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乳頭への軌跡

「おーい、おふたりさーん」


 固まったままの二人にどうしたものかと逡巡すること暫し。


「完全に機能を停止しているな。よし、ここは起動スイッチをば」


 おもむろに両手の人差し指を立てアンナの前へ。


「ふむ、大きさは並、ロケット型のやや上向き。そしてそれを守るは皮素材のジャケット。インナーは麻か何かか?」


 透視能力は制限され、モザイクによってその位置を正確に特定することはできない。女神が与えた制限はかなり強力なもののようだ。しかし、彼はそんな事まるで関係ないとばかりに両の指を突き出す。狙いは寸分たがわず、まるで吸い込まれるかのように目標に辿り着く。


「ふっ、俺もかつておっぱいマイスターと呼ばれていた男、乳頭のひとつやふたつ、造作もないことよ・・・・・・」


「・・・・・・おい、何をしている?」


 ケンが顔を上げるとそこには顔を引きつらせたアンナの顔があった。


「まあ、落ち着け。単に先っぽを突っついただけじゃないか。後で僕の先っぽを突っついていいから、まずはその剣をしまうんだ」


「そうよぉ、減るもんじゃないしいいじゃない。それにしてもケンちゃん、最後にやったあの属性は一体何なの?」


ミューラも程なく正気を取り戻したようだ。


「ああ、あれね。あれはなんて言えばいいかなぁ。まあ文字通り時間と空間を司るって感じじゃないかな」


「時間と空間?」


 アンナも未知の属性には興味があったのかなんとか落ち着きを取り戻し話を聞いた。


「うーん、俺もよくわかってないし実際に試してみるか」


 ケンは時空魔術を発動した。すると十センチ程の暗くもなく明るくもない色、先ほど水晶玉が放った光に似た鈍色の穴が宙に浮いていた。厚みはなく左右から見ると空間に細い線が見える程度で前後からしか認識できない穴。それはどこまで続くかわからない見るものを不安にさせる深淵。


 しかしケンは何の躊躇もなくその穴に指を突っ込んだ。


「ふむふむ」


「お、おい、ふむふむってそれ、大丈夫なのか?」


「うん大丈夫みたい。・・・・・・あっ!ワープってことはもしや」


「何かわかったのぉ?」


 気づくとミューラの前にもうひとつの穴が存在していた。そしてその穴からは細い指がにょきりと生えていてミューラの乳頭を正確に射抜いていた。


「やはりな。これは乳頭に触れることができる魔術!」


「さすがおっぱいマイスターねぇ。私の乳頭を当てるなんて大したものだわぁ」


「強敵だった。その大きさに惑わされ、もう少し下だとも思ったが、自分を信じて本当に良かった」


「・・・・・・え?まさか本当にそれだけの魔術なのか?」


 当惑、今のアンナの状態は正しく当惑であった。


「そんなわけないでしょぉ、これは、物体が移動する時間と距離を無くすことができるすごい魔術よぉ」


「時、と距離、を無くす?」


「まあ無くせるといってもこの小さな穴に通るもの限定だけどね」


「それは多分、ケンちゃんの体内魔力が少ないことが原因だと思うわぁ。さっきの水晶玉の光の強さってその人の魔力の強さと比例するんだけどぉ、大分弱い光だったものねぇ」


「ああ、やっぱそういうことだったのか。自分でもなんとなくそんな気がしてた」


「魔力量が少ないと術の規模は小さくなっちゃうのよねぇ。せっかくたくさんの属性を持っているのに少し勿体無いわよねぇ」


 体内魔力量が魔術の規模を左右するということは、魔力量の多寡が魔術師の能力を決めるといっても過言ではない。ケンの魔力量ではせいぜい数センチから十数センチ規模の、もしくはそれに準ずる性能の魔術しか使えないのだ。


