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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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目が覚めたら。

最近、R15が念のためじゃなくなってきたな。と本気で思う毎日。



 目を開けると目の前には見知らぬ天井。

 思わず飛び起きた。


「うわ!? エド!? 起きたの!? 大丈夫!?」

「セリア……、あれ? ここ」


 咄嗟に飛び起きたが、セリアが居て少し安心し、周りの様子を見ることが出来た。ここは……。


「馬車の中よ」


 呆れた声でセリアが場所を教えてくれた。

 うん。確かに俺が改造した馬車の一室だ。


「ついでに、街道沿いでキャンプしてるところよ。エドがぶっ倒れちゃったから。王都に行こうかって話も出たんだけど、エドが言ってた三日目までは待ってみようってなったの。もしもの場合、使う術によっては、人が居ない方がいいっていって。もう、どんな無茶したのか知らないけど、みんな心配したんだからね! もう二度としないでよ!」

「ああ」


 頷くとゴドーを呼んでくると、セリアは仮眠室から出て行く。

 そう、仮眠室である。

 馬車に異空間を接続し、仮眠室三つと、キッチン、トイレ、シャワーを作った。

 仮眠室は乗り物酔いとかした人の為にと作ったのだが、まさか最初に俺が使うことになるとは……。


 シム、俺が倒れてから何かあった? どれくらい寝てた?

『ほぼ、丸一日寝ておりました。あと、何かの魔道具による影響で、『偽りの真』が一つ破壊されました』

 一日で済んだのか。それは意外で、ありがたいが、魔道具で破壊とは一体どういうことだ?

『『真実の瞳』が使われたようです。その影響で、『真実の瞳』と『偽りの真』が相殺しあい、スキルが破壊されました』

 え? ちょっと待った。あれって、破壊されるようなスキルだったか?

 確か、スキル所有者のステータスによって、突破出来るか出来ないかだったと……。

『はい。しかし、魔道具に付与されたスキルはそういうわけにはいきません。ですので『真実の瞳』を防ぐことの出来るレベル10の『偽りの真』が相手の場合、自爆する事により相手の『偽りの真』を破壊し、真実をさらけだすという性質を持ってます』


 なにその神風特攻性質!


 呆れればいいのか、感心すればいいのか……。


 破壊されたのは、一つなんだよな?

『はい。魔道具を使った者は春の国の王と宰相であることも確認済みです』

 うわ、よりにもよって!

 それ、国宝だったりしないよな?

『その可能性はありますが、マスターの事を調べたのです。それぐらいの痛手を負って貰わなくては』

 ……俺の事を調べたのか? 神の貴石か?

『分かりません。マスターの事を調べたのか、それともたまたま調べようとした内容にマスターがひっかかったのかは分かりませんが、マスターが気にすべきことではないかと』

 ……そ……。

 そういうとこ、クールだよな、お前。

 おどおどすんのは俺だけか。

『では、マスターは壊れた魔道具を修理しにいくのですか?』

 ……………………ないな。

『はい。わざわざ自ら目立つことはしなくていいと思います』

 じゃあ、放置って事で。

 面倒さが勝って俺はそう結論を出した。


 そして、仮眠室から出る。短い廊下を歩くと、突き当たりに扉が一つ。これが出入り口だ。馬車側はマジックミラーとなっているので、馬車側に知らないヤツがいないか確認も出来る。

 もちろん、喩え仕掛け扉だと気づいても、俺が設定した人しかこの扉は開けられない。それぐらいはいくら俺でもするよ、うん。


 馬車側で鏡が壊されると、俺の家の扉に繋がる。そっちも壊されていたら、近くの神殿に繋がるように設定してある。

 安全設定もばっちりだ!


 今は普通に馬車に繋がっていて、馬車の中に出るとゴドーが出入り口から入ってきて、俺を見て胸をなで下ろしていた。


「大丈夫か?」

「うん。大丈夫、ご迷惑をおかけしました」

「いや。……エドにしかきっと止められなかった。ありがとう」

「……お礼言われると変な感じだなぁ」


 セリアの時の様に怒られる方がまだましな気がする。

 そんな俺の心境を感じているのかゴドーは苦笑を一つした後、話を変えた。


「お腹は空いているか? お昼が残っているんだが」

「え? わざわざ残しててくれたの!?」


 俺、いつ起きるか分からなかっただろうに。すげぇ嬉しい!


