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紅月の神

お久しぶりです。甲崎零火です。


今回はHALTAさんからのリクエストを頂き、本編の続編を書きました。


……正直、こういった形の結末を全く考えてなかったので、自分でも書いていて本当に以外でした。こうしてみると、やはり投稿するという形で、私以外の人の影響を受けて物語が進むのだなと感じます。


リ、リクエストに上手く答えられたかは分かりません……けどっ。彼等が結ばれるにはこれ以外方法がないかな、と思います。た、たぶん……汗


では拙い作品ですが、このキャラクター達を愛でて下さったHALTAさんに最大級の賛辞を込めて……


「大樹が枯れたその後に……」の本当の意味での最終話をご覧くださいませ。

 あれはいつのことだったか。

 今こうして、琉禍を引き連れて暗闇を歩いていると、過ぎる記憶がある。

 回想しながら黙々と歩いていると、隣で、息を荒くしていた琉禍が遅れ始めた。

 無理もない。社会人になってからは運動など録にしていなかっただろう。

 かつての俺もそうだった。

「少し、休もう」

 気を使った素振りを見せれば、琉禍はけして頷かないだろう。

 あくまで、琉禍の様子など見てないふりをする。

「は、い」

 上がった息を無理に押し隠しながらの返事。ほっとした様な顔は隠せない。

 嗚呼、でも。

 気を使われることに同時に喜びも感じるだろう。

 自販機で買った水を、蓋を開けてから琉禍に手渡す。

「……今まで、どこにいたんですか?」

 喉を潤してから、重い口を開くように彼は言った。

 無理もない。いくら琉禍自身知っているとはいえ、俺は琉樹を、彼の姉を殺した連続殺人犯だ。

 迎えに行っても、彼は待っていましたとしか言わず、ただ黙ってついて来た。

 いつからあるのか、身の回りの持ち物すら用意してあった。彼が出かけにしたのは、銀行に寄って貯金を全て下ろしたことだけ。

 その想いの深さ。琉樹の生き写しのようだ。

 だが、俺が琉禍の好意を踏み躙るようにしているのは間違いない。

 その想いに答えられるなら、本当はなんだってしてやりたい。

 けれど、それは出来ない。俺は骨の髄まで大樹のものだから。

 そうで、ありたいから。

 それでも、想わずにはいられない。

 琉禍と何もかも忘れて生きられたなら……

「色んな所を回っていたよ。観光地なんかも見て回った」

 せんのない思考を振って払い、俺は微笑んで言った。

「観光地……随分な所にいたんですね。よく見つからずに……」

 俺が殺人を起こす場所は主に東京を中心とした関東近辺だ。

 捜査もその周囲に限られる。出入りだけ気をつけていれば、何の不都合もない生活だった。

 そう言えば、樹さんが鈍いんですよと笑う。

 そうやって、無邪気に笑う顔は、大樹とも琉禍とも似ている。

 そんな言葉は、琉禍にとって苦痛でしかないのだろうが。

「……いつだったか、こんな風に二人でいたことがありましたね」

 そうだ。もう十年以上も前に。

「俺がまだ幼稚園に通ってた頃でしたね……遊びに来たキャンプ場から離れて、迷子になって」

「……それで、俺が琉禍を見つけたんだ」

 そうでしたね、と笑いながら相づちを打つ琉禍。

「そしたら、俺が今度は足滑らせて」

「……あれはまいった」



 見つけた琉禍と一緒に、俺はキャンプ場に向かって歩いた。

「……琉禍!?」

 隣を歩いていたはずの琉禍が、唐突に消えた。

 一拍遅れで、短く高い悲鳴が聞こえる。

 慌てて暗い道に眼を凝らしてみれば、よくよく見ればそこは崖になっていた。

 浅いが、子供にはそれなりに高い崖から、琉禍が落ちたのだ。

 足を挫いた琉禍は泣きこそしなかったが、眼に涙を一杯に浮かべて俺を見つめた。