 そのことに思い当たり、アンナはケンに詰め寄った。


「お前!そんな魔力量で飛竜を倒したというのか!?それもさっきの時空魔術とやらの力なのか!?」


「飛竜?いったいなんの話かしらぁ?」


 しまった。アンナは一瞬そう思ったがミューラなら飛竜の話をしてもパニックにはならなそうだし、悔しいが自分より知恵もある。ならばいっそ昼間の出来事を話し、何か意見を貰えれば明日のギルドへの説明の助けになるかもしれない、そう考えてアンナは口を開いた。


「・・・・・・なるほどねぇ、居るはずのない飛竜、そしてそれを倒したケンちゃん」


「ああ、こいつは飛竜の頭の中を直接焼いたと言っていたが、やはりさっきの時空魔術なのだろうか?」


「いえ、恐らく違うわぁ、魔術は原則として目に見えない所に発動することはできない。それはイメージを現実にする魔術の原則、未知の属性といえどそこは変わらないはずよぉ」


「確かに・・・・・・。そういえばこいつは他にも『とうし』がどうとか言ってたな・・・・・・」


「とうしぃ?」


「おい、いい加減ミューラの胸で遊ぶのはやめてお前から説明してくれ」


 ふたりが話している間、ケンはその小さな頭をミューラの豊かな胸に挟み、虚ろな目で現実世界からトリップしていた。


「おっぱい、それはおっぱいにしておっぱいなもの。人それをおっぱいと呼ぶ・・・・・・。おのれぇ!出たなおっぱい!おっぱいの力を思い知るがいい!!・・・・・・うふふふ、ははは・・・・・・」


「だ、だめだ・・・・・・。完全にイってしまってるな・・・・・・」


「ケンちゃん、お姉さん達にお話聞かせてくれるかなぁ?そうしたらお姉さん達ふたりですごいイタズラしてあげちゃう」


「はい、なんでも聞いてください。僕にお答えできる事なら全てお話させていただく所存でございます!」


 急速に目に光が戻り、キビキビと行動するケン。ケンは前世のことから始まり今に至るまでの全てを話した。


 リビドーに従順な男の鬼気迫る話し方は聞く者を圧倒しその信憑性を高めた。加えてミューラの論理的な質問や考察もあり、アンナも今回ばかりは戯言と切り捨てることなく最後まで話を聞いた。


 透視に関しては隣の部屋に移動したアンナのポーズを当てるなど実践して証明した。


「うーん実際に目の当たりにしたら信じざるをえないんだがやはり信じ難い」


「まあ、俺も逆の立場だったらそうだと思うよ」


 全てを話したことにより口調も元に戻るケン。実際このふたりに対しての信頼の表れでもあるのだろう。


「それにしてもぉ、いちばん驚いたのはケンちゃんが実はオジサマだったってことよねぇ。」


「しかし、随分くだらない理由で子供に生まれ変わったんだな」


「くだらなくなんかない!!これは男子の夢なんだ!!」


「いいわぁ、すごくいいわぁ、大人の精神に子供の身体、凄く興奮するわぁ」


「おい!騙されるなミューラ!こいつはこんなナリして実はおっさんなんだぞ!正気に戻れ!」


「それがいいんじゃない」


「わーアンナおねえさーん!」


「やめろ!後ろから抱き着くな!この!尻に顔を埋めるんじゃない!」


「それ後でお姉さんにもやってねぇ」


ふんごほんごー(よろこんでー)!」



「ミューラ姉、いつまで騒いでんのー?」


「ナディ!いいところに来てくれた!こいつらを止めるのを手伝ってくれぇっ!!」


「あらあら、ナディちゃんも仲間に入りたいのかしらぁ?」


「え?なにこの子?え?だっこ?いいわよ。いらっしゃい」


「わーい、ナディお姉さんありがとー」


「騙されるなぁあ!ナディぃいい!!!」


「うふふ、賑やかねぇ」


こうしてケンの異世界初日の夜は更けていく。











ブクマ、評価してくださった方、ありがとうございます。良い点悪い点、なんでもいいので感想なんかも頂けると今日もエッチな夢が見れそうです。これからもこの作品をよろしくお願いします。

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