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彼が奴といるわけ

「それより狩りしようぜ狩り。それこそRPGの醍醐味だろ」


「目の前の光景を見てそれを言うのはどうかと思うよ」



まあ確かに今更やってきたところで目の前の修羅場に突っ込む気は起きない。だがこんな言葉がある



「押してダメならもっと押せ。つまりここがダメなら奥に行きゃいいじゃねえか」


「それ違うの解ってていってるよね?」


「当然。それで、行くのか行かねえのかどっちだ?」



なにを馬鹿なことをとばかりに即答し、PTに誘う。

どうせ一緒に来るだろうと思っていたがハイルは首を横に振った。



「もちろん行く、と言いたいけどちょっとインベントリが一杯だから先に行っててほしい」



何だ、インベントリに空きがないだけか。一瞬愛想を尽かされたかと思っちまったじゃないか。



「りょーかい。だったら早めに来いよ、下手すりゃ死に戻りしちまうから」


「それくらいで君がやられるわけないだろう? 僕もゆっくり見たいものがあるからね」



信頼されているのかなんなのやら。まあそこまで言うなら安心して買い物をさせてやろうかね。


そう考えわかったわかったと笑いながらハイルと別れてフィールドの奥の方に歩き出すが



「…邪魔だな」



奥に行くには修羅場のフィールドに行かなくちゃいけないんだが人が多いわ走り回るわで邪魔くさい事この上ない。

仕方ないとため息をつき、上下に体を揺らすように解した後に全力でダッシュをする。



「そっちに行ったぞ! 追え!」


「〈影針〉」



魔法名の発音と走る事で足を踏み下ろす動作を完成させて影針を自分の足裏を斜めに貫くような軌道を描かせる。

術者自身には魔法のダメージがないというシステムのおかげで刺し抜かれずに走っていた勢いと影針が生える勢いを利用して目の前に飛び出してきた戦士風の男の頭上を飛び越える。

簡単に数メートル飛び、戦闘を始めていたPTの中心に着地して俺が押しつぶした蛇に対して振られた剣を前転で回避する。



「お気になさらずどうぞー」



いきなりの乱入者に驚き手を止めてこちらをぽかんとした表情で見た3人PTにそう言って更に奥に走った。














「ここいらでいいかな」



走りに走って辺りは草原から鬱蒼とした森に代わる。


ここまで来ると最初の草原フィールドから3、4段階ほど上の敵がぽこじゃか出てくるのでプレイヤーは疎らどころか一切いないから快適に狩りができるはずだ。


とりあえず草をがさがさと音をさせながらフィールドのアイテムを採取する。

にしても採取したアイテムは未鑑定なのな。これってどうやって鑑定すんだろ、やっぱスキル必要なのか?



「ウッキイイィィィ!!??」


「あ、モンスター発見」



俺に襲いかかろうと忍び寄っていた猿型のモンスターが採取ついでに草を結んで作っておいた罠に背後で引っ掛かり盛大にすっ転ぶ。

何気なく作ってみたら罠スキルが上がったのでいくつも作っておいたがまさか不意打ち→即死に戻りのルートに行かずに済んだから草結び様様だ。


草むらから出てきたモンスターは転んだのも合わせて5体。数段上の敵だがこれくらいなら許容範囲内だろうと剣を静かに抜いて上段に構えた。



「先手必勝って奴だ、喰らえ!」



まず起き上がろうとしていたモンスターに剣を思いきり投げつけて腰のナイフを二本抜き放ち手の中で回す。

一番手前のモンスターに順手に持った右手で刺すように振り、逆手で持った左手を殴りつけるような動作で切り払い、俺を囲もうと動く他を見ずに痛がるしぐさをして反撃のために振るわれた腕を垂直に出した影針で弾きさらに攻撃を続ける。


