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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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着色といえば。



 偽りの真が壊された。国王達が俺を調べたのか、たまたま俺がひっかかったのかは分からない。

 でも、もし俺を調べたというのなら、調べる理由が今のところみんなが「神の貴石」と呼ぶヤヨイ・ヘイアンシリーズしかない。

 誕生日会(違ったけど)という事と、領主に頼まれた事もあってお茶会に参加した時に、ばっちり、国王からスキルを盗み見されていた。

 それはもちろん隠ぺいされたスキル内容だったけど、そのスキル内容であれば、両シリーズは作れる。

 ---はずなんだけど、あれからまだ誰も作れてないみたいなんだよねぇ。

 おっかしいなぁ。


 ちなみに国とのやりとりはゴドーが請け負ってくれてたんだけど、なんで誕生日会って嘘をついたかっていうと、国王と会わせたかったのが一番の理由らしい。お互いに会って話をすれば、ある程度は俺の人物像も分かるし、トップに会ったのだから下の者に会う理由もない。だからお互いを引き合わせたかったらしいのだが、かといって俺の功績を称えるパーティーだと俺が嫌がる。

 だから主役が俺じゃないパーティーなら、俺の重い腰も軽くなるのでは? と思ったらしい。その通りだけど。

 わざわざ嘘をつかなくても、本物の誕生日会に行けば良かったのでは? と思ったけど、それはすぐにもっと面倒な事になる事も気づいた。だって、王室の誕生日会って事は来客も半端なくいるって事だからな。

 まあ、そんな話はおいといて。


「セリアとゴドーだけ残って貰って、バロンとシェーンを代わりに連れてきて貰える?」

「はい、分かりました」


 ネーアは頷いて、ニアを連れて外に出る。


「エド、『着色』ってまさか」

「うん。そのまさか。先にセリアに入れて貰ってもいい? こっちは代金。バロンのも含めてその他諸々色々あるだろうから先に預かってて」

「お前がそれでいいといいのなら構わないが……。レベル3か?」

「いや、もう5まで入れちゃって」


 余り腑に落ちないようだが、ゴドーはそう言って金を受け取り、着色スキルを入れていく。


「あ、ついでに生活料理と、料理人もお願い。こっちはレベル1でいいや」

「分かった」


 ゴドーがセリアにスキルを渡してる間、俺は窓から見える範囲にある、程よい大きさの石を引っ越しで手元に移動させ、清潔を使い綺麗にする。


「我が主エド様! お呼びでしょうか!」


 アルフ族のワンコが駆け寄ってきて、それでも馬車の扉前で立ち止まり礼を取る。


「……とりあえず、中に入ってそっち座って」

「はい! 失礼します!」


 俺が示した場所、セリアの隣にバロンは座る。


「セリア、着色の効果は分かったか?」

「うん」

「じゃあ、これ、透明にしてくれ」

「透明に?」

「ああ、なんだったら、ガラスコップみたいに、青とか緑とか付けてもいいぞ。透明であればいいから」

「ふーん。分かった。やってみる」


 渡された石を見て、セリアはそう安請け合いし、ゴドーは結果が気になるのだろう。食い入るように見ている。

 バロンもそんなゴトーの様子を見て、不思議そうにセリアの方を見た。

 セリアはみんなが見てる事に気づいていないのか、膝に石を置くと、人差し指をたてて、くるくる回す。それを見て、スティックを渡した方がそれっぽいかな。と思った所で、えいっとセリアは石に向かって人差し指を動かした。


 ポンッ。と音をたてて、その石は透き通る青を持った綺麗な石になった。

 

俺はにやりと笑い、ゴドーは天を仰いでいた。


「んじゃさ、これは金太郎飴みたいに着色してくれないか? 模様はそうだな。桜」

「いいけど」


 セリアはなんの疑問を浮かべる事なく、新しい石を受け取ると、同じ動作をし、最後に魔法をかける。

 すると、ポンッ。と音をたてて、出来上がったのは、透明な緑色の石の中に、桜模様が反対まで続く、ヤヨイとヘイアンを足したようなものになっていた。

 まあ、この場合は高い方のヤヨイでいいか。

 本当は新しいシリーズ名を作りたいところだが、そうすると神の貴石じゃなくなっちゃうから安くなるだろう。


「んじゃ、今度はそれの桜の縁を蛍光塗料で塗ってくれ」

「えー? 蛍光塗料なんてぬったら可愛くなくない?」

「塗れるかどうかの実験だから可愛くなくてもいいんだよ」

「……分かった」


 ぼんっとさっきよりもちょっとやる気のない音が響き、桜のラインは確かに蛍光塗料で色付けされていた。細い線だったが、暗闇で光るのだから問題はない。


「おー、出来てる出来てる」

「で? これ、結局なんの実験?」

「そうだな。お、ちょうどいいや、シェーン、これ、鑑定してくれないか?」


 のんびりとやってきたシェーンを手招きし、セリアが作った二つの石を差し出す。


「鑑定? オレは鑑定士などでは無いぞ?」


 空いているスペース、床に腰を下ろし、それでも石を受け取り、感情のまま睨み付ける。

 そして、その目が大きく見開いた。


「こ、これは!! 神が認めた宝石ではないか!!」

「「えぇ!?」」

「おおおぉぉぉ!! こんなところにあるとは! なんと素晴らしい!! この美しく透き通る様な青も素晴らしいが、この花が描かれた物もまた素晴らしい! しかも、アスカという新シリーズの名前だ!」


 え? そうなの?

