我が城。
皆様おはようございます。
成人して、二日目。
と、言っても、まだまだピッチピチの六歳でございます。
早朝です。まだ眠い目を擦りながら新しい我が家、今日から俺の城となるべく建物へと、案内されました。
一言で例えるのなら、豆腐ハウス……。
俺が前世でやってた、ブロックで家つくるならこれが簡単だよな、と、作られる直方体の家。
扉以外、窓も無い。
マジか。
広いのはせめての救いだが、窓がないって事は明かりも入ってこないって事で……。
父よ、俺は初級魔法の(闇)は持ってても(光)は持ってないんだ……。
てか、父さん、よっぽど俺が嫌なんだなって事が分かった。
村から外れる場所だし、何よりも、二度と顔を見せにくるな、なんて言ってた。
村から追い出されなかったのは母さんのためなのかも。
母さん心配するだろうし。俺が勝手に村から出てくらなともかく、追い出すのは不味いって思ってるんだろうな。
短命種だったって分かったくらいで酷い扱いである。
家の中で家具と言えるのは、ベッドとテーブルとイスのみ。
……ベッド用意してくれてるとは思わなかったな。
さて、母さんから、もしものためにと、へそくりは貰っているがそれを使うのはさすがに最終手段にしたいので、まずは今日のご飯とお金を稼ぐ方法を考えたい。
いや、考えてきたが正しい。
着替えと一緒に持ってきた網。
それに、重石をつけて、へい! 投網!!
これで一網打尽よ、へっへっへっ。
川に来て、とぉ! のかけ声と共に網を投げ入れるのであった。
…………投網、難しいね。
上手く網が広がらない……。要練習。
別の方法を考えよう。設置式だ。設置式。時代は設置式なのだよ。
設置して待つ間に昨日、家庭の医学で見た薬草が無いか探してみよう。
設置式か。まずはどう作るか、だよな。
前世、某テレビ番組で得た魚の知識としては、魚はぶつかると壁に沿って移動するという。
その先を絞りこめば、大量ゲット……。
網、そこまで長くないな……。
ん、どうしよう。俺、釣り、得意じゃないのだが。
一瞬、ひやりとしたが俺は柔軟に考えられる男だ。
投網の練習をすることにしよう。
「魚かぁ。んーでも小さいね。まぁ、これなら、50ゼニィかな」
「え? 全部で!?」
「一匹だよ。そいつが三匹で」
「150ゼニィか……」
「おや? エー坊、算術のスキルでも買ったのかい?」
「それぐらいは出来るよ」
「そうかい。そいつは素晴らしいね。で、火傷に効く薬草だけど、ウチだと基本は取り扱いしてないよ。診療所の方に持って行きな」
雑貨屋のおばさんの言葉の俺は、ポンっと手を叩いた。そっちの方が確かに買ってくれそうだ。
「エー坊、計算が得意なら、来週からうちの店に手伝いにきな」
「え? いいの?」
「マンマルは来週から旅立つんだってさ。しばらく店で手伝いして金を貯めてたけど、やっぱり外に行きたいらしいよ」
「そうなんだ、分かった。来週ね」
ろうそくを一本買って俺は雑貨屋を後にした。
ろうそく一本でもないと我が家は夜、何も見えないのです。
っていうか、扉閉めたら昼間でも真っ暗だけどな!
父さんからの挑戦状! 確かに受け取ったぜ!
俺はそう考え方を切り替えて、診療所に向かった。
診療所は騎士の兵舎近くにある。というのも、村のお医者様でもあるが、本職は軍医だからだ。
「先生~居る~?」
声をかけながら扉を開ける。
診療所には女性が一人、暇そうにしていた。
「あー………………、エドくん? 何かご用?」
名前、忘れてたな? いいけどね。
「火傷に効く薬草を集めてきたんだけど、買い取ってくれない?」
「……そうですね、もし本物でしたら買い取るわよ」
よし! 何度も見比べたから本物のはずだ!
俺はナップザックから土と根っこの付いた薬草を取り出す。
土付きなのはその方が薬草が痛みにくいかなと思ったからだ。実際先生も感心してた。
この世界は魔法やポーションがあるからか、診療所には包帯などはない。有るのは各種ポーションで、医者は魔法かポーション作成が主だったはず。
「先生、ポーションの作成って、スキルがないと難しい? 出来ない?」
「出来ないとは言わないけど……、スキルがあった方のがいいわね。自分が作った物が本当にソレなのか、分かるから」
「んー、そっか」
「もしかしなくても、成人しちゃった感じ?」
「うん。今日から一人暮らし」
「大変ね。何か困った事があったら言いなさい。出来ることはしてあげるわ」
「うん。ありがとう」
素直にお礼を述べる。
父親や兄貴達はああだったけど、今のところ、酷い差別は受けていない。大人からは。
「あ、じゃあ、何か不要品とかあったら貰いたいな」
「不要品って、どんなの?」
「どんなのでもいいよ。色々使えるかも知れないし」
「そう言われる方が難しいのだけど……」
困ったようだ。でも俺だって貰えたらいいな。の立場なので、注文は付けにくい。
先生は結局、お裾分けにと近所の人から貰った野菜をくれた。
俺はお礼を言って川に戻る。
俺が先ほどまで居た川は一部が石で狭められていた。
その先には、網がある。
……投網、やっぱり難しかったんだよ。手作りなせいなのか、網が小さいからなのかは分かんないけど、諦めたんだ……。
で、やっぱり設置方にしたんだよね。
魚が逃げないように入り口を石で塞ぎ、網に近づき、網の口を押さえて、間違って網を広げて魚を逃がさないように気をつけながら網を狭めつつ、重石をどかし、慎重に魚を捕っていく。
結果、四匹ゲット!
