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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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簡単な計算です

すみません! 今回も短いです!



 さて。今度は転生者じゃないバロンならどうなるか、だ。


 ゴドーに着色を入れてもらいつつ、バロンに俺が持っている石を見せる。


「さて、セリアはあんな風にスキルを使ったが、俺はこんな風に着色してる」


 石を握りしめ、開いた時にはセリアが作った青いアクリルの塊のような石を見せる。


「バロンにはバロンにあったやり方で着色すればいいから」


 着色する前に戻してからバロンに渡す。

 バロンは受け取った者の、何故か途方にくれていた。


「……エド、その前に一ついいか?」

「ん? どうぞ?」

「君はセリアの着色の仕方に、突っ込みはないのか?」


 ゴドーに言われてセリアを見た。セリアも俺を見た。

 そして二人でゴドーを見る。


「魔法だから有りだろ」

「そうよ、魔法だからあれぐらい普通よ」

「君たちは魔法に夢を持ちすぎてはいないだろうか!?」


 ゴドーが悲痛な思いを乗せていってくる。。


「ゴドー、出来てる時点でなにを言っても無意味だと思うんだ」


 ゴドーは口を閉ざし黙った。

 実際出来ちゃってるわけだし、ねぇ?

 突っ込んだ所で、だよ。


「ニホンジンおかしい。絶対おかしい」

「まあ、実際この世界の人達は不利だと思うよ?」


 俺たちは色んな魔法に憧れてがあって、「魔法だったらなんでも出来る!」みたいな幻想もあって、ある種の思い込みがあるし、スキルの大元を作った存在と住んでた場所が一緒なのだから考え方的には有利なのだろう。

 それにこの世界の人達は、操作されている情報を思い込まされるわけだし。

 ……そういや、転生者にはそれらが効かないのか?

『効いてはいますが、前世の記憶、映像の方がより印象が強いのでしょう』

 なるほど。そうかもしれないな。

 実際セリアのあの動きは前世の何かのアニメか何かだろう。


「じゃあ、ゴドーには納得してもらえたって事で、バロン、どうぞ」

「え!? あ……あの、どうすれば、色を塗っていくスキルで色を抜いていくのですか?」

「……ん? いや、透明な色を塗ればいいじゃん?」

「透明な色……ですか?」


 そうそうと頷いたのだが、バロンの表情は未だ硬いまま。石をもったままピクリとも動かない。


「……透明が無理そうなら、あの、花のヤツををまねたらどうだ? 透明の部分は普通の緑でいいから」

「……は、はい。頑張ります」


 と、言葉では言っていたのだが……。表面を緑色にする事は出来たし、桜のマークが付くのはついたのだが、ヘイアンにはなっていない。たぶん、表面だけなのだろう。

 アスカと名前がついたあれは、ヘイアンがどうなっているのか分かりやすいと思うのだが、それでも無理なのか。


 十分経ったところで俺は止めた。

 バロンの顔色は悪い。


「すみません」

「いや、謝らなくていいよ。簡単にできないっていうのはなんとなく予想出来てたから。簡単にできるのならたぶん、今頃、一人か二人は作れるようになってるんじゃないかなって思うし」

「……すみません」

「……謝るなって。ってなわけで、セリア。あんまりぽんぽん売って価値下げるなよな?」

「……うん。なんだか、ぼったくりすぎて気がすすまないし、最終手段とするわ」

「そっか。じゃあ、悪い、ちょっと席を外してくれ」

「……分かった」


 一瞬何か言いたそうな顔をしたが、セリアは頷いて馬車から出て行く。

 周りに誰も居ないのを確認し、俺は改めてバロンを見た。


「さて、バロン、着色に関しては気にすんな。俺としては実験の一環だし、出来て当然なんて思ってないから」

「はい」

「で、本題だが」

「はい」


 落ち込んだ表情が一気に力を取り戻す。


「今からお前にスキルを入れるがその内容を明かすつもりはない」

「はい」

「おいっ!」


 頷いたバロンとは違い、シェーンは納得出来ないようだ。


「それが、お前に、お前の国を救うための力を授ける条件だ」

「はい。我が主エド様。私はそれで構いません」

 

 バロンがそう言えばもはやシェーンに何かをいう権利は無いのだろう。

 苦い顔で口を閉ざした。


「ゴドー、これをバロンに入れてくれ」


 メモを取り出してゴドーに渡す。ゴドーはそれを見て、眉を寄せた。

 そしてメモに矢印を書いてシェーンの名前を500という文字を書いた。


「え?」

「多すぎだ。気まぐれじゃ無いんだぞ?」


 どこか叱るようにゴドーは言う。そしてシェーンにメモを渡した後はバロンにスキルを入れていく。バロンは目を閉じて何も余計な情報を知らないようにしてくれているようだ。


「おい。これになんの意味があるんだ?」

「見てれば分かるよ」

「…………分かった」


 ゴドーはメモ通りにスキルを入れていって居るのだから、ここでごねても意味がないと思ったのだろう。シェーンも続けてスキルを入れていく。



 準備が終わったらバロンに目を開けて貰い、俺は向かいに座る。


「さて、『スキルコード60を使用』という言葉を意識して俺の質問に答えろ」

「は、はい!」


 聞きなれない言葉に戸惑いながらもバロンはしっかりと頷いた。


「1+1は?」

「……え?」

「1+1は?」

「え? ……2、ですか?」


 戸惑いのあまりにこれでいいのか、と不安そうだ。


「『スキルコード60を使用』、1+2は?」

「3、です」

「『スキルコード60を使用』、1+3は?」


 俺はただひたすら簡単な計算をさせる。バロンは戸惑いながらも答えた。

 そして


「『スキルコード60を使用』、1+9は?」

「10です」


 答えた瞬間、バロンの体は跳ねた。


「ひぃ、あ、うあ!?」


 自分の体を抱きしめて、バロンは突然の事に震えている。バロンのステータスを見て、俺はゴドーに告げる。

「ゴドー、バロンの中に入ってるスキル全部取って」

「全部か?」

「うん。一つ残らず」

「……わかった」


 ゴドーがスキルを取っていく横で、俺はスキル札を使い、レベル10のスキルを記入していく。

 ゴドーはマックスになったスキルは金に換えて、半端なレベルの物はスキル玉として、俺に差し出してきた。

 俺はスキル玉だけを受け取った。


「またスキル売ってもらうことになるかもしれないから」

「……わかった」


 今回のようにメモでのやりとりのことを考えるとその場で渡すよりも先に渡しておいた方が楽である。


 俺は落ち着いたものの戸惑いの顔を向けるバロンにスキル札を握らせる。


「スキル譲渡発動」


 スキル札に封じ込められていたスキルがバロンの中に入っていく。


「さて、バロン。今ならお前は自分のステータスを確認できるはずだ。確認してみろ」

「はい。『調べる』発動」


 バロンは素直にそう唱えて自分のステータスを見る。一拍の間があったのちに、目も口もぽかんと開けた。


 バロンに入れたスキルは情報処理が百。冷静と平常心が十ずつ、そして、算術が千五百。

 前三つは補助であり、保険である。

 メインはもちろん、算術。

 算術のステータスボーナスは「全ステータス+1」である。


 つまり、バロンは、ステータスがカンストしたのである。





明日はもうちょっと頑張りたいです~。


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