短命種のMPは
ちょっとずつですが、出来上がってる分はこまめに更新したいな、と思ってます。
「気まぐれスキルを買っただと!? お前はどれだけ大馬鹿者なんだ!? ただでさえ短命種で恥ずかしい思いをしているというのに!」
父さんは俺に向かって吐き捨てた。
ああ、やっぱり。
ここ二年、父さんと顔を合わせる機会があまりなく、あっても、嫌そうな顔をされていた。それが理由だったのかと、あっさりと納得した。
兄二人も父親と同じような目で俺を見ていた。気づけば俺は家族から疎まれていたらしい。
母さんだけは俺の味方でいてくれるのか、父さんをなだめて、せっかくのお祝いなのだからと言ってくれた。
「えーちゃん、今日、お母さんごちそうを作ろうと思うの。買い物に付き合ってくれる?」
「いいよ」
舌打ちして、何か言いたそうに俺を見ている父さん。でもそれ以上は何も言わずに奥の部屋へと行ってしまった。
俺は母さんと一緒に家から出て、並んで歩く。
「えーちゃんは明日から、新しいお家に住むことになるの」
「お家……。家って言われても、俺、お金持ってないよ? まさか今日のお金って」
「ううん。あのお金は純粋にスキルを買うためのだけのお金よ。大丈夫。お家はね、お父さんがきちんと用意してあるから。明日お父さんが連れてってくれるから」
「うん。分かった」
「本当は、もっとゆっくり、生きていくための術を時間をかけて考えた後スキルを買いにいくのだけど……、えーちゃんがこんなに急に大きくなるなんて思ってもみなかったから、色んな事教え損なっちゃったわ。ごめんね」
「気にしてないよ。大丈夫。ところで母さん、魚を釣って、それを持って実家に帰って調理して貰うっていうのはありなのかな?」
お金を稼ぐ方法っていうのも考えなくてはならないが、まずは生きていく事、食事の事を考えなくてはならない。
狩りなんてしたことないから、俺がすぐに出来そうなのっていったら釣りだったので尋ねてみた。
「ふふ、ありかもしれないけど、まずはお店に持っていって買い取ってくれないか聞いてみた方がいいわね」
「あ、そうか、それもありなのか」
そっか素人が釣った魚をお店に持っていくっていうのは頭に無かったけど、昔とは違うんだ、全然ありな金の稼ぎ方だ。
「えーちゃん、『調べる』のスキルは獲得出来たの?」
「ううん。持ってないよ」
「あら。じゃあ、それだけは買わないとね」
「そうなの?」
「ええ、自分が持ってるスキルを見る事も出来るし、あと、HPとMPも分かるわ。HPが0になったら死んじゃうし、MPが0になったら気絶しちゃうわ」
「MPが0だと動けないんだ?」
ゲームだったら全然気にせず動かせるんだけど。
「そうねぇ……動ける人は動けるみたいだけど、たいだいはみんな気絶しちゃうわ」
「ふーん」
どんな違いがあるんだろう。やっぱり根性だろうか。
そんな事を思いながら本日二度目の神殿で、「調べる」のスキルを買った。消費MPは3か。水よりも高い。っていうか消費するのか。シビアだ。
どれだけ高性能なんだか、と、内心ディスりながらさっそく自分のステータスを調べてみる。
母さんが言ったように、所持スキルとHPとMPしか分からなかった。
ただ、数値が……。
いや、最初は、HPが740って、割と高いんじゃないか? と思ったよ。ゲームだとしたらスタート時、こんなに数値高いわけがないもん。ただ、MPが……。
133100なんだ。
13万3千100である。
えー……俺、これで魔力少ないの? みんなどんだけ多いの……。
あれ? って、事は多いと思ったHPってもしかして逆に少なすぎなのか?
あれ? 俺、ワンパンもらったらそのままおだぶつ系ですか?
信じたくないっす!
