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炭鉱夫に憧れて

相も変わらず遅筆ですいません。やっと続きです

『ねえ、今は大丈夫かい?』



あの日からいくらか経ち、スキル上げをかねた狩り中にハイルからのウィスパーが来たのでトレインしてきた4匹目のフォレストベアの頭に剣をぶん投げて怯ませてから影針で頭上の枝に飛び乗ってメニュー画面を操作する。



『下で熊が口開けて待ってるけど平気だぞ』


『ああ、いつも通りってことだね。ちょっと鉱石無くなって補充に行くけどついてくる気はない?』



そう問われて答えを返す前に木に登ろうと幹に爪を立てていた熊に飛び降りるように蹴りを叩きこみ、再度影針で同じ枝に戻る。



『いいなそれ。じゃあちょっと待っててくれ、あと2匹さっさとやっちまうから』


『わかった。じゃあ広場で待ってるから』



通信が終わり俺はさっさと片付ける為に今度こそ地上に飛び降りるとすぐに2匹が突進してくるが、俺は落ち着いて地面を足で叩きながら呟いた。



影糸かげいと



瞬間、足元の影から黒い糸がいくつも飛び出し迫りくる片方のフォレストベアの足に絡みつき動きを阻害し、1メートルほど前でもんどりうって倒れる。


後は倒れて的に成り下がった方のフォレストベアの周りながらもう一匹を倒し、途中から影糸の束縛から逃れていた方に影魔法を喉に重点的に当てて倒して出たドロップアイテムを一瞥すらせず剣を回収して枝を飛び移りながら移動を始めた。



「あー、もうちょっと強い奴と戦いたい」



若干フォレストベアやフォレストウルフではLvの上りもそこまで早くなくなってきたし、何よりも飽きたが装備を変えれていないし、最近掲示板で噂されている物を目にしたいがために狩場を変えれないのが現状だ。


せめて防具だけでも変えたてえぜ全く。あれはいつできるやら、ってやつだよ。なんて心中で愚痴ってるうちに森の出口が見えてきた。



「そこの木の上にいるのはプレイヤーか?」


「ん?」



最後の枝に飛び移ろうと足に力を込める前に地上から声が掛かる。


こちらからは枝葉で見えていないが盗賊の技術のパッシブの索敵で数人が固まっているのが解った。

さしづめそのパーティーのうちの一人の索敵にでも引っかかったのだろうと思い、枝に逆さまにぶら下がって返事を返した。



「おう、聞いてるのが俺ってんならプレイヤーであってんぜ」


「…そうか、呼び止めてすまなかった」



俺が顔を出すとそれぞれ武器は納めたが警戒しているような視線がこちらに突き刺さり、目を細める


MMOで他人を警戒する理由はいくつかある。そしてパッと見た限りで今回の理由は恐らくアイテムの事か。



「あんたら、足下にあるのって噂のあれかい?」



そう指差しながら言うと最初に声を掛けてきた男の後ろにいるタンク役であろう金属鎧の見た目老練とした男が僅かに身動ぎする


その動きは鎧を大きく響かせ、男達とは反対に俺は笑みを浮かべた



「その反応だと当たりみてえだな。いやはや、本当にあったんだねえ」


「やっぱりこいつ最初からつけてきてたんすよ! だからさっさと挑戦しようって言ったじゃないですか!」


「待つんだ、い」



リーダー格の男が何かをいい終える前に軽鎧と短剣を装備した盗賊風の男が足で隠すように置いてあった暗緑色の珠に触り彼らが消える


それと同時に珠も消え失せ、俺だけが取り残された



「…よし、行くか」



別に横取りしようという気はちょっとしかなかったのに酷い対応だと思ってしまうが、まあ噂は本当だったというのが分かったからよしとしよう。
















「すまんすまん、遅れた」


「別にいいよ、こっちが急に誘ったわけだし。あとこれ採掘用の道具ね」



道中のゴタゴタとドロップアイテムを売っぱらった後に広場で待っていたハイルと合流して軽く謝る俺にインベントリから出したつるはしを渡してきたハイルと一緒にもう一度街の外に出た。


あれ、集合場所は門の所でよかったんじゃね? などと言った後のファイト以外は比較的順調に進んでいつも行く森とは反対側にある山の中腹の坑道まで無事にたどり着いた。


中では俺のような初期装備からとっくに卒業した方々が思い思いの場所で手にしたつるはしを掘って一喜一憂していた。



「んで、俺はどうすればいいんだ?」


「適当な場所を掘ってくれればいいよ。ただ亀裂から蒼い鉱石が見えたら慎重に掘り出してね」


「なんだ? そいつはインベントリに入る前に壊れでもすんのか」


「そうらしくてかなり壊れやすいみたいから気を付けて欲しいんだ。まあ出る確率はそうとう低くて、なんでも最初に出た人が壊して以来出てないらしいよ」



そんな確率の物が出るとは思わないのだが、だからというように念を押されて少し離れた場所で採掘を始めた。


それにならって俺も壁に向かってもらったつるはしを振り下ろす。

ぽろぽろと零れ落ちる土が地面でしばらくたって薄れるように消えていく光景と共にインベントリに増えていく鉱石がしばらくすると少なくなってきたので次に移動して掘る、というのを繰り返す。


集中して30分も掘ったところでインベントリの出し入れ口である腰のポーチが歩けないほど重くなってきたので影収で影にぶち込んでからハイルの姿を探す。


そこで何時の間にか自分以外のプレイヤーがある一箇所に集まっているのに気が付いた。



「ち、見えねえし…。あそこでいいか」



そうなれば当然興味が湧くわけで。俺は輪の端からぴょんぴょんと飛ぶ跳ねるが全く見えないことにイラつきある程度離れた壁の凹凸に張り付いて登り始める。


現実なら少しも進まないうちに地面と熱烈なキスをする羽目になるだろうがここはVR、難易度は高かったが落ちることなく輪の中心を見える所まで登ることができた。



「…まさかのレアアイテムでも出たのかあいつ」



中心に立ってつるはし片手に精神を集中させるように目を瞑っているのは間違いなくハイルの姿。

ここからは確認できないがあれほど人が集まっているということはそれか、それに準拠するレベルのことが起きているのであろうと推理した。


ハイルはしばらくそのままで居た後に大きく息を吸って目を開け、静かに言った



「――いきます」



右手に持っていたつるはしの柄に左手を添えて振り上げ、一寸の迷いなく振り下ろされてすぐに上げられる。


壁につるはしが当たるたびにカツン、カツンとテンポよく音が響き、そのたびに削れる壁を見て息を飲む観衆が身を乗り出していく。


まあ、そんな状況を見ているのならさっさと鉱石を集めよう。どうせ他の人は全員あっちを見ているのだ、今のうちにさっさと集めてしまおう。



「さーて、頑張りたまえよハイル君」



偉そうに言って、俺も鉱石を掘るためにつるはしを振るった。

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