S1-4
僕はさくらさんから煙草を受け取る。本当なら、ここで、本当なら煙草を受けとってはいけないと思う。
でも、さくらさんが煙草を吸う姿は、とても綺麗で、ここで自分が煙草を吸わないのはなんだか勿体無い気がした。
僕が煙草を加える。すると
『つけてあげるわ』
さくらさんは、僕の煙草に火をつけた。
僕たちはしばらくの間、煙草を味わう。
『たまに吸うと気持ちいいわね』
『…そうですか』
『…あなた慣れてないわね』
『…はい』
さくらさんの言うとおり僕はまだ煙草になれてない。正直僕は、煙草のよさをまだ実感できてない。『どれくらい前から吸ってるの?』
『…三日前からです』
『…なら仕方ないわね。始めは肺にいれないで、口の中に煙をためることを意識するの。やってみて』
僕はさくらさんの言われた通りにやってみる。『こうですか』
『なかなか上手いわね。いわゆる
「ふかし」
っていうやつね』
さくらさんの言うとおりにやると少しだけど、煙草のよさというものが、実感できる。
『まずはここから始めなさい。肺にいれるよりは、健康にいいわよ』
『はぁ』
『でも、吸いすぎちゃダメよ。高校生だし、お金も、もったいないから…』
『…あの』
『何?』僕は疑問に思っていることを言葉にする
『どうして、俺に教えてくれるんですか?』
『なんでだろうね。そうだな、傘のお礼ってこてにしといて。傘を貸してくれた優しい高校生へのお礼ってことに…でも、傘のお礼が煙草の吸い方じゃまずいか』…不思議な人だ。普通なら怒るのに、煙草の吸い方まで教えてくれる。
それに、終始笑顔を絶やさない。
『十分ですよ。俺もよくわからなかったかし、ありがとうございます。』『どういたしまして』
『俺、もうそろ行かないと』
『そう、じゃあこれ』
さくらさんは僕に傘を返そうとする
『あ、その傘使わないのでいいですよ。持っていてください。風邪ひくといけないし…』『じゃあ、次に会うときまで預かっておくわね』『また、会えますかね』『たぶん会えるわよ。雨の降る日にね』
『雨の降る日にですか…わかりました。じゃあその時まで預かっててください』
半分は冗談だった。本当に会えるとは思ってなかったし、傘も本当にいらなかった。僕もさくらさんも本気にしてなかったんだと思う。ただ、さくらさんと話して、、重い気持ちが軽くなった気がした。それだけで十分だ。
僕は、軽く会釈し公園を離れた。
……
……
『…ごめんね。ようちゃん。タバコ嫌いだったもんね。もうそろそろいくね。大好きだよ。ようちゃん…またね』