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だから、チートじゃ無いってば!  作者: 瀬田 冬夏
第2章 ヒューモ族
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お祝い

話はちょっと飛びます。



 あれから、数ヶ月経った。


 村では相変わらず余所から仕入れたものを加工し、販売したが、他の村や街では、村で、個人間で仕入れた物を販売し始めた。

 野菜を仕入れては、屋台をして売り出し、ハサミは糸切りばさみも作って貰って地球の布と共に服飾店に売り出した。


 目には目を歯には歯を。

 俺としてはそのつもりで動いていた。

 俺の店は週に一回が定着してるし、俺が買わなくても他の人が雑貨屋で買ってそれなりに金が巡るだろうと思ってた。

 俺の店は次第にカフェになっていき、雑貨などは減っていったのだ。

 でもそれ(俺の気遣い)が分かんなかったんだろうな。


 雑貨屋のおばあちゃんからは、「この恩知らず」と言われた。


 恩って何? 開店初日の朝一番に店の商品買い尽くそうとしたこと?


 そう思って尋ねたら、びっくりした事に、短命種である俺に正規の値段で売ってやったことらしい。

 失笑してしまったよ。


 潰してやろうかとか本気で考えたが堪えた。

 ゴドーにも言われてたし、潰すと村の人が一番被害を被るから。なんせ、俺の店、週一だし。


 でも、俺の中で雑貨屋が切り捨てられた瞬間だった。

 もし他に店を持とうとする人がいるのなら全力でその人を応援しようと思った。

 母さんにも雑貨屋に頼らなくても良いようにもした。

 それが出来る様になったのだ。

 いやぁ……。…………断捨離やらシムさんのおかげやらで、俺は翌日には全てのスキルを手に入れちゃったんだよねぇ……。

 笑っちゃうしか無い。


 スキル開発者の元日本人の神様や。システムさんはちょっと強力すぎです。




 年の暮れには、新年の祝いを村人総出でやった。

 村の広場でみんなが持ち寄ったごはんを食べて飲んで祝う、ただそれだけ。

 俺はその日、天ぷらとそばを持ち寄った。

 新年の祝いというよりはカウントダウンパーティーなのだから、元日本人としては、年越しそばを食べねば! って気分になったからだ。


 他の皆にも食べてもらおうと、茹でては配ってばっかりだったが、みんなおいしいと言って食べてくれるので、満足だった。


 騎士の人たちも、時間をずらして二人ずつ顔を見せに来ていた。

 神官達はお祈りがあるらしく、誰一人きていない。

 宗教だからか、わりと神官の人たちは村の人達と一線引いている気がする。

 俗世とは関わらないってスタンスなのか。



 何はともあれ、そんな感じで、年明けからゴドーを見てなかったのだが、日曜日には何時ものように顔を出してきた。


「ゴドー、いらっしゃい!」


 俺は笑顔で出迎える。

 何故って。ふふふ。

 なんと、神官は年始に昨年の貢献度によって、ボーナスが貰えるらしい!!

 それを知って、俺、神殿が閉まる直前に大量に気まぐれスキル買ったからね!


 神官のスキルは神官固有のスキルで売ってないし手に入んないんだ!

 たとえば、ゴドーが普通に使ってる防音結界なんかもそう。

 スキルを複数使えば同じ事が出来るけど、一つのスキルでは無理なのだ。

 そんなわけで、未知なるスキルがどんなものなのか、ゴドーさんにゲットして貰うしかないじゃん?


「さぁ、まずは座って。何を飲む?」

「……実に良い笑顔だな」

「そんな事ないぞー?」

「特別手当ならまだ貰ってないぞ」

「え!? なんで!? あんなにいっぱい買ったのに!? 足りなかったのか!?」


 そりゃー、気まぐれスキルは一個の値段が安いから不利かもしれないけど!

 でも、だから……。


「逆だ。買いすぎだ。一万以上買って足りないなんて事あるか」


 おお! 数は十分だったようだ。じゃあ何で?


