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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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俺が望むゆえに


 

 今日は業務魔法を使いまくったので、久しぶりに自分のMPを見てみると、……がっつり減っていた……。こんなにバーが減ってるの見るの久しぶりだな……。

『黒天馬が消費MPが約十億、馬車が約三千万です』

 はぁぁ。黒天馬って、買うと一億すんのか……。

 誰が買うんだそんなの。

『貴族の極一部と上位ハンターの一部です。黒天馬は自衛出来るので、戦力の一部で移動手段と考えればそう高くないという判断なのでしょう』

 ほー。


 感心しながら黒天馬に近づき、その頭を撫でてやる。


『オヤブン! ウレシイ!』

『長! 素晴らし!』

「喋った! あ、言語スキルか!」


 驚いた後、理由にも思い至った。


「言葉が分かるの?」

「うん」

「凄い!」

「しゅごい!!」


 セリアとニアが目をキラキラさせ、セリアはゴドーに言語スキルがいくらか聞いている。

 買う気か?

 そんな余裕今はないだろと見守っていたが、セリアも値段だけ聞いているだけで今すぐ買うつもりはないらしい。。

 そうそう。その方がいいって、下手に言語なんて分かっちゃうと食えなくなるからな。馬刺しとか。


『ぴゃい!?』

『ブヒヒン!?』


 黒天馬達が怯えたように嘶いた。

 おや? おかしいな……。殺気でもとんだか?


 そう思いはしたが、何事もなかったように振る舞い、黒天馬には立ってもらい、黒天馬にパーティーメンバーを紹介する。


「いいか~? こっちはゴドー。俺の大親友だ。俺の代わりに馬車を運転する---」

「親友? 恋人同士ではないんですか?」


 可愛らしく首を傾げて言われた言葉に俺の動きが止まる。


「ネーアさん?」

「え?」

「なんだってそんな恐れ多い勘違いをしたんですか?」

「え? だって、二人で旅をしてるって」

「それが理由なら、セリアとニアもそうなるんすけど!?」

「はぁ!? なんでそうなるのよ!?」

「ヒューモ族は同性愛も異性愛も関係ない種族だからだよ!」

「えっ!? そうなの!?」


 セリアは驚き、そして否定して欲しそうにネーアさんを見た。


「って、まて、セリア。お前さっき最初に俺に対して警戒してたのは、そういうヒューモ族の習性を知ってたからじゃないのか?」

「知らないわよ! ただ、男から見たらニアが……美味しそうな子羊に見えるんだろうなって思ってただけで」

「男は狼ってか? それについては否定しないがな。ネーアさん、ぶっちゃけて、女性の客ってだいたいどれぐらい居たんです?」

「え? えーっと…………半分くらいは女性でしたけど……」


 セリアをちらりと見て、気遣いながらも、それでもしっかりと答えてくれた。


「ニアにもお姉ちゃんのお客さんいっぱいいたよぉー、一緒にお風呂入ってね、それで」

「ニア! 言わなくて良いから!」


 具体的な事を言い出したニアの口をセリアが実力行使で塞ぐ。

 シンっと沈黙が落ちる。

 鳥の鳴き声もしない。

 ふとみんなの視線が最後のヒューモ族、ゴドーに集まる。


「……私は別段、男でも女でも構わないし、抱くのも抱かれるのも経験はあるぞ? 男女含めて」


 さすがはゴドー。オ・ト・ナでした。なんでさらりと言えるかな、この人……。


「エドが望むのならそういう関係でも良いが、エドからすればそんな事望まないだろうし、むしろ本音を言うと、最近はこういう話題で、『俺の尻は俺のものだ』とワタワタしてるエドを見てる方が面白いと思うくらいで」


 ひでぇよ! ゴドー!


