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魂の叫び



 生活魔法(水):消費MP1 コップ一杯分の水が出せる


 そこから始まっていた生活魔法(水)。神官のお兄さんの話を聞いて、よくよく調べてみると、レベルは表示されないが備考がリストの様に表示されて見る事が出来た。


『消費MP1  コップ一杯分の水が出せる

 消費MP2  ティーポットいっぱい分の水

 消費MP3  家庭用の深鍋分の水

 消費MP4  洗濯タライ分の水

 消費MP5  浴槽分の水

 消費MP6  人一人が一月で使う平均的な水の量が自由自在に使える

 消費MP7  人一人が一年で使う平均的な水の量が自由自在に使える 』


 それが今生活魔法(水)での効果だ。

 つまり俺は今、生活魔法(水)のレベルは7なのだろう。

 

 ……自由自在に使える状況で良かった。まじめにその量全て出てくるってなったら、家の周り偉いことになってた……。


 っていうか、MP7で出来る効果じゃない……。

 つか、何よりも6からの効果がおかしい。そこはまずは一日分の平均的な水の量とかじゃないのか!?


「さて」


 内心動揺しまくる俺に気づかず、神官のお兄さんはカウンターにコップを置いた。


「これに水を満たしてごらん」

「え!?」

「実際に出来る様になっているか確認しないといけないだろう?」

「い、いやでも、もし失敗したら」


 人一人が一年で使う平均的な水の量。

 が、出てくるのだ。周りが水浸しどころじゃない。


「大丈夫、多少、周りが水浸しになっても拭けばいいだけだ。問題ない」

「……問題あるっすよ」

「気にする事はない。まだ大切に、気まぐれスキルで得たスキルを使ってくれているようだし、これぐらいはお礼だと思ってくれて良い」


 そう言って神官のお兄さんは笑った。

 あ……。気づかなかったけど、この人……、むちゃくちゃかっこいいじゃん。

 前髪とか眼鏡とかで顔を半分隠してるけど……。

 羨ましい……。

 そんなイケメンにちょっとジェラシーを感じつつ、俺はコップを見た。

 集中しろ。出すのはコップ一杯分だけだ。あのコップを満たす分だけだ。


「……水よ」


 俺の言葉にコップの底から水がわき水の様に溢れ出して、八分目くらいで止まる。

 良かった! 成功した!!


「……驚いたな」

「え?」

「触れずに発動させられるとは思わなかった。それに下からとは珍しい。だいたいみんな上からなんだが」

「あ、俺も最初の頃はそうでした。でも、周りを水浸しにする事も多くて」


 ……あれ? そういえば、それも、魔法が重複してる分威力が高いのかもと意識したあたりから無くなったか?

 ……意識して使う事っていうか、スキルの特性を知る事ってのは思っていた以上に重要なのかも。


「気を遣ってくれたのか。ありがとう」


 言って神官のお兄さんはコップの水を飲んでいく。

 飲み終わるとコップをテーブルに置いて、笑う。


「これで君からの授業料をいただいたということにするよ。ごちそうさま」

「はは、ありがとうございます」


 こちらもお礼を言うと神官のお兄さんは防音結界を消したらしい。空気がまた変わった感じがした。


「あ、それと気まぐれスキル三つください」

「……まだ買うのかね?」

「もっと欲しいです! 本音はコンプリート、全部集めたいです」

「……何の役に立つか分からない物もあるだろうに」

「そう思ってるのは人間側だけだと思いますよ。俺、昔は特技なんて言えるもの何もなかったんで、ちょっとでもそういうのがあるのは羨ましいっていうか。それに俺からしたら、気まぐれスキルのスキルは十分使えますよ!」

「……そう思う人間はごく少数だと思うけどね」


 言いつつ、お兄さんは前に見たおみくじ箱を取り出す。俺はそこに金を入れた。

 三回分!

 来い! 初級魔法(光)!!


 一つ目。呪怨! って響きが超怖い!

