浮島編3
似たようなサイトにエントリーシートを送ると、今度は日雇いに近い冷凍倉庫での仕事を勧められた。私は古いスノーボードウェアを引っ張り出し、人生初の肉体労働を行うため、本厚木駅南口で送迎バスを待った。
指定された街路の一角に少しずつ人が集まり、やがてワンボックスカーが我々を拾いに来た。全員で死に場所に向かうような暗黒の雰囲気を予想していたが、車内の空気はそこまで沈んではいなかった。どちらかというと、それぞれ顔見知りでない人たちが淡々と目的地を目指すという、気軽な印象さえ受けた。
繫華街を離れ、山の緑が目立つ住宅街に入ると、さすがに胸も高鳴ってきた。本厚木では、北口のヴィレッジヴァンガードにばかり行っていたため、逆方向へ奥深く進んだことなど一度もない。見慣れないまばらな家並みが、心臓を嫌に共鳴させる波動でも出しているように思えた。
巨大なシャッターがいくつも並ぶ、白を基調としたトラックヤードで私たちは降ろされた。すでに心得ているらしい人々の行進に混じり、ついに巨大な倉庫へ足を踏み入れる。
質素だが広々とした食堂の隣に更衣室が設けられていて、そこで黙々と季節外れのボードウェアに袖を通した。ところどころ茶色い染みの浮く壁には、「盗みはやめましょう。人が悲しみます」と貼り紙がされていた。
ありがたくも、これまで作品を読んでくれた数十人の読者に詫びなければならないのだが、実は私はタバコを吸う。時代に合わせるため、作品内で特に主人公の喫煙描写を避けてきた。あなたが今目にしている文の著者に、もし清廉なイメージを抱いていたとしたら、どうかこの惨めなニコチン中毒者を許してほしい。
そのようなことで、軽い食事のあと喫煙所で二、三本タバコを吸うと、私は新たな労働の義務感を静かに受け入れた。