「エドが恋人であろうと友達であろうと大事な人である事には変わりないからなぁ……」


 あごに手を置きしみじみと述べた言葉に、セリアの視線が突き刺さる。


「やっぱりそうなんじゃないの?」

「いや、ゴドーはそういうやつなんだよ。昔っからこっぱずかしいセリフを言うやつなんだ……」


 昔っていっても知り合って一年も経ってないけど。


「うーん、ヒューモ族は長く生きる分、動物にとって重要な仕事の一つでもある子孫を残すという事が形骸化しているのだと思う。子を残すのであれば、異性でなくてはならないが、そうではなく、楽しさを求めるのであれば、異性に拘る必要はない、という事だと思う。だからヒューモ族の青年期は、社会のためとか次の世代や親の世代のとかそういうのはなく、純粋に『自分のために生きる時間』と思っている者が多い。社会貢献など、年取ってからでも良いだろう、と」

「まあ、百年近くあるからなぁ。老人の時間が……」


『形骸化していると言っていますが、それでもヒューモ族の女性が生む平均的な子供の数は三人です。平均寿命を考えると今のペースで十分だと思います』

 なるほど確かに。


「ヒューモ族にとって子育てとかは、それこそ、人生の終わりに向けて行う役目だと思っている者も多い。でも、だからこそではないが、自分にとって必要な物、必要な存在だと思うと、とても大事にする。私にとってエドは大事な存在で、そのくくりが恋人だろうと友達だろうとなんでもいいんだ」

「つまり、純愛ね!」

「「違う」」


 つっこみは俺とゴドーの両方から入った。

 目をキラキラさせて、何をぬかしとるんだかこのバカは。

 そっちがその気なら。


「そういうセリアこそ、ただの友達の子供のためにあんな多額の借金なんて背負わないよな?」


 にこやかな笑みを浮かべる。


「へ?」

「ああ、いいんだ。皆まで言わなくても、分かってる、分かってるって。なんとも思ってない人間の子供を面倒みたりしないのは分かってるよ」

「ちょっと違うってば! 分かった! 分かりました! ごめんなさい!! 調子に乗りました!」


 セリアは必死に謝り、俺は腕を組んでその謝罪を受けるのであった。



 五十歩百歩。どんぐりの背比べ。どっちもどっち。

 そんな視線(無いけど)を、シムからなんとなーく感じるのであった。


『マスターは『私』の事をいったいなんだと思っているのでしょうか?』

 さて、その辺はシムの方が俺よりも詳しいと思うけどなぁ……。


スキルのくせして俺をからかったりするのも、こういうやりとりをするのも、俺が嫌いじゃないからだ。

 きっと、シムがこういう性格なのは、俺が、望んでいるのだろう。


 それに対するシムの答えはない。

 なくていい。そんなのは無い方がいいから。



 さて、話を馬車に戻すか。


「じゃあ、話は戻すが、馬車の動かし方をゴドーから習ってくれ」

『オヤブン。コトバワカル。ヒツヨウ?』

『長。教育、どっちのため?』


 黒天馬の方から疑問が飛んできた。


「………………人間のために付き合ってくれ」


 道なりに進んでくれと言えばすむんだろうな、とは思ったが、そうお願いすると黒天馬達は一鳴きして馬車の動かし方に付き合ってくれた。

 良い子達である。これで気性が荒いとは信じられん。さすが絶対服従ってか。


 セリアとネーアさん……いや、もうネーアでいいか。これから一緒に旅するんだったら。

 セリアとネーアは御者の練習をし、俺とニアは四阿で休んでいた。

 ニアは近づくと危ないからで、俺は四人のためのアイテム作りだ。

 四人の防御面を強化したり、ニア達には熟練度補助スキルを付与したり、MPUP系のスキルを付与したりといろいろだ。

 セリアに関しては護衛としても頑張って貰うので、午前と午後の加護スキルも付け加えた。これで、どの時間帯でもOKと。


 この世界で一般的な水袋を二つ取り出して、その中身を大容量でかつ時間経過を無くす。

 これで、彼女達の頑張りが無駄になる事もないだろう。

 後は……、MPポーションも作っておくか。一つ作った後は、大量生産スキルを通して、一気に1667万本に増やす。

 これだけあれば湯水のごとく使っても問題ないな。

 ちなみに。この国だとMPポーションならともかく、下位のHPポーションとか全然需要ない。

 下位ポーションで回復するぐらいだったらだいたいみんな自前で回復するからだ。

 

