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推理するだけならタダ

「ウィーンか、いい名前じゃん」


「…私としてはこの状況で名前を聞く貴方に驚きなのですが」


「お前を驚かせれるとはひどく嬉しいね」


「…まったく」



教えてもらった名前を復唱し、無表情に戻ってしまった青年、ウィーンにへらへらとした笑いを向けると溜息をつかれる。


さっきまでのピリピリした空気は弛緩し、日常会話のような雰囲気になってしまっているが、ある意味これが狙いだ。


厳格な人間であるほど口が固く情報を聞き出すのは難しくなる。だがそんな奴でも気が緩めば、むしろ普段そんな姿を見せないからそれは大きな隙となる。



「にしてもあんたもお偉いさんの警護しなくちゃなのに、俺みたいな一介の冒険者を相手にしなくちゃなんて大変だよな」


「…ええ。破天荒な方なので大変で……」



最後まで言う前に違和感に気づいたようにして口を閉じたウィーンにニンマリと笑った。


いやはや、やっぱり仕掛けた罠にうまく嵌まってくれると楽しくてしょうがないね。



「へえ、やっぱお前今来てるお偉いさんの兵士か。でも隠す必要なくね?」


「…聞かれなかったから言わなかっただけです。ちなみに貴方はなぜそうだと思いました」


「俺の知りうる限りお前を見たためしがないし話も聞かない。だけどそんな容姿のやつが話に上らないのはおかしいんだよ」


それなのに甲冑と剣を持ち、さらには組織と言ったのなら周りに知られないようにしていた組織かここに来るというお偉いさん関係だろうと予測してカマをかけてみたわけだ。


まあ偉い人の愚痴を言いかけるくらいに近い立場のようで地味に驚いているんだけどね。



「まあそんなことは置いといて。巨狼、確か白銀狼だっけかは何かに必要な存在でなおかつ死ぬとやばいと」



そう言うと空気が再び引き締まるのを感じるがそれを気に留めていない様にふるまう。



「…ええ。ですので殺さなければ手に入れることはまずない毛皮を納品した貴方を訪ねたのです」


「それって別に誰かにやること引き継げばいいんじゃねえの?」


「…あれは白銀狼様のような方でなければできません。それにもし引き継げたとしても貴方のもとに私は来たでしょう」


「ふーん、さいですか」



いやはや、知らないとはそんな存在を餌付けしようとしてたと思うと我ながら恐ろしいね。


それにしてもウィーンの口ぶりからするとかなり尊敬されていたようだな、白銀狼は。これは犯人がかなりの罰受けそうだな。


テーブルの上に置かれた毛皮を見ながら雑多な考えの中から相手を説得させる方法を考え、それを口にする。



「てかさ、あいつが死んでるとは思えねえんだよね」


「…なぜそう言えるのです?」



ぽつりと言った言葉にウィーンが身を乗り出す様にしてすぐ食いついてくる。


そちらには目を向けず、毛皮を見つめたまま思いつくままに言葉を紡ぐ。



「まず殺して剥ぎ取ったにしてはその毛皮は量が少ない。あいつの体格もお前なら知ってんだろ」


「…戦闘のおかげで他の部分の損傷が激しかったという可能性もあります」


「まあその可能性もある。だけどそうだとしたら俺は倒せねえ。あいつが今まで何人のパーティー倒したと思ってんだよ、ソロじゃ無茶通り越して無理だ」



おそらく最前線で戦っていたであろうあのパーティーですら一人欠けただけで事故になる可能性が高くなるのだ。一人では言わずもがな、だ。


それによしんば倒したとしても今まで戦うまでの前提条件、そして白銀狼自身の強さで伝説とまで言われる者を倒して自慢してるやつが現れない方がおかしい。狩ったならスクショ撮ったうえで掲示板に自慢コメと共に張るだろうにそんな噂さえ聞かないのだ。



「…不意打ちで倒した可能性も」


「あいつがそんなのに引っかかるとでも? それにそしたらさっきお前が言った可能性とやらがなくなる」


「…ではなぜここに毛皮があるのです」


「さあ? 俺は知らねえよそんなこと。ただ俺は自分がやれるわけないって言いたいだけだって」



ただ自己弁護を理由つけて言っただけであとは全部ウィーンに任せるようにして思考を放棄する。


体を背もたれに預けるように脱力をして後ろを見て、店の中に居たほとんどの人間が目を逸らしたのを確認して顎に手を当て考え始めたウィーンに視線を戻す。



「…わかりました。貴方が犯人ではないと認めます」


「そりゃどうも。じゃあ俺は行っていいか。表彰式見てえんだよ」


「…勝手にどうぞ。私は犯人を捜しに行きますので」



俺が席を立とうとする前にそう言ってさっさと出ていってしまった。やっぱり愛想がなさすぎじゃないだろうか。


肩を竦めた後、追いかけるように出ていこうとしたが俺の前に女将さんが来て道をふさいだ。



「なんですか女将さん。もうこんな騒ぎ起こすなって説教ですか?」


「さっき出てった兵士さんが食った飯の料金、誰が払うんだい」



両手を腰に当てた女将さんが言った言葉のせいで起きた怒りを数秒間掛けて抑え、しかし抑えきれなかった分で叫んだ。



「…あんのクソ野郎食い逃げかよ!!!」

剣Lv35 回避Lv36 隠密Lv30 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv24 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv24 罠Lv11 盗賊の技術Lv31


定期更新できるようになりたいなあ…

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