「来週から私は王都の神殿で働くことになった。栄転だ」

「あれま。おめでとう」

「王都でなんの仕事になるか分からんから、特別手当もまだない。エドはスキルを期待してるかもしれんが、移動の直後だから、先立つものと、金かもしれないし」

「げ。つまんないよ、それは」

「私に言われても困る」

「金なら俺が出すからスキルにしようぜ~」

「さっきも言ったが、私には決められない」

「ちっ」


 お茶にお湯を注ぎながら舌打ちする。


「それでエド、私は誘いに来たんだ。一緒に王都に行かないか?」

「一緒に?」


 思わず問い返すとゴドーはこくりとうなずいた。


「……確かに、村に未練はないな……」


 母さんに会おうと思ったらいつでも会える。

 店も、今、村を出たとしても、勝負に負けて逃げたとは思わないだろう。

 勝ち逃げならあるかも知れないが。


「んー、そうだね。王都も面白そうだ。行くよ」


 俺の答えにゴドーは満足そうに頷いた。

 王都に引っ越すためにゴドーはその後、すぐに帰って行き、俺も引っ越しの準備を始める。

 荷物は引っ越しスキルで移動させてもいいのだが、店の事や普段取引してるおじちゃんやおばちゃん達の所には挨拶と、代替案を出さねばならないだろう。


 その辺りの話をおばちゃん達とし、大体の流れも決まった数日後、ゴドーがやってきた。


「あれ? 昨日から王都じゃなかったっけ?」

「王都での仕事が決まった」


 お! つまりそれってボーナススキルが決まったってことか!?

 ドキドキワクワクしながら続きの言葉を待つ。


「名誉なことに俺は宣教師となり、世界中を旅する事となった」

「それ左遷だろ」


 俺は即突っ込んだ。

 名誉だ何だと取って付けてるが、絶対左遷だろ!

 事実ゴドーの目は死んでいて、突っ込んだら即座に顔をそらされた。


「……い、いや、一応は名誉な事なんだぞ? ここ数百年、出てないしな」

「でも左遷だろ?」

「……とも言えなくはないかもしれないが、でも、だな」

「左遷だよな?」

「……すまないとは思ってる。そんな訳だから、私は王都には住めない」


 本当にすまなさそうに言うゴトー。


「ああ、大丈夫。そこは俺にとってそんなに重要じゃないし」

「そうか?」


 実際、王都に永住する気はなかった。たぶん、落ち着いたら色んな所に行っただろう。

 たぶんゴドーが、誘わなくても、もう二、三年したらそうなっていた可能性が高い。

 週一にゴドーとおしゃべりするために村に戻ってきたとかそんな感じになっていたはずだ。


「うん。王都で金稼ぎするより、ゴドーと一緒に世界中を旅する方が面白そうだしな。話し相手兼護衛くらいはするぞ」

「くらい、なんかじゃない。大いに助かるよ」


 そうして俺たちの旅は始まった。




 ----んだけど、すでに燃え尽きそうである。


 ゴドーが。


「大丈夫かー?」


 初めは横を歩いていたはずのゴドーは、時間が経つにつれて、後方へと離れてていく。

 今では足を止めて息をするのも辛そうだ。


「何故だ……」

「何が?」

「エドは、平気そう、なのに……」

「いやー、俺、体力あるしねー。週一で騎士隊の訓練に参加してたしねー」


 ずっと座りっぱなしのお仕事の人に比べたら、そりゃ体力はありますよ。


「…………運動、不足、痛感……」


 疲れの余りに片言なってんぞー。

 これ以上歩かせるのは無理と判断し、街道から少しそれた場所に、『空気イス』を使って四阿を作る。ちなみに色は涼し気な水色だ。

 こういうのは気分が大事ってことで!


 ……いや、屋根の上にでかい氷を置いたら冷気が降りてきて涼しくなるか? それともいっそ周りに水をぶっ放すか?

 冷たい飲み物を飲みながら涼みつつ、一番良い方法を知っていながらも、それとは別で涼む方法はないかと考えていると、ポンッ。と小さな音がし、マップの一部が瞬いてた。

 マップで確認すると、普段は見ない色のマーカーがあった。


「……ゴドー、ここで休んでろ」

「どうかしたのか?」

「森の奥が騒がしいから、ちょっと様子見てくる」

「そうか。気をつけてな」

「おう」


 まだ体力の回復していないゴドーを置いて、森の奥へと駆けていく。

 マップにあった色は人間と、モンスターを表す黒だ。




あらすじにあった所にまでやっとやってきましたね。

あらすじ、何度か書き換えようとして、かといって何をどう書き換えればいいのやら、で、そのまんまになってました。そこまでにくるまでに19話かかったかぁ。

早かったのか長かったのか……。

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