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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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転生者ゆえに聞きたい事。



 御者の練習も終わり、出発する前に俺は先ほど作ったアイテムを渡す。


「とりあえず防御とか色々あるから、寝る時も肌身離さずしててくれ。サイズは自動で切り替わるから」


 そう言って差し出すとセリアが受け取りつつも、不可解そうな目で俺を見てくる。


「ねぇ、エド、なんで指輪なの?」

「……肌身離さず身につけてる物っていったら、それぐらいしか浮かばなかったんだよ……」


 やっぱり聞かれたか。

 俺だって、どうだろうって思ったけど。

 仕方ないじゃ無いか。日付が切り替わるタイミングで身につけてないと意味ないんだから、コレ!

 でも、それを言うわけにもいかないので、ひとまずずっと付けてて欲しいという事にしてあるわけだ。


「そういや、ゴドー、この世界って、結婚指輪とかあるの?」

「なんだその奇っ怪な物は」


 奇っ怪ですか。そうですか。

 軽くどんなものか説明したが、この世界には結婚指輪もそれに代わる物もないらしい。


「……うーん……、分かった」


 話を聞いて、ごねるのも意味がないと思ったのかセリアは右の薬指にはめる。

 デザインは、たぶん可愛いヤツだと思うので大丈夫だろう。

 これについては、業務魔法で有名店のピンクゴールドダイヤの指輪一万六千円のやつを選んだ。

 おすすめにあったやつで、スキルを付与しやすそうなものを選んだ結果である。

 女子はまだ見つけやすかったが、ゴドーのはそういう意味では難しかったなぁ……。下手に彫刻とか掘られてると魔力通すと、変な意味持っちまうし。宝石とかついてないのも多いし、逆に宝石がつきすぎると悪趣味だし。

 いやはや、こういうのは、いつになっても、どこの世界でも、面倒だ。

 喜んでウィンドウショッピングとかする女達が意味分からん。


 ゴドーがニア達に俺が指定したスキルを渡していくのを確認した後、水袋を渡す。


「なにこれ」

「水袋」

「……水筒って事?」

「うん。この世界じゃ水袋って呼ばれてる」

「へー」

「この中に水を入れていけば水が痛む事もないから」

「……これ、魔法がかかってるの?」

「そう。時間経過無し、中身は異空間」

「これも作ったの?」

「そうだけど」

「凄いわね……」


 どこか呆れた声に聞こえるが?


「で、出来れば生活魔法(水)をメインに育てて欲しい。でもずっと同じ物ばっかりやってても飽きるだろうから、その場合は別のスキルの訓練をしてくれて構わない」


 特にニアのように子供は飽きやすいだろう。

 でも、だからといって、「飽きた」で終わらせるつもりはないぜ。


「でも、水魔法を十回唱えるごとに、あめ玉一個上げるから、頑張った方がいいぞ~」


 俺はイチゴミルクのあめ玉を袋から取り出し、包みから取ってニアの手のひらに置いてやる。折角だからとネーアやセリア、ゴドーにも渡した。


「あまーい」

「甘くておいしい……」

「なつかしー!」

「うん。甘いな」


 四人の感想を聞きながら俺はニアにアクリル瓶を渡し、セリアには色んなあめ玉が入った魔法鞄を渡す。


「カウントはセリアがとってくれ。あめ玉は面倒だと思うけど、ビニールから取ってニアに渡してくれ。ビニールはこっちのゴミ入れ様の魔法袋にいれてくれ」

「うん、分かった」

「あ、なんだったらネーアも十回一個って事にしとく?」


 アクリル瓶をもう一つテーブルに置く。

 瓶は二個。女性は三人。じっと物欲しそうな目を見せるセリアに俺は告げる。


「二人に頑張って貰って、どっちかから、貰え」


 ご褒美ってしてるんだからただで上げるわけにはいかんだろうが。


「一袋に二つ入ってる飴とか有っただろ」


 目に見えて落ち込んだセリアにそう告げるとセリアは、それはいいの!? って顔で見てくるので頷いてやると、小さくガッツポーズを取った。

 だたネーアがそれでいいのなら、なんだけどな。これは、もう断れない流れだな。

 ごめんなっとジェスチャーするとネーアはとんでもないと首を横に振っていた。


「んじゃ、馬車に乗ってくれ、移動するぞー」


 三人は馬車の中に。俺とゴドーは御者台に乗る。

 こうして俺たち五人はセルキーに向けて馬車を走らせた。




「それで、これは一体何なんだ?」


 馬車を走らせつつ、尻のためにクッションを探し、それも終えて、ちょっと人心地ついたところで、ゴドーは聞いてきた。言いつつ防音結界を張ってる当たり、よく分かってらっしゃる。


