神域にて脱ぐ
此処ではない何処か、気がつけば健は佇んでいた。
「・・・・・・ここは?・・・・・・俺は一体?」
「気がつきましたね、健」
いつからそこにいたのか、どこから来たのか、そんな疑問も置き去りに彼女はいた。
少女にも妙齢の女性にも見える美しい女、色気とあどけなさ、完成と未完成の境界線上を優雅に舞うような捉えどころのない女が、そこにいた。
「健、貴方は超常の力を手に入れた為、その肉体が耐え切れず死んでしまいました。しかし人の身でそれ程までの異能を手にする、それは並大抵のことではありません」
「俺は死んだのか?なら、あんたは一体?」
「ふふ、このような状況でも私の裸体を視ようと能力を使ってみる。その能力のせいで死んだというのに。なるほど、それが貴方の力ですか」
「どうにも貴女が魅力的過ぎてね。どうだろう?ここはひとつの俺も脱ぐので許してください」
「け、結構です。とにかく、貴方は死にました。ですが、その異能を手に入れた貴方の執念、魂の強さはここで消え去るのは勿体無いと思いましてね。そこで女神たる私が貴方にチャンスを与えようと思います」
「確かに貴女のような美人、女神と言われても素直に信じられる。・・・・・・それにしてもチャンスだって?」
「ええ、なのでとりあえずパンツを履きなさい。」
「しかし、これは男が一度口にしたこと、ここで止めるわけには「履きなさい」
「断る!」
「ッ!こ、心が、強い!こいつなんなの!? ならばッ!」
この神域において絶対の力、女神の権能をもってして現状が書き換えられる。認識の埒外で行われた着衣、それは獣から人へ、本能から理性へと導くかのような、正しく神の御業であった。
「これはこれは、まったく初心なお嬢さんだ」
「・・・・・・もう、なんかいっそ関心するわ・・・・・・」
「光栄です」
「・・・・・・えーと、どこまで話したっけかな。・・・・・・そうそう、チャンスよチャンス。要は異世界でもう一回生きるチャンスをあげるって話よ」
「異世界ねえ。ちなみにどんなところなんだい?」
「あんた達の世界でいういわゆる剣と魔法の世界ってやつよ。」
「ほう、で、俺はその異世界とやらでなにをやればいいんだ?」
「あー、別にないない。魔王倒せとか世界を救えとかないから。ただ私はあんたの異能を手に入れる程の魂ならきっと転生にも耐えられるかなって思っただけだから。意外と転生って魂に負担がかかって耐えられる奴ってなかなかいないのよ。強いて言うなら暇つぶしかな」
「暇つぶし、大いに結構。で、転生か、ということは赤子からやりなおすということなのか?」
「そこらへんは融通きくわよ。今度は透視能力があっても耐えられる身体にしとくし、赤ん坊からでも今の姿のままでも大丈夫よ。ちなみに赤ん坊からならどっかの夫婦の子供として産まれるわ。それ以外ならどっか適当な所に転移って感じかしらね。」
「ッ!?ということは例えば八歳くらいとかも出来るのか!?」
「できるけどあんまりお勧めしないわよ?さっきも言ったけど赤ん坊以外は適当な場所に転移だから中途半端な年齢だと厳しいわよ?」
「馬鹿野郎!!」
「ッ!?」
「中途半端だから良いんじゃないか!まだ、性に目覚めてない青い身体をエッチなお姉さんに悪戯されたいって全男子の夢が叶うって事だろうが!!」
「え、え~?そんな事の為に命をかけるわけ?身寄りのない八歳児が簡単に生きていけるほど甘い世界じゃないんだけど」
「それでも!! 男にはやらねばならん時があるんだ!それに身寄りが無いってのもプラスポイントだ。悪戯されるにあたって相手の心理的ハードルが下がる!」
「はあ、なんかもう好きにしてください・・・・・・。いい加減疲れたわ。で、容姿はどうする?」
「生前の俺の子供時代を踏襲してくれ!愛らしい少年だったからな!」
「はいはい、じゃあそれでいくわよ。一応死なないように頑張りなさいよね」
「板垣死すともエロスは死なん!エロスある限り俺も死なん!」
「じゃあそろそろいくわよー。あ、ちなみに透視能力は使えるけど、ちょっと制限かけたからー」
「なんだと!?それは一体どうぅうわぁああ!」
眩い光が健を包み込む。異なる世界へとを繋ぐ魂の架け橋。此方より彼方へ、彼方より此方へ、辿り着く場所は神のみぞ知る。
ほとんど会話文になってしまった・・・・・・