 俺は琉禍を引き上げることを無理だと判断し、大人を呼びに行こうとした。



「何せ、落ちても泣かなかったのに、俺が離れようとしたら泣き出すんだからな……」

 回想しながら、そう呟いてやると、あの頃より段違いに大きくなった琉禍は顔を赤くした。



「待ってろ。今、誰か呼んでくるからな?」

 俺は振り返ってキャンプ場に向かって走ろうとした。

 すると後ろから微かに嗚咽する声がする。

「どうした!?どっか怪我したのか?」

 琉禍は静かに、ぼろぼろ涙を零し始めた。

 慌てて俺が理由を問えば「樹兄ちゃんいかないで」と言う。

「すぐだよ。すぐ戻ってきて助けてやるから」

 琉禍は頭を振る。そして涙も流れるままにこう言ったのだ。

「たすけなくていいから、いかないで」

 俺は驚いた。琉禍はこんな風に、訳の分からない我侭を言う子ではない。

「なんで……」

「樹兄ちゃんがいれば、それでいいからぁ……」

 そういってまた泣くのだ。

 俺は頭の中が真っ白になった。予想外の展開過ぎた。

 だが、それも一瞬。俺はすぐに決めた。

 俺はその崖から飛び降りた。

 目の前には呆然としたような琉禍の顔。

「じゃあ、一緒にいる。一緒に待つ」

 俺は格好つけて、琉禍の頭を撫でてやった。……予想外に痺れる足を隠しながら。

「お兄ちゃん!」

 琉禍は嬉しそうに俺に抱きついた。

 頭を撫でてやりながら、考える。

 いつの間に、こんな風に好かれてしまったのだろう。



 それから俺たちは、探しに来た親達に見つけられるまで一晩、抱き合っていた。

 寒いからと、ぐずる琉禍が離れなかったためでもあり、俺があの暗闇の中で唯一の温もりを離したくなかったためでもある。 

「……こんな感じだったな」

 俺はそう言って、後ろから琉禍を抱き寄せた。

「い、樹さん……?」

 慌てふためく琉禍の声は聞こえないふりをする。

 自分でも、何故こんな行動をしたのか分からない。

 ただ、当時からただ俺だけを見つめ続けていたのであろう琉禍が、哀れであり、可愛くもあった。

 そして……当時感じた、あの「暗闇の中での唯一の温もり」という発想が、現状と重なって思えた。

 琉禍の肩口に顔を埋めながら、俺は考える。

 俺にとって、やはり何よりも優先されるべきなのは大樹の存在だ。

 だから、どうしても琉禍の想いを受け入れられない俺がいる。

 心よりも、そうと決めた俺の理性が許さない。

 この先に、地元の人位しか知らない綺麗な滝がある。

 俺はそこで琉禍に殺され、殺し、ともに大樹の元へと向かうのだ。

 ……本当に?

 この温もりを。この暗闇の中、唯一の温もりを。

 殺すのか?殺す?

 この色に。何一つ意味を持たない世界の唯一の色に。

 殺されるのか?殺させる?

 大樹の忘れ形見。

 琉樹の忘れ形見。

 それでありながら、こんなにも、琉禍として意味ある彼に?

「……樹さん?」

 動かず、物言わぬ俺に何かを感じ取ったのか、琉禍が俺の顔を見ようとする。

 俺は拒む。琉禍の肩口に強く強く顔を埋め、眼をそらす。

 ……出来ない。させられない。

 俺には出来ない。

 こんなにも、俺にとって今、唯一の生きている全てを殺すことなど。

 彼にはさせられない。

 こんなにも、ずっと前から、ただ俺だけを見つめている彼にはさせられない。

 ……死ぬのは、俺だけでいい。

 そうだ。

 俺だけでいい。

 もう、どちらにしろ、俺は生きていけない。

 俺は派手にやりすぎた。どこに行っても、規制は厳しくなってきている。

 警察も無能ではない。これ以上は、もう続けられない。

 それに……これ以上生きたなら、俺の全てが変わってしまう。

 大樹ではなくなってしまう。

 俺は、俺は大樹の使途のまま死にたい。

 そう思う。

 嗚呼。いつの間に彼はこんなにも大きい存在になっていたのだろう……?

