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女子プラモ部  作者: 志村けんじ


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4/8

ようこそわが家へ


 次の日曜日。早速、松下さんと息子の大樹だいきくんを家に招待した。


「どうぞどうぞ」

 と、2階にある自分の部屋に二人を案内する。


 部屋の中は、昨日きのうのうちにきれいに片付けておいた。


 悠希の部屋の前に来て、松下さんが立ち止まる。その視線の先は、ドアに貼られた、「あの金属プレート」だ。


「女子プラモ部?」


「あっ!?」

 松下さんに、自分が「大のプラモ好き」なことは話しているが、このことは話してはいない。


「なにこれ!? 面白ーーい! ねぇ、写真撮ってもいい?」

 そう聞いてきた。


「えっ!? えぇ……はい」

 これは予想外の反応だった。絶対にドン引きされると思っていた。


「ねぇ、この写真。遥香に送ってもいい?」


「は……はい。別にかまいませんが……」


「あなた。やっぱり、面白いわ」

 松下さんは、妙に納得した感じでそう言った。


「どうぞ」

 と、部屋の中に案内する。


 7畳ほどの部屋の中は、まったく女子の部屋という感じはなく、完成されたプラモデルたちが、ところ狭しと飾られている。


「凄いわね」

 松下さんは、悠希の部屋の中を見て、感心した様子だ。


「スゴーーイ!」

 大樹だいきくんも、興味津々に部屋のあちこちを見渡す。


 作業台のような机の上には、組み立て開始から2週間以上経ってはいるが、まだ製作が終わっていない、1/8スケールモデルの、全長が62.3cm×23.1cmという圧巻のサイズの「ファイアーバード・トランザム」が置かれている。 


「大ーっきいー! なにこれ!? これもプラモデルなの?」


「はい。そうです。アメリカ製の……」

 そう言うと、大樹だいきくんが手を伸ばして、触ろうとする。


「ダメ! 触っちゃ!」

 そう母親に言われて、大樹だいきくんは慌てて手を引っ込める。


「だって、このプラモデル、高いんでしょ?」

 まず、松下さんが気になったのは値段のようだ。


「まぁ……。大体、2万5千円ちょっとはしました」

 正直に答える。


「ほら、高級品じゃない」


「いや。別に、高級品というわけでは……」

 一応、謙遜して答える。


「でも、安くはないでしょ?」

 更に、聞いてくる。


「はい……。高いです」

 最後に、正直に答えた。


「いい。大樹だいき。これはお姉ちゃんの大事なプラモデルだから、触っちゃダメよ」

 そう、松下さんは、大樹だいきくんに言い聞かせる。


 大樹だいきくんも、「うん。わかった」と素直に返事をした。


「それじゃ、色塗りやってみよっか。持ってきたプラモデル見せて」

 そう悠希が聞くと、大樹くんは持っていたリュックサックから、プラモデルの箱を取り出した。


「わぁー。シャア専用ズゴックだ! 大樹くん、シブい!」

 悠希は、大樹だいきくんがこれを選んだセンスに声を上げた。


「なに!? これって、シブいの?」

 悠希のこの反応に、母親の松下さんの方が聞いてくる。


「はい。シャアザクは有名ですけど、これはシブいです」

 そう言ったが、松下さんはちんぷんかんぷんなようだ。


「ちょっと、なにを言っているのかわからないわ」

 そう言われた。


「それじゃ、その説明とか、要ります?」

 そうは言ったが、大樹だいきくんも首をひねっている。


「要らない……みたいですね」

 そうみたいだ。


「勘違いしないでね。これがなにか有名なのはわかった。それがシブいんでしょ?」


「そうです!」

 悠希にも、その答えで十分だった。


「でも、このプラモデル。色塗りを教えてほしいと言ったけど、最初から色は、ピンクみたいな色に塗られているわよね」


「そうですね。これは成形色再現キット、わかりやすく言うと、色分け済みキットですから」


「だったら、本当は、色塗りは必要ない?」

 松下さんは、ちょっと神妙に聞いてくる。


「そんなことないです。もっとカッコよくするなら、色塗りは必要です」


「なら、このまま教えてもらっていいのね?」


「もちろんです! それじゃ、大樹だいきくん。組み立てからやってみようか。これはスナップフィットじゃないから、ニッパーが必要で……まずは説明書通り、必要なパーツを切り出してみようか」


 悠希は大樹だいきくんに、紙やすりを使った細かい仕上がりの為の下準備から教えていく。


 松下さんも、その悠希に習うように、大樹だいきくんと一緒にプラモデルを組み立てていく。


 そして最後が、念願の色塗りだ。これがエアブラシなら、組み立てたあとに一度バラして、塗装するのだが、今回は筆塗りなので、敢えて汚れた感じを出すための「ウエザリング」をする。


 使用するのは、タミヤの「ウエザリングマスターという、パウダー状の塗料だ。


「ちょっと、やってみせるね。この箱の絵を参考に、ちょっと汚れた感じを出すの」

 そう言って、実演して見せる。


 パッケージの箱の絵にある、水辺に立っている、「赤いシャア専用のズゴック」だ。


 悠希は、パッケージの絵を真似て、なんとなく塗っただけだったが、それでもなんだか本物のような雰囲気が増す。


「このウエザリングのポイントはね。塗り過ぎないこと」

 そう最後に、付け加えた。


 まずは、母親の松下さんがやってみて、そのあと大樹だいきくんがやってみる。


大樹だいき。そこまで、そこまで」

 松下さんは、大樹だいきくんが塗り過ぎないように、時々ブレーキを掛ける。


 初めての「ウエザリング」にしては、十分に上出来だと思う。


「二人とも、上手いです!」

 お世辞抜きで、そう言った。


 大樹だいきくんも松下さんも、この仕上がりに、十分満足しているようだ。


 二人とも満足した笑顔で、悠希に「ありがとう」と言って帰っていった。


 これで、はやる気持ちを抑えながら、来週は「ファイアーバード・トランザム」の塗装である。



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