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殺神犯  作者: Nastur kyo
2/4

01

 朝のニュースは最近多発している連続殺人事件についてで大騒ぎだ。

昨日もまた5人ほどの罪無き一般市民が犠牲となったらしい。

そんなテレビを横目で見ながら、少年は身支度を整え家を後にする。

  * * *

家を出た少年。名を天野あまの 星河せいがは、ゆっくりとした歩調で学校へと向かう。

身長は180cmほどで、がっしりとした体格。

顔……というか醸し出している雰囲気が疲れ切っているのもあって到底花の高校生などには見えない。

それに加えて、右手には学生鞄を持ち、左手は腰の鞘に添えており、背中には結構丈夫そうなゴルフバックを背負っているため大変異様であり、何より奇妙である。

……?

先ほどの説明の中で多少…いや、相当場違いなものがあったと思うが、それはそれ。気にしないほうが身のためである。

……そう。彼はいつも腰に模擬刀を装備している。

というのも、彼曰くいつ如何なる時敵に襲われてもいいように武器を携帯しているとのことなのだが…。

やりすぎだろう。というのが、周囲の総意である。

それでも彼は刀を手放そうとはしない。

まったく、何がそこまで彼を頑なにするのか。

気になる者はいても、誰も彼に直接訪ねることはしなかった。

何しろ180cmを超えるがっしりとした体格である。

怖くないはずがなかった。

それもあいまって、彼が刀を持つ理由を知る者は、一人として学校には存在していない。……学校には。

ちなみに背に背負っているゴルフバックの中にはいったい何と戦うのかと追求したくなるほどの多種多様な武器が収められている。

例を挙げるとすれば、腰に佩びている刀よりも刀身が長い太刀や、太く重く頑丈な大剣。長短共に継ぎ目のないしなやかなフォルムの槍等だ。

その他にも、一度周囲に知れてしまえば警察なりなんなりが光の速さで飛んできそうな物が満載されている。

何はともあれ、彼はそういう人間なのだ。

……そこのあなた、現実から目を逸らさないでほしい。

 「おはよう、星ちゃん。」

学校への道を半ばほど進んだころ、彼に話しかける一人の少女がいた。

よく見てみると、彼と同じ種類の制服を着用している。

だがしかし、こちらは何というかきらきらと輝いて見える。

……。決して彼が更けているとか、やさぐれているとか、雰囲気がおっさんだとかいうことは関係ない。……たぶん、きっと、恐らく。

まあ、十中八九彼女が見目麗しい容姿をしているからなのだろうが、彼が若々しくないことも紛れようのない事実である。

そんな二人の関係だが、いたって簡単。親戚である。

互いの親が従姉同師であるため、彼らは、はとこ同師となる。

そんな彼女は光海ほしぞら 夜絵華やえか。星河よりも一つ年上だ。

身長はあまり高くないが、普段から醸し出している柔らかな雰囲気もあり、

全てを包み込んでくれるような、そんな母親を彷彿とさせる少女であり、

とても頼りがいがあるように見える。

実際にもそのとおりであり、彼女を慕う者は数多く存在している。

当然いつもそばにいる星河には嫉妬のこもった視線が向けられているが、誰も手を出そうとはしない。……いや、手を出さなくなった。

2年前のことである。

当時も彼は刀を腰に佩びていたが、そんなものアウトオブ眼中の精神で気に留めることもせず、複数でならどうにでもなるだろうという安易な思想のもと星河を襲撃した一団があった……のだが。

結果はひどいものだった。

彼を襲撃したのは男子生徒4人。全員が金属製のパイプを手に彼へと襲い掛かった。

しかし、素人が降るパイプなど星河に当たるはずもなく、疲労で動けなくなるまでよけられ続け、地面にへたり込んだところを抜き放った模擬刀で2度と彼にはむかうことの出来ないほどまでに徹底的に痛めつけられたのだった。

具体的な内容だが、これを言ってしまえば対象年齢が跳ね上がってしまうといえば十分だろうか。

だいたい、何も理由がないにもかかわらず刀を持っていれば警察なりなんなりが駆けつけるだろうにそれがないということは彼が正当な理由のもとに刀を佩びていることになると分かりそうなものなのに、彼らには分からなかったらしい。……可哀そうに。

