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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
32/143

朝市とスマイル

読み返す時間がなかった。後で修正がはいるかもしれません。



「そうだエド」


 転生者二人でいじけているというか、ふてくされているかやさぐれているとゴドーが思い出したとばかりに声をかけてくる。


「今日はちょっと夜は神殿の方に行きたいのだが、出発は」

「急ぎって訳じゃ無いから、明日以降で全然問題ないよ?」


 そう告げるとほっとした表情が返ってきた。


「では、延泊の手続きをしてくる」

「あ、金」

「こちらの都合だから私が出そう」


 そう言って降りていってしまった。

 同じ言葉を使って昨日は俺が出したので、さすがに止められない。

 むしろ、おんぶにだっこ状態なセリア達の方が辛そうだ。

 二人は顔を見合わせて、頑張ろうとお互いに誓い合っている。


「ああ、疲れたら循環スキルを使うといいよ。ちょっとは楽になるだろうし。MPが足りなくなったら昨日のMPポーション飲んでも良いから。ネーアも、MPポーションをもったいないって思うんじゃなくて、時間の方を持ったないって思ってくれ」

「は、はいっ!」


 本人も自覚があったのかもしれない。

 ネーアは結局マックスになっているものはなかった。

 全体的に熟練度を稼いではいたがそれでも少なかったのは遠慮したのだろう。

 ネーアは少し迷った用だが小さく頷いていた。


 まああとで出かける前にゴドーに、遠慮してるようなら使うように言っておこう。


 そうして俺たちは別れてそれぞれの仕事へと向かっていった。


 ---ん、だけど。


 俺は昨日からシムがひっそりと準備してくれてたし、作業の内容によっては人に見られたくなかったので、時間を止めたりしてやったりしてたせいで、二時間くらいで終わってしまった。

 さて、どうしようか。


『マスター。神殿に行き気まぐれスキルを購入する事を提案します』

 何故? もう神殿で買う必要ないとか前に言ってたのシムじゃん。

『スキル付与したアイテムを他者に貸すのであれば、断捨離やスキル図鑑は適していません。レベル10から別のレベル10へと変換するだけなので、増殖が作用しないので』

 …………まだ増やす気か……。

『昨日減りました』

 微々たるもんだろ!?

『それにセルキーの神殿はクパンの神殿と違い数の少ない耐性系が出るので是非とも獲得したいです』

 ああ。確かにそれは必要だもんな。

 あれはあると便利だ。


 ああいうのは有って困るものではない。と考えを改めて神殿へと向かう。

 セルキーはクパンよりも大きいのでクパンの神殿よりも人は多い。

 でも、やっぱり、ここは暇してんのね。


「どうも」

「……おや、どうも」


 一瞬誰だっていう顔したけど思い出したようだ。

 俺はカウンターに座り、目の前の男性を見る。

 やっぱりちょっと日本人っぽい顔立ちしてるよなぁ。


「……日本って場所知ってます?」

「ニフォン?」


 しばし考えたようだったが首を横に振られた。


「そう、ですか」

「その場所がどうかしたのかい?」

「いえ、なんとなく、お兄さんはそっちの出身なのかなって思って」

「残念ながら違うね」

「みたいですね。気まぐれスキル買っても良いですか?」

「分かりました」


 久しぶりに見た賽銭箱。年末に引いたっきりだなぁ。

 普通の人はほとんど引かないらしいけど。

 で? シム。何回分引く?

『あまり育てるのに時間をかけたくないので、千でお願いします』

 りょーかい。


 金を取り出しじゃらじゃらと入れていく。


「え? あの……?」


 戸惑う神官さんを無視して俺は金を入れまくり、そして右手を突っ込む。

 ぎゅっと掴んで抜き出した。

 おみくじ達は勝手に淡い光を灯したと思うとするりするりと俺の中にスキルが入ってくる。


「じゃあ、お兄さんありがとうございました」


 ぽかんとするお兄さんを置いてきぼりにして俺はその場を後にする。

 さて、シム。どうだ?


『耐性は多くありました。しかし補助スキル系はありませんでした』

 そっか。なら買って帰るか。

『ぜひお願いします』


 補助魔法の初級、『補助魔法(防御)』スキルを十個ほど買って俺は神殿を後にする。


 さって、みんなと合流でもしようかねぇ~。


 鼻歌交じりに店の方に行ってみたら……。何、この人垣。


「ありがとーございまーすぅ」

「ありがとうございます。またお越しください」

「こちらはおつりになります。日持ちしないのなるべく早めに食べてください」


 笑顔を振りまく美人軍団。

 人垣に足を止めたおっちゃんが、そのスマイル0円にやられて買うために人垣の一部となった。


 三人の壁の後ろではセリアが金を受け取ってはおつりを渡す。というのを繰り返している。

 その表情は余裕がないのか、鬼気迫るものがあった。

 ……一応、女の子なんだからもうちょっと気を遣え……。


 まさかな事態なのか、予測できた事態なのかは、俺には判断が付かないが、セリアの方を手伝おうかと人混みをかき分けて---。


「おい! 横やりか!?」

「なんだと!? ふざけんな! きちんと並べ!」

「そうだぞ! 次に美人と話をするのは俺なんだから!!」


 おっさん達が殺気だってるぅううう!!


