7.☆月☆日
⇢私は今、母の生家であるナックス伯爵邸に身を寄せている。
名目上は休養を取るために。
とお父様やお母様に伝えけれど本当の理由は"君わた"の主要キャラから少しでも遠ざかる為だった。
ナックス伯爵邸に来てからお母様の両親であるお祖父様もお祖母様もとてもよくしてくれていた。
私は、ここへ来てから一度冷静になり改めて自分の置かれてる立場と状況について考えていた。
今回はカナエは同行させなかったから今頃フルート侯爵邸で私を心配してるに違いない。
それでも私には一人で自分の置かれた状況を整理する必要があった。
前世の時から穏やかな場所が好きだった私にはナックス伯爵邸はとても心地よい場所だったから毎日一番気持ちの良い気温の時間に庭出てお茶を飲みながら過ごすとごちゃごちゃだった頭の中が整理されて気持ちも穏やかになっていった。
ナックス伯爵邸に来てから少し経った頃に急に何か視線の様なものを感じる様になった。
私が庭でお茶を飲んでいるとどこからか誰かに見られている様な気配を感じた。
だけど周りを見渡しても誰も居ないし例え外に誰か怪しい人物がいたとしても門番をしている騎士たちにすぐ気づかれるはずだった。
私は前世の記憶を思い出した事で小さな事にも敏感になってしまっているんだと思った。
それから視線を感じる事を気に留めない事にした。
すると不思議な事に視線を感じたのは自意識過剰じゃないかとうくらいに何も感じなくなった。
だけど、ホッとしたのも束の間予想外の出来事が起きた。
急にナックス伯爵邸にカイザー公爵が訪れる事になったと。。
それもカイザー公爵と共にルシフェルお兄様も訪問するとお祖父様から聞かされた。
私はその話を聞いて頭が真っ白になった。
そして、体が自然に震えた。
きっと反射的にルシフェルという名前を聞いて体が恐怖を感じたに違いなかった。
せっかく"君わた"の主要キャラを避けたくてここへ来てるのというのにその主要キャラ、、それも一番会うとまずい人物である主人公のルシフェルに会うなんて恐怖しかなかった。
ルシフェルお兄様は私がここにいるってお兄様から聞いたのではないかと私は思った。
何故私の居場所をお兄様から聞き出そうとしたの?
と、疑問と不安が押し寄せた。
今すぐに逃げたいしルシフェルお兄様に会いたくないし死にたくないと思うもそんな理由ですぐに帰りたいなんて私を心配するお祖父様達に言えるはずもなかった。
そんなの不安をよそにカイザー公爵とルシフェルお兄様がナックス伯爵邸へ訪れる日がやってきた。
お祖父様達と共にカイザー公爵とルシフェルお兄様を出迎えた私はルシフェルお兄様見た瞬間反射的に体が強張り恐怖を感じた。
だけど挨拶をしない訳にもいかず私は一先ず二人へ挨拶をした。
だけど、その後はまともにルシフェルお兄様の顔を見ることが出来なかった。
カイザー公爵はお祖父様に珍しい種と苗を持ってきた様だった。
趣味で農業をしているお祖父様はいつになく楽しそうにカイザー公爵と話をしていた。
その時だった。
ルシフェルお兄様が私に庭の案内をして欲しいと言ってきた。
私はルシフェルお兄様に声をかけられて思わず体がビクリとなった。
ルシフェルお兄様は笑顔で言っているけどあの笑顔には裏があると知ってしまったから恐怖でしかなかった。
私は絶対にルシフェルお兄様と二人きりになるのは避けたかった。
だけど、カイザー公爵家は家柄が上でもあるしお祖父様に案内しろと言われたら断れる訳がなかった。
私は仕方なく重い腰を上げてルシフェルお兄様を庭へ案内した。
空気が重たいのを感じるに加えて庭までの道のりがえらく長く感じた。
私は少しでも早くお祖父様達の元へ戻りたい戻りたいとばかり考えていた。
その時、ルシフェルお兄様から声をかけてきた。
ルシフェルお兄様はどうやら私がここへ来ている事を知らなかった様だった。
