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イベント前の話

「はい、これが今回の分ね。ちゃんと届けてよ?」


「お前は俺がガキのお使いレベルのことができないと思ってんのかおい」


「否定はしないよ。なんたって強引に防具の作成頼んだ挙句にぜんぜん取りに行かないくらいだし」


「うるせえ。それは俺だけが悪いわけじゃねえし〈影収〉」



にこにこと責める気がまったくない表情で言ってくるハイルに影の中に渡された武器を入れながらそう返しておく。


実際悪いのはあのイケメソ野朗が粘着したからだ。その後も逆恨みでこっちに決闘挑んでくるわで…



「あっ」


「どうかしたのかい? その捕らわれている人を見捨てて逃げてきた衛兵みたいな顔して」



あそこに置いてきた奴のことを思い出して声を上げた俺に、妙に具体的でちょっと外れてる例えを言ったハイルへ苦笑いをしながら言った。



「まあ当たらずとも遠からずだなそれは。てかそこまで酷い顔してたか俺」


「いや、今話題になってることに絡めて言ってみただけだよ。いつも通りの顔だから大丈夫」


「なら良かった。まあ俺がやんなくても誰かがやることだし平気だ。それよりお前はあの鉱石の加工終わったのか?」


「最初の場所にあるくせに要求スキル高いっぽくてね、残念ながらまだだよ」



俺の何気ない問いにハイルが悔しそうに言った。


フリードと会うきっかけになったあの蒼い鉱石は最初の製錬の時点で失敗してまだインゴットにすらなっていない。

しばらく鍛冶のレベル上げに専念していたって言ってるのにそれでもできないとはどれだけ難いんだって話だ。


焦らされてはいるが、あの鉱石で武器ができたらさぞかし綺麗なのだろうと気長に待っている。それにそれだけ要求スキル高いんなら武器としても期待できるだろうしな。



「まあ代わりといってはなんだけどレイスに言われたの作っておいたよ。ほら」


「お、マジで。そりゃ助かるぜ」



そう渡されたのは刃渡りが30センチ近くある大振りのものと柄頭にリングが付いた両刃の鉤爪状の二つだ。



ボウイナイフ

Atk+16

元は狩猟や決闘などに使われていた大型のナイフ


カランビット

Atk+14

グリップエンドに保持リングを持つナイフ。練習しないと自分の手を切りやすい。



「あれ、説明は両方ともお前がつけたのか?」


「いや、小規模アップデートできた勝手に説明文つけるの使った結果がそれだよ」


「ふーん、そうかい。なら別にいいけどさ」



珍しく説明つけてると思ったらそういうことね。まあつけてようとつけてないと関係ないからいいんだけど。


カランビットを左のふとももに、ボウイナイフを右のふとももに柄が下になるように装備して準備完了。これでしばらくは楽に狩りができるってものだ。



「そういえばレイスは次回アップデートの狩猟祭の内容見た?」


「ああ、見たぜ。とりあえずいつも通りに狩ってりゃいいってのも分かったし」



今度のイベント、狩猟祭は期間内に狩った敵の肉などの素材を納品してポイントを稼ぎ上位の奴は賞品付きという分りやすいシンプルなものだ。


もちろん狩猟難易度や素材の質によりポイントは変動してくるが、要は多く狩ればいいだけの話だ。



「てか俺的にはイベントよりそのあとの方が楽しみだな。なんたって街あげての祭りだろ? 絶対に面白いに決まってる」


「そうだね。確か集められたお肉をその時に使って屋台に出すんだっけ」



公式でもアナウンスされていたことを言うと確かにというように同意される。


この祭りは獣達の力を取り込んで病気にかからないようにする祈願も含まれているそうで、それはそれは盛大らしい。

屋台も格安で、VRだから味も分かるしカロリーも気にしないで食べ放題というわけだ。楽しみにしないわけがない。


それに対してひとつ頷き



「らしいな。しかもその時に他の街のお偉いさんも来るって話だからすげえよ」


「待って、さらっと言ってるけどそんな情報どこにも告知されてなかったよね?」


「ああ、そりゃ街の人の噂程度のものだけどな。もちろん街の人ってのはNPCのことだが」



まあ結構な人が言ってるから普通に外に出ている連中なら知ってるやつの方が多いだろうが、こいつはほとんど街に出ていないから知らないのは当たり前か。



「まあ俺たちは見たこともない奴だから関係ないんだけどな」


「確かにそうだけどね。どちらにせよ面白いイベントになることを期待してるよ僕は」


「まあな。それ以上に俺は武器の宣伝のために入賞しなくちゃいけないけど」


「そういえばどれくらい売れてるの? 自分が作ってるから結構気になるんだけど」



そう言われて先日持って行ったときに渡された額から売れた数を逆算すること数十秒、計算が終わって出た数は



「三個くらいかな」


「今の計算絶対に要らなかったよね」


「いや、少しは期待させてから落としてやろうと思ってさ」


「そのたくらみは失敗してるから安心していいよ。場所も北地区寄りだからそこまでいい立地とは言えないし仕方ないかな」



だからイベントできちんと宣伝しろよ? と言外に要求してるように思うのは俺の考えすぎだと思いたいが目が笑ってないから無理です。


まあポイント上位者には賞品の他になにやら特別なことがあるらしいので最初からやる気だ。


肩を竦めて武器を届けるために鍛冶場から出ていく俺にハイルが最後に掛けた言葉は



「そういえば次のイベントは大勢が見てるわけじゃないから武器の宣伝になりづらいんじゃないかな?」


「…多分平気だろ」



今更あとに戻れるわけありません。

両袖と裾に仕込んだ投げナイフと直接持つ用に作られた今回の二つのナイフ。今更ながらレイスの装備は盗賊より暗殺者とか暗器使いのものだと思い始める。

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