第3話 食堂
入学式の翌日。今日は授業初日なので、大した内容は無いと思い、油断しきっていた。
だが、予想と反して最初からしっかり進めたため、午前中で疲れてしまった。
昼休みになり、高校で初めての友達である榎本くんと一緒に食堂に向かい、出来るだけ安くて多く食べれる組み合わせを考える。
メニューを見て悩む僕とは違い、榎本くんは適当に何か頼んでいた。
悩んだ結果、一番安いうどんと、揚げ物を幾つか頼むことにし、榎本くんの待っている席へと向かう。
「春樹ー、こっちだ」
「分かってるよ」
この状況も、客観的に見るとチャラそうなイケメンと普通の男子が一緒に飯を食べているのだから、少し似合わないかなと思った。
しかし、結局榎本くんは他の人とは仲良くなれなかったようで、何をするにも僕の後に着いてきたので、これはコレでいいのかと思い、特に気にしない事にした。
「やべぇ…何も考えずに頼んだけど、このペースだと昼飯抜きになる日あるかも」
「考えて頼めば良かったのに」
「いやー、それでもいっぱい食べたいじゃんか。育ち盛りだからな」
確かにそれはそうなのだが、少しでも節約はした方がいいと思ったのだ。
なんたって、その月に貰った分を使い切らなければ、それを自由にしていいと母さんに言われたのだ。
少し物足りないが、空腹感はないのでこんな感じで調節していけばそこそこ多く得ることができるだろう。
僕たちが趣味のアニメやゲームについて話をしながら半分ほど食べ終わると、後ろから声を掛けられた。
「春樹、あと榎本くんだよね。ココいい?」
そう言って僕の左隣の席を指差しながら声を掛けてきたのは幼馴染の凛だった。
早速僕の事を「春樹」と呼んでいるのだが、今それに突っ込むことは出来ないので(榎本くんがいる為)、断る事も出来ず僕は凛が隣に座る事を許可した。
他に席は空いているのだが、凛はワザと僕の隣に座ってきた。これだと注目を浴びてしまう。
…いや、そんな事は無いかもしれない。
なんだっけか、好きな人の右斜め前に座ると意識されやすいみたいな記事を見たことがある。
とすると、俺の正面に座る榎本くんの右斜め前ということだから、榎本くんに意識させたいとか?
うん、その可能性はあるかも。榎本くんはイケメンだからね。
とは言え普通にそこに座っただけだと思うが。
その榎本くんはと言うと、少し戸惑っているようだったが、何とか普通に振舞っていた。
榎本くんが戸惑っている間に、凛に耳打ちする。
「凛、学校では下の名前は…」
「なんで? 幼馴染だって分かってるんだから、寧ろ上の名前で呼ぶ方が変じゃない?」
そう言うと凛はコテンと首を傾げる。
まぁ確かに、苗字で呼びあっているのは変かもしれない。
だったらその方が自然でいいのかもしれない。
「…そうだね。分かったよ、凛」
「ありがとっ」
凛はそう言うと、平静を取り戻した榎本くんを交えて三人で話をし出した。
意外だが、凛はアニメなども少し詳しいので、意外と話は盛り上がった。
途中、何故かボディータッチが多かった気がするが、気の所為だろう。
結局周りからは案の定注目を浴びてしまい、終いには「イケメンと美少女の腰巾着」だとか、「邪魔してる」だとか、様々な声が聞こえてきた。
凛が聞こえた方向に一睨みしてくれたので直接言われることは無かったが、やはり僕は足枷のように見えるのだろう。
☆☆☆
凛side
昼休み、食堂に向かう春樹を見つけた、と言うか後をつけた。
昨日帰ってから色々と調べて、食事の時は異性を落としやすいという記事をネットで見つけたのだ。
なんでも、食事中には「連合の原理」とやらが働くようで、相手との会話が楽しいと思わせられるようなのだ。
兎に角、試してみる価値はあると思い、私は実際にやってみることにしたのだ。
食事中の春樹たちを見つけ、そんなに量の多くない物をメニューから選んで春樹たちの席に向かう。
ここでは、相手の左隣に座るといいらしい。
詳しく言うと長くなるので簡潔にまとめるが、物理的に距離が近いし、意識させやすいらしい。
あと、左側から話しかけた方が右脳に働いて良いらしい。
ということで、春樹の左側に座った。
その後、昼ご飯を食べ終わり、私たちは教室に戻る。
話の内容も二人(春樹)に合わせるために色々やってたから、楽しく食べることが出来ていたと思う。
春樹のことを悪く言う人たちが居たのはホントに嫌だった。
みんな春樹のこと何も知らないのに。
そんなに大したことでは無いけれど、これを続けていって少しでも意識してくれるといいなぁ。
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