カイザー公爵に付き添ってきた先に私がいてとても驚いた様だった。
私はてっきりお兄様から私の話を聞いているのかと思っていたので驚いた。
それにルシフェルお兄様は私の事を本気で心配してくれている様子だった。
加えて私が倒れた際に抱き上げて私を部屋まで運んでくれたと聞き驚いた。
それにお茶会の件も本当に私の事を考えて誘ってくれたのだということにも気づいた。
極めつけは、私が少しカマを掛けるでもないけどお兄様に甘えるのを控えようと思うと打ち明けたらルシフェルお兄様はその事実を喜ぶどころか私の気持ちを心配する様に気遣ってくれた。
お兄様に甘えたり頼ったりしないと伝えればルシフェルお兄様はお兄様を私に取られずに済むと喜ぶとカマをかけた自分に嫌気がさした。
私は、目の前にいるルシフェルお兄様は"君わた"の主人公ルシフェルとは似ても似つかなさすぎてもしかしたらこの人は"君わた"のルシフェルとは違うのかもしれないと思った。
目の前のルシフェルお兄様かは私に対する憎悪も殺意もまったく感じないからだった。
私は自分がアナベルに転生した事で混乱も恐怖から勝手にルシフェルお兄様をそういう風に見ていただけなのかもしれないと思った。
そう思うとルシフェルお兄様への恐怖は一気にどこかへいってしまった。
ルシフェルお兄様への恐怖がなくなるとお兄様が輝いて見えた。
本人には恥ずかしくて言えないけどきっとそう見えたのはルシフェルお兄様が昔から憧れていた王子様に見えたからだった。
絶望系のBL漫画の世界に転生してしまったと絶望していたけどこの日私はもしかすると破滅する展開を防ぐことができるかもしれないという期待を持った。⇠
☆
私は、今お母様の生家であるナックス伯爵邸で過ごしていた。
ナックス伯爵であるお祖父様も伯爵夫人であるお祖母様も私の滞在を快く受け入れてくれた。
お陰で私は自分自身がおかれている状況について考える時間ができた。
今回のナックス伯爵邸への滞在理由はあくまで療養する為となっているからカナエも私を心配して同行したいと言ってくれたけど私は一人で色々と考えて頭の整理をしたかったからカナエを同行させることを断った。
(きっとカナエは私を心配してくれているでしょうね。)
私はカナエの事を思い出しながらそんな事を考えていた。
(だけど、、今回ばかりは私自身も混乱気味だから一度一人で冷静に考える時間が必要だった。)
私は浮かない表情を浮かべながらそんな事を考えていた。
私はここへ滞在する様になってから庭でゆっくりとお茶を飲むのが日課になった。
私は前世で生活している時から穏やかな場所を好んでいた。
前世では仕事が休みの際には近所にある人気のない小さな公園に足を運んでいた。
その公園は静かで風が気持ちよくとても穏やかな場所だった。
激務の心労を癒やすにはとても良い場所だった。
ナックス伯爵邸の庭も前世でのその公園を思いだすかの様に穏やかな場所だった。
お祖父様とお祖母様はとても仲がよく庭師に任せず夫婦二人で庭いじりをしながら素敵な庭を作り上げたとお母様から聞いたけれどその通りとても素敵な庭だった。
(こうしてここで何も考えず穏やかな気持ちで過ごせたらどれだけいいか、、。)
私はお茶を一口飲み庭を眺めながらそんな事を考えていた。
(だけど、、今はそんな事を考えるより自分自身のおかれてる状況を考えるのが先よね、、。)
私は肩を落としながら考えていた。
("君わた"の内容を思い出すだけでも体調崩しそうな程の絶望系な内容だったけど覚えている事を思い出しながらこの先どうしていくかを考えないといけないわね。)
私は表情が自然に歪むのを感じつつそんな事を考えていた。
"君わた"でアナベルがルシフェルに殺されたのはアナキスにブラコン全開だったのが原因だった。
