ようやく装備更新
タイトル詐欺ここに極まれり
前日、レシピを渡されずに全料理を手作りという目にあっておきながら懲りずに厨房を借りて、料理を作り何のためらいなくアイテムボックスに詰める。
蓋などせずにも入れておけばそのまま保存されるなんて現実でもあったらいいなー、なんて思うが絶対に俺が生きてる間に実現しないだろう、残念。
ちなみに今作ったのは
角ウサギのステーキ
角ウサギの肉を焼いた物。調味料を使っておりレシピよりおいしい
まあ調味料使ったりアレンジしたところがあるけど基本レシピのステーキです。だって量を確保できるうえに簡単だもの、仕方ないね
女将の背中に感謝をこめて中指を突き立てながら宿屋を出て、メニュー画面を開いて現在時刻を確認しながらこの街である意味活気がある東地区へと向かう。
途中の中央広場のNPC店で昨日ハイルに渡してほしいと言われたアイテム以外を売っぱらってポーション類を買い足しておいた。
その最中になにやら広場の方で騒ぎがあったが用事があったので放置。さっさとその場を離れた。
東地区には鍛冶に必要な炉や金床や、皮を加工する道具などが売っているため必然的に職人が集まる。
そしてその職人を相手に材料を売る商人がそこに露店を張り、その場から離れるのがめんどくさい職人が周囲に作り上げた商品を置きそれを装備を作ることができないプレイヤーが買い求める。
そんなふうに集まった人に交じって歩く俺はひどくその場から浮いていた。
「やっぱ防具買い替えねえとな…」
当たらなければどうということはないを地でいく俺は初期防具で、しばらく防具は必要なかったのだが昨日情報収集がてら掲示板を見てすぐにその考えを変えた
曰く、そいつはフォレストベアを一度に三体相手どって勝ってみせた。
曰く、地面から黒い何かを出して跳び跳ねながら戦っていた。
曰く、初期防具のままで戦っていた。
その他にもかなーり身に覚えがあることが書いてあり、めんどくさい事に巻き込まれる気がしてならないのと掠っただけで7割のHPが飛んでいく防御の低さに嫌になったのでサクッと変えてしまおうと思ったのだ。
戦闘スタイル的に鉱石でできた重鎧ではなく皮で作られた軽鎧か服系の物でちょっとしたオプションをつけて欲しいのだがそういうものをやっている所があるか不安だ。
しかし考えててもしょうがないと店を見るために人の波に入っていった。
巡りに巡ってついに目的が達成できそうな露店を発見したがイケメソの男が店先に居たためその後ろでメニュー画面で色々と操作しながら順番を待つ。
しかし各種ポーションと十数個のアイテムの説明文を読み、それについての考察妄想で時間を潰しても一向に終わる気配が無いどころか店主との気配がおかしい。
ひょいとメニュー画面の横から顔を出して見てみると何やら揉めている様子。妄想している最中に端々で聞こえていた事からみるにナンパとその断りといったところか。
まあめんどくさいから無視しようとまたメニュー画面に目を戻して考察を…ってもう考察してないアイテムねえや。
「だからさあ、ちょっと食事に付き合ってくれるだけでいいからさ」
「何度も言ってるけどもう付き合わないって言ってるじゃん! いいから帰って!」
あー、だりー。何がだるいってこの会話が数十回続いてるのに諦める気配が全くないところだよ。
ここで正義感が強い奴や主人公体質の奴は首を突っ込んで騒ぎを大きくするだろう。しかし俺はそんなのではないため、ため息ひとつついてメニューのボタンを押した。
自分以外には聞こえない数回のコールの後、周りの声が小さくなりここには居ない女性の声が耳に響く。
『はい、こちらGMコールの者です。何かお困りでしょうか?』
「あ、はい。今東地区でセクハラ、粘着、営業妨害の三つを満たすプレイヤーを見つけましてその対応をお願いします」
『了解しました。確認しますので少々お待ちください』
プツリと通信が切れる音がして周りの喧騒が戻ってきた。
短い通信の間に更に堂々巡りの回数を増やしている二人を一瞥してから少し離れた場所に腰を下ろして昨日の余りの野菜炒めを取り出して食べ始めた。
「ちくしょうあの女将失敗作渡しやがったな。塩辛えじゃねえかよ」
―別に今回だけでいいからさあ。俺だって何回もって言ってるわけじゃないんだよ。
―過去に一度付き合ってあげたのに今ここにいるじゃないですか!
―それはそれでこれはこれだって『そこのあなた、少しお話をよろしいですか?』
「うげ、よく見たら渇水度減ってるし。次からもの食う時確認しねえとなこりゃ」
―あ? いま俺はシーファちゃんと話しをしてるんだよ。あんたはどっか行ってろ。
―『先ほどあなたのことだと思われる通報が来ました。お話を聞き、事情によっては相応の処置をさせていただきます』
―ちょっと待てよ。だから俺は普通に話してただけだっての。
―いちいち言い寄ってきてすごく迷惑してたの。いいから連れてって。
―『わかりました。それではこちらで処罰させていただきます』
―だから俺は迷惑行為なんてしてないだr
突如イケメソ()の姿が消えてその言葉はぶつりと切られる。まあ最後まで聞いたところで呆れたとしか言いようがないものだろうから良かったのだが。
最後にGMの女性が周りの人に何かを言って消えるのを見て、ただの水を飲みほしてからさっきの露店に近づいて店じまいを始めた店主に声をかけた。
「やあ、さっきは災難だったねえ」
「なんですか。もう店じまいにするのでまた今度にしてください」
「そこまで邪険に扱わないでくれよ。俺だって色々回ってここだ、って思ったのに店の前で訳解らん奴居たから待ってたんだ。注文は一つだけだから頼むよ」
「知りません。他を当たってください」
不機嫌そうに見てくる肩まである緑髪の少女に両手を合わせて頭を下げるが店じまいを続ける音が続いているので小さくため息をついた。
クソが、あのイケメソ恨むぞ。てか次に会ったら決闘挑み続けて嫌がらせでもしてやろうか。
しかしこのまま帰ると効率が悪い。効率厨というわけではないがめんどくさいのでインベントリから紙を一枚取り出して少女の前に差し出した。
「分かった分かった。じゃあせめてこれだけは受け取ってくれ。それにやってほしい事が書いてあるから」
「まあ、それくらいだったらいいですけど…」
「じゃあ決まりで。いくらかかってもいいからよろしく頼むぜ」
どこか渋るように言う少女は強引に握らされた紙に目を落として確認して胡散臭そうにこちらを見る。
それには無言でにっこりと笑顔を返し、憂さ晴らしの狩りに行くために背を向けた。
「じゃあできたら俺にウィスパーでもくれよ。名前はレイスな、よろしく」
「頭の隅にでもとどめておきますよ」
その言葉に振り返らずに片手を振ってその場から離れる。
鼻歌を歌いながら向かうのはいつもの森。フォレストベアを5匹ほどトレインして戦うとしようか。
今回はスキル更新無しです
テストに狩りにとリアルが忙しくてなかなか書く時間がとれませんね