突然の報告
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「叔父さーん!」
会ったのは、プラモデルのイベント会場だ。
「久しぶりだなぁ、悠希。また大きくなって」
「またぁ、同じこと言ってー。前に会ったの、まだ半年前だよ」
「そうだっけか」
「そうだよ。あたし、もう二十二歳」
「ごめん、ごめん。悠希には、直接、これを見てもらいたくって」
そう言って、叔父の鉄二が視線をやったのは、映画「機動戦士ガンダム・閃光のハサウェイ」の劇中機「クスィーガンダム」だ。
これは色分け済みのプラモデルのはずだが、そこに小日向鉄二の造形が加えられて、劇中さながらの迫力がある。
発光体として埋め込まれた、小さな青緑色のLEDライトが、まるで実写のような雰囲気を与えている。
あの映画の中での「ガンダム同士の戦闘シーンは暗がりだった」ので、それを再現するように、「クスィーガンダム」も白色ベースの上に、ほんのわずか暗闇を表現するように黒色がエアブラシで塗装されている。
「やっぱ。叔父さんて、凄いなぁー。まるで、本物みたい」
悠希は、叔父の鉄二のプラモデルの造形に、あらためて感嘆する。
「本物って、そんな本物があったら、大変なことだぁ」
そう言って、鉄二は悠希をからかう。
「そんなのは、わかってる。でも叔父さんみたいに、自分のイメージ通りのものが作れたら最高なんだけど」
それが悠希の目指す、プラモデル作りの理想だ。
「まぁ、こっちはそれで、飯を食わせてもらってるんで」
本当に好きなことを仕事にして、生活をしていくというのは大変だということだ。
「ねぇ、鉄ちゃん。あたしの方の展示なんだけど……」
二人の後ろから、若い女性が声を掛ける。
悠希が後ろを振り向くと、つい最近、どこかで見たことがある顔だ。
「あぁーーっ!?」
はっきりと、思い出した。
「あぁーーっ!?」
向こうの女性も、悠希と同じように声を上げる。
「HARUKAさん!?」
「悠希ちゃん!?」
悠希と遥香は、二人とも目を見開いて驚く。
ただ、両者と直接の共通の知り合いである、叔父の鉄二は、この状況に置いてけぼりである。
「なに、なに!? 実は二人とも知り合いだった?」
「いや。知り合いというわけでは……。ただ最近、共通の知り合いがいたことがわかりまして……」
この突然の状況の説明に迷いながら、探り探り答えてみる。
「ん? 共通の知り合いって、オレのこと? そんなわけ、ないか」
「実は……」
遥香が、悠希に代わって、その共通の知り合いについて、鉄二に説明する。
「なるほどぉー。そういうわけか! それなら、話は早い!」
鉄二は、「それなら」の大事なところの説明を省いて、そう言った。
「実は……。オレたち、結婚します!」
それは、まったく予想すらしていない、突然の「結婚宣言」だった。
「はぁーー!?」
悠希の頭の中は、完全に追いつかない。
そもそも、プロの「美少女フィギュアのプラモデル」のモデラーでもある、HARUKAと、お近づきになるチャンスができたかと思っていたら、それを通り越して、「親戚」になるというのだ。
「えーーと……。これは初めから、なにか仕組まれていたとか、なにか?」
「なんだ、それ? いきなり、父さん、母さん、兄さんに合わせたら、びっくりするかと思って、先に悠希に話しておこうと思ったんだよ」
「それで……」
叔父の鉄二の恋愛観は、同じ家族の中でも「謎」だらけで、「結婚」以前に、付き合っている「彼女」の存在すら、これまで見たことも、聞いたこともないのだ。
それだけの衝撃があった。
「でも、なんで、HARUKAさん?」
そこは、一応、セオリーとして聞いておく。
「なんでって、意気投合したから」
鉄二からは、当たり前のような答えが返ってくる。
「それで、おふたりは、いつからお付き合いを……」
「えーと。二年前からかな」
これは、まったく、気づかなかった事実だ。
「さいですかぁー。もう二年も前から……」
悠希は、顔の筋肉をひきつらせて笑った。