 二つ目! 加工! 加工って何の!?

 三つ目! 生活魔法!!


「……生活魔法って、明かり、出ます?」

「出ないな。あれは、水・料理・裁縫・清潔・熱だ」

「……生活のクセして明かりがないのか……」


 って、事は初級魔法(光)を買わなきゃ駄目なのか……。っていうか、熱ってなに!?


「明かりが欲しかったのかい?」

「欲しかったですね。夜に活動するにはどうしても必要なので」


 っていうか、水と裁縫ダブったなぁ……。


「そうか。売って、資金の一部を稼ぐかい?」

「いえ、それはしません。使います」


 それに裁縫がもっと上手くなるならいいことだ。これで稼げるかもしれないし。


「ところで、この『加こ』」


 質問を続けた俺に、神官のお兄さんは人差し指で俺の唇を押さえた。

 ……リアルでそんな事するやついるのか。さすがイケメン。俺がやったら寒い。


「さっき、言ったよ。スキルの事を軽く口にしてはいけないと、私じゃなくても、君の会話で、君が生活魔法を持っている事と、光魔法を欲している事が分かってしまうが?」


 言ってお兄さんは人差し指を外した。


「んー……でも、俺、これからも気まぐれスキル買いたいですし、お兄さんはいい人だと思うし。お兄さんなら大丈夫かなって」

「……やれやれ、君はずいぶんと甘いな。出会って間もない人間をそんな簡単に信用してどうする?」

「えー、でもお兄さん、色々俺に教えてくれるし、心配してくれるし? それに、これから何度も顔をつきあわせるのなら、仲良くなりたいじゃないですか」

「……君はこれからも気まぐれスキルを買っていくつもりか? 本当に」

「はい!」

「……そうか……」


 何故かお兄さんは少し悲しそうにした。

 俺は首を傾げる。お兄さんは首を横に振ったが、俺の疑心は晴れない。

 俺は空気を読める日本人!


「……君がそうやって、これからも買ってってくれるといいな、と思っただけだ」


 そう言ってお兄さんはやっぱりちょっと悲しそうに、笑った。

 ……お兄さんや、その顔を女性に見せれば、女の人たちは貢ぐように買うと思いますよ。 なんかムカつくから言わないけど。くそ、イケメンめ!


「買いますよ。これからも。じゃあ、ありがとうございました!」


 俺は立ち上がり、会釈する。

 色々実りがあった。

 さて、仕方ないから、初級光を買うかぁ。あー……。さっきので出てくれたら、もう二つくらいは気まぐれ買えたと思うのになぁ……。でも、呪怨はともかく他二つは中々に良さそうだよね。

 くっくっくっく。

 笑みが浮かんでくる。俺は初級魔法(光)を買って、帰った。

 これで後は家でゆっくりと確かめ……る訳にもいかないのか、今実家だもんなぁ。

 でも、明かり魔法は後で試そう。

 

 夕食は作るのを手伝った。

 これだけでも生活魔法は育つ。と、信じたい。だって……、生活魔法の備考内容が、「全ての生活魔法レベル1が使える」だった。(水)と(裁縫)以外分かりません!! 

 それでも俺は信じてやるぜ。信じる者は救われる、だ。

 最悪は、後日、生活魔法で放出使ってやる。

 食べ終えた皿洗いは、今までだったら「綺麗石」を使う所だけど、今日からは俺が綺麗にするぞ。皿を一つ持って、清潔。と唱える。

 ぽわん。シャボン玉が現れてすぅっと消えると皿は綺麗になっていた。


「おぉ!」


 すげぇ。この辺はホント魔法便利っていうか、凄い。服のシミとか関係ないもんな。一瞬で綺麗。この調子で一枚一枚手に持って魔法を唱える。慣れてきたらたぶん、それも必要ないと思うんだけどな。

