会話がしたいのです。
今回はさささっと進みます。
翌日、雨も上がり昨日よりも楽に村に帰れた。
時空魔法のおかげでこれからこまめに行ける事になったので、色々出来る。
移動を使って他の町や村にもいけるのではないだろうか。
なんせ『移動』はレベルが上がって、見える範囲だったら一瞬で移動できるし。
行って駄目だったら家に戻ってこれば良いだけ。
そんな事を考えながら神殿に行く。もうすぐ閉まる時間だろうけど間に合ったのなら問題ない。と俺はカウンターに座った。
「お帰り」
「ただいま。お土産」
「今回も買ってきてくれたのか?」
「うん。前回と違うけど、これもなかなか美味しかったよ」
「そうか。あとでありがたくいただく」
「おう。で、引かせて」
「……君は本当にぶれないな」
「そりゃねぇ。楽しみだし。他に金使うところないし」
無いというわけではないが、緊急性を感じない。
普通だったら洋服の一つや二つって思うけど着色で好きに変えられるとなると、急ぎでもないし。清潔の魔法で洗濯物を洗って干す時間もないし……。
むしろ今必要なものと言えばカバンだろうか。こちらは裁縫レベルを上げるために自分で簡単な物をちょっとずつ作っている。
……カバンっていうか巾着だけどさ。
料理だってそうだけど、スキルを育てるって考えると下手に買えないんだよなぁ。だから、結局は神殿でスキルを買おうってなるわけだ。
「神殿以外にも金を使ってくれると経済が回るのだが……」
「あ、それは大丈夫。半分くらいセルキーの街で布代として消えたから」
「すさまじいな」
止めるような事を言いながらも気まぐれスキルの箱を取り出す。
俺はそこに金を入れた。そして、200個のスキルを獲得する。
「そういやさ、神殿によって気まぐれスキルって中身変わるのか?」
「たぶんな」
「あー、だからかなぁ。セルキーの神殿ってわりと耐性系が多い気がする」
「耐性系? それはまた珍しい」
「珍しいのか?」
「あんな売れそうな物はそうそう入れないぞ」
「……神殿でやっぱり管理してるのかよ」
「気まぐれに入っているスキルだからな」
「まぁ、間違っては無いけどな。それに良い物いっぱい入ってるから」
「使い道が分かるとそう思うんだろうな」
ヒヒヒ。とそれらしく笑う。ゴドーは肩をすくめた。
そろそろ神殿も終わるし、とそれで話を終えることにした。
「じゃあ、またな」
「ああ。また日曜日にでも」
「おう」
別れて、俺は家に戻る。
今日はゆっくり風呂に入ろう。
セルキーの宿屋には風呂が無かったので、まずそんな事を思った。
翌朝。移動を使って新しい村を探す。
一時間ほどで次の村に着いた。どうやらここは農村らしい。
周りには畑が広がっていて、……どこで野菜って売ってるんだろう。
道の駅とかはないのか!?
無かったです。
あるわけがないけどさ。
村に居た人に野菜を売っている場所がないのかと尋ねたらきょとんとされた。
どうやらここでは野菜はほとんど買うことがないらしい。
話しかけたおばさんが、売ってくれるというので、原価で買えたと思う。
お礼にとセルキーで買った魚を一匹差し出したら大喜びされて、さらに野菜を貰った。 家に帰って、畑を作り、村で買った芋系を植える。
ちょっと加速を使って成長を早めてみる。芽が出て小さな苗になった所でいったん止めた。いきなり全部やると不味いかなと思ったのだ。苗だったら苗を買ってきて植えた。って言い分けも出来るし。
昼食を食べたら騎士隊の所にいって、剣を教えて貰う。
三時間ほど練習した。
そろそろ隊長さんがまじめに俺を誘うとしている気がする。
なんとかごまかして、逃げるように夕飯を食べて風呂に入った。
翌日は魔法の練習をする事にした。
もちろん。設定を使っての練習だ。
設定、便利だねぇー。
ほんと。
川辺にいって、土魔法を使って、大まかな人形を作って、それに対して魔法使った。
残念ながら、それを対象に出来ないものもあるので、そちらは、魚を対象にしたりした。
魚、スマン。
あと、設定でやってると俺が傍にいなくても問題無いので、空気イスで間違って人が入らないようにして、俺は周りの植物をチェックし始める。
せっかく鑑定もあるのだし、と、図鑑で植物図鑑を作ったのだ。
食べられるのがあるかも知れないし、調味料に使える物もあるかもしれないし。
調味料というよりは香草のたぐいはあった。
あと、わりと根っこが食べられる物があった。
球根タイプかな? らっきょうとかその系統を思い出した。
……カレー食べて~……。
思い出してはならないものを思い出してしまった気がする。
夕方になって、練習を終え、家に戻る。
後は夕飯と風呂と昨日の続きの裁縫をして眠りについた。
いつかカレーも作れたりするのだろうか。でも、俺、カレーの作り方知らない……。
