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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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信用問題って事



「……さっきの本当?」

「さっきってのはどれ?」

「ニアを助けられるっていう」

「ああ、それに関しては本当」

「……そう、良かった」


 嬉し泣きしそうなセリアに、泣くなよと軽く返して、それからしばし考えた。

 結局短命種ってのは、魔力かMPが少ないのが原因なんだ、そのどちらかを解決すれば問題ない。そして、俺はその解決方法は我が身を持って知っている訳なのだが……。


「んー、ゴドー、確認とりたいんだけど、スキルの売買って、宣教師でもマイナスって付くのか?」

「……付くが、珍しく売るのか?」

「俺と同じようにするわけにはいかないし」


 苦笑しつつニアを見た。ゴドーも視線を追って理解を示す。

 最初の頃はなんでみんなスキルをいっぱい持たないんだろうって不思議だった。

 神から貰えるスキルは少なくて強力な方がいいとか、次のステップに買い換えるとか、なんでそれが常識なんだろうって疑問だった。

 でも、今なら分かる。スキルは努力の結果でも才能でも無い。買い求める物だ。

 俺のようにある程度条件が揃ってしまえば一月もしないうちに全てのスキルが手に入ってしまう。


 年末に買った一万の気まぐれスキルは、もう全て最上位までレベルマックスとなり、シムが用意した待機フォルダーに待機中だ。気まぐれスキルゆえに偏りはあるが、それでも高位まで行けば十分に驚異だし、極までいくと『ンナ馬鹿な!』と言いたくなるスキルが非常に多い。

 それに、『生活魔法(清潔)』の極は『断捨離』だ。そこからまた新たなスキルも手に入れる事も可能だろう。


 どんなスキルでも、神殿で取り扱っていないものは、凶悪な中身の物が多い。

 そんな物が心ない者達の手に有ったらどうなるだろう。

 恐怖でしか無い。


 だから、多くの者が力を持たないように、情報が操作されている気がする。世界中で、誰かの……神ではなく人の手によって。

 俺だってスキルの事は自主的に口を閉ざす結果になっているし。


 ……錬金のレベル1が「綺麗石」しか作れないのはわざとなんだろうなぁ。

 『生活魔法』とそれぞれの生活魔法でも上がってくスキルは全然違うし。正直に申し上げると、『生活魔法(熱)』のグループは超危険です。

 コンロ+電子レンジみたいな魔道具があるし、結婚祝いに花嫁の母親がコレを送るのが習わしだから、これを育てる人ってほとんど居ないだろうけど、スキル作った元日本人の神様が何考えているのか聞きたくもなったな。


 そんなわけで! 俺としても、俺と同じ様にニアを育てるわけにはいかんのだよ……。


「でも、どうしても数が必要だから売買する事によってスキルを調整したいんだ。でも、レベルマックスを売るのってぶっちゃけ、ゴドー以外にはしたくない」

「ちょっと待て、レベルマックスだと?」

「うん」


 肯定すると、ゴドーは待てと声をかけて、祈りのポーズを取り目を閉じている。

 たぶん神様とやりとりしているのだろう。そうかからずに目を開けた。


「レベルマックスに限り、マイナスポイントは付かないそうだ。むしろそこまでやってくれるのなら買い取り価格に色を付けろと仰せだ」

「相変わらず神殿ってでかい商会だよな」

「否定も肯定もせん」


 そんなやりとりをしながら俺は魔道書を四冊取り出す。装丁は本だが、中身はただの地球料理のメニューとなっている。

 セリアが転生者って分かったのなら、わざわざお昼の準備するの面倒だなって思ったのだ。でも、その前に。


「お昼の前にしたい事がある。ニア、君の体を子供に戻す」

「「は?」」


 セリアとゴドーが聞き返すが俺は詳しくは話さず、ニアに向けて手をかざす。

 そして久しぶりに相棒を起こすことにした。


 起きろ。シム。

『おはようございます、マスター。個体名:ニアに時逆の術をかけるで間違い有りませんか?』


 相変わらず、説明が不要でありがたいよ。


 おう。見た目と精神年齢を同じにしてくれ。

『それですと神印がある事に対する矛盾が出てきてしまいます。マスターと同年代で抑えるべきかと』

 ああ……そうか。じゃあ、それで。

『かしこまりました。補助を行います』


「時よ、巡れ、過去へと」


 ぐんっと引っ張られるような感覚がして、ニアの姿が小さくなり、俺の目に映るメーターの数字がどんどん小さくなっていく。0になった所で術を止めると、二十代後半の美女はどこにもおらず、十五歳前後の愛らしい少女が居た。


 あかん。これはこれで誘拐の危険性がある。

『マスターの保護下という事で、パーティーメンバーに自動で加入させます。システムの一部を付与、監視保護に入ります』


 俺の危機意識を受け取りシムがさくっとニアをマークしてくれた。

 これで離れている時にニアが何か巻き込まれても危害が及ぶ事は無いだろう。


 セリアは?

『マークはしていますが、特に保護スキルは発動させていません』

 ゴドーは?