「ゴドーのは、真面目に防御系のスキルとあとは加護系かな? あ、あと状態異常無効スキルも付与してる」

「……魔法じゃなくてスキルをそのまま入れてあるのか?」

「魔法を使うよりも強力になるからな」

「…………そう、なのか」

「あと、『伝話』スキルも入ってる」

「デンワ? なんだそれは」

「遠く離れた人と話が出来るっていう便利なスキルだよ」

「遠くというのはあの道の端くらいか?」

「イヤイヤもっと遠く。それこそ、世界の端から端まで」

「……そんな事、ありえるのか?」

「ありえるんだなぁ。これが」

「……そのスキルがこの指輪にあるのか?」

「そ、何かあった時使うと良いよ。意識すれば言葉にしなくても俺に伝わるから。さらわれたとか迷子になったとかそんな時にどうぞ」

「……迷子はともかく、さらわれるのは勘弁して貰いたいな」


 深くため息をつくゴドーに俺は笑う。

 大丈夫その前にシムが助けるから。と告げるとまた微妙な顔になった。


「まあ、お前の規格外さ加減は今更だが」

「おいおい、ゴドー。俺は規格外なんかじゃないからな? 俺はただたんに、みんなよりちょっとスキルを育てるのに成功しただけで」


 そこは否定するぞ? なんせチートだというとシムさんが怒るからな? 俺だけが怒られるのは不公平じゃないか。


「……それを聞くとぞっとするよ」

「まあなぁ。だから俺もスキルの事あんまり言えなくなったし」

「……十分言ってるような気はするが……確かに重要な部分は秘匿してるのか」


 ゴドーにはわりと色々しゃべってるけど、それ以外にはほとんど話してない。

 母さんにもだ。


「おう。これでも気をつけてるんだって。これでも。大事な事だから二度言ったけど」

「はいはい。それで、あの三人には?」

「一応、防御系と熟練度補助スキルを付与した」

「……また聞いた事の無いスキルだな」

「補助魔法攻撃とか防御とかあるだろ? それの高位スキルだよ」

「スキルの名前から考えるに、熟練度が入りやすくなるということか?」

「まあねぇ。熟練度が入りやすいといえば入りやすいんだけど、補助っていうには疑問があるんだけどな、これ。レベル1だったらスキル一つを対象として、レベル6からは全ての所持スキルを対象としてるんだが」


 そこでいったん言葉を切ってゴドーを改めて見る。


「日付変更の0時に、スキルに内包されている熟練度をレベルによって足してくれるっていうスキルなんだよ。レベル1なら半分。レベル10なら五倍」

「……五倍?」

「そう、五倍。熟練度が100あれば、500を足してくれる。そんなスキル! それが各五つ! つまり寝て起きたら熟練度が2600になってたっていう夢のスキルだ!」

「………………私はどこからつっこめば良いんだろうな……」

「まずは何をつっこみたいんだ?」


 頭を抱えるゴドーに尋ねてみる。


「まずは…………、そんなスキルをそれだけの数を用意できたお前は普段どれだけ熟練度が入ってきてるんだっていいたいな」

「いや、レベル10になったら対象外。大丈夫。増えない増えない」

「そうなのか」

「うん。それと、このスキルあんまり持ってない」

「二十五個もあったら十分だろ」

「いや、ほんと持ってなかったんだよ。魔法の補助やら攻撃の補助やら持ってるだけでしてくれる、補助スキルだぜ? そんな売れるもの、クパンの気まぐれに入ってたと思う!?」

「……思わない」


 しばし考えてゴドーは首を横に振った。実際入ってなかった。

 だから、断捨離でゲットした分くらいしかないのだ。

 断捨離は最初からレベル10でゲットするから増殖で増える事もない。だからこのスキル、二個しかなかったのだ。


「だから余り余ってる別のスキルをこれに変換したんだ」


 スキル図鑑は山のようにあるからな。それこそ数えるのが面倒ってぐらい。


「…………………そうか。なんというかスキルは気づいた物に有利に作られてるんだなとしみじみとした」


 深いため息とともに紡がれた言葉に俺は乾いた笑いを見せる。

 そうなんだよなぁ。

 結局、シムがせっせとスキルと溜めてるのって、同じように気づいている者が居たら、結局の所、物量勝負になるからなんだよな。


「そういや、気まぐれと言えば、ゴドーも気まぐれって売っ」

「聞いてどうする」


 ……なんか、食い君に尋ね返されたのですが。これって売ってるって事……、だよな?