 慌てて鑑定すると確かにシリーズ名はアスカになっていた。


「これはご神託にはなかったが、神が認めし物には間違いない! これをいったいどこで!?」


 熱の籠もった目が俺に向けられて、俺はそれを流すようにセリアを見た。

 釣られてシェーンもセリアを見ているだろう。

 いや、正直、全員がセリアを見ていた。

 そして当のセリアは唇が震えていて、まぶたもかなりパチパチと動いている。


「え? え? え? え? え、待って。え? エド、つまり、え?」

「ちなみに神官は神の貴石については、本物か偽物か分かるらしいぞ。なんせ『神がお認めになったもの』だからな」

「えー…………」


 セリアは自分が作った石を見て、また疑問の多そうな「えー…………」を口にした。


「ちなみに、透明な方は今なら最低で12万」

「12万!?」

「蛍光塗料入りは、ヤヨイの夜光と同じ扱いなら1500万だな」

「せン!? え!? あれが!?」

「そうあれが」

「え!? 馬鹿じゃないの!? あんな簡単なものにそんな大金出すわけ!?」

「そーだよな! そう思っちゃうよな!! 今ならあれ、『神の貴石』って付加価値が付いてるからいいけど、それが付く前、ただの石ッコロですけど!? って俺も思ったもんよ!!」


 セリアの勢いに後押しされるように俺も力強く同意する。

 そこに待ったをかけるのはゴドー……ではなく、シェーンだった。


「……つまり、これはそこのオナゴが作ったってことか?」

「そうだ。そしてきちんと名前を呼べ」


 ゴドーの注意にシェーンは一度頷いた後、俺を見た。


「で……、神の貴石という偉業をなしたのは、そこにいるエド、というわけか?」

「そうだ」

「……なるほど、それだけの功績があったからこそ、あの方が助けに来た訳か」

「全然違う」


 ゴドーは感心を寄せたシェーンの言葉をあっさりとうち捨てた。


「私と私の上司の神殿長がエドにスキルの売買に口出しをした。だからその詫びで、それを魔法石と認めたのだ。本人が安物なのに高く売れたのを気にしていたからな」

「……なるほど、上官に恵まれなかったのはどこも一緒か」


 シェーンは手の中の二つの神の貴石を包むように持ち、見つめている。

 よっぽど気に入ったらしい。俺も思ったが、どうやらセリアも思ったようだ。


「あー……それ、欲しいならあげるけど」


 セリアの言葉にシェーンの耳としっぽが大きく立ち上がる。


「い、いいのか!?」

「う、うん」

「ほ、本当にいいのか!?」

「うん。どうぞ」

「一度もらったら、返せと言われても返さんぞ!?」

「うん。言わないから、どうぞ」

「おおおぉぉぉ! ありがとう!! セリア殿は良いやつだ!!」

「ど、どうも……」


 あまりの反応にセリアは驚いているというか戸惑っている。

 俺もそうだったけど、俺たちにとってはなんでそこまで、っていう反応になるんだよなぁ。

 っていうかオナゴから一気にセリア殿か。俺、呼び捨てだったのに。


「でも、新シリーズか……。アスカっていうのは、前のセリアの言葉を聞いてなのかな?」

「ああ、そうだろうな」

「プラネタリウムが新シリーズにならなかったのは、やっぱり透明じゃないから?」


 元々詫びにといって認めて貰ったからプラネタリウムが新シリーズにならなかったのにはなんの疑問はなかったのだが、新しいシリーズが出来たというのならその理由はちょっと気になる。


「いや、あれはもう完全に別物だろう。それに今認めてしまうとまたエドに迷惑がかかる」

「ああ」


 それが大きな理由なのかな?

 セリアが首を傾げて質問してくる。


「プラネタリウムって?」

「んー、ちょっと前に作ったやつで、ゴドー今持ってる?」

「ああ」


 ゴドーは懐から魔法袋を出して、桐箱のような箱を取り出した。

 ……思ったよりも大事にされてるみたいなんですが……。


 ゴドーが何故かドヤ顔で箱を開ける。

 そこには真っ白な緩衝材用の布に包まった真っ黒な石があった。俺は馬車の窓に闇魔法を軽くかけ薄暗くすると石の変化が綺麗に見えた。

 星が瞬き、流れ、オーロラが踊る。場合によっては星雲だって出る。

 小さな石の中で色んな夜空が彩られる。


「うわ……なにこれ。綺麗……。エド、どうせならこれ教えてよ!」

「着色だけじゃ無理」

「そ、そんなぁ~。えー、作るの難しいの!?」

「簡単ではないな。面倒だから、二個しか作ってない」

「二個!? って事はもう一個は?」

「もうないよ誕生日プレゼントにって渡した」

「アタシにも頂戴!」

「オレも!!」

「あ、あの私も欲しいです」


 名乗りを上げる三名。

 ゴドーは終わりとばかりにそそくさと蓋をして仕舞っていた。


「……あのさ、俺面倒だって言わなかった?」

「誕生日プレゼント! アタシも誕生日プレゼントならいいでしょ!?」

「オレもそれで!!」

「…………」


 お。バロンは諦めたらしい。立場の違いか?


「……気が向いたらな」

「約束だからね!」

「頼むぞ!!」

「はいはい」


 意気込む二人を軽く受け流す。

 …………それにしてもあんなドヤ顔のゴドー、初めて見た。

 っていうかゴドーが持ってた事に驚きだ。

 ゴドーと目が合うと、先ほどのドヤ顔がどこへ行ったのか急にきょどりだした。


「ま、前のは神に献上したのだ、今度のこれは私が持っててもいいだろ!?」

「いや、別に責めたわけじゃないし、持っててくれて全然構わないんだけど。っていうか神にじゃなくてゴドーにあげたわけだし」


 そういうとゴドーはあからさまにほっとしていた。

 ……もしかして、催促でもされてたのだろうか……。




……あれ? 話が進んでない……。

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