「樹さん」

 冷たく冴え渡るような、琉禍の声が聞こえた。

 手を握られ、何かを持たされる。

 それが何か、気づくのがもう少し早かったなら。

「っく……!」

 琉禍は俺の手ごと、それを彼自身の腹に押し付けた。

 そして、紅。

 紅、赤、銅、淦。

 琉禍の腹から血が零れる。

「る、か……?」

 俺は呆然として、彼の名を呟いた。

「だって……樹さん…い、ま……やめようと……した、でしょ?」

 吹き出る血に顔を紅く染めながら、琉禍は壮絶に微笑んだ。

「そん、なの……許、さない……から」

 琉禍が身体ごと振り返り、俺の顔に触れる。

 温かい琉禍の血。それが、顔に付く。

「さ、あ……い、っしょに……逝き、ましょう?」

 琉禍のナイフをもった手が、震えながら俺に近づけられる。

 嗚呼。そうだ。

「そうだな……」

 俺はそう言って、琉禍の手に自分の手を添えた。

 鈍い感覚。吹き出る紅。目の前の琉禍と同じように。

 そうだ。俺は……


 俺は幸福だった。

 樹さんとともに死ねる。貴方に殺され、貴方を殺せる。

 永遠に貴方のものになれる。貴方を俺のものに出来る。

 腹を刺したのもそのためだ。この至福の時間が少しでも長引くように。

 ずっとずっと、この瞬間だけを望んで、俺は……

 俺は樹さんの胸にもたれかかった。まるで恋人に縋りつく女のように。

 この瞬間だけは、貴方は、俺のもの。

「いつき、さん……あい、してる……あいしてます」

 鈍い幸福。貴方の熱い吐息が、俺の耳元にかかる。

「ああ……おれ、も……たし、かに……るか、が……すき、だった……」

 ‘愛してる’ではないことに、俺は気がつかないふりをする。

 この背中に回された貴方の腕を、それだけを、信じることにする。

 この幸福に、快感すら感じる。

 嗚呼、俺の、僕の愛情はこうして成就するのだ。

 あなたとぼくのちが、まざりあって、そして……

 めが、かすむ。まだ、あなたをみていたい。

 いつきさん……いつき、さん……

 最期に、確かに、彼の唇と僕の唇が重なり合う感触がした。


 























 眼が覚めたら、写ったのは白い天井。

 死の世界かと、樹さんはどこかと、見渡したらそこにいたのは両親だった。

 号泣する母。その肩を抱く父。……そして大樹さんのお父さんをはじめとする両親の幼馴染達がいた。

 僕は、現状を理解した。

 樹さんは、僕を置いていったのだ。

 逝ってしまったのだ。

「僕は……助かったの?」

 そう問うと、父が目元を潤ませながら答えた。

 たまたま通りかかったという人が、救急車を呼んでくれたのだよ。

 僕は、名乗らぬ男の呼んだ救急車に助けられたのだという。

 つまりは、樹さんの呼んだそれに。

 倒れる僕の近くには、誰かの、つまりは樹さんの多くの血が流れていたという。

 けれどその行方はいまだ掴めぬまま。……その、遺体も。


 僕は、捨てられたのだ。樹さんに。


 疲れたからと言って、僕は両親達に部屋から出て行ってもらった。

 樹さん。……樹さん。

 何故貴方は、最期の死の縁に僕をもぎ放したのですか。

 樹さんと生きられないのなら僕は、貴方を殺し、そして殺されたかった。

 何故、救急車など。そんな無粋なものを。

 貴方と僕の間に、そんなものなど。

 ……それとも。

 貴方にとって、僕はやはり。

 ……姉さんと大樹さんの、忘れ形見に過ぎないのですか?

 贋物など、いりませんか?

