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誘拐犯とひきこもり  作者: 00
第一章
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3


 結局、罪とは何かわからないままだなぁ。

 僕は風呂に入りながら、そんなことを考える。

 あの後、僕はお姫様に事実を伝え、赤くなったお姫様にかなり怒られて、野菜炒めを食べて、食べるのが遅いお姫様が野菜炒めを食べるのを観賞して、お姫様が『あ、おいしい』と思わず呟いているのを喜んで、食器を洗って、お姫様を風呂に入れて、その間に宿題をして、お姫様の下着を置いておくのを忘れていたなーと思って(服は常に同じ。ひきこもりだから、なのかな?)、お姫様が普通に風呂から上がってきたのを見て『もしかして、さっきと同じ下着をそのまま着ているのかな。庶民はそうするものなんだと自分で思い込んで』と思って、訊いてみたらその通りだったからそれは違うと言って、お姫様に『置いてなかったから、そうだと思ったのだ!』と僕を殴りながら言われて、お姫様に不機嫌になられた。

 僕が風呂に入っている間に機嫌が直ればいいなー、と思って風呂に入ったけど、今思えば今日に限ることではなく、お姫様は基本的に機嫌が悪い。いや、僕に対してだけかもしれないけど。まあ、僕に対してだけなら特別扱いされて嬉しい、って感じだ。ひゃっほー、あーいむはっぴー……そろそろ英語はやめにしようか。僕の英語力の低さが露見されるだけだし。……露見、ってこの使い方であってるっけ? 僕、日本語力の低さも露見している? いや、だから露見ってこの使い方で以下略。

 まあ、そんなことは置いておいて、罪だ。うん。罪とは何か。

 今日も罪とは何かを考えていたわけだけど、最終的な答えは出せていない。いや、どうでもいいんだけど、考え始めたら止まらないこと、気になりだしたら止まらないこと、なんていっぱいある。そのうちの一つだ。これは。

 罪。

 僕がそのことについて考えるようになったのはいつ頃からだろうか。

 生まれたときから? そんなわけない。

 物心ついたときから? よく罪って言葉知ってたな僕。

 小学生のときから? そんなこと考える子供は嫌じゃない?

 中学生のときから? ……うわー。この歳でそれについて考え始めたら、絶対中二病ってやつじゃん。僕、中二病なのかな?

 高校生のときから? それはないな。僕は現在高校一年生だ。しかも、まだ入学したての。というか、姉さんに質問したときは中学生くらいだったから、その時点でありえない。

 なら、僕が家から追放されてから?

 罪の子と言われてから? 禁忌を犯した忌まわしき子と呼ばれてから? 均衡を崩す者と呼ばれてから? あの術を会得してしまってから? 姉さんですら会得できなかった禁術を会得してから? 神をつくりだせるようになってから? 

 ……いや、これもないか。僕が姉さんに質問をしたのはまだ追放されていないときだ。この条件には、当てはまらない。

 けど、このことは多分関係しているんだよなー。式が僕に与えた影響は大きいし、少なくとも式に関係したことだとは思うんだけど。

「……はぁ」

 結局、僕の人生は式で縛られているのか。式というよりは僕の実家なんだろうけど。

「神様を使役することができるかわりに、僕はその神様を使役するためのものに使役されているのか。式神じゃなくて式人、って。それは姉さんくらいにしかできないはずだけど、実は式者なら誰しもが自分だけは使役できているのかも。自分の意思に関わらず、ね」

 風呂の中ではつい独り言を口走ってしまう。何でだ? 人が他にいないから? だからか。そういえば、お姫様がいないときは普通に家の中で独り言を言いまくっていた気がする。……僕、さびしい性格なのかな。

 そんなことは置いといて、罪とは何か、だ。

 ……いや、やっぱりどうでもいいや。もう今日はこの思考終わり。明日は学校があるんだから、授業中とかにでも考えておこう。家ではお姫様のことを考えるので十分だ。まあ、いくら考えたところで答えは出ないんだろうけど。

 じゃあ何を考えるか。そうだな、お姫様、お姫様のことを考える、か。改めて考えてみると、難しいかも。

 お姫様は可憐と高貴って言葉が似合う、とか? そんなこと今更考えてもなぁ。

 なら、何のことを考えよう?

 式のこと? 絶対に嫌だ。

 実家のこと? これも同じく嫌だ。

 姉さんのこと? 考える必要がない。僕とは違う、天才。それ以上、考えることなんて、ない。尊敬すべき姉。天才と呼ばれた姉。忌み嫌われた僕とは違って、愛された姉。……一言で表すなら、僕がなりたかった、憧れていた人、だ。

 学校のこと? 宿題した。明日の準備は……したっけ? 忘れた。後で確かめよう。

 他には何かあるかな? というか、僕が考えることってすごく限定的だな。もっと多種多様に分かれてもいいんじゃないか?

 まあ、もうないのなら、ないでいいや。さっさと風呂から上がって、寝よう。

 お姫様の世話とかをしてから、ね。


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