取り調べにカツ丼はつかない
「…なんで最終結果がねえんだよ」
自宅のパソコン前で舌打ち交じりにそう呟く。
どんなに公式サイトを探してもどこにもない。色々と情報をあさった結果、なんと五位までをゲーム内で表彰してからだそうだ。クソか。
まあどんな奴が表彰されるか気になるしインしておこうか。できたら無料とか言って武器放り投げよ。
「そういや満腹度減ってたな。なんか飯k「あんた何やったんだい!」なんのことでしょうか女将さん」
ステータス画面を確認しながら部屋を出たところで女将に胸倉を掴まれてそう怒鳴られる。
俺よりも背が一回り低いのになんでここまで迫力が出るのはなぜなんだろうか、俺は不思議でならない。
「あんたを訪ねて街の兵士が来てんだよ! さっさと準備して下降りな!」
「は? 俺悪いことしてねえぞ今んとこは」
「いいから速くしな! こっちだって止めておけるのは少しなんだから!」
そう言うだけ言ってドタドタと降りて行ったので首を傾げる。
はて、本当に何があったのだろうか。一応犯罪歴なんてないから特にないんだけどな。
「もしかして巨狼の討伐邪魔したことか? だとしても対応遅いしあいつが何か害を与えてる存在だと思わねえし…」
ぶつぶつ言いながら各所に隠してある武器をすぐに取り出せるか確認し、もしものためにストックしてあったパンを食う。
ついでに窓を開けて空気を入れ替えながらいつも通りの風景を楽しみ、下の階に降りた。
「………」
「うわ、めっちゃ無表情じゃん」
店の奥にある椅子に不動で座る鎧を着た浅黒い肌の青年は、何の感情も浮かべないでこちらを睨み付けていた。
そのせいか他のテーブルは埋まっているのに階段までの一直線上には誰もいなく、悠々と歩いてその青年の体面に座った。
「俺を呼んでたってのはあんたかい? 初対面で言うのはどうかと思うけどもっと笑ったらどうだ、怖がられるぜ」
「…貴方にそんなの関係ないですが」
「つれないねえ、ちょっとは会話を楽しもうぜ。それともこの後仕事でもあるのか」
「…はあ」
自分の雰囲気に流すために気楽に言ってみたが表情を一切変えず、溜息を返されただけだった。
面白くないな。だったらさっさと話しを終わらせてしまおうと先を促すことにした。
「ま、そこまで俺と会話したくないならいいけどさ。用件って何だ」
「…あなたは最近近くの森で数多くの獣を討伐しましたね?」
「ああ。確かにしてたな。もしかしてなんか不都合だったか?」
「…それではこちらの毛皮に見覚えは」
「もしかして禁猟のやつでも狩ったか? でも俺は猿と熊しか…」
途中まで言った言葉は青年の足元にある袋から出された巨狼と同じ白銀の毛皮を見て止まる。
頭の中が真っ白になりながら無意識に腕輪の効果を使おうと手を動かすが、その前に青年がこちらの喉元に剣を突き付けていた。
「…動かないでください。まだ話は終わっていません」
「てめえの話より大事なことができたから退出しようと思っただけだが?」
「…どうせ逃げるだけでしょう。きちんと話していただきます」
無表情のままこちらをじろりと睨み付けられる。
だが甘いぞ、ここはゲームだから急所に攻撃しようと一撃じゃ死なねえ。腕輪を触ればいいだけだから強硬すればいい。もし死んだとしてもどうせデスペナくらうが死に戻りで逃げれる時間は貰える。
「…ちなみに私はある権限であなたを一撃で倒せますし、倒したら警備のところに強制転移です」
だがそんなところも対策済みのようで青年がボソリと言った言葉で止められる。
しばしのにらみ合いの後、こっちが折れるという形で決着がついた。
「ならおとなしく話すって。だから剣収めな、周りが怯えてるぜ」
なだめるように両手を出してなだめながら目線を誘導する。
剣を抜いた時から立ち上がったり身を引いて椅子から転げ落ちる客を見て、剣を収めて椅子に座った。
「…貴方が言ったことを信じてここは収めましょう。ただし逃げた場合はその限りではありません」
「はっ、誰が逃げるかっての。俺もてめえから聞き出さなくちゃいけないことができたしな」
青年の言った言葉を鼻で笑い、言い放つ。
ここで巨狼の無事を確認するために跳んでもいいが、それだと誰に復讐すればいいか分からないからきちんと話を聞こうじゃないか。
「…それで、あなたは白銀狼様を狩ったということで間違いありませんね」
「それは俺のセリフだ。どうしてあいつの毛皮をてめえが持ってんだ」
「…おかしいですね。貴方が先日この街で納品したものですよ? 知らないはずはないでしょう」
ああ、そういうね。どうりで何か俺に敵意を向けてると思ったらそういうことか。
多分だけどこいつの所属する組織、ないしこいつはあの巨狼―白銀狼を敬意を払っている。だからこの対応というわけか。だけどそれは言いがかりでしかない。
「信じるかどうか知らんがそれは俺が納品したわけじゃねえよ」
「…確かに信じませんね。証拠がありませんから」
「証拠なんてないけどね。ただ二つ聞かせてくれないか」
信じてほしけりゃ証拠出せ、と言外で言う青年にそんなのがないと言ってのけて机に頬杖をつく。
しばらくこちらを見つめた後に許可しますと小さな声で言ったので指を一本立てた。
「ひとつ、俺は何の罪を問われてる? というか問われる罪があるのか」
「………白銀狼様は封印地を守る御方です。そのような方を殺していいとでも」
俺が言うと目をそらしながら常より長い沈黙の後にそう答える。その様ににやりと笑みを浮かべた。
「それはこの街全員知ってることか。そうじゃないなら俺は罪を問うことができないはずだ」
「…私たちの組織では「そして二つ目だ」」
何かを言う前に二本目の指を立てて青年の言葉を遮り、どことなく不満げな青年に愉快と口角を上げながら言った。
「お前の名前なんていうんだ? まだ自己紹介してなかったよな」
「……………は?」
俺のずれた質問に今までの無表情を崩し、あっけにとられた表情を浮かべた青年を腹を抱えて笑った。
剣Lv35 回避Lv36 隠密Lv30 料理Lv26 投擲Lv21 影魔法Lv24 魔法熟練Lv28 隠蔽Lv24 罠Lv11 盗賊の技術Lv31
書く内容もそうだけどそれ以上にサブタイトルが思いつかない