避難場所はこちら
『仕方ないな、レイスは。今からこちらに飛ばすから待っていろ』
「なんで俺が我儘言ってるみたいになってんだよ。つか最悪自分で飛ぶからいいんですが?」
『それは却下だ。ここに居てもらった方が面白そうだからな!」
んなこと知らねえと言いたいのだが、セティンがしゃべっている間にいつの間にか壇上に戻っていた。
壇上には他にもさっきの少女もいたので、親しみを込めて笑顔で中指を突き立てておいた。
そしたら目を吊り上げて杖を振り上げたが、後ろに来ていたウィーンに止められていたので内心でほくそ笑む。
「では以上をもって余興を終了する。皆の者はそれぞれ楽しんでくれたまえ!」
「<影渡>!」
そう宣言した瞬間にセティンは俺を壇上から突き飛ばす様に動くが、その前にビラをばらまきながら影魔法を発動させて逃げ出す。
下に落ちたら確実にもみくちゃになるってのに酷い所業をしようとしたものだ。まあ逆の立場だったら俺もやるけど。
魔王の魔の手から逃げた先はフリードの店だ。その中にある布がいくつも垂れ下がり、真っ暗な前後が狭い部屋に移動する。
顔にまとわりつく布をどけながら、目と鼻の先にある壁を強く押し開けながら呟いた。
「よし、逃げ切れた」
「だからその登場の仕方はやめてくれと毎回言っているだろうが!」
部屋に置かれた衣装タンスの中から現れた俺に、何かを書いていたフリードが椅子を倒しながら立ち上がり、ペンを机に叩き付けて叫んだ。
だがこれはいつもの事なので、慣れたようにタンスから降りてフリードの対面にある椅子に座った。
「どんな時も通り抜けられる影があるのここしかねえから仕方ないだろ」
「だったら店に普通に入ってくればいいだろうが!」
「それやったらオーダーメイドで作ってほしいって奴が来て面倒だって言ったじゃん」
別段オーダーメイド自体はいいらしいのだが、昔その頼んだ奴の友達が頼んできてその友達が、という風になったらしい。
今はスキルレベル上げだから大人しいが、元より膨大な時間をかけて使いこなすのがくっそムズイ武器防具を作っているのがハイルだ。
そんなへんてこな物を作ってるおかげで作成の腕は確かなので、オーダーメイドを頼む人が増えて時間が取れなくなるからやだ、と言っていた。
「そう思うと知り合いの君はある意味幸運ということか」
「まあ一人二人くらいならいいんだとよ。つかお前は店番しなくていいのかよ」
「僕としても祭りの日に仕事をするのは嫌なのだからだよ。たまには仕事を休むのがいい仕事人のコツさ」
ドヤ顔でそんなことを言うが、まったく興味ないのでメニュー画面を弄ってフレンドの欄を開いた。
一人しか登録されていないフレンドがインしているのを確認して、文を打ち始めた。
「ふーん。じゃあここにハイル呼ぶか、フリードは何か欲しい料理とかある?」
「なんで勝手に決めているんだ! 欲しい料理は鶏の蜂蜜照り焼きだ、この店の近くの出店であるはずだ」
「へいよー。少ししたらくるってさ」
突っ込みながらもきちんと料理を頼んでくるあたりは俺に毒されていると思う。
ハイルから返事があったのを確認して、メニュー画面越しに机上の紙を盗み見する。
真っ白な紙の上には細かい数字が書かれており頭が痛くなるが、どうやら収支をまとめた物らしい。ちなみに収入は単価を考えても圧倒的に武器が多い。
「やっぱりハイルの武器が一番売れてんな」
「ああそうだよ。君みたいなのが運び人やってても仕入れたいくらいにはね」
「はっはっは、そんなに褒めても何も出さねえぜ…何かハイルに作ってほしいものがあれば言うけど」
「前半と後半が矛盾してる気がするんだが…。それならちょっとした斧を作ってほしいんだ」
普段は全くそんなことを言わないので機嫌が良いと取られたらしい。実際はハイルが何か店側の意見も聞きたいと言ったからだ。
昔やってたゲームだとこんなことを言っても無駄だったが、AIが優秀なおかげで相談ごともお手のものだ。
「確かそういうのは渡してたはずだけど? 何か機能つけてほしいとかか」
「そういうこと。もっと小さくていいから投げるのにも適したものが欲しいんだ」
なるほど。確かにほとんどが投げる斧は作ってなかったな。だけどその程度なら柄を短くするだけで作れそうだ。作れそうだが…
「それじゃあ面白くねえんだよな」
「紙なんて取り出して何をするつもりだい?」
「なに、設計図もどきを作っておこうと思ってな」
訝しげな表情のフリードに悪戯っ子のように笑いながら言って、一緒に取り出した定規とペンを使って線を書き始めた。
剣Lv36 回避Lv38 隠密Lv33 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv25 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv26 罠Lv11 盗賊の技術Lv35
ちょっとリアルが忙しくなってまいりましたので更新速度低下。早く磯風を手に入れなくては…




