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女子プラモ部  作者: 志村けんじ


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2/9

プラモデルは、お好きですか


 そして休み明け月曜日のお昼休み。自分のデスクでお弁当を食べようとした悠希は、2つ離れた席の松下希実まつしたのぞみさんの机の上に、全長12cm、おそらく1/144スケールのガンダムのプラモデルが飾られていることに気づいた。


 そうなると、居ても立ってもいられない。


 自分のデスクから、そのガンダムのプラモデルを覗き込みながら、お弁当のご飯とおかずを口の中に運ぶ。


 悠希がお昼ご飯をお弁当にしているのは、もちろんプラモデルの為だ。


 プラモデルを作るには、やはりそれなりにお金が掛かる。


 周りの女子たちは、ファッションや美容にお金を使っているが、どうしても化粧メイク = 塗装をイメージしてしまう。


 それなので悠希の化粧メイクは、本当に最低限のものでファンデーションもかなり薄い為、それが功を奏してか、周りにいた女子たちからは、全然化粧荒れしていなくて肌がきれいだと羨ましがられてきた。


 そんなことより、松下さんは、たぶんもう少しでみんなと一緒にランチから戻ってくるはずだ。


 早くあのガンダムのプラモデルのことについて聞きたい。


 そう思って、椅子を前後に揺らしていると、松下さんが戻ってきた。


 はやる気持ちを抑えて、ゆっくりとデスクに戻った松下さんに近づく。


「あの……松下さん。ちょーっと教えてほしいんですけど。いいですか?」

 こんな聞き方だと、怪しさ全開だ。


 それでも松下さんは、優しく返事をしてくれる。


「ん。なに? 仕事でわからないところ?」


「いや。違うんです。それ、気になっちゃって」


 そう言って、デスクの上に飾られているガンダムのプラモデルを指差す。


「それ、ガンプラですよね? どうして?」


「ああ。これ? 子どもにもらったの」


「子ども!? 松下さん、お子さんがいたんですか!?」


「そうよ。あたし何歳いくつだと思ってんの? もう30歳よ。子どもの一人ぐらいいるわ」


 その30歳だからといって、子どもがいるという道理はないが、それでも意外な感じがして驚いた。


「あの……まさか……」

 それなので、悪い方の想像もしてしまった。


「まさか、シングルマザーだとか、そう思った?」

 肝心なところを聞く前に先回りされた。


「す、すみません!」


「大丈夫よ。ちゃんと子ども父親と3人で暮らしてるし、幸せの家庭してるわよ」


「そ、そーなんですね。それじゃ、そのプラモデルは旦那さんが教えて、お子さんが作ったんですか?」


「違うわよ。あたしが教えたの」


「えっ、えっ、えっ!? どーして!?」


「どーしてって、こんなの子どもに夏休みの工作教えるのと一緒じゃない。特に道具も必要なかったしね」


「ああ。スナップフィットですね」

 なんの迷いもなしに、専門用語で答える。


「あら。あなた詳しいのね。プラモ好きなの?」


 そう聞かれて、悠希から出てくる答えは一つしかない。


「はい。好きです!」


「あら、そう。やっぱり」

 思ってもみなかった言葉が返ってくる。


「やっぱり!? やっぱりって、どういうことですか!?」

 ひょっとして、完ぺきに隠していたつもりだったがバレていた。


「だって、あなた休憩時間とかお昼休みにプラモデル作りの動画、よく見てたじゃない」


「えーーーっ!? なんで知ってるんですかぁーー!?」

 それを見ていたときは、極力バレないように画面を他の人に見えないようにしていた。


「だって、ライナーだっけ? あの枠組みから、プラモを切り離すしぐさしてたじゃない」

 どうやら、無意識にその動きをしていたようだ。


「あっ、あの……。みんなには内緒にしてもらえませんか」

 そう。頭を下げてお願いする。


「別にいいけど。そんなに隠すようなことでもないと思うけど」


「いや。あんまりそういうのは、変な子だと思われるかねないので」

 これが知れて、みんなにドン引きされても困る。


「あら、そう。あなた、十分に変よ」

 そう言われた。


「えっ!? どーいうことですか!?」


「どういうこともなにも、あなた、良くも悪くもオタク」


「オタク!? いや。そこまでは」

 こう言ってはなんだが、そこまで入れ込んでいるわけではない。そのはずだ。


「あっ、ごめんごめん。そういう意味じゃなくて、どこか中二病的な。あっ、これも言い方が良くないわね。あなた、どこか純粋なのよ。まだ擦れてないっていうか」


「世間知らずってことですか?」

 確かに、プラモやアニメなんかは好きだが、わりとしっかりしている方だと自分では思っている。


「そうじゃなくて、もう独り立ちした社会人なんだから、もっと自分の趣味にも自信持ってもいいんじゃない」

 そう言われた。


 悠希はそう言われて、なんだか肩に入っていた力が抜けた。


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