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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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頑張って欲しい



 バロンのステータスがカンストした。


 ……正確には、カンストしかけた。だったけど……。

 俺のカンストは全て1500だったのだが、バロンは器用だけが1626になっている。

 これはアルフ族が器用に対して特化型だからなのだろう。


 ヒューム族は魔法特化型種族とも言われてるがその理由は、魔力に対して、MPはその100倍の数値になっているし、MPの回復は一分ごとだ。

 アルフ族は族は魔力に対してMPはその10倍。MPの回復は十分ごと。器用特化は戦闘においては、命中率とクリティカル率が上がると言われている。

 んな、ゲームじゃねぇんだからクリティカル率とか言われてもって感じだけど、装備とかの隙間とか急所が狙えるとか、そんな感じの意味なのだと思う。

 あと、生産系だと失敗がなくなるとかな。

 俺がポーションを作り出した時にはとっくにカンストしてたから経験はないけど、ステータスが低いとか、スキルのレベルが低いと失敗もあるらしい。


「さて、バロン、今の心境は?」

「…………心境? ……エド様が敵じゃなくて良かったです……」


 ぼう然としながらもバロンはそう答えた。


「え? そんな内容になるの?」

「私でもそう思うぞ」

「オレも同意である」


 バロンの感想にナニソレって思った俺は神官二人の感想にまたナニソレって思ったよ!?


「あれ? 二人ともなにが起こったのか分かってるの?」


 神官って基本悪魔の目は持ってないよな?


「「神に教えてもらった」」


 あ、さいですか。


「限界点到達なんて、そう容易く出来る事ではないぞ、お前本当に人間か? なんであんなちょっとの負荷で可能なんだ? ありえないだろ? 下手をすればそれだけでバロンは死ぬぞ!?」

「え!?」


 シェーンの言葉にバロンは驚いた様子を見せてたが、なんか納得もしていた。


「そのための安全策もきちんと行った」


 そのための処理速度向上と、冷静、平常心だ。

 だてに死にかけてねぇよ。

 俺の時よりも冷静も平常心も多いんだぞ!


「…………お前、なんで平民などしてるのだ?」

「は?」

「国だってとれるだろ」

「盗ってどうすんの? 俺が国を運営すんの? 恐怖政治でもしろと? 素人が国なんて運営したら国民が可哀想だろうが。ってか、そんな面倒な事したくないんだけど」

「う……む……」


 なんでそこで渋い顔をするかな。


「エドは無欲なのだな」

「はぁ? なんでそうなるんだよ? じゃあお前は国王になったら、どんなメリットがあるのか言って見ろよ」

「権力が手に入る!」


 力拳を作って意気揚々とシェーンは言ってきた。


「……その権力で何すんだよ」


 グッじゃねぇよ。グッじゃ。


「む? ……嫌いなやつを失脚させるとか」

「それ、スキルで出来るし」

「む……、毎日贅沢三昧が出来る!」

「それもスキルで出来るし」

「…………お、女にもてるっ」

「………………ハーレム作るだけなら、今も普通に作れるだろ。だいたい、それはデメリットの方がデカイんじゃないか? 王様になると自分の好きな子だけとかじゃなくて政略結婚とか色々あったりで、好みじゃない子を娶る事になるかも知れないんだけど?」

「むぅううう……伝手でしか手に入らないような珍しい者も国王であればいっぱつだ!」

「それがどんな物かは疑問だが、伝手ってのが、縛りなら、それもスキルでどうにでも出来るぞ?」


 相手に魅了かけたりとか色々出来るし。


「むぅ…………」

「ほれ、次」

「ひ、人の頂点に立てる!!」


 どうだ! とばかりに言ってきてるが。


「……それはどういう意味だ? 人にあれこれ命令したいっていうのなら、奴隷を買えばいいだけだ。むしろ、奴隷を買って全てを任せっきりにする事ができないのは国王の方だからな?」

「む……」

「ほれ、次」

「…………ゴドー! こやつ、意地が悪いぞ!?」


 お。ついに負けを認めたか?