 後は、ネーアのスキルを何にするかだよな。水は必須として~。

 シムと相談し、スキルを決めるとゴドーに値段を聞き、記入していく。


「ねぇ、エド……。実は借金でアタシの首を回らなくしようとか考えてないよね?」


 俺たちのやりとりを聞いて、セリアが不安そうに尋ねてきた。


「俺がお前に借金はいつまでに返せって言ったか?」

「言ってないけど」

「じゃあ渡した紙にいつまでに返済しろってあったか?」

「……なかったけど」

「で? そういうって事は、期限決めて欲しいのか?」

「そんな事ないよ! いじめないでよ!」

「いじめてはない。いじめてはないけど……。まぁ、お前からしたらそう言いたくなるか。でも、逆に聞くけど、スキルなしでネーアにどう金を稼いで貰うつもりだ? ゴドーは一応宣教師だからあちこち旅をするからどっかの店に入って売り子とかも出来ないし? ニアと別れてもいいのなら、別に売り子でもいいが。売り子なら売り子で、算術スキルがないと賃金安いぞ? でもって算術スキルは高いからな?」

「うぐ……」


 セリアは口をぱくぱくとさせただけで反論は出てこなかった。

 実際の所、俺は俺で踏み倒されてもいいかって思ってる部分はあるから、借金返せと口うるさく言うつもりない。

 

「……ごめん……」


 ぽつりとセリアは顔を俯かせて謝った。

 俺はそれにびっくりしてセリアを見つめる。

 別に謝って欲しかったわけじゃなかったのだが……。


 ……いや、あの言い方だと謝るのも当然か? 


 俯いたまま人差し指をこすり合わせてる所が子供っぽくって思わず笑ってしまった。

 俺の妹も小さい頃、謝る時、こんな風にしてたな。

 セリアの前世の記憶がどれくらいまであるか分からないけど、もしかしたら見た目ほど年齢いってないのかもしれない。


 俺よりも少し高い頭を撫でてやる。


「謝んなくていいよ、お前が心配するのも当然なんだから。むしろ配慮が無かったのは俺の方だから。ごめんな」


 謝ってもう一度頭を撫でたら。子供扱いしないでよ。と頬を膨らまし、手をずらされた。

 その様子がなんだか可笑しかったから俺は思わず笑って、セリアはさらにむくれるのであった。


 で、ネーアのスキルなのだが。

 

『生活魔法(水) 10000(一万)

調べる 10000(一万)

平常心 10000(一万)

家庭の医学 10000(一万)

初級魔法(風) 20000(二万)

初級拳術 30000(三万)

初級蹴術 30000(三万)

のど自慢 30000(三万)

算術 50000(五万)

歌 50000(五万)

下級魔法(風) 80000(八万)

循環 100000(十万)

午前の加護 100000(十万)

午後の加護 100000(十万)

薬作成 300000(三十万)

上級拳術 8000000(八百万)

上級蹴術 8000000(八百万)』


 と、いきたいところだったのだが。


「ムリムリムリムリムリムリムリムリ!!」

「上級となると消費するMPがたりないと思います! 無理です止めましょう!」


 セリアが高速否定をしてきて、ネーアも強く否定してきたので、仕方なく上級は無くした。

 嫌がってる人間にスキルは売れないってゴドーが言うんだもん。仕方が無い。

 ちぇー。購入の上級なんてそうそうレベル上がんないから、少しでも熟練度増やしたかったんだけど、仕方がないかぁ。




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