 って、思ったのに。ゴドーの目が泳いだ。


「残したというか……残った……というか」

「ゴドー?」

「空腹は最高の調味料というし」

「…………オゥケイ。全てを理解したよ」


 不味かったんだな。そして残ったんだな。そしてそれを病人(違う)に喰え、と。


「なんというか、大味なんだ。不味いというほど不味くは無いんだけど、美味しいとも言えない、みたいな。ぼやけた味というか」

「いや、もういいです。あまり言わないでくれ。食べる気力なくすから」

「ああ、すまない」


 食べる前からげっそりし始めた俺に気づいてゴドーは謝りそれから真剣な顔をする。


「ただ、どれだけ不味くても怒るような事は止めてくれ」

「へ?」


 食べただけで怒り出しそうなくらいな味なの? 何も苦労も手間もかけてない身で食べるのに文句なんてそうそう言わないと思うけど。


「作ったのはバースト族の男性で、タンガというのだが、盗賊に捕まっている間に相当酷い目に遭ったらしくて、ヒューモ族の男性を特に恐れているようなんだ。ネーアの話を聞くと、とても有名な騎士だったらしいんだが、見る影もないそうだ」

「……そんなに?」

「ああ」

「バッキバッキに心を折ったみたいだよ」


 料理を持ってやってきたセリアがそう告げる。


「念のため、中で食べて」

「へ?」

「ちょっとでも顔をしかめるとたぶん土下座して謝ってくるから」

「そんなに!?」


 思わず聞き返したら、セリアもゴドーもこくりと真剣に頷いた。


 マジかよ!


 仕方が無いと馬車のソファーに座り皿を受け取る。

 セリアとゴドーもソファーに座った。


「あー……新規の人に対する注意事項が他にあったら教えて。食べながら聞く」


 スプーンで具材たっぷりのスープを掬いながらお願いをする。

 一口、口に入れて、念には念を入れていた理由が分かった。

 なんつーか。うん。味がねぇ。いや、味はあるんだけど。うま味が一切無い?

 これ、一口目食べた時、眉すら寄せるなっていうのは無理だワ、うん。なんだこれって思わず眉が寄る。


「うーん、まず、さっき話の出てたタンガさんにはなるべく近寄らない方がいいんじゃないかな? 用事があるのなら、ネーア達に頼む方がいいと思う。アタシが近づいても震えるし、ゴドーの場合は顔まで真っ青でいつ倒れてもおかしくないってくらい」

「神官のゴドーでも駄目なのか?」

「ヒューモ族って時点で駄目なようだ」


 まじかぁ……。どんだけ酷い目にあったんだか。

『漏れ聞こえてきた話を総合するに、徹底的に、実力の差を分からせた後、慰み者にしたようです』

 ……は?

『顔の良いアルフ族、バースト族は娼館に売るために手を出さず、秋の国や冬の国に肉体労働役の奴隷として売る者達は、武器もスキルもありの状態で、一対一で闘い、回復させながら何度も闘い、打ち負かし、絶対に勝てないとすり込ませた後に、性のはけ口にしたようです。バースト族には同性間でこのような行為をする習慣はありません。雄としての尊厳も誇りも何もかもをたたき壊し、粉じんとし、彼らの牙と爪を折ったのでしょう』

 …………ゲスいなぁ…………。

『ヒューモ族は同族には甘く、他種族を見下す者も多く居ます』

 まぁ、短命種を劣等種として見下す風潮もあるから、それと同じようなもんって考えたらそうなんだろうけど……。

 シム。そいつらの補足はまだ出来てるんだよな?

『もちろんですマスター。『情報操作』および『悪天候魔法』を使用し、彼らが狩り(・・)に行かないように仕向けてもいます。備蓄した食料から考えても一週間は動かないでしょう』

 彼らの他に売られた人達は?

『別の馬車で移送中です。個体名バロンの様に病魔に冒された者はいないので、すぐに命がどうのという事はないでしょう』

 そうか。

 ところでシム。漏れ聞いた話を総合しただけで、こんなに分かるのか?