 そうならそうと、こんな形ではなく。

 こんな中途半端な捨て方などせずに。

 ただ、貴方の手で、大樹さんの下に送られる犠牲者の一人にしてくれたら、よかったのに……

 貴方は最期に、一体誰に口付けたのですか?

 大樹さんですか?

 姉さんですか?

 ……どちらにせよ、僕ではないのですね?

 そう思うと、胸が痛んで痛んで、死にそうだった。

 それでも、涙は一筋も流れなかった。



 僕は尋ねてきた警察に、完全なる嘘を貫き通した。

 樹さんのことを話すわけにはいかなかったから。

 その結果、僕は通り魔に襲われ、反抗したとして、会社から暫く休暇を取るように言い渡された。溜まっていた有休の消化も兼ねてだ。感謝する理由もない。

 俺は塞いで塞いで、意識すら散漫になって行く。

 人の構造として不自然だが、呼吸すら気付けば止まっていた。意識という無意識が、人体の構造にすら干渉した。

 それほどまでに、俺は樹さんと共に死にたかったのだ。



 入院生活を送っていたある日、何度も何度もしつこくやって来る刑事の一人が、僕にあの日の所持品を返してきた。

 それらは、遠い昔、樹さんに殺されると決めた日、楽しみながら用意した物の数々。

 全てが無駄になってしまったものの数々。

 そう考えると腸が煮え返るようだった。思わずそれら全てを部屋の壁に投げつけた。

 落ちるそれら。僕は冷めた目で見つめた。

 その中に、一つだけ見覚えのないものが混じっていた。

 不審に思い拾い上げると、それは在りし日の忘れ形見。

 姉さんの、日記帳の、鍵。

 ……これは樹さんにあげたもの。

 何故、これがここに?

 毎日検査に来る看護士に聞けば、それは僕が運ばれてきた時に首にかかっていたものだと言う。

 ではこれは……樹さんが置いていったのか?

 ……一体何のために?

 分かりはしない。分かりはしない。

 今はただ。

 貴方が僕を殺してくれないのなら。

 せめて。

 せめて、貴方の遺体に縋りたい。

 愛する人よ。

 あなたと。





 退院して暫く経った後、僕は独り「あの場所」に行った。

 鬱蒼とした山道。地元の人間以外はこの道すら知らない。

 それでも、僕のせいで騒動になったせいか、人に踏み荒らされた跡がかなりあった。

 山道はあの日よりも草が踏み鳴らされ、歩きやすかった。

 そこは、未だ僕と樹さんの血の痕が残る。

 ……いくら腹を刺したとはいえ、そう遠くまでは行けなかったはずだ。あの出血では。

 血自体は、きつく布か何かで巻いてしまえば、垂らさずに歩けただろう。

 だが、何処に……?

 そもそもあの日、樹さんは何処へと向かう気だったのか?