『護衛対象となっております』

 

 つまりは、俺の中での信頼度が足りんって事か。まぁ、会ったばっかりだしな。

 ゴドーにはスキルやステータスの事は話しているけど、セリアにはまだそこまでしようっていう気はならない。その差がシムの扱いでも出ちゃったって事か。

 もし万が一、護衛対象にして、違和感でももたれたら不味いと言って。


 一秒にも満たない時間でそんなやりとりをシムと行っていた俺たち。その一秒後には目玉が飛び出すんじゃ無いかってくらい驚いていたセリアが何をやったのか聞いてきたが、これについてはノーコメントで。


「スキルの何かを使用しています。って事しか言えん」

「えぇええ!? うぅ……気になるけど、良いわ。これで、ニアの寿命が延びたのよね?」

「いや、伸びてないよ。こんなのは根本的解決とは言わんだろうが」

「えぇ!? じゃ、じゃあ、どうするの?」

「それについてもきちんと説明するから、まずは飯にしようや」


 そう言って俺はさっき取り出していた魔道書をそれぞれに差し出した。

 中身は料理店のメニューみたいな感じだ。店別にしてもいいし、料理別にしてもいいし、そういう見る順序はその魔道書が持っている人間の意思をくみ取って勝手に並び替えてくれる。


「食べたい料理の写真……、絵の横にある注文っていうのを押せば出てくるから」

「ま、待って。エド、これ、マジなの?」

「マジだよ」

「だって、これ、日本の料理だよね!?」

「おう! こっちは転生者特典でな、とあるスキルでとある条件を達成すると出せるようになるぞ」

「えぇぇぇぇ!? 何それぇぇ、気になるぅ!!」

「はっはっはっは。自分で頑張れぇ」

「うぅ。ヒントくらい頂戴よぉ」


 セリアは悔しそうに喚いていたが、しつこく聞いては来なかった。俺が機嫌を損ねたら、飯抜きの可能性があるからな。

 セリアは真剣にメニューを見ていて、ニアはよく分からない顔でメニューを見ていて、ゴドーはメニューを閉じて、適当に開いた所の料理を食べると決めたようで、他二人が選ぶのを待っていた。


 俺はというと、食べるものはもう決めてあるので、ニアの育成プログラムをどうするか段取りを相談していた。

さっきも言ったが、魔力を増やすのは簡単である。しかし精神が未熟なまま膨大な魔力を持たせてもいいものか、とシムと話し合った結果、魔力・精神・知性を同時に育てようとなった。その上でニアがどういう性格か分かってから、生きていく術のスキルを身につけるかと、なった。

 ニアと相性がいいのは補助系みたいだから、そっち方面を伸ばせるといいなとは思うがその辺は本人の希望が優先だろうな。

 ちなみに、俺は炎が得意。不得意は無し。

 セリアは闇が得意で、苦手は光だった。でもセリアが持ってるのはスキルは下級魔法(風)だった。

 相性も、スキルの『調べる』のレベルが上がらないと分からないから、自分と相性の良いスキルを知るのはわりと後になると思う。まあレベル5まで一気に買っているのなら分かるけど、そこに金を使おうって人はあんまりいないんじゃないか?

 

「ゴドー、これ、値段書いて」

「これは?」

「ニアに覚えさせるスキル」

「……私は、エドのように書くスキルはないんだが」


 あ、そうだった。

 俺はスキルがあるから筆記用具など無くても書けるが、だいたいみんな、そのスキル買ってないんだった。

 値段を言ってもらい、俺が代わりに書いていき、真剣にメニューを見ているセリアに差し出す。


「なにこれ」

「今日、これからニアに買うスキル」

「……これが?」

「そうこれが」


 セリアの戸惑いを理解しながらも俺は頷く。

 セリアに渡したメモにはこう書かれている。


『生活魔法(水)10000

 調べる10000

 超常識辞典10000

 言語 10000

 魔法操作補助50000

 空気イス10000

 平常心10000

 算術 50000

 循環     100000』


 である。

 

「……何がどうニアに役立つのかさっぱりね」

「だろうな」


 セリアの複雑そうな言葉に俺は頷いてやる。

 実際このスキルが必要なのではなくて、このスキルがレベル10、MAXになった時に貰えるステータスボーナスが必要なのだ。

 スキルそのものはなんでもいいが、あまり子供に力を持たすものでもないだろうとこういうラインナップになっているだけだ。


「手助けはしてやるけれど、元々借金してでもニアを助けるつもりだったんだろ? なら、最後まで頑張ってみろよ。それに、ニアがきちんと頑張れば、借金なんてすぐに返せるし、お母さんの身請けだってすぐに出来る」

「……ほんとに?」

「ああ」


 頷くとセリアは困った表情でニアを見た。


「……ニアは本当のお母さんの事よく分かってないんだ。お姉ちゃんって、呼んでるくらいで……、環境が特殊だったから……」

「その辺も含めて勉強してけばいいんじゃないか?」

「うん。……勉強する時間があるんだよね?」

「……やろうと思ったら、今日一日で終わるぜ?」

「……そうなの?」

「ニアの精神が幼すぎるからやらねぇけど……」


 危険なのは、生活魔法(水)くらいかな?

 空気イスも危険ちゃー危険だけど。


「……ねぇ、エド。アタシのスキルも考えてくれない?」

「なんで?」

「だって、エド、アタシの知らない事いっぱい知ってるし」

「いっぱい知ってはいるけど、今はパス。セリアがどんなやつか知らないし」

「……信用問題って事?」

「そういうこと」

「分かった。信用できると思ったら色々教えてね」


 本人も先ほど散々信用出来ないと警戒心バリバリだったのであっさりと頷いてくれた。

 しゃべり方も余裕が出てきたのか、だいぶ柔らかくなってきたな。



恋愛っぽい感じになかなかいけそうにないので、ジャンルを変更しました。


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