敵というより罠
「まさかあそこまで強く殴ってくるとはね。予想外だったぜ」
「あれは私もそうだけど貴方も悪かったんだから。もう掘り返さないでいいでしょ」
「でもスタンまで付くとは完全に予想外だったけどな。あとお前が俺を埋めようとしたのも」
「…掘り返さないって言ってるでしょ?」
「ははは、仰せの通りにお姫様」
強烈な打撃は久しぶりのスタン効果を俺に発揮しピクリとも動けなくなり、その状態を把握していない殴った張本人がおろおろとした後に妙に真剣な表情になってかくなる上はとか言いながら魔法で穴を掘ってそこに俺を埋めようとしたときはびっくりした。
埋められる寸前にスタンが解除されたし、どうせ死んでもデスペナ喰らうだけで済むから怒ることなく笑いながらからかうと、ジロリと睨まれたのでこれ以上機嫌を悪くされても困るので笑みを残したまま口を閉じた。
「それにしても途中には何にもないのねここは。その癖に無駄に広いし」
しばらくはニヤニヤとしながらならランタンの光で照らされる洞窟内を見ていたが、ふいにさっきまで拗ねたようにそっぽを向いていたクラリアがそう言った。
確かに見える範囲にはプレイヤーも、敵すら見えないという状況だからそう思ってしまうだろう。だが後者はしっかりとした理由があるのだ。
「ああ、それな。じゃあここにナイフがあるじゃろ? これをこうしてじゃな」
取り出したナイフと近くにゆらゆらと揺らして見せた後、地面に向けて投げ突ける。
少しだけ盛り上がった地面に当たった瞬間、その周辺の砂と一緒にナイフを天井に弾き飛ばしたその光景を見ながら言った。
「とまああんな風に砂の下に居ますんで」
「…ちなみにそれはどこら辺から居たのかしら?」
「ああ、入口近くからそこら中に居たけど。ちなみにあれに跳ね上げられるとああなる」
口角をぴくぴくと動かしているクラリアに、ランタンの光を上に向けて、刃ではなく柄が天井に突き刺っているナイフに視線を誘導する。
動かなくなったクラリアをケラケラと笑いながら砂の下に居た大きな二枚貝のようなモンスター、グロットシェイルに近づいていく。
砂に潜り、気付かず上に乗った対象を思い切り殻を開けて跳ね飛ばすだけだが、気づかずに踏んで天井に頭ぶつけて飛び上がり死させる兜をつけない軽装キラーだ。
余談だがそのやられる時の様子が昔のゲームの主人公に似ているそうで、一部ではこいつに殺される様子を『ひろし』なんて呼んでいるそうだ。
「だったら早く言いなさいよ、踏んだらどうするつもり!?」
「索敵あるから踏まねえように歩いて来たんだよ。それに大体は道の外側に居るから大丈夫だっての」
「どう考えても適当に歩いて来たようにしか思えないからよ!」
クラリアがこっちを指差してギャーギャー言ってるが、それを気にせず殻を押し上げる役目をしている肉柱の横につっかえ棒として剣を噛ませて、しっかり嵌まるように蹴りこむ。
ちなみに俺の責任でお前が死んだ場合には、魔王とその側近に文字通り塵一つ残さずに消されるだろうから全力でどうにかすると反論しておこう。
「こいつらは擬態してるわけでもなく単純に砂を上に被ってるだけだ。だから簡単に索敵に引っかかるし、地面をよく見りゃ違和感があるだろ?」
「…言われてみればあっちこっちにあるわね」
「そういう事。ちなみに知らせずにいたのはそんなところをうろついてるっていうのは嫌だろうと思ってだ」
嘘です。単に帰りで言って怒らせたかっただけです。
グロットシェイルの横にランタンを置いてしゃがみ、目立つ貝柱ではなく、そのすぐ後ろ側にナイフで突く。生半可な刃を弾く強靭な殻とは違い多少の抵抗でナイフは刺さり、ポリゴンとなって砕け散った。
「んじゃまあ、先に進みますか。お前を飛ばさない様に気を付けながらね」
立ち上がりながら手の中のナイフを回して元の場所に戻し、ニヤニヤと笑ってそう言った。
剣Lv36 回避Lv39 隠密Lv33 料理Lv26 投擲Lv22 影魔法Lv25 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv26 罠Lv11 盗賊の技術Lv38




