我が悲願の達成と頓挫
「ぬぅぐぐぐっ!」
集中だ! 集中集中!
「かぁっ!」
・・・・・・み、視える!視えるぞ! せ、成功だ! ついに、ついに俺はやったぞ! 古から続く男子の夢、透視能力を俺は遂に手に入れたんだ! これで、気になるあの子の裸体を眺め放題だぜっ!ひゃっほう!
透視能力を夢見て三十余年、長かった・・・・・・実に永かった。周りより少しだけ早熟だった俺、朝加 健がリビドーに目覚め、未だ見ぬ理想郷を求めて透視能力の開発に乗り出したのは、もはや必然だった。そしてその努力が報われたと、目の前の現実が物語っている。そう、テレビの内部構造が視えているという現実が!
ふっふっふ、今日もいつものようにテレビに出てたエロい格好した姉ちゃんの裸でも見えないかな?と試してみたらまさかテレビの中身が見えるとは・・・・・・。よくよく考えてら当たり前だけど。そりゃそうだよな・・・・・・。
まあいいさ!少年のころに見た夢が叶ったのだ! これからは俺の人生は始まるのだ! 透視能力を欲しいと願い、早々に訓練を始めた当時の健少年に感謝だな。
しかし、まずはこの獲得した能力の把握をしなくてはな。俺ももはやいい歳だ。飢えた男子高校生じゃあるまいし直ちに理想郷を目指すこともあるまい。
よし、そうと決まればまずは姿見の前に移動してと。うむ、今日もいい男だな俺。三十路を越えたあたりから大人の色気とでもいおうか、なんかそんな渋さが出てきておる。うん、それでは透視発動!
ふむふむ、服は問題なく透けて見えるな。引き締まった素晴らしいボディだ。本来の目的としてはこれで十分なのだが、どこまでできるか興味はある。次は体の中とか視れるかな、と。
おお、いけるじゃないか。しかしこれはまた随分と気持ち悪いな。へー、本とかでしか見たことなかったけど実際に自分の内蔵を視るとなんか妙な気分だな。えっと他には・・・・・・。
よしよし、大分わかってきたぞ。どうやら俺の意思で自由に透視範囲を変えられるみたいだ。服が透けると思えば裸に視えるし、皮膚まで透けろと思えば人体模型よろしくな筋肉丸見え人間に視えるし、その先の骨格状態、更にはその対象、例えば人であればその人体そのものも透けて視ることができる。なかなかに使い勝手が良さそうだ。つまりは目視できる距離ならば障害物に関係なく、全てのものが視えるといっても過言ではない! ふはっ!ふはははは!始まったな! 俺の時代!
よーし、そうとなったら街に繰り出すぜ!まってろよ!かわい娘ちゃんたち!
意気揚々と玄関から外に出た瞬間、何の前触れもなく唐突に俺は地面に崩れ落ちて倒れ、死んだ。
次から三人称になります。