新しい出会いの予感
♢
そのあと悠希は、松下希実さんと急激に仲良くなった。
松下さんの旦那さんは、ビルの工事現場などで働いている人らしい。
松下さんは、旦那さんのことを。
「うちの旦那。いわゆる、むかしでいうところのガテン系ね」
と説明する。
「でも、力が強いだけじゃなくて、すごく優しいの」
とお惚気る。
最後に。
「でも、工作とかゲームは、あたしの方が得意だから、子どもに教えるのはあたしなの」
と、優しく旦那さんをフォローしているのだ。
「大樹も。あっ、子どもの名前ね。そんな旦那のことが大好きだしね」
と、松下さんは幸せの家庭を更にアピールする。
そうな話を聞いて、悠希も少し羨ましいと思った。
♢
ある日、松下さんに、あることをお願いされた。
「あのね。ちょっとお願いがあるんだけど、子どもに色塗りを教えてくれない」
そう言ってくる。
「色塗り? 絵ですか? 絵は、ちょっと、苦手で……」
そう答えると。
「違う違う! プラモデルよ! プラモデル」
それだったら、話は早い。
「なんだぁー。プラモデルか。それを先に言ってくださいよぉー。塗装ですね。いいですよ!」
そう即答する。
「その塗装なんだけど、難しいものなの?」
「う~ん。エアブラシは、コツがいりますけど、筆塗りなら小学2年生でも大丈夫だと思います!」
「なら悪いんだけど、その筆塗りを教えてくれない」
「いいですよ! それなら、あたしの家に来ますか? 道具、全部揃ってるし」
「いいの?」
「はい! もちろんです!」
このあと、松下さんが、思わぬことを言う。
「ホントだったら、旦那の妹に教えてもらえばいいんだけど、遠いから」
「遠い? 遠くに住んでるんですか?」
「そう。岩手の盛岡」
「それは、遠いですよね」
「そうなの。それにあなたのとは、たぶんジャンルが違うし」
「ジャンル?」
「そう。女の子のお人形みたいな……」
「お人形?」
そう言われて、悠希は少し考えた。
「お人形って、もしかして、こんなのですか?」
悠希はスマホで画像検索して、松下さんにそれを見せる。
「そうそう、これ。こんなの」
「これは美少女フィギュアのプラモデルですね!」
「元々は、自分でコスプレしてたみたいなんだけど、そこからなぜか、そっちに行ったらしくて」
「へぇー。そうなんですか」
その話を聞かされて、悠希はあることを思い出す。
「その旦那さんの妹さん……。もしかして、なにかで賞をもらってませんか?」
「みたいね。その美少女フィギュアとかいうやつで」
「その妹さんの、名前を教えてもらえませんか?」
その松下さんの旦那さんの妹の名前を確認する。
「遥。松下遥だけど、それがなに?」
「そんな!? HARUKAさんで、超有名人じゃないですかー!?」
「そうなの?」
松下さんは、その悠希のあまりの驚きに圧倒される。
「あたし、美少女フィギュアは、ちょっと作るのが苦手であんまりなんですけど、その妹さんの名前は有名で存じ上げてます」
「そんな、かしこまらなくてもいいわよ。今度、機会があったら紹介しようか」
そんな、願ったり叶ったりののことを言ってくれる。
「ホントですか!? そのときは、ぜひお願いします!」
そう。即答した。
「それで、子どもの方なんだけど、いつ……」




