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逃げるは必死、追うは適当

一か月以上空いて申し訳ありません!

屋上から下を見下ろして必死に走っている人影に追走しながらそれをよく観察する。

背丈は120いってるかいってないか、足は相当速いほうで現実なら確実に運動会のヒーローを狙えるであろう。まあこの世界にそんなものがあるかは知らないけど。


服装と背丈、行動から考えるに設定であるか解らんが孤児の子供ってとこか。誰でもわかることだからそこまで自慢できやしないがそれは置いておくとしよう。



「…あ、気づかれた」



五分ほど走ったところで振り返った人影が偶然にも屋根に登っていた俺を見つけて固まったので笑顔で手を振ってやったのにすぐさま建物の間に走りこんでいくとはどういうことだ。


しかし不味い。相手は道路の左側にある路地に入っていったのだが俺は道路の右側の建物の上にいるためすぐに追うことができない。

しかも下の道路は東地区の中心道なので容易に飛び降りることも横断もできないが、ゆっくり降りていたらそれこそ逃げられてしまう。


まあ下手したら逃げられるな、なんて軽く考えながら向こう側の建物に向かって投擲スキルのチャージスローという技を発動させる。

小気味いい音とともにロープを結びつけたナイフが木でできた壁に突き刺さり、数回引いてしっかり刺さっているのを確認してからそこらへんの出っ張りに結び付けてからロープに剣を引っ掛けてぶら下がって滑っていく。



「へいへいそこどいてくれー」



壁を両足で蹴るようにして止まり、下に大声で場所を開けさせて素早くそこに飛び降りる。

その時に何人かがスクリーンショットを撮るためかメニュー画面の操作を慌ててしていたがそんなことお構いなしに路地に走りこむ。


曲がり角にボロが消えるのが見え、それを追って曲がる。そこは家に囲まれた行き止まりで、ようやく鬼ごっこも終わりかと走る足を緩める。



「もう逃げれねえから勘弁しな。逃げ切ったら商品付きだったから残念だったなあ」



嫌らしい笑みを浮かべて追い詰められたのを実感させる為に振り返った人影にゆっくりと近づいていけば、ハイルから盗った鉱石がある手を自分の後ろに隠しながらじりじりと後ろに下がる人影にさらに口角が吊り上る。


ーまあ、悪いようにする気はないけどな


ここで衛兵に見つかったら俺が捕まることが確実な悪人顔で、かなり誤解されそうな思考で更に近づきその肩に手を乗せたその時だった。



「ちっ」


「今だっ!」


「「「わー!」」」



背後から何かが来ると気付きとっさに身体をひねって避けようとするが間に合わず棒で頭を叩かれ衝撃でよろける。

とっさに手を着こうとしても手が動かずそのまま背中から地面に倒れこんだ視界の端にはスタンを示すアイコンが現れていた。



「よし、しばらく動けないだろうから早く逃げよう」


「分かったよ兄ちゃん!」



眼球しか動かせない中、何人かが足音を残して去っていくのが分かったがすぐに見えなくなった。


数分後にスタンの効果も切れ、もぞもぞと起き上がりながらさっきからウィスパーを飛ばしまくっているハイルに返信する。



『スマン、地面の鼓動を聞いてたら痺れちまってた』


『例えが悪いしかっこ悪いからスタンして倒れてたって素直に言いなよ』


『逆になんでわかったんだよ』


『君がやりそうなことだから。結局失敗したって事かい?』


『いんや、そうでもない。つうか確保したも同然だ』


『だって君はスタンしてたって…』


『ま、細工済みってやつさ」



そう一方的にウィスパーを切り、周りに見回して誰も居ないことを確認してから足で地面を軽く叩き短く呪文を口にする。

たちどころに自分の影が全身を飲み込み視界が黒に染まり、すぐに光が差す。



「はい確保ー」


「うわ誰だよ! 離せってば!」


「あ、すまんな騒いで。ちょいと野暮用でさ」



そこは先ほどの路地とは全く違うどこかの店の中で、ぼろい外套のフードを外した少年を抱きつくようにして背後から確保した俺は困惑しているカウンターの向こうの店員にニヤリと笑いかける。


捕まえた少年が盗んだ鉱石はカウンターに置かれており、無事なので一旦放置してまずは処罰と行こうじゃないか。



「なあ少年、人からものを盗んじゃいけないって知ってるよな?」


「人に捕られるような気が緩んでる方が悪いんだ!」


「そうかそうか一理あるな。ただ…」



驚いて固まっていたのは一瞬で、すぐに暴れて抵抗し始めた少年に諭すように優しく言った後に一拍置いて低い声で囁いた。



「んなこと言って反省しねえならこのまま街の外に放り出してモンスターの餌にするぞ」


「ひっ」


「ま、そいつは最終手段だ。今はやんねえからそんなに怖がんなって」



抵抗を止め、怯えたように身をすくめた少年から身を話してヘラヘラ笑いながら身を離してその背中をバシバシ叩く。


意趣返しは終わったところで次の問題だ。カウンターの奥にいる店主と思しき青年は冷静さを取り戻してこちらを見ていたが、一連の行動が終わったところで口を開いた。



「終わったようですね。先ほどの会話を聞いたところこちらの鉱石は貴方の持ち物だったということでよろしいでしょうか?」


「おう、その通りだ。でもその様子だと楽に返しちゃくれねえってところかな」


「その通り、察しが良い方で助かりますよ。もう商談は終わりその少年には代金を渡してあるのですから」


「な、なら俺が金を返すからこの人に返してやってよ。それならいいでしょ?」



最初の勢いはどこに行ったのか。ちらちらとこちらを伺いながらその手に握られた小さな袋を暴論を吐いた店主に差し出す。

しかし店主の目が意地悪く光ったのを見たのでその口が開く前に先手を打つ形で口を開いた。



「そう問屋は下ろさねえよなあ。商売は損得勘定で動く、買い取ったならそれ以上の値段で売らなきゃ意味がねえ」


「…ええ。だから私が提示する金額はこれです」


「な…それじゃあ俺に渡された金額の倍以上じゃないか!」


「物の価値が解らない方が悪いんですよ。それに出所が解らない物を買ってあげたんですから感謝なさい」



視界に表示された金額に隣で吠える少年に対して店主が冷酷に返したそれを顎に手を添えながら聞き流し、もう一度提示された金額を見つめる。


どう転んでも高額としか言いようがないその金額。それを踏まえた上で言う。



「その程度の金でいいのかよおい」


「「…はっ?」」



余りのあっさりとした答えに言い争いをしていた二人が驚きの声を上げた。

剣Lv30 回避Lv20 隠密Lv18 料理Lv19 投擲Lv12 影魔法Lv20 魔法熟練Lv21 隠蔽Lv13 罠Lv8 盗賊の技術Lv15

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