いや、料理スキルを上げればきっと、いつかきっと。
そう思いつつ眠ったせいか、その日の夢はカレーとピザとパスタと麻婆豆腐と、食べたくても食べられない物のオンパレードだった。
起きて泣きたい気持ちになった。
そんな、5月1日水曜日は、暇だからと神殿に来た。
いえ、本当はスキルをひきにきたんだけどね。
なんか、もうちょっとで色んなスキルが揃いそうなのに揃わないといった感じなので、一気に1000個引きに来た。
ゴドーにものすっげー呆れられたけど。
こんだけ引いて、出ないってことは、こっちの気まぐれには入っていないと判断することもできるので。そういうと、ゴドーは納得していた。
ただ、俺に金を持たすとろくなことにはならないな。なんて呟いてたけど。
ひでぇぜ、ゴドー。
あと、神殿に注文していた品物を受け取り、鍛冶屋に行って、はさみを作ってもらうことを依頼する。
仕組みは説明したが、実際に作ってみないとなんとも言えないとのことなので、試行錯誤する金も必要だろうという事で、100本分作るとなったらだいたいどれぐらいの値段になるか確認し、試行錯誤代も交えて150万ほど渡したら、ぽかーんとされた。そりゃそうか。新成人だし、まさかこんな簡単に大金稼いでくるとは思ってないだろう。
金回りがよくなった理由に気まぐれがあるというのはあまり知られたくないなぁ。と思ったので、気まぐれには入っていないと思われる結界系を買うことにした。
ついでにもう一回気まぐれスキルを買う。
もはやゴドーは何も言わない!
それはそれで寂しいぞゴドー!
「あ、ゴドー、竹みたいなの、どこにあるか知ってる?」
「タケ?」
俺が不可解なことを言い出したと結界を張り始めた。
「そう。節があって、そこ以外は空洞になってて、切って使えばコップになりそうなやつ」
「…………あ。チクンの事か? この辺りにはないと思う。必要なら、騎士に聞いた方がいいんじゃないか? 彼らはいろんなところに行くから、知っていると思うぞ」
「ほんと? サンキュー」
アドバイス通り騎士隊に聞きに行ったら山の反対側にあるらしい。
移動にてそこに向かおうと思った時、『結ぶ』のレベルが上がった。
実はちょっと前に、『スキル図鑑』という名前のスキルをゲットしてた。
スキルの『スキル図鑑』はスキルの一覧が見られるのと、『スキル図鑑』を消費して好きなスキルに交換出来るという内容だった。
だから結ぶの上位スキルが何であるかは知っていた。知ってたからこそ、ちょっと不思議だったのだ。
『レベルがMAXになりました。ボーナスとして全ステータス+10ポイントを獲得しました。スキル『システム』を獲得しました』
そう、システムなんだよね。いろいろ突っ込みたいスキル名はあるけど、これは特に異質な気がする。
パソコンとかそういうのが思い浮かぶし、前世でいろいろ見ていた漫画やアニメを思い出す。
ドジっ子妹属性でもいいし、いっそ、女好きの男キャラでもいいから、話相手になってくれねぇかなぁ。
家で一人ってやっぱ、ちょっと寂しいよねぇ。
……スキル相手に会話ってのもどうかと思うけどさ……。
「システムさん、起きてますかー?」
ドキドキしながら声をかけた。
最初の頃に思ったんだよね。
調べるや鑑定の上位スキルならしゃべるのもあるのでは、と。
もし、これが違ってても、他にもいくつかそれっぽい候補のやつがある。
俺は諦めないぜ!
『おはようございます。マスター』
おぉ、しゃべった!!
キタコレ!
『システム起動しました。スキルを統括します。終了しました』
しゃべったと思ったのもつかの間、システムのしゃべりは止まらない。
『システムのスキルにより、ストレージが使用可能となりました。
インベントリーが使用可能になりました。
インベントリー内は時間が経過するため、時空魔法と結びつけ、時間経過により劣化を無くし、状態保存を確保しました。両保管庫のアイテム一覧を作成したしました。
ストレージは『大事なもの』を保管する事を推奨します。
両替機能が使用可能となりました。リアルマネーとスキルマネーの交換が可能になりました。神殿に預けている物以外のお金を全てを両替しました。表示します。
ログ画面を作成します。
会話なども表示可能ですが、指定のある場合のみ表示し、通常はシステムメッセージのみを表示します。
パーティー機能が使用可能になりました。パーティーメンバーのステータスの閲覧が可能になります。また、パーティーメンバーとチャットが可能となりました』
何コレ、ゲーム?
そう思ってしまうのも仕方が無いと思う。
しかしそれは、新たな発見のキーワードだった。
『キーワードを検知しました。スキル開発者からのメッセージを再生します』
はぁ!? え!? ついてけないんですけど!? システムさん!?