「母さん、MPっていくらくらいあるの?」
「……えーちゃん。ステータスの事は気軽に人に聞いちゃ駄目なのよ」
ちょっと叱るように母さんが言ってくる。
「そうなの?」
「そうよ。ステータスもスキルも生命線だって言う人だっているのよ。気軽に聞いちゃ駄目だし、言っちゃ駄目」
「はい……」
まぁ、そうか。もし、……無いと思うけど、もし対人戦となった場合、相手がどんなスキル持ってるのか、知ってるだけで戦い方がずいぶんと変わるだろうし、楽にもなるだろう。生命線と言えなくも無いか。
でも……。これだけ有っても少ないとは……。みなさん、凄いねぇ……。
あー。でも、こんだけあったら、荷物持ちの時、初級魔法(重力)を重ねがけしやすいなぁ。
気持ち軽くなる程度らしいけどさ。その気持ちが大事だよな、うん。
ってなわけで、買い物した物は俺が持つことにした。
母さんは重たいからいいわよ、と言ってくれたが、これくらいはさせて欲しい。
俺のせいで余計な出費をしてくれたのだ。
「調べる」もそうだが、何よりも家に設置して、モンスターや動物が入ってこないようにする『結界石』四個セット×三も買ってくれた。
ワンセット三万。計九万で、母さんは今日、俺のために十万も使ってくれた。
いや、食品は別だからもっとか。
ならこれくらいはしようって思うよね。
それにフフ。初級魔法(重力)があるもんね!
さぁ! 気持ち軽くなるはどれほどなのか!
ってなわけでかけてみたら、ほんと、気持ち軽い? くらいだったので、駄目もとでもう一回かけてみた。
MPは消費されている。って事は成功した? それとも、失敗してもMPは消費される?
…………俺は問答無用で初級重力魔法をかけ続けた。
だって、MP腐るほどあるもん、百回やっても、問題ないよ。MP的には。
俺が唱えるのが面倒だなって思うだけで。
その後、心の中で唱えるだけでも効果があるっぽい事に気づいた。
ありがたい!
一度、三十七回程唱えたところでいったん止めた。
少しずつ軽くなってるせいか、何も感じないのだ。
たとえ、気がするってだけでも、魔法スキルとしてあるのなら、実際に軽くなると思うんだよなぁ。
「……母さん、ちょっと持っててくれる?」
「いいわよ。重かった?」
「そういうわけじゃないけどね」
きっと、その言葉は負け惜しみに聞こえたのかも知れないが、俺の目的は別にある。
ちょっとずつ軽くなっても分からない。
でも、多少でも、持ったままなら急に重くなったら分かるのではないだろうか。
そう思って重力魔法を切ってみた。
母さんは一瞬目を荷物に向けた。
それだけだったけど、何かを感じたのかもしれない。
「母さんありがとう。持つよ」
「なぁに、大丈夫よ」
「いいからいいから。スキルの練習したいんだ」
「そうなの? 分かったわ」
荷物を受け取り、重力魔法をかける。
いっそ、ずっと止めるまでかけ続けられないだろうか、調べるを併用してMPの減り具合で確かめつつ何度かやってみたのだけど、駄目だった。でも、重ねがけは効果があったらしく、重力魔法のレベルアップが一つ上がった。
ついでにいうと、時間がある程度経つと効果が切れるらしく、急に引っ張られるような感覚が起き、ああ、確かに軽くなってるんだな、って実感した。
成人のお祝い。ご馳走が並んでいるけど、他にこれと言った事もなく、強いて言うと、お前等祝う気ねぇだろ! って、突っ込みたくなる感じだった。
でも、母さんには素直にお礼を言おうと思う。
親父と兄貴達は見てろ、今にどかんと金を稼いで吃驚させてやる。
夜には収納も試した。一回かけただけだと、小指一本分も容量は増えなかった。
でも、重力魔法と同じく、重ねがけは出来た。
十回かけたところでレベルが上がった。
それまでは微々たる拡張だったが、レベルが上がっても微々たる物だった。でも、拡張してるのはなんとなく分かる気がした。
生地が全然伸び縮みしないやつから、多少伸び縮みするような感じだった。
これも時間経過したら元に戻るのだろうか、と、疑問に思った。
明日はその実験もやってみよう。
俺は『調べる』にて、自分のスキルを再度見る。
重力見ても、収納見ても、レベルの文字は見あたらない。
レベル上がってるはずなのに! 確認できないって、辛い!
MP使うんだからそれなりに働けや!!
なんて思いつつ、念のためにスキルの内容が、おみくじのと変わらないよな? と見比べていると『調べる』のスキルのレベルが上がった。
おお!! やった! 何が増えた!?
もう一度改めて俺を調べて見る。
自動MP回復というのが増えていた。
……ああ、うん、あるよね。時間経過で回復してるんだろうな、とは思ってたけど、毎分10も回復するのか。
……俺、MP切れになる事なんてあんのかなあ。
これでこの世界じゃ、魔力が少ないってんだから驚きだよ、ホント。
予約掲載で何日分くらいあるのだろうか……。
明日も同じ頃(8時)に更新したいな……。