第2話 自由にする
「笹木くん、君、御厨さんとどういう関係?」
その質問に、僕はどう答えようかと思案する。
幼馴染ということを隠すことは出来ないので、その後に聞かれるであるうことに対してだ。
まぁ、僕は凛に対して恋愛感情は無い(と思う)ので、質問されて困ることは無いが、凛に迷惑をかけてはいけない。
成るように成るとは思うので、その時の僕に任せる事にして、質問に答える。
「ただの幼馴染だよ」
「……その割には今間あったけど」
「本当だよ。第一、御厨さんが僕に対して恋愛感情とかを抱く訳は無いし、僕も彼女に恋愛感情は持っていないよ」
取り敢えず、言ってて悲しくなるが、僕の本心を伝える。
すると、僕に対し哀れみの目を向ける人が半数程に増え、残り半分はまだ疑っているようだった。
「本当か?」
「本当だよ。僕の容姿で御厨さんに釣り合うと思う? 運動も勉強も得意じゃないし」
僕が自虐的に言うと、流石に周りの人達は僕を可哀想だとでも思ったのか、それ以上聞いてくることはせず、
「そ、そうか。ごめんな? こんなこと聞いて」
「いや、大丈夫。疑う気持ちも分かるよ」
「…あの、これから仲良くしような?」
「うん。よろしくね」
取り敢えず、その場は何とか凌ぐことができ、クラスメイトとの関係は保つことが出来た。
なんなら、凛の事を聞こうと少し質問もされたし、少し仲良くなれたのは良かった。
凛との約束もあるので、早めに帰らせてもらい、急いで自分の家へ向かった。
☆☆☆
家に帰って暫く経った後、二階にある自分の部屋でゲームをしていると、一回からインターホンが押される音が聞こえてきた。
どうやら、凛が来たようである。
玄関に行き、ドアを開ける。
「凛、ごめんね。今日呼んじゃって。他の人に呼ばれてなかった?」
「大丈夫だよ」
「そう? ならいいんだけど。取り敢えず入って」
「お邪魔します」
取り敢えず凛を家に入れ、リビングに案内する。
今日は親が居ないので、リビングに居ても特に問題は無い。
麦茶を二人分用意し、凛の所へ持っていく。
「ん、ありがと」
「いやいや。というか、麦茶でよかった?」
「大丈夫。…それより、本題に入らない?」
「…そう、だね」
凛は早速僕が『幼馴染の関係』断った理由を知りたいようだった。
自分から言ったものだが、理由を本人に話すのは少し緊張する。
僕は大きく息を吸ってから話し出した。
「まず最初に、僕は凛との関係を断った訳じゃないよ。
高校では、凛に僕という存在に時間を取られないで欲しかったんだ」
「…どういう事?」
「凛は幼馴染だから僕に関わらなきゃいけない。
だから、その時間が無ければ凛が自由に出来るって思ったんだ」
「そういう事じゃなくて、なんで春樹は私が春樹と関わるのを面倒に思っているかのように話すの?」
どうやら今凛が聞きたかったのは、関わらない理由では無いらしい。
「なんで」と聞かれても、それは僕にも分からない。
ただ、僕は凛にとって邪魔なものになりたくなかった。
だから、それを言い訳にして、関わるのをやめる事にしたのだろうか。
いまいち自分でもピンと来ない為、一応この事を伝えるだけ伝える。
「僕もよく分からない。だけど、僕は凛に迷惑を掛けたくないだけだよ」
「私に関わらない事で迷惑を掛けないようにするためっていうこと?」
「まぁ、そうかな」
「……分かった」
そう言うと、凛はソファから立ち上がった。
「どうしたの?」
「帰る」
「えっ」
凛はそう言うと、怒ったように歩きながら、一言も発せずに玄関まで行った。
玄関に着くと、後ろに着いてきていた僕の方を向き、
「最後に幾つか質問させて。私のことが嫌いなわけじゃないのよね?」
「勿論。凛を嫌いになることなんてないよ」
当たり前だ。凛は大切な…友達だ。
「次に、全く関わっちゃダメって訳でもない?」
「うん」
最初から全く関わる気が無いという訳では無かった。
「最後に、私がどうしようとも自由だよね?」
「…そうだね。僕に凛の自由を妨げる権利は無いよ」
最後の質問は、どういう意味での「自由」かは分からなかったが、少し嫌な予感がした。
それが何に対する嫌な予感なのかは分からなかった。
そこまで言うと凛は満足したのか、「バイバイ」と手を振って帰って行った。
☆☆☆
春樹の家を出てから私は考える。
春樹はいつも自信が無い。今回だって自信の無さから起こした行動だ。
全く。私の気持ちを考えても見てほしい。
だが、春樹の自信の無さは私も多少悪いところがある。
春樹だって、昔からこんなに自信がなかった訳では無い。
寧ろ、今より余っ程活発で、元気な男の子だった様な気もする。
春樹の周りで私が色々な人に囲まれていたのに対し、春樹はいつも決まった人だった。
勿論、私もその「決まった人」の中の一人だが。
だから、春樹が劣等感を抱いていたとしてもおかしくない。
何とかしなきゃ。
どんな手を使ってでも春樹を振り向かせないと。
早くしないと、春樹が私から離れていっちゃうかもしれない。
その為には、何か手を打たないと。
私は春樹を振り向かせるための手を考えながら帰り道を歩いた。
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