そうは言うものの、やはり刀を持ち歩く彼が非常識なことに変わりはない。

ともあれ、それ以後彼に向かって何か行動を起こすものはいなくなった。……表だっては。

 「ああ、おはよう。」

目立った敵対行動をとらない限り、彼は自ら手を出そうとは決してしない。

それは一種のポリシーのようなものだった。

『仇名す者には刃を 慕い共に歩む者には盾を』

それが彼の家の家訓なのである。……物騒なことこの上ない。

それもあり、先に述べた少年たち以外には被害者は出ていない。……表立っては。

長々とまどろっこしいことを述べてきたが、つまりは、『やられたら1000倍返し』が彼のモットーなのである。

さらに、彼の友人などに危害を加えた場合にはもう2桁ほど倍率が上昇する。

以上のような一見冷静沈着に見えるものの、時折マグマのごとく熱くなるのが、天野 星河という人間なのである。

 「もう、朝くらいはもっとにこやかにしなきゃ。もてないよ?」

 「大きなお世話だ。俺にはこれ以上いろんな奴の面倒は見きれん。無理だ。変わってくれ。一層のこと一緒に住むか?」

 「えっ?いいの?」

 「良いわけあるか。……はあ」

 「もう、だからにこやかにしなきゃダメだっていってるのに」

 「悪いな。無理だ」

 「はあ……」

 「おい、朝からなんて顔をしてんだ?もっとにこやかにしないとな」

 「それを言うなら星ちゃんもでしょうが! っていうか、それ私が言ったことと同じだしっ!!」

 「ふん。あまり細かいことを気にしすぎると皺が増えるぞ。……皺」

 「もう!! なんでそんなこと女の子に言うの!? デリカシーがないよ!なさすぎるよっ!!」

 「ほめるなほめるな。てれるだろう」

 「ほめてないったら! もう……」

毎朝恒例となった言葉の応酬をしながら、彼らは学校へと向かうのであった。

 「ふみゅう…。せいがぁ…、眠いいいい…。……お休み……」

そうしていると彼の内ポケットからひょっこりと羽の付いた何か。ぶっちゃけ妖精なのだが、それが顔をだし、自己主張をしたのちに引っ込んでいった。……何のために出てきたのか。

それは聞かないお約束である。

 「はいはい、じゃあ人の目につかないところで寝ろ。……ほら、もう他の奴らの面倒何て見てられないんだよ、俺は。家に帰ればこんなのが嫌になるほどいるんだぜ……はあ。ってか何しに出てきたんだこいつは」

それは聞かないお約束である。

まるで残業明けのサラリーマンのごとき哀愁を漂わせる星河に苦笑いを浮かべながらも言葉を掛ける彼女はやはり優しい。

 「……ま、まあしょうがないよ。星ちゃんだし」

 「おう。まあ、そうだよなあ……」

 「せいがあ、もっと甘えさせろおう……。もっと……。もっと……、肉体的に甘えさせろおう……。ふみゃあ。」

 「な、何て寝言言いやがる!こいつは!!」

 「せ、星ちゃんおうちで何してるの!?!!」

 「なにもしてねえよ……」

 「に、肉体的に甘えさせろって……。あんな…こととか。こ、こんな……ことなんかもしたりしちゃったりして!! ……ぽっ」

 「お、おい! お前まで何てこと想像してやがる!」

 「え? あ! ……その。……き、昨日はお楽しみでしたね……? あ、あれ? これでいいんだよね??」

 「よくねえよ!! 誰だよ。お前にそんなこと教えたのは!」

 「ええとね。万葉かずはちゃんだけど? ……間違ってるの?」

 「かああずううはあああ!!」

 「きゃ! き、急に大きな声出さないでよ」

 「すまんが無理だ。怒りが、怒りが好みを支配する。 かああああずううううはああああああああ!!」

 「はいはーい。呼ばれて飛び出て自主規制!! 万葉ちゃんだぜい」

 「よし。とりあえず一度切らせろ」

 「ちちちちょっと、星ちゃんってばダメだよ、人が見てるところでそんなことしちゃ」

 「あれ? 違うよね? 注意することそこじゃないよね? それだったら、人けのない所だったらあたしってば星河っちに木端微塵に切り刻まれちゃうよね?」

 「安心しろ。塵も残さん」

 「もう、星ちゃんってば、かっこいい」

 「やばいっ! 逃げ場が、逃げ場がナッシングだ!!」

 「さあ、万葉。二人で話をしよう。人のいない静かな場所、そうだな墓地にでも行こうか」

 「うわあああん。まさかのツーナッシング!! このままじゃ、スリーアウト、人生すらもゲームセットだああ!!」

 「……定めだ。受け入れろ」

 「何さらりと死刑宣告してるのさっ!!」

 「それじゃあ、私は先に行くね。星ちゃんも遅刻しちゃダメだからね」

 「あたし、あたしは?」

 「心配ない。すぐ追いつく。俺のことは気にせず、先に行け」

 「だーかーらー。あたしのこと気にして先に行かないでってば」

 「うん。それじゃあね。ばいばい!」

 「ぬおおおおお。女神があたしを見捨てていくう。」

 「それじゃあ、行くか。地獄へ」

 「あ~な~や~!!」

その後、彼女の行方を知る者は誰もいなかった……らしい。


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