「……貴族にすらなりたくないと言ってる人間に王になれと言ってるお前が悪い」

「ぐぅ……」


 さらにゴドーに止めを刺された。

 俺は笑ったあと、シェーンに釘を刺す。


「そりゃそうと、今見た内容は口にすんなよ?」

「……そういう事はまずは先に言うべきでは無いか?」

「ゴドーと同じ神の依り代なんだ。その辺は信用してるつもりだぜ?」

「……神の名前を出すあたり、やはりこいつは意地が悪い」

「それは当然じゃないのか?」


 見ろとばかりに俺を指さしゴドーを見るが、ゴドーは取り合わない。

 …………はて。ゴドーはもしや同じ依り代には少々辛いタイプなのだろうか。


「なんだ?」

「え!? あ、いや、珍しく、機嫌悪い? と思って」


 俺が見ている事に気づいたらしい。

 ゴドーは一瞬首を傾げたが、俺がそう聞いた理由に気づいたらしい。


「まぁ、シェーンが色々掘り返したからな。ちょっと悪くなったかもしれない」

「オレが何をしたというのだ!? 言いがかりは止めよ」

「……神の貴石の話が出た時、エドは神殿を通して、爵位は要らないと二度断ってる」

「………………それは…………、済まなかった」


 シェーンは絶句した後、俺に向き直ると綺麗に頭を下げた。

 なんだ急に!? ちょっと気持ち悪いぞ?

『神の貴石は神が関わってます。神殿に話が来た時点で、神に話が通ったと思われます。神がマスターの意志を優先し、二度も許可を出した事に対して、依り代の身、もしくは神官の身で、異論を口にした事になるのかと』

 ……ん、なんとなく分かった。

 つまり知らなかったから仕方がないけど、神が居る前で空気の読めない事を言ってるって事だな。


「それに、エドは神になるのも先延ばしにしてるくらいだぞ? 国王になんて興味があるはずがない」

「……神に至れるのか?」

「神がそういうのだからそうなんじゃないか?」

「……まあ、御方様と渡り合えたのだから当然か」


 その辺りの事は無視!

 特に今は、綺麗なオネェさんが怖いので、なりたいとは思えない!


「さって、バロン。スキルの確認とかは済んだか?」

「え!? あ、すみません。ステータスに呆然としてて、…………頭が回りませんでした……」

「そっか。あ、そうだ。ゴドー、バロンに生活料理1と料理人1を入れといて」

「入れなかったのか?」

「セリアだってレベル1からだしな。夏の国には関係ないし、普通に育てればいいんじゃないか?」


 分かったとゴドーはバロンにスキルを入れていく。


「……バロンは夏の国を変えられると思うか?」

「可能だろ。ただ、砂漠だけだ。紫霧に関しては話が別だぞ?」


 シェーンの問いに俺は自信を持って答えたが、最後は別の問題を口にする。

 紫霧がある場所は魔物が出る。

 霧なんて付いてる通り、紫色のモヤが出ている感じだが、地面だって、紫がかってる。

 そんな大地はたとえ結界を張っていても、結界内に魔物が突然誕生する。

 たぶん、それは神殿の結界でも同じなのだろう。紫霧の森や大地の近くに村はない。魔物が紫霧の場所から出て来て村を襲うとかではなく、紫霧はちょっとずつ範囲が広がるらしいので、村が呑まれる危険性を考えるとどうしてもそうなるのだろう。


 で・も・さ。

 そんな紫霧は、月4で売ってる『浄化』で消すことが出来るんだ。五十万はするが、そこは頑張ろうぜ。


「うむ……紫霧か……そうだな」


 難しい顔をするシェーンにバロン。


「でも、これで人が住める地が増えるのですね。我が主エド様」


 あっ! 戻ってる! さっきはただのエドさまだったのに!


