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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
38/143

????の視点 -1-

短いです。



 とある一室に彼らは居た。


「やれやれ、やっと落ち着いてきたか」

「今年は神の貴石の事もあるからな。皆しつこかった」

「全くだ」


 執務室と思われる場所に、一人は座り、一人は机を挟んで立っている。


「兄者はまだいい。竜の一声で黙らせられる。俺なんて、威信がどうの、名誉だの誉れだのとしつこいのなんの。もっとも兄者が制作者の言葉を伝えたらピタリと止んだが」

「そうだろうな。かの者の言葉を聞いてそれでもまだ威厳とやらを見せつけようとするのは馬鹿のすることだ」

「神殿側は完全に制作者の味方。……何を聞いても何も知らぬ存ぜぬらしい。たいそうグチってた」


 しつこい。面倒と言いながらも、そんな彼らを黙らせる言葉をさっさと口にしなかったのは、誰がどれぐらい知っているのか、やりとりや仕草、行動で推測するためだった。


「もしかしたら、あの神官以外知らぬのではないか?」


 兄はふと思いついた事を口にしてみる。


「そんな事ありないだろ。上層部くらいは知ってるはずだ」

「それはそうなのだが」


 どこか腑に落ちないと言った様子だ。


「そもそも、俺にはあの神官がただの神官という事からして信じられん」

「ああ、それに関しては我も一緒だな。久しく見た。神の寵児だろ」


 二人は何かを思い出したのか顔に浮かぶのは恐れに思える。


「噂も彼が操っていると思うか?」

「彼以外にはやれんだろ。かの者にはやれそうなスキルは何一つなかった」

「ああ、そうか……。しかし、なんかこう、不満が溜まるとは思わぬか、兄者よ。これだけの偉業を成し得ているのに」

「気持ちは分かるが本人が嫌がっている以上何も出来ん」

「それは、そうだが……」


 弟は不満を顔に出す。兄はそれ以上追求する事はしなかった。

 むしろ別の疑問が頭をもたげる。


「……お前は、かの者をどう思う?」

「神官の方か?」

「いや、制作者の方だ」

「ふーむ。分からん! 強いとは思えぬが、でも、『影』を退けたのは事実。おかげで、何も出来ん」

「守る対象より弱い護衛というのも、笑い話ゆえな」

「あれ以上となると、今度は兄者達の守りが薄くなる。流石に出来ん」

「しかしかの者以外、神の貴石を作れぬのも事実。替えの効く我よりも、かの者の方が大事とも取れるぞ」

「そんなわけあるか! スキルさえ分かればどうにでもなる」

「そうだな。……そのはずなのだが……本当にそうなのであろうか」

「兄者?」

「あの者のスキルを覚えているか?」


 兄に問われ弟は腕を組む。いくつかはスラスラ出てくるがいくつかは怪しいのがあった。


「着色、加工、上級魔法に拳術、蹴術、あと……剣術もだったか? それから、……鑑定、調べる。……あとは……」

「空気イス、循環、かく、算術、午前・午後の両加護に、生活魔法に平常心、異次元収納と耐性(強)の計十八だ」

「うむ、それらが全てレベル5であった」

「……この中で神の貴石に必要と思われるのは?」

「加工だろう?」

「そうだな。念のために、着色とかくも持たせてはいるが、果たしてそれで作れるのであろうか?」

「加工の使い方が分からないから兄者は不安になってしまうのだ。心配せずともそのうち分かる。問題はない」


 弟はそういうが、兄の方はどうしてもそう思えなかったのだ。

 スキルのレベルは全て5。つまり神殿で5に買い換えたのだろう。

 今のかの者は十二分に金がある。太陽クラスでもなんら問題ないくらいに。

 実際に、鑑定は売り上げで買ったという話をしていたらしい。

 ならばなぜ、武人の心得や悪魔の目などが無いのか。そもそも自分の優位性を考えるのならば、隠ぺいを買うべきでは無いのか。

 



