表と裏
用意していた水もかけて、家の中に入る。匂いも清潔で消し、イスに座る。
どっと疲れが出てきた。もしかして、やばかったのか? なんて思いもした。
一息ついて、続きをするために、次のスキルを確認した。
空気イスだったので、作ってそちらに座り直した。
……行列待ちの時にこれ便利だよなぁ……。
前世に欲しかったなぁ、これ。
そうしみじみとした。
次は初級剣術と弓術だったので、明日だな。拳術と蹴術は室内でも出来るからそっちをするか。
……数回やったけどこれで良いのかが分からん。途中で止める。
騎士隊にでもいって、本格的に習おうかなぁ……。
次は切れ込みだったので、紙でやってみた。日本でよくみた切り取り線が出来た。
これ、商品になんか役立つかな。
そんな事を考える。
で、次が放出で、さっき使ったからパス。
次は夜の加護。夜か……。これは今可能なのか? お、可能だな。今の時間は21時か。メモっとこ。
加護の説明って、夜とか、朝とかしか分からないから実は発動させるの難しい。確かに太陽の位置でなんとなく今は駄目だとか大丈夫だとか分かったりはするが、はっきりと分かるのならはっきりとした時間があると嬉しい。
だから『時間』スキルは結構嬉しかった。
次は録画やらが出てきてまとめてパスした。
育成とか冷静とか、どうしろと?
育成ねぇ。鶏とか飼えばいいのかなぁ。
耐性はどうしようもないし……。あ、もしかしてさっき、恐怖が薄れて冷静になれたのはこっちのえいきょ……、いや待てよ? 冷静になれたんなら、もしかして冷静のスキルか?
わっかんねー。
そんな感想で終わらせて次に進む。
次が思考加速か……。思考加速ねぇ……。自己強化系のスキルだよなぁ、これ。しかも魔法の方の。育てたら魔法が同時に何連発とかできるのか。そして使い方が分からん……。
次が中級風魔法か……。っていうか、調べるのスキルの並び替えって微妙に並びが変っていうか、初級(風)の次に来ないか普通……。
まぁ、これも明日確かめるとして、次は図鑑か。
図鑑って確か、自分で書き込んでいくんだっけ?
取り出してみるとやっぱり自分で書き込んでいくタイプのようだ。
……スキルの事でも書いてみるか。
収納の上位スキルが引っ越しだとか夜の加護がこの時間には使えるとか。
たぶん対応スキルっていうのは「かく」の事だろうし。
真っ白なページを開いてそんな事を考えていると図鑑が勝手に閉じた。
そして、図鑑の表紙に文字が浮かぶ。
『図鑑のタイトルを書き込んでください』
『スキル図鑑』と記入した。
すると図鑑が輝く。
『図鑑の作成をいたします。対応スキル。『かく』を所持。対応スキル『』を不所持。スキル『かく』と『処理速度向上』を所持。対応スキル『片付け』を所持。スキル『かく』レベル1とスキル『処理速度向上』レベル1をスキル『自動作成』に片付けますか? またその場合、素材に使ったスキルは消失します』
『 Yes/No 』
「…………い、イエス」
ポカンとしていたが、俺はそう答えると、また声が聞こえてきた。
『スキル『処理速度向上』を統合した場合、処理速度が低下するため全ての処理が済み次第統合処理を行います。対応スキル『結ぶ』を所持。対応スキル『』を不所持。対応スキル『録画』を所持。対応スキル『調べる』を所持。対応スキル『鑑定』を所持。対応スキル『』を不所持。対応スキル不足により、上位スキル『スキル図鑑』に至りませんでした。タイトル名を『所持スキル図鑑』に変更いたします。スキル『かく』レベル1とスキル『処理速度向上』を『自動作製』へと片付けました。図鑑を作成いたします』
その言葉を皮切りに、真っ白だった図鑑が書き込まれていく。
俺は呆然とそれを見つめる事しか出来なくて、スキルを確認した。
処理速度向上はなくなり、『かく』のスキルも1個減っていた。
図鑑を確認すると、図鑑『タイトル無し』と図鑑『所持スキル図鑑』の二つになっていた。
パラパラと見ると俺が見やすい並びになっていた。さっき調べるだと見づらいと思った風魔法は連続していた。
読みたいけど、とりあえず、これはひとまず後回し。
今起こった事を考えよう。えっと……。同レベルの「かく」と「処理速度向上」を統合したわけど、……片付けるって言った?
片付けるのスキルって今日ゲットしたやつだよな?
片付けるの備考って「物を片付ける。対象2つ」なんだけど。その結果があれか!? っていうかスキルって統合出来るのか。
あー……だから、重複で持てるのか。納得!
……他のも確認した後、色々片付けてみよう。
ふ、ふふふ。やべぇ。楽しくなってきた!
呪怨などは対象がいないとどうしようもないから飛ばして。鈍足…………も、対象が必要と、次は、手なずける、か。……やっぱ、鶏探すか。そうしよう。
片付けるはいったん飛ばして、次は「未記入の白板」か。
これも対応スキルが必要だからなぁ。そもそも。「真っ白な白板が一つ。対応スキルが必要」とは一体なんぞ? 白板って、ホワイトボードか?