 大小の十八皿を洗い終えて、俺はまだ残っていた自室に戻り、魔法を使う。

 小さな光が暗い部屋を照らす。初級魔法(光)のレベル1はろうそく1本分くらいの明かりらしい。

 ……ろうそくって出てるけど、火ではないようだ。

 ちょっとびびりながらも触ったけど熱くないし燃えない。


「豆電球よりも暗いか……」


 小さな光をより集めて明るい光にし、俺は手元に裁縫道具を置く。

 せっかくの裁縫スキルが有るのならやるべきだろう。

 それにもしかしたら加工スキルも使えるかも。

 あ、加工スキルの説明は、『加工がしやすくなる。対応スキルが必要』である。

 あれだね。対応スキルが分からないとどうしようもないって思うよね。でも、放出の件がある。みんなが思ってるよりも意外にすぐ行けるんじゃないかなって。

 あ、あと呪怨は『対象者がぼーっとする』でした。

 一瞬、レベル1は微妙やなぁ。って思ったんだけど、消費MP75ってのを見て、俺は考えを改めた。

 放出が良い例である。たとえば、戦闘中に問答無用でぼーっとさせられるものだったりするのでは? とか、ね。

 効果だけ見て、想像すると危険だと思うんだ。俺。

 とと、それよりも裁縫せねば。


 いらない布を貰ってきて裁縫の練習をする事にした。

 玉留めとかボタンを縫うとかならしたことあるんだけど、さすがにそれ以上ってなると、小だったか中だった頃かの家庭科にあったくらいか?

 昔過ぎて覚えていない。雑巾はさすがに縫えるけど。所詮雑巾だし、この世界じゃ使わんし。

 せめてもっと利用できるがいいと頭を捻る。

 簡単な巾着とかなら作れるかなぁ。

 そんな事を考えながら俺は一つの実験を試すことにした。


 スキル『加工』だ。


 発動にはスキルが必要とのことだが、それは放出と同じかも知れない。

 難しいとか珍しいとかではなく、わりと身近なスキルなのでは? と。


「生活魔法(裁縫)を『加工』する」


 シーン……。


「……『生活魔法(裁縫)』で『加工』する……」


 若干声が小さくなった。

 それでも反応が無く、俺は仕方なしに布に、下書きすることにした。


『対応スキルのレベルが足りません。加工を発動出来ません』


 ポーンと軽い音を立てて、そんなメッセージが聞こえてきた。

 え? 裁縫のスキルが足りないって事か?

 それは……仕方ない……。

 俺は『加工』を諦めて『かく』で布に簡単な花でも描こうとしたが、出来なかった。

 え? なんで!?

 もう一度使うが反応しない。慌てて調べたら、そういや、『紙』限定でした……。仕方ない。『着色』で一本一本糸を染めてやるか。

 ……あれ? 着色だったら放出可能なのかな?

 ……MP回復したらやってみっかなー。

 今日はもー、怖いっす。MPの減りが半端ないし、まだ全快してないし……。

 あー、着色するなら、チェック柄とかでもいいんだけどなー。いや、一本一本って考えたらめんどくさいか?


「あ、『着色』で『加工』する」


 ふと、思いついて言ってみる。

 ポーンと、音が響いた。


『着色で加工する絵柄が設定されていません』

「……チュートリアルはないんかー!!」


 それは魂の叫びだった。


『『調べる』のスキルレベルが足りません』


 なんと!!

 チュートリアル、存在してたのか。

 なら、徹底的に調べるを育てよう。

 スキル使ったら調べる。スキル使ったら調べるを繰り返すのみ!!


 今日は裁縫は置いて、『かく』と『着色』を育てよう。

 左手で、糸玉? を握り、右手はかくで絵柄を描いたり文字書いたりする。

 色はスキルを使えば好きな色が、混じるこの無く上書きされるので、とっても便利。

 くっくっくっく。

 そのうち、プリンターみたいに出来るようにしてやる。


 野望に燃えながら俺はスキルを使い続けた。



短いですが、しばらく毎日は予約投稿出来そうです。

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