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変態の化学反応

 日が沈むころ、ケンとアンナはメルカの城門に到着した。閉門前ということで混んでいるのか十数人の列ができていた。


「なんとか閉門には間に合ったな」


「さすがアンナさん、素晴らしい健脚!」


「ほら、入門審査があるからいい加減降りろ」


「へー、そういうのがあるんだ」


「なに、簡単なものだ。身分証を持っていればそのまま通れるし、なくても二、三質問されて入門料を払えばおしまいだ」


「え、金かかるの?」


「それくらいだったら払っといてやる」


「あざっす!!」


「次の者!前へ!」


 門番に促され二人は前に出る。アンナが金属製のカードを門番に見せる。


「お帰りなさいアンナさん。それでこの子は?」


 どうやらアンナと知り合いらしい門番は、彼女が連れている子供について尋ねてきた。


「ああ、こいつはファルーガの森で拾ったんだ。ちょっと特殊な事情があってな、ギルドマスターに判断を仰ぎたくて連れてきたんだ」


 飛竜が街から数時間のところに現れる、既に倒されたとはいえそれが伝われば住人がパニックになるのは確実。どこから漏れるかわからないのでギルドに報告するまでは必要以上の言は避けたほうが良いと、アンナは思っていた。


「ギルドマスターにですか」


「ああ、入門料は私が払うからもういいか?」


「そういうことでしたら大丈夫です。ただ、大丈夫だとは思いますがその子供が何か問題を起こした場合はアンナさんの責任も問われますのでご注意ください。それではどうぞお入りください」


 領主と共にこの街の運営に深く関わっているギルドマスターに判断を仰ぐ、何か問題があればそちらで対処するのだろうと考え門番はケンの入場を許可した。


 門を抜けるとそこは目抜き通りとなっており、日が落ち始めた時間でも人通りはそれなりに多く、この世界で初めて目にする街の光景はケンの目を楽しまていた。


「おぉ、すごいなー。さすがファンタジー、よくわからないものがいっぱいある」


「ほら、キョロキョロしてないでさっさと行くぞ。今日はもう遅いからギルドに行くのは明日にしてどこか宿に入ろう」


「こんな少年を宿に連れ込んでなにをするつもりっ!!」


「はいはい、そら行くよ」


 さすがにアンナも慣れてきたのか反論することもなくヒョイとケンを担ぎ上げて歩く。


「そうだ、ちょうどいいからあいつのところに行くか」


「あいつ?」


「道中に言ってたろ?治癒魔術に詳しい奴を紹介してほしいって。そいつは変わり者でな、治癒魔術なんか使えたら治療院でもなんでも引く手あまたなんだが何故か宿屋を経営していてな」


「へー、じゃあ今からそこに行くんだ?」


「そうだなぁ、あまり気は進まんがお前の不思議な魔術についても何かわかるかもしれないしな。ほら、あそこに見えるのがその宿屋だ」


 通りから一本入ったところにその宿屋はあった。アンナはケンを担いだまま扉をくぐった。


「あらぁ、いらっしゃい。久々に顔を出したと思ったらそんな子供を連れ込むなんて、アンナちゃんって少年趣味だったの?」


「違うわ!こいつはちょっと訳アリで森で拾っただけだ。明日ギルドに連れていくんだが治癒魔術が使える奴に話を聞きたいらしくてな、ちょうどいいと思って連れてきただけだよ」


「それは残念、遂にアンナちゃんにも春がきたとき思ったのにぃ」


「うるさい!」


「それはそうといい加減その子を紹介してほしいな」


「こ、こいつっ・・・・・・はあ、まあいい。こいつはケン、こんなナリだが魔術が使えるふざけたガキだ」


「その年で魔術が使えるって本当?それはすごいわねぇ。私の名前はミューラ、アンナちゃんのお友達よ」


 ミューラと名乗ったその女は、実に男好きのする身体を持ちその豊満な双丘がこれでもかと自己主張している、そこにいるだけで空気がねっとりするかのような色気を放つ美女であった。そしてケンは先ほどのアンナとのやり取りを見て思った。こいつはこちら側の人間だと。


「はじめましておっぱいのお姉さん。アンナに手籠めにされてしまうであろう少年ことケンです」


「こちらこそはじめましてぇ。アンナちゃんは初めてだからちょっと乱暴になっちゃうかもしれないけど、頑張ってね」


「はい!僕はMッ気もあるので多少の痛みはご褒美です!」


「あらあら、これは将来大物になりそうね」


「それにしても立派なおっぱいですね。これはいい仕事をしています。・・・・・・少々触れてみても?」


「もちろんよぉ。・・・・・・あら?あなた、もしかしておっぱいマイスターなのかしら?」


「ふっ、昔の話ですよ。東に巨乳があれば行ってそのたわわな果実に顔をうずめ、西に貧乳あれば行って吸って舐ってしゃぶる。そんな生き方をしてた時代もありました・・・・・・」


「まあ、随分と苦労したのね・・・・・・。でも今は全てを忘れてこの胸に甘えてもいいのよ?」


「よろこんでぇえ!!」


 きゃっきゃといい笑顔で戯れる二人。アンナはプルプルと怒りに震えながらその会話を聞いていた。


「おまえらぁあ!!いい加減にしろぉお!!!」


遂に腰の剣を抜き放ち怒号をあげた。


 アンナの受難はまだ始まったばかりなのかもしれない。





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