「違う違う、店員! 手伝い!」

「「「「「「男はいらん!!」」」」」」


 マジかい!!


「裏方だよ! おっさん達の至福の時間は邪魔しないって!」


 強固な通せんぼをしようとするおっさん達にそう怒鳴り、俺はなんとか人混みを抜けて先頭にやっってくる。


「エド! 手伝って!!」

「分かってる!」


 セリアが半泣きで助けを求めて来る。

 俺はセリアの横に立つ。


『ゴドー様に200ゼニィのおつり。ネーアに100ゼニィのおつり。合間が出来ますのその間に一番多い釣り銭である400ゼニィを作っておいてください』


 シムの言葉に従い俺は手を動かす。


「セリア、品だしの方頼む」

「分かった」


 分業しつつ様子を見ていると、お金や商品を渡す際に手を握ったり、触ったりしてる者が多い。男女ともに。

 強者に至っては、こんばんどう? って誘ってたりする。

 ゴドーとネーアはそれをそれとなく返し、ニアはニアで。


「うん。よるまでにたべてね。そのほうがおいしいから」


 笑顔で明後日の方向へと返していた。でも、「おさわりはだめなんだよ~」と握手以外の事をしてこようとすると、そう返してするりと逃げている辺りが、プロだって思ってしまった。いかん。


 しかし、これではスキルの練習どころじゃないな。って思ったりしたんだけど。

 お金を受け取り、客に背を向け、俺からおつりを受け取るタイミングでニアもネーアも循環を使って回復していた。MPポーションも一本飲むんじゃなく、まるで口を潤すくらいの感覚で一口飲んで、残りはテーブルに置かれている。

 仕事を効率的に回すためにネーアがニアに小さく指示を出し、ニアはそれを素直に聞いている。

 広がろうとする人垣をニアが内側へと誘導し、反対側はネーアが買った者が通れるように道を作りながらも並ばせていた。

 ちなみにゴドーはね。


「こちらもおいしいですよ。こちらは色んな種類が食べられるんです。どうせなら、ご家族分も買って一緒に食べ比べしてみてはいかがでしょう? こちらには一種類が十枚ずつ入った物もありますよ」


 と販促してた。


「とっても美味しいので一人一個じゃたりないかもしれませんね」


 なんて言葉を使って、一人一種類二個以上当たるように大量買いもさせていた。

 ……なんかスキル使って売ってたりしないよね? ってあまりのタラシっぷりにびびりながら俺は男性の客のおつりが入ったトレイをゴドーに差し出すのであった。




「……みんな、酷いのよ……。お前はお呼びじゃないとか、邪魔しないでとか、なんでお前みたいのが混じってんの? とか……」


 無事、大盛況に終わった朝市だったが、セリアの心には深い傷が出来たようで。

 お昼にと入ったレストランで、セリアはもそもそと食べながら、ぽつりぽつりと俺に……というか独り言を口にしてる。

 ゴドーは『黒子』を再起動させたようで、どこにでもいる兄ちゃんっていう感じになっている。

 ネーアはわざと髪をぼさぼさにした後紐で一つ結びにし、やぼったいイメージを持たせ、ニアは頭のてっぺんにでかいリボンを結んでる。それにより人の目が頭に集まり、顔に行かないという効果を出していた。


 あの場から離れた今、三人の美貌に気づいている人は少なかった。

 セリアや俺が浮くという事はもう無くなっているのだが、そういう問題じゃ無いよねぇ~と俺はセリアには触れずにいた。

 ただそろそろ浮上して欲しいと、セリアの前に小袋を一つ置いた。

 本日の売り上げを五等分した金だ。それぞれの前に持っていく。


「本日はお疲れ様でした。これは本日の給料です。借金の事はひとまず置いておいて、自分の好きな物かってきたらどうだ?」

「そうする。ニアとネーアも一緒にいくでしょ!?」

「え、でも」

 ネーアが俺を見てくるので行ってらっしゃいと合図をする。

 さすがにどんよりとしたセリアを放ってはおけん。

 躊躇ったがネーアはセリアに同行することに決めたようだ。ニアも文句はないだろう。三人は買い物に出ることになった。きっと朝必要と思った物以外にも買えるだろう。

 