兄は数ヶ月前の事を思い出す。

 

『『ヤヨイ』シリーズおよび、『ヘイアン』シリーズの一部を宝石と神が承認しました。

 『ヤヨイ』シリーズ・『夜光』を魔法石もしくは魔術貴石と神が承認しました。』


 突然脳裏に直接言葉が響いたあの日。

 誰もがみな全てを忘れ、天を仰いだ。


 神の言葉だ、と理解するのに数秒かかった。

 そしてそれが自分一人だけなのか、皆なのかが気になった。


 見合わせる顔は全て、感情が消えたような顔だった。驚きすぎて。

 そんな顔がいくつも並び、信じ切れぬ心が期待に変わり、そして、歓喜した。


 その後少し落ち着けば、浮かんだ疑問は、誰がこのような世紀の偉業を成し得たかだった。

 なんの情報もなかった。

 もちろん神殿にも問い合わせたが、知らぬ存ぜぬでなんの情報も入ってこない。

 その者を守るために口を閉ざしたのだろう。そうなると自分たちで調べるしかない。


 神の声が届いたのが春の国だけなのか、それとも他国もなのか、まずはその確認を行った。

 他国にも届いたと知るのにはそう時間はかからなかった。しかし、三日経っても名乗りを上げるものは居なかったし、神殿からも何も無かった。

 いや、名乗りを上げる者達はいた。 居たのだが、それは本物の魔法石であっても、神が認めた魔法石ではなかった。

 偽物と言わざる得ない。

 本来であれば、詐欺と罰せねばならぬが、悪質でないもの以外は温情を与えられた。

 騙すというよりも、そうであって欲しいという願いの方が強かったからだ。

 それだけ、今回の事が皆に衝撃を与えたのだろう。


 十日も経つと皆に落胆の色が見え始めた。

 何も情報が入ってこないという事は、春の国の住人ではないのだろうと。

 兄も弟も残念に思い初めながらも日々の業務をこなしていると一つの面会希望の種類が回ってきた。

 それは意外な人物だった。仲が悪いわけでもない。かといって非常に仲が良いかといえば、そういうわけでもない。派閥を持つ者と中立の立場の者と、パーティーで会えば互いを気遣い談笑するその程度の知己。

 そんな者からの面会要請に初めは首を傾げたが、諦め切れない心が、もしかしたら、という希望を浮かび上がらせた。

 期待しすぎはいけないと兄は自分の心を諫めた。その横で弟も同じ心境であった事を知らずに。


 しかしそのまさかだった。


 彼は一人の商人を連れていた。領地内で一番大きな宝石商を営んでいるという紹介から始まった。

 テーブルに並べられるのは、本物の神の貴石。

 今までに類の無い宝石。

 まるでその瞬間を水晶に閉じ込めたかのような石。

 淡く闇夜で光る石。

 なんの汚れすらない透明な石。

 素晴らしいと立場も忘れて彼らははしゃいだ。


 そして彼らは知る。制作者がこの国の者である事を。短命種である事を。


 それからの彼らの行動は早かった。


 まず護衛を付ける事にした。

 次に爵位を授ける事にした。

 その次に祝うための式典とパレードを行う事にした。


 彼らは疑わなかった。

 喜ばないはずが無いと。


 護衛は翌日、簀巻きとなって騎士隊の宿舎前に転がされた。

 爵位は辞退。式典やパレードは拒否。

 神殿から返ってきた返答に彼らはみな戸惑った。

 そんなはずはないともう一度、神殿に問い合わせた。


 翌日、一人の神官が彼らの前に姿を現した。


「初めまして皆様。私の名前はゴドー。神の貴石の制作者の相談役をしているしがない神官です」


 微笑みと共にその神官はそう言った。

 王を前にして、臣民の礼を取るわけでも無く、悠然たる態度で。



 


 





一応、本編に関係ある……かな?

な、感じな話です。


タイムオーバーという事で、いったんここで上げます。

短くてごめんなさい。

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