そして目の前のモンスターの頭に手を置き、下に押し付ける勢いを利用して飛び上がり周りからの攻撃を避け、空中で前転をしてうなじを刺してから着地した。



「合計ダメージさていくつ!」



振り返り叫ぶ。ちなみに答えは弱点を狙い続けたにかかわらずHPバーの10分の1程度、倒すにはまだまだ先である。


だがまあ、こっちはダメージ0だしこれくらいのAIはあの作ったプログラムの敵に比べれば楽勝だ。時間さえかければ殲滅は可能だろう。

気を引き締め、もう一度攻撃を加えるために走り出そうとしたとき急に足首を引っ張られる感覚を受けて頭から地面に突っ込んだ。

何事かと転んだまま足元を見るとさっき俺を救ってくれた草結びが足に絡まっていた。



「「「………」」」


「おい、なんか言えよ。悲しくなるだろうが」



思わず流れた空気に耐え切れず抗議してしまったのはしょうがないだろう。先ほど足を引っ掛けていたモンスターは解る解るとでも言いたげに何度も頷いていた。

そして相手は俺が律儀に立ち上がるまで待ってくれ、各々ファイティングポーズを取った。


やだ、何この紳士的モンスター。こいつらを倒すのが嫌になってきた。



「…降参、俺はこのままかえる。攻撃したいなら攻撃してくれ」



そう言って俺は背を向けてゆっくりと歩く。

耳を澄ませていても【盗賊の技術】の気配察知でも近づいて来ていないので猿型モンスターたちが出てきた草むらに入った。



「ふう…。【隠密】【隠蔽】『指定:足音 気配』」



どうやら攻撃してこない様子。良かったと息を吐いてスキル名を呟くと自分の身体が薄くなったかのように感じる。

なぜ隠密だけではなく隠蔽まで発動させたのか。これには訳がある。


他のゲームで暗殺プレイを得意としていたあるβテスターが隠密を喜び勇んで使って少し強めの敵に忍び寄り、敵の首を掻き切ろうとした。

しかしその剣が届く前に回避されてそこで見つかったのか隠密も効果が切れたそうだ。そのβテスターは軽装を好むこともありそのまま死に戻る。諦めずに何度やっても同じでそのうち防具が壊れて泣きを見たとwikiに書いてあった。


この話を聞いてβテストに当選しなかった同じプレイスタイルの俺はざまあ、と思い…じゃなくてこう考えたのだ。当選したハイル曰くこのゲームは限りなく現実に近いかもしれないと言っていた。つまり足音や気配のような何かがあったんじゃないかと。

残念ながらハイルと俺ののプレイスタイルは天と地ほど離れているため研究できなかったが、今は実際にプレイ中。いくらでもできる。


今しがた入った草むらから覗けばこちらに背を向けるモンスターの姿が見える。こちらには気付いた様子がなく、さっき俺が投げた剣を中心に円になって話し込んでいる(?)ようだ。

スキルで隠せていない草の音を立てないように飛出し、さっき攻撃したモンスターに【剣】スキルの技スラッシュを発動させて右手のナイフで弱点であろう首筋を切り裂いた。



「キキッキー!?」



たったそれだけの攻撃で体力の7分の1が削れ、それと同時に俺の隠密スキルが切れて姿がはっきり見えるようになった。反射的にモンスターの腕がこちらに迫るがしゃがみこんでそれを避けて反撃とばかりに顎に影針をお見舞いする。

相手がのけぞり見えたその喉を回転しながら両手のナイフで二回切り、そのままの勢いでしゃがみながら足払いで倒し、さらに周りの敵の攻撃を避けながらナイフを10分ほど閃かせればそのモンスターはガラスが砕けるようなエフェクトと共に消える。


小休止するために他のモンスターの前でクールタイムが終わった影針で体を飛ばし、頭上にあった枝に飛び乗って下に向かって唇の端を思いきり釣り上げて笑った。



「勝ちゃいいんだよ勝ちゃ。そうだろハイル」


「流石、他のゲームで外道と言われただけあるね」



セリフの途中で草むらに潜む相棒の姿を見つけて問えば苦笑いと共にそう返ってくる。


ハイルに気付いた一匹のモンスターが近寄り腕を振り上げるが、その前に腕に付けた盾で顔面を強打され、たたらを踏んだところに剣が振られる。

流石に俺より先にやっていたお蔭でスキルLvが上の為か、はたまたβテスターだったからか知らないが体力ケージは目に見える速度で減っていく。もうあいつ一人でいいんじゃないかな。


そう思うが、木から飛び降りながら登ろうとしていたモンスターの顔にナイフを刺して落としながら着地の勢いと共に地面に縫い付けた。

すぐにバックステップでモンスターを倒したハイルの隣まで行き、猿たちに向かってナイフの切っ先を向けて言った。



「じゃあ正々堂々、闘いましょうか?」



そうやって群れを殲滅した後、調子に乗って10匹の群れに仕掛けて乱戦に陥ったが辛くも勝ったところを様子見の為に来ていた他のプレイヤーに見られて、掲示板に俺達の行動が載ることなった。無論あり得ないと一蹴されてたけどさ。

やりたいことはたくさんありますが、書く段階になるとさっぱり忘れますw



剣Lv12 回避Lv10 隠密Lv3 料理Lv1 投擲Lv1 影魔法Lv7 魔法熟練Lv9 隠蔽Lv3 罠Lv2 盗賊の技術Lv4


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