

「え!? どういう事!?」

「お前の料理スキルはどこのパラレルワールドでも同じだったか、と」

「ちょっとぉ! どういう意味よぉー!!」

「何? 語って欲しいのか? 俺の世界での、妹の数々の所行を」


 いいぞ、いくらでも語るぞ。食べ物の恨みは恐ろしいぞ?

 ふっふっふっふ。大丈夫だ。語る用意はすでにしてある。


「……やっぱり良い」


 首を横に振り顔を背けた。そして、はっとしたように顔を上げた。


「でも、前エド、クッキーを持ってきてたってっ!」

「班行動だったからな? 他の子が上手かったに決まってるだろ?」

「う……。……ちょっと期待したのに……」


 ぶつぶつ言いながらカレーをかき混ぜている。

 ふてくされた様子のセリアにため息をついた。

 誰かと一緒の時ならこいつの料理も問題ないんだけどなぁ。一人で作らせるとなんでか知らんが「オリジナルティを出したかった!」とか抜かしていらん事しくさりやがってたからなぁ。


「でも、まぁ、お前が妹だっていうのなら、ちょっと事情が変わってくるなぁ」

「え!? なんで!? 妹嫌いだったの!?」

「そうじゃねぇよ」


 待遇悪化を心配してんじゃないっての。


「ゴドーにこれ、入れて貰ってこい」


 紙をもう一枚差し出す。

 セリアは受け取って、しげしげと眺めて首をかくんと曲げた。


「『設定』『放出』『チャージ』『結ぶ』? チャージはなんとなく分かるけど他はさっぱりなスキルね。これなんなの?」


 尋ねてくるセリアに俺は笑みを浮かべる。


「『システム(最強)』へと至る道だ」






風邪引きました。

本格的に咳が出てきました。

もし、体調悪化で更新できなかったりしたら、ごめんなさい。

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