俺とゴドーは宿に戻り、ゴドーは夕方まで読書をして過ごし、俺は神殿で買ったスキルを片付ける等をして時間を過ごした。

 三人は夕方には帰ってきて、その表情を見るに満足出来る買い物結果だったのだろう。


 夕食前にゴドーは神殿に行ったので四人で取った。

 男一人に女三人とはなんと贅沢なご飯だろうか。

 周りだってそう思ったのだろう。時折突き刺さってくる視線。もしかしてこれはテンプレな絡まれる騒動が発生したりするのだろうか。と内心わくわくしつつも、面倒だなって思うのも本当で。「べっぴんばっかりだなぁ」と男が声をかけてきた時に浮かんだ「キタ━━━━ヽ(゜∀゜ )ノ━━━━!!!!」はどっちの感情だったのか俺にもわからなかった。


「ん?」


 ほろよい気分のおっさんは俺にも気づいたらしく俺を見た。笑った。

 お。馬鹿にされる展開か? うちの子達にお触りはさせませんよ?


「オリャァ、おメェでもいいな」


 タッチ。


 俺の尻に当たるおっさんの手。


 瞬時に俺の右手が拳の形に握られ、避けられないようにおっさんの足を踏み、アッパーを繰り出しかけたところでなんとか堪えた。

 アブねぇ! 危うく殺すところだった!

 

「いってぇぇぇぇ!」


 踏まれた足を押さえてぴょんぴょん跳び回るおっさん。


「ははは。お前が悪いな。ここはそういう酒場じゃねーんだから」

「そーそー」


 仲間だと思われる二人がおっさんに対しそんな事を言っている。

 どうやらお仲間の人達は常識人のようである。

 これ以上テンプレな展開になっても嫌なので、戻るぞと声をかけて俺たちは部屋に戻っていった。



 ゴドーが神殿から出てきたのは日付が変わった後だった。

 いくら黒子があるとはいえ、とシムが俺を起こしたのだ。


 あくび一つしながら、俺はゴドーの前に転移する。


「……驚いた」

「んー。悪い。迎えにきた」

「わざわざ? すまないありがとう」

「こんな時間に歩かれるのは精神的に安心出来ないし」


 そう告げて部屋へと転移する。

 部屋に戻り、眠ろうとした時、神官服を脱いでいるゴドーを見て、違和感を覚えた。


 酔ってる? でも、状態異常無効は酒も無効にするよな?

『アルコールは効かなくても、雰囲気に酔う事はあります』


 渡したアクセサリーが失敗したかと不安になったがシムが一つの答えをくれた。


「楽しかったんだ?」


 一応確認がてら話しかける。


「そう……だな? 楽しいというか色々すっきりしたというか。毎回こうなら私もあいつも色々楽なのに、とは思うな」


 ん、なんの事かさっぱり分からん。やっぱ、酔ってんじゃね?


「気まぐれスキル買ったんだって?」

「え?」

「神殿で。千個も」

「……う、うん。買ったけど」


 え? これは浮気を咎められる夫の役割ですか!?


「凄く喜んでいたよ」

「あー、会ったんだ?」

「同期でね」

「へえ?」

「あいつも宣教師にするつもりか?」

「いや、そこまでするつもりはないよ。状態異常の耐性はそこそこ揃ったし」

「そうか。…………本当は一日一個が不満なんじゃないか?」


 どうやら、ゴドーにはそんな心配があったらしい。

 よそで買うなっていう不満なのかと思ったが、不安の方だったようだ。


「いや、全然そんな事無いよ? あれはあれで楽しいって! はっ、もう日付変わってるよな! ゴドー、スキル引かせて!」

「……君は本当にぶれないな」


 呆れたっていうよりも、ほっとしたように笑って、俺の頭を撫でるゴドー。

 一応、成人してるのですけどね。


 好きなだけ撫でさせる。

 

 やっぱ、酔ってんじゃねぇ? って思ったりもしたけど、お酒の匂いはしないんだよな。

 清潔ですぐに消えるっちゃー消えるけど、呼気からも感じないしなぁ。よっぽど楽しかったんかね。

 撫でるのに満足したゴドーにスキルを引かせて貰った。

 出た結果は、下級魔法(氷)。

 上がりも、下がりもしなかった。予想を裏切りやがって。いや、それとも、だからこその結果なのか? そんなどうでもいいような事を考えて横を見ると、ゴドーが幸せそうな顔で寝てた。


 …………………せめて、自分が使うはずだったベッドで落ちろよ……。


 シーツを下に敷いちゃって寝ているので、業務魔法でブランケットを出現させかけてやる。

 俺はゴドーが使うはずだったベッドに潜りこむ。


 では、おやすみなさい。



 







すぐ見つかった誤字は修正しました。


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