「いや、売ってるのならどんなの売ってるのかなぁって興味があるっていうか」

「……一日一個だ」

「へ?」

「エドには一日一個しか売らん」

「えぇ!? なんで!?」


 そんな差別今までしたことねぇのに! なんで!?


「気まぐれ売ったりしないよ!? 大事に育てるよ!? レベルマックスまできちんと育てるよ!?」

「それは知ってるというかお前が売るとは思っては居ない。そこはもはや信用というよりも確信してる。そうじゃなくて、……好きなだけ買わせるとお前、大量に買いそうだからだ」

「そりゃ買うよ。買うに決まってるじゃん」


 ゴドーの評価になるんだから。


「……エドは左遷、左遷というが、私は今の状況はとても楽しい。左遷だとは思っていない。少なくとももう数年はこうやってお前と旅が出来たらいいなと思ってる。だから……」

「なるほど、それなら俺も一日一個で文句はないな。俺もゴドーと旅をするの楽しいなって思ってる所だからな」

「……体力がなくてへばっているのを見てか?」

「そこは、まぁ、ノーコメントで」


 くっくっくって笑うとゴドーも小さく笑みを浮かべて、一つの箱を出した。

 前に一回だけ引いた、全てのスキルが入っている箱と似ている。


「……これ、どんなスキルが入ってるんだ?」

「神殿で売っているスキル全てが入っている」

「そうなんだ? 太陽シリーズも?」

「星から太陽まで全て、だ。正直、お前の話を聞いていると神殿が付けたランクなど無意味なものに聞こえてくる」

「……実際に、神殿のランクは無意味なものだって思うからなぁ……」

 

 むしろミスリードしてくれるありがた迷惑なものとも言える。


 俺はお金を渡し、箱から一つのスキルを取り出す。


 バララララララ。ジャカチャン!


 セルフBGMで取り出した先にあったのは!


「早朝の加護……。なんだ、もっととんでもないものを引くかと思ったが……。いや、もしかして、私が知らないだけでとんでもないスキルなのか!?」

「いや、普通に初級スキルですよ?」

「そう……なのか?」

「うん。でも一回目なら、最初のスキルとしてはいいんじゃない?」

「何故? やっぱりレベルが6を超えるととんでもないのか?」

「いや、そうじゃなくて、早朝って事は夜明けって事だろ? 旅の出発としてはいいんじゃないかなーっとか」

「そうか? なんだか夜逃げっぽくないか?」

「…………そう言われたもう、そうとしか考えられねーじゃんかよぉー……」


 一個目だから、それっぽく縁起の良さそうな事を言おうとしたのに!

 まったく俺の心ゴドー知らず。


 って、言ったらそれは私のセリフだって言われそうだなぁ。と思ったところで、ふと過去が過ぎった。


「……いや、でも、うん。やっぱりコレで良かったのかも」


 スキルをマジマジと見た後、俺の中に入れていく。


「何故?」

「成人の日に買ったスキルの中にコレの対となる夕方の加護があったから、かな?」


 あの日、ゴドーは成人したての俺が気まぐれを買うのをとても気にしていた。

 まさに、ゴドーの心俺知らず、である。


「あの日があって今日がある、みたいで、ちょうどいいかなって」


 真逆になっているっていうのもちょうど良いかなっと。


「……君はロマンチストだな」

「そりゃ、魔法に溢れてるこの世界は俺からすればロマンの宝庫だぜ? ロマンチストにもなるって」


 カラカラと笑えばゴドーは首を傾げたものの否定はしなかった。


 俺は新しく手に入れてた早朝のスキルを、時間になれば自動的に発動するように隠ぺいと共にセットし、ふと空を見上げる。

 そういえば。加護スキルってレベルが高くなれば高くなるほど、どこかの野菜星人みたいになるんだけど、あれって、わざとなのかなぁ……。


 スキル開発者には色々聞いてみたいことは山のようにあるが、俺にとってはこのことも、十分に聞いてみたいことだった。




タイトルは、指輪だった事やら、最後の質問やらも含めてですかね。

タイトルって考えるの難しいです。


あと、スキルはもちろんランダムです。

初めは「早朝かぁ。初級かぁ。ネタ的に弱いなぁ」って思ったけど、結果の一つとしては良かったかなって思いました。


昨日からネットの調子がおかしいです。

予約投稿出来ないんじゃ無いかってちょっとひやひやしました。


無事繋がって良かった良かった。



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