「あのさ、バロン。せめて、我が主は無くしてくんね? 居心地が悪いというかなんというか。かゆくなってくるというか」

「……駄目ですか?」

「うん。止めてくれ」

「……かしこまりました」


 ……ねぇ、なんでそこでシューンとすんの? なんで(´・ω・`)(しょぼーん)とすんの? マジでワンコ属性か、お前は。


「そもそも俺は呼び捨てでも構わないんだけど?」

「それは駄目です! 私はエド様の奴隷ですから!!」


 今度は(`・ω・´)(シャキーン)としやがった。

 いっそ、幻覚魔法とかでしっぽと耳をつけてしまいたい!

『情報操作でバースト族に変えますか?』

 ちょっ! それはシャレにならんやつだから!


 シムのまさかの言葉に俺は即却下した。

 時折シムさんはぶっ込んでくるから油断が出来ない。

 あー、びっくりした。さて、気を取り直してっと。


「じゃあ、様付けでいいから我が主ってのは無しで」

「はい」


 さて、バロンの強化は終わったとして……。


「……ゴドーかシェーンにお願いがあるんだけど、ヌコが反省してるようだったら、生活魔法水のレベル5でも入れといて」

「いいのか?」

「本人が嫌がるのなら、無しでいいよ」


 二度も断ってくるのなら、そこまで面倒見る必要ないし。

 そう思っていたのだが、シェーンが意見があると軽く手を上げるというか、手首だけを動かして俺の注意を引いた。


「ヌコの言う気持ちは分かるぞ? なんの対価も無しに、などと、怪しんで当然では無いか? ここでは安いが、夏の国では高いからな」

「…………あー……まぁ、タダよりも高い物は無いって言葉もあるくらいだしなぁ。……対価ねぇ……。ヌコって狩りも出来る?」

「知らん」

「つかえねぇ」

「知るわけが無いだろう! 会って数日だぞ!?」


 思わず毒づいたら、声を荒げて抗議してきた。

 分かった分かったと宥めて、バロンを見る。


「すみません。私も知りません」

「そうか」

「そもそも、狩りが出来たらなんだと言うのだ?」

「ニアに一から全部見せようかな、と。変な教育の仕方されてるから。必要な殺生もあるんだぞ、と。まあ、ヌコが出来なくてもバロンにはやってもらおうと思ってるんだけど……狩りは?」

「出来ます」

「じゃあ、一人目はバロンとして……」


 二人目はセリアかなぁ。今のバロンなら、スキルになれれば、ニア(足手まとい)が居ても問題はないだろうし。渡したアクセもあるし。


「……タンガだっけ? 彼は?」

「……分かりません。……前の彼なら、動物くらいなら素手でも仕留められると思いますが……」


 顔をうつむけて言葉を濁した。

 前の彼、か。本来のでもなく、前か。バロンはもう彼が治らないと諦めてるのかもな。

 なぁ、シム。彼は治ると思うか?

『記憶を完全に消せば治ると思います』

 …………記憶消去か……。確かにそうなんだろうけど。


「……バロン、もし、タンガが原因となった盗賊達に一矢報いることが出来たら治ると思うか?」

「…………それは…………。分かりません。でも、真正面から立ち向かって勝てるのなら、可能性はあると思いますが、今のタンガにはそれ自体が無理です」


 ……まあ、そうなるよな。

 そうなるけど、さ。


「……有名な騎士だったんだろ?」

「タンガですか? それはもう。みんなの憧れでした」


 うん。ネーアやヌコが知ってたって事はそれだけ凄い人だったんだと思うんだ。

 だからかなぁ。なんか、放っておけないんだよなぁ。


 英雄になりたい少年が騎士を目指して、騎士になったその少年を見て、別の子供達が騎士を目指す。そんな感じだったんじゃないかって思うとさ。どっちの気持ちも分かるから、……子供達には幻滅して貰いたくないんだよなぁ。頑張って欲しいって思っちゃうんだよなぁ……。





ブクマが100を超えた。わーいわーい。

ありがとうございます。

これからもちょっとずつ頑張っていきます。

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