 僕は闇雲に、山道を進んでいった。


 どれぐらい歩いただろうか。

 病み上がりの身体では、この山道は思うように歩けない。

 樹さんは、どれ程の意思で……。

 想いに囚われていると、目の前が急に開けた。

 そこにあったのは。

 滝だ。

 さほど大きくないとはいえ、力強く水が落ちていく滝。

 僕には分かった。

 ここだ。

 樹さんが目指していたのは、ここだったんだ。

 僕は水に濡れるのも構わず、まっずぐに滝へと向かっていった。

 濡れた服が肌にまとわり付く。それは冷たくも温かい。

 零れ落ち続ける、滝に触れる。

 痺れる程の水の勢い。

 そこに何故か、僕は樹さんを重ね合わせた。

「いつき、さん……」

 両腕を滝の中に差し入れる。

 崖に突き当たるであろうその手は、そのまま通り抜けていった。

「……?」

 疑問に思い覗いて見ると、滝の真中あたりの崖だけ丸くくりぬかれたようになっている。

 人一人が入れるような大きさだ。

 まさか。

 そう思いながらも、逸る胸が抑えられなかった。

 僕はその穴を潜り抜ける。

 中は、思わぬほどに広かった。言うなれば教室ほどの大きさだろうか。

 分かるのはそれ位で、暗くて他の事は分からない。

 濡れてしまった携帯は、辛うじて活きていた。

 それで周囲を照らしてみる。

 すると。

 そこには。

 貴方が。

「いつき、さん」

 奥の壁に、もたれるように座るその姿があった。

 その姿は、平時とさして変わりなかった。

 けれど。

 顔色は、悪いを通り越して最早真っ白。

 服に付いたその紅を見れば、死んでいることは明らかだった。

 屍蝋化、という奴なのだろう。

「樹さん。……いつき、さん」

 来ましたよ。

 貴方の捨てた、贋物が。

 貴方と死ねなかった役立たずの僕が。

 その、微笑すら浮かべたような顔に触れる。

「樹さん。樹さん」

 もう何を言うべきかも分からなかった。

 僕は冷たいその頬に口付ける。

 あの日、彼がそうしたようにその肩に顔を埋める。

「樹さん」

 あんなに。憎んだはずなのに。

 それでもその姿を前にしたら、恋情しか思い浮かばない。

 だって総てだった。

 ずっと、ずっと。

 生まれてからこの方、貴方だけを想い続けた。

「愛してます。愛してます、樹さん」

 何度も何度も口付ける。その額に、頬に。……唇を除いて。

 だって、そうでしょう?

 貴方の唇は、僕のものではないもの……。

 口付けを、その首、肩、手、とずらしていった時に、僕は樹さんの手が持っていたものに気づいた。

「これは……」

 その手には、僕等を刺したナイフ。

 そして、日記帳。

 姉の、日記帳だ。

 僕は急いで、胸にかけたネックレスを取り出した。

 その強固な日記帳は、一度は濡れたであろうが、その強固な皮の表紙に守られていた。

 震える手で、頁を捲る。捲る。

 そしてたどり着いた。

 彼の血と、ナイフの切っ先で書かれた文字を。

 そこに書かれていたのは。

 僕は泣き出した。

 あの日から、一度も零れなかった涙なのに。

 今。

 僕は溜まらず、彼の遺体の唇に口付けた。

「樹さん、樹さん……!」

 堪らなかった。貴方のいない人生を、僕はこれから暮らしていかなくてはならないのが。

 けれど、それは幸福でもあるに違いないのだろう。

 貴方の言葉を守れるという、幸福。

 堪らなかった。僕にとっての神様は、ずっと、ずっと樹さんだったのに。

 あなたがそうと気づきさえすれば。

 そうでありさえすれば。

 貴方と僕は今も幸せに生きられたはずなのに。

 恨みます。義兄さん。

 貴方という神を。

 異教徒にしかなり得ない僕は。

「愛してます。愛してます、樹さん……」

 虚にしか響かないと分かっていながら、僕は何度もその言葉を繰り返し、泣き続けた。

 外は暮れ行き、滝に差し掛かるのは紅い月光だけ。

 その紅い部屋の中で、僕は、いつまでも僕の神様に口付け続けた。


 


『琉禍。確かに俺の全ては大樹のものだったよ。

 この愛情も、命ですらも。

 全ては大樹かみさまのためにあった。

 でも、生きてる人は皆そうだ。神様の掌の上でしか生きられない。

 それ以外は何処にも行けない。

 俺の役目は、ずっと、大樹の楽園に人を送り続けることだった。

 でも、それが俺の全てなはずだったのに。

 琉禍にだけはそれが出来なかった。

 琉禍は送れない。

 紅月琉禍という、お前個人だけは、大樹になんてやらない。

 琉禍は俺のものだ。

 だから、俺と一緒に逝かせない。

 琉禍。生きて生きて、俺を想い続けろ。

 琉禍。その髪の一房も、総てが俺のものだ。

 俺の世界で、唯一本物の、琉禍。

 愛してる』

読んでくださってありがとうございます。


私の予定では、次は「親編」を書く予定でいます。

……たぶん。


もしよかったらお付き合いください。


本当にここまで付いてきて下さってありがとうございました。

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