これも処理速度向上があったら勝手に色々やってくれんのか?
しかし、ホワイトボードか。ホワイトボードってことは色々書いたりはったりするよな。磁石で。
「『未記入の白板』を『かく』で使用」
口にしてみると目の前にホワイトボードというよりも、ゲームで見るようなウィンドウ画面になり、……いや違う、前世でみたお絵かきチャットかペイント画面に近い。
それが目の前に浮いている。ちょっと邪魔だな。って思ったら最小化されて視界の端に引っ込んだ。
な・ん・だ・と!?
「『未記入の白板』、『時間』」
すると今度は目の前に時計が現れた。時報の様に言葉にするのではなく、目で見える。
パソコン画面のようにそれを視界の片隅に移動させる。
未記入の白板すげぇぇ! と一人感動を覚えた。
そして先ほど『時間』スキルで浮かんだ違和感に気づいた。
これだ。白板でホワイトボードが一瞬思い浮かんだんだ。刑事ドラマの写真とかそういうのをマグネットであちこちに貼って、相関図とかアリバイ時刻とか書いてるような感じ。
セルキーで見た時から白板って文字が無意識にひっかっかってたのだろう。
未記入の白板はあと二つ。きっと同様に色々使えるのだろう。
慎重に考えて『調べる』と『鑑定』に使ってみた。
調べるでは自分のレベルとHP・MPが表示され、鑑定では簡易鑑定が見たいと思った時に瞬時に表示された。
これは便利だ、そのままにしておこう。
何も考えずに俺はそんな事を思った。
そして次の『移動』を見る。次は凄い。『ほんのちょっとだけ瞬時に移動する』である!
これはもしや転移魔法なのでは!? とやってみた。
「…………?」
何一つ景色変わらず。
あれ? 不発した?
慌ててもう一度使う。
…………あっ。一応、移動はしてるらしい。
ただそれがあまりにも短いから、俺的には移動したという認識がなくて、ちょっと頭が動いたなって勘違いしてただけらしい。
何センチ移動してるかはいまいち分からんが、一回15センチも移動してないな。一歩どころか半歩にも満たないようだ。しかし、レベル1。これぐらい予想しているぞ!
連続して使ってみたら、移動しているのは明らかだった。面白かったから20分くらい遊んでしまった。
そして何故かレベルが上がったのは『調べる』と『時間』だった。
どうやら未記入の白板にセットしている間にも熟練度がたまるらしく調べるや時間などのスキルもレベルアップしていくし、うはうはだったのだが。
もともと放出の影響で減ってたMPが結構がっつり減ってて慌てて移動で遊ぶのを止めた。
これで回復するはず、と思ったが、やっぱり減ってく。
なんで!? と思ったが、そのタイミングで調べるのスキルが上がったとお知らせが入って気づいた。
ああ、そっか。そりゃそうだよね。使ってるんだからMP消費するよね……。
調べると鑑定はレベル上げをしたいので、そのままに、時間とかくをセットした未記入の白板をきちんと閉ざす。
これで少しは減りも緩やかになるだろう。
次は『結ぶ』。たしか、図鑑を使う時に、これが使われていた。
結ぶの備考はこれ。『2つの物を結びつける』である。
試しにイスとテーブルを紐付けてみたら縄というよりも紐っぽいのが二つを結び付けていく。
つまり、これが表の性能なわけだな。で、裏が……図鑑の時、どんなふうに使われてたんだっけ?
えっと……。いや、まて! スキル図鑑! それを見たら分かるかも知れん!
慌てて所持スキル図鑑を取り出して中身を確認する。
所持スキル図鑑は『図鑑』と銘打っている分、調べるよりもまだ詳しかった。
でも、全部じゃない。だって、説明の所に、『スキルのレベル不足によりこれ以上の情報は不明』って書いてあるんだもん。いや、でもこれが分かるだけでもありがたいけどね。
で、「結ぶ」の機能は紐付けというか、接続ケーブルだな。
図鑑であれば、自動作製と、調べる、あともう無いけど処理速度向上により得た情報を自動的に図鑑に書き込むための接続機能というわけだ。
そして俺は閃いた。
「スキル『設定』使用。スキル『結び』で、『時間』と『初級魔法(光)』。1分後に発動」
ドキドキしながら俺は1分後を待った。しかしうんともすんとも言わなかった。
……明日、処理速度向上を買ってからもう一度しよう。
あと、再生と増殖。再生は録画と録音の再生機能だった。正直あまり意味がなかった。
先に録音してなきゃ駄目とか……。で、増殖はさっぱり分からなかった。
で、だ。で!
片付けです! 後回しにしてたあのこ!
使ってみたら、色々レベルが足りないらしくて、自動作成のように別のスキルに変わることはなかったけど。同じスキルで同じレベルだったら片方を生け贄にしてレベルが1上がるという事が判明!!
おかげであれだけ上がりにくかった「調べる」がすでにレベル7。二つも上がったよ!
これは美味しい! どうせあぶく銭だし。明日も買おう!
興奮してなかなか寝付けなかったけど、なんとか頑張って眠りについた。