あらためてヨロシク
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「ねぇ、聞いたぁー。遥香の結婚」
お昼休み時間に、松下さんが、なんの前振りもなく言ってきた。
話は先日の、叔父の鉄二と、松下さんの義理の妹でもある、遥香さんとの結婚の話である。
「はい。直接、目の前で聞きました」
あれは、いま思い出しても、衝撃の話だった。
これまで、まったく女性の影が見えなかった叔父からの「結婚宣言」だ。
「やっぱり」
松下さんは、前からこの話を知っていたのだろうか。
「やっぱり? やっぱり、とは?」
そう思うのが、普通だ。
「遥香が、悠希ちゃんに、サプライズがあるって、言ってたのよ」
叔父は、遥香さんと自分に、共通の知り合いがいたことを、いつ知ったのだろうか。その辺も、聞いておけばよかった。
「あぁ……。サプライズ以上でしたけど。この話、松下さんは知ってたんですか?」
本当は、松下さんは、先に知っていたのか?
「いや。全然。あたしも初耳だった」
この言い方だと、松下さんも、本当に知らなかったようだ。
それも意外だ
「ホントですか!? ここまで、よく誰にも知られずに、二年間もいたものですよね」
普通。こういうことは、どこかから、情報が流れてくるものだ。
「ホントよねー。でも、これからは親戚になるわけだし。松下さん、なんて堅苦しい言い方じゃなくて、希実姉さん、でもいいのよ」
松下さんと、いきなり「親戚」になるのも不思議な話だ。
それがさらに、「希実姉さん」と呼んでもいいだなんてことは。
「いや、そんな」
それは会社の先輩に対して、いくらなんでも失礼すぎる。
「って、ちょっと待って!? 悠希ちゃんの叔父さんと、あたしの義理の妹が結婚するっていうことは……。あたし、悠希ちゃんの叔母さんにらなるんじゃない!?」
確かに、形式的には、そうなる。
「確かに、そーなりますか」
「えーーっ!? ショックぅーー。こんな大きな姪が、いきなりできるなんてぇーー」
松下さんは、凄く残念そうな声を上げる。
「そんな、気にしないでください。叔父がたまたま、若かっただけで」
必死に、フォローを入れる。
「もちろん。そんなの気にしてないわ。いまのはジョーダン」
松下さんの冗談は、噓なのかホントなのか、本当にわからない。
「もぉー。からかわないでくださいよぉー」
「遥香も、若く見えるけど、あれでもう二十九歳だしね」
そう。遥香さんて、まだ二十五歳前に見えるし、そのぐらいの歳だと思っていた。
「でも、三ヵ月後の遥香さんの誕生日を待って、入籍するんですよねー?」
そうふたりで決めているそうだ。
「そうみたいね。そして、結婚式は八ヵ月後。東京で」
結婚式場が決まり次第なそうだが、そういうことらしい。
「そして、東京での新生活というわけですね」
叔父と遥香さんの、「仕事での活動」を考えれば、いまはそれが一番良いのかもしれない。