 

 どう考えても、ここでされた会話だけじゃねぇよな。その情報。


『マスターが気絶している間暇でしたので、色々情報を収集しました』

 そう……。

『その上で、まだ推測でしかないのですが、どうやら今度の事件は、お家騒動も混じっているようです』

 ん? どういう意味?

『マスターもお気づきのように個体名バロンは夏の国の第三王子です』

 そうだね。


 びっくりしたけどね、そうなんだよね。

 隠ぺいされてけど。夏の国の第三王子って職業に載ってるの見た時は驚いたぁー。

 ……神官といい、王子といい、隠ぺいされすぎじゃね?


『はい、今回隠ぺいされていなければ、いくら盗賊達とは言え、襲わなかったはずです。国際問題は夏の国の騎士団ではなく、春の国の騎士団が動く可能性があるからです』

 夏の国の騎士団なら相手にならないって事?

『実際彼らは相手になりませんでした。タンガは夏の国の五本指に入る実力者です』

 マジか。

『スキルは全てMPが使われます。今の夏の国の住人では、スキルをまともに発動させる事も難しくなってます』

 そんなに低いのか!?

『ネーアの初期値、MP20は平均的数値となります』

 MP20って事は、下級すら無理じゃん。初級のみか?

『それらはそのMPを全て、物理攻撃が効きにくい敵のために、初級魔法用に使われています。MPが無いからと彼らは普段使用しません』

 って、事はスキルが育たなくて、ステータスも育たないって事じゃないか。悪循環とまではいかないが、あまりよろしくない環境だなぁ。

『そもそも私達『システム』からすれば、彼らは種として劣悪になるための事しかしていないという認識です』

 ……えーと、シムさん、怒ってます?

『怒ってはいません。武神に対しては一言申したい気もしますが怒ってはいません』

 怒ってる怒ってるってコレ。


『話は戻しますが』

 はい、戻してください。

『神殿側は、個体名シェーンは停職とし、神官スキルの封印。そして、その職業も隠ぺいしていました。コレは異例です。わざわざ隠ぺいする理由が分かりません』

 ちょっと待った。そういや、停職ってどういう事だ? そんな事になるような事をしでかしたの? 神の依り代が?

『失礼いたしました。個体名シェーンは気まぐれスキル販売担当だったそうです。再三の注意を受けながらも気まぐれスキルに水系のスキルを入れていた事により処罰を受けたそうです』

 それはまた……。

『たくさん売れたようですが、同時にたくさん売られたようです』

 ……ですよね。


『そのため、奥地にある神殿へと左遷になったようです』

 オケオケ。理解した。続けて。

『左遷となった個体名シェーンの護衛として同行していた個体名バロンの職業も隠ぺいされていました。本人達は確かに自分たちを救うために処罰を受けた個体名シェーンに対し、恩を返したいという事で、身分を伏せて護衛となったそうです。そうする事で神殿と国は対立しないと、アピールするためだと言ってましたが、わざわざ隠ぺいまでする必要はありません。それに、彼らが通るルートは指定されていたそうです』

 ……なーんか、きな臭いねぇ。

『さらに補足するのであれば、今一番、王位に近い人物は個体名バロンです』

 ………………つまり、盗賊の仕業って事にして消しちゃおうって事だったって事か?

『その可能性が非常に高いです。もっともヒューモ族の盗賊はそう簡単に殺しません。殺すよりも生かして捕まえた方が金になるからです。その点はリサーチ不足だったのでしょう』

 不幸中の幸いっていうか、殺されてたらどうなってた事か。

 っていうか、うん、駄目だ。俺の中でヒューモ族の株がドンドン下がってく……。

『マスターの大好きな人達もヒューモ族です。あくまで一部と考えてください』

 いや、分かってるんだけどね。

 

 ……俺ヒューモ族で生まれて正解だったかも。

 じゃないと今頃、武神様と同じ事してたかも……。

『その場合は全力でサポートします』


 そこは全力で止めてくれ!!


 そんなこんなのやりとりを俺とシムはスプーン三杯分、食べる時間で行うのであった。

 


 



切りがいいのかはわかりませんが、今日はここまでで。


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