アナベルは休みの日になると首都まで出てきてはアナキスにべったりだった。
休みの日にアナキスと一緒に過ごしたいと思っていたルシフェルはその時間をいつもアナベルに邪魔をされていた。
ルシフェルにとってアナキスとアナベルが兄妹だという事実がたまらなく嫌だったしその事実も相まってルシフェルは徐々にアナベルに憎悪を抱きいつしか殺意まで抱き始めた。
ルシフェルは冷たい表情に加えて裏では更に恐ろしい一面を持っていた。
その一面とは、アナキスに邪心や下心を持って近付き言い寄る人間を陰で惨殺したいた。
それも絶対にルシフェルの仕業だとバレない様に人を殺めていた。
ルシフェルが殺めた人達は男も女も関係なく自分とアナキスの邪魔をしようとする者全てを自分の手で殺めていった。
(はぁ、、思い出すだけで気持ちが沈んでしまうわ。いくらアナキスを愛してしまったからって普通そこまでする?完全にイカれた殺人犯じゃないのよ。)
私はギョっとした表情で小説の内容を思い出しながら考えていた。
(それでその中でも一番残忍な内容で殺されたのがアナベル。つまり今の私ってことなのよね。)
私はは肩を落として考えていた。
(しかも、アナベルが殺害されても犯人はルシフェルだという事はお蔵入りになってたよね。用意周到な人物すぎるよ。)
私は更に考えていた。
(しかも、小説の終わりって最終的にルシフェルがアナキスを監禁して閉じ込めて自分以外の誰の目にもアナキスが入らない様に自分の歪んだ愛をアナキスへ注ぎ続けたんだったよね。そしてある日とうとうアナキスも精神も崩壊してしまいその先もルシフェルの歪んだ愛にがんじがらめにされながら生きていったんだったよね。ルシフェルはようやくアナキスが自分だけのものになった事に安堵した。END、、。って結末だった。)
アナベルは小説の結末をどうにか思い出しながらそんな事を考えていた。
(うん、、。何がENDなのよ、、。何でこんなBADENDにしたのよ。愛っていうけどこれではただの執着じゃないのよ。アナキスまで精神崩壊してしまってるし。)
アナベルはげんなりした表情でそんな事を考えていた。
(それに他の主要キャラであるキールとロザンの結末も悲惨だったよね、、。)
私は更に思い出しながら考えていた。
(確か、、キールはルシフェルに自分の気持ちが伝わらない上にルシフェルに愛という執着を向けられるアナキスへの嫉妬からアナキスに対して友達という関係にも関わらず危害を加えようとしてそれを知ったルシフェルによって死の孤島と呼ばれる島へ島流しにされてたよね。)
私は小説内容を思い出しながらそんな事を考えていた。
(そしてキールの島流しが決まった事でキールに想いを寄せていたロザンは二度とキールに会えないという事実を知り温厚な性格だったものの気が狂ってしまって皇太子の座からも下ろされて離宮へ幽閉されたんだったよね。)
私は更に小説内容を思い出しながらそんな事を考えていた。
(本当に思い出すだけでもゾッとするバッドエンド小説だわ。)
私は表情を歪めつつそんな事を考えていた。
(既に主要キャラと遭遇してしまってはいるけど幸い今ならまだどうにか私が死なずに済む方法はあるもんね。)
私はそんな事を考えた。
(まずは殺されない為にもルシフェルお兄様との遭遇を避けて尚且つお兄様との距離感を考え直す事よね。)
私は更に考えた。
("君わた"の話中では妹に対してもかのりドライだっけど私の知ってるお兄様はドライとはかけ慣れるくらい私にはとても優しい。だからそんなお兄様が私は小さな頃から大好きだったけどこれ以上ブラコンでいると確実に殺されてしまう。正直なところお兄様と過ごす時間が奪われるのは悲しいけど殺されない為にはぐっと堪えるしかないもんね。)
私は寂しそうな表現を浮かべて考えていた。
その時だった…
私はどこから視線を感じて咄嗟に辺りを見回した。