じっと魚を見て『品定め』をする。……うん、きっと食べられる。
せっかく鑑定出来る機会があるのなら使用するさ。……あくまで気がする程度だけどね。
でも店に持っていった魚は食べられるものだったみたいだし、火傷に効く薬草は確かにそれだったし、きっと直感か何かが上がってると信じよう。うん!
一匹は野菜のお礼に先生の所に持っていき、一匹は俺の、もう二匹はもう一回お店に持っていく事にし、俺は魚達に初級魔法(氷)で、冷え効果をかけ続ける!
熟練度が分からないのは悲しいが、レベルが上がるっていう感覚は楽しい。
魚を持っていくと先生に喜ばれた。店に行くと、ちょうど魚を買いに来ていた人がいて、家族の人数分欲しいから、と一匹150ゼニィで残りの二匹を買ってくれた!
どうやらお店では150ゼニィで売ってたらしい。まぁ、利益を出す必要があるから、仕方がないけど。
おばさんはちょっとばつが悪そうにしてたけど、大丈夫、俺、そこまで子供じゃないから、売値が買い取り値より高い事くらい分かってますよ? 大丈夫ですよ?
代わりにではないが、塩を買って店を出た。
さて、まだ日は高いが、暗くなる前に帰る。
村はずれだから時間掛かるし、それに、あそこは何かをしようと思ったら日のある時間帯じゃ無いときつい……。
家の扉からほど近い所、でもあまり近すぎて煙りが入ってくるとあの家じゃ換気が出来ないので、近すぎてもいけない。
そんな場所に石を組み、竈を作り、周りに川などで拾ってきた枝を置いておく。
先がとがっている石で枝を叩き折ったりしたりして程よい大きさにしていく。
準備が整ったら枯れ葉などを握りつぶして細かくして山にした。その上になるべくまっすぐな木を立て、朝、網を設置した後に作った弓もどきを使って、いざレッツ火おこし~。
火おこしとか、慣れると数分でできるらしい。俺がここでの生活に慣れたころにはそうなっているのかもしれない。
汗だくになった頃にやっと着いた火を見ててそんなことを思った。
魚の下ごしらえをし、塩をこすりつけ、遠火で焼いていく。
夕方になった頃、俺はスキル、夕方の加護を発動させる。きらきらと黄色い光が俺を包む。
時間に制限があるから、なかなか上げる機会がない。あと、重ねがけが出来てる感覚がしない。
程よい長さで太い枝。余計な小枝を落とたその一本で、俺は素振りを始める。剣道なんてやったことないからあくまで見よう見まね。
それでも俺は真剣だった。
だって実際にモンスターは出るのだ。自分の身を守るのは自分なので、頑張っておいて損はない。
……損はないのだが、これで剣のスキルが上がるかは分からないよなぁ。
内心ちょっとくじけそうになりながらも、振り上げる、振り下ろすを二十回ほど繰り返した。
……地味に腕に来るなぁ。
休憩がてらに、たき火の調整をしつつ、家からコップを持ってきて生活魔法(水)でコップに水を入れようとすると、ばしゃりと横にも溢れ出て、地面をぬらした。
まただよぉ。昨日も床、これで水浸しにしたんだよなぁ。
それが分かってたから今は外で使ったんだけど。
ほかの魔法だとそんなことないのに、なんでだ?
やっぱ、重複してるのが問題なのか?
水を飲みながらそんなことを考えて、「ん?」と自分の考えに疑問を持つ。
調べるで消費MPと今のMPをチェックする。それから家に戻って、これまた家から持ってきた鍋に魔法を一回使う。
消費MPは1回分の1。そして、鍋に入った水は、コップ二杯分。
コップに水を移しながら確かめたから間違いない。
消費MPはそのままに重複した分の威力があるなんて! 超お得じゃん!!
俺は天啓を得た。と顔が綻ぶのが分かる。
あ……。もしかして熟練度もそうなのかな。
実は昼間に『収納』もレベルが3になった。やっぱり広がるのは徐々にだけど、同じくらい、下手したらもっと使ってるんじゃないかって思う初級魔法の重力はまだレベルが上がらないのにだ。もしそうなら、これは美味しい!
俺、剣術も重複してるし、そのうち普通に剣が使えるようになるかも!?
ほかに重複してるのは、「かく」か。「かく」ももしかしたら早いのかもしれない。
ああ、やべぇ! 早くいろいろ試したい!
俺はワクワクしてきた。また興奮してきた。俺はやっぱり魔法が好きなようである。
本日の成果。
売買の結果へそくりの5万は省き、俺の所持金、420ゼニィ。
スキル。初級魔法(氷)と収納がレベルアップ。
「これでよし、っと」
おみくじのレベルを「かく」でそれぞれのレベルを書き換える。
「かく」は好きな色が出せて、修正液の代わりもできた。ほんと便利である。
最初の頃はスキルがどうの、消費MPがどうのって出ますね。
でも、あまりやり過ぎるとストーリー的に進まないので、少しずつそういうのが減ってきます。