(何、、?今もの凄く視線を感じたわ。)
私は辺りを見渡しながら考えていた。
背筋に汗が滲むのも同時に感じた。
(だけど、、誰も居ないみたい。)
私は首を傾げながら考えていた。
(外には警備をしている騎士さんもいるから誰かが伯爵邸に侵入したとも考えにくいし視線を感じたのは気の所為だったのかな。)
私は辺りをもう一度見渡しながら考えていた。
(前半の記憶を思い出してから神経質になってるから少しの事でも気にしてしまってるのかな、、。)
私は下を向きながらそんな事を考えていた。
(うん、、。そうだよね。きっと神経質になり過ぎてるから些細な事にでも反応してしまうんだわ。あまり神経質になるのも良くないよね。)
私は自分に言い聞かす様にそんな事を考えていた。
そんな風に考えるだけで少し気持ちが落ち着いた気がしてその後は視線を感じなくなった。
その後も私は毎日庭でお茶をするのを日課にしながらようやく頭の整理もつき今後どうしていくかの考えがまっとまったとホッとしている頃だった。
私はお祖父様に話があると呼ばれてお祖父様の口から出た言葉を聞き驚愕した。
お祖父様から聞いた話の内容は近々ナックス伯爵邸へカイザー公爵と息子であるルシフェルお兄様が訪れると。
私はお祖父様の話を聞いて頭が真っ白になった。
(ルシフェルお兄様がここへ、、来るですって、、?)
私はルシフェルという名を聞き反射的に体が恐怖で震えてしまうのを必死に堪えながらそんな事を考えていた。
(どうして、、?ルシフェルお兄様がどうして、、?)
私はとにかく頭がパニックになりつつ状況が掴めないまま考えていた。
(一番会ってはいけない存在だからお祖父様の所に来たというのに、、。カイザー公爵がお祖父様のところへ訪問されるのは恐らく私は関係ない理由だろうけど何故ルシフェルお兄様まで同行を、、?まさかお兄様に私がここにいると聞いたから?お兄様と離れている今が私をどうにかするチャンスだから、、?)
私はお祖父様に混乱しているのを悟られない様にそんな事を考えていた。
(逃げたい、、、。今すぐここから逃げてルシフェルお兄様と会いたくい、、。)
私は震える体をどうにか抑えながら考えていた。
私は恐怖から今すぐ逃げたい気持ちをお祖父様とお祖母様に伝えて逃げたかった。
だけどそんな事なんて出来ない事なんて分かっていた。
そして私の不安と恐怖をよそにあっという間にカイザー公爵とルシフェルお兄様がナックス伯爵邸へ訪れる日がやって来た。
私はお祖父様とお祖母様と共にカイザー公爵とルシフェルお兄様を出迎えた。
私はルシフェルお兄様の姿を見た瞬間、反射的に恐怖に襲われ体がビクリとなった。
(怖い…。)
私はルシフェルお兄様を見てそう思った。
しかし、挨拶をしない訳にはいかないのでお祖父様とお祖母様がカイザー公爵へ挨拶をした後に私も挨拶をした。
カイザー公爵は"君わた"の話中では所々ルシフェルお兄様の父親ということで登場していた。
カイザー公爵は生涯愛する人に対しては惜しみなく愛を貫く一方では容赦のない人物だとも描かれていた。
さすが主人公の父親と言うべきか。
しかし、実際に会ってみたカイザー公爵は容赦のない人物には見えないくらい優しげな雰囲気を持つ男性だった。
続いてルシフェルお兄様にも挨拶をした。
けれど挨拶をする時もした後も恐怖からはまともにルシフェルお兄様の顔を見ることが出来なかった。
その後、カイザー公爵とルシフェルお兄様を中へと招き入れてお祖父様とカイザー公爵が話を始めた。
カイザー公爵はどうやらお祖父様へ珍しい苗などを持ってきた様だった。
お祖父様は趣味で農業を営んでいることもあり珍しい苗を目にして興奮気味な様子だった。
気づけばカイザー公爵とお祖父様で話が盛り上がっていた。
(早く帰ってくれないかな…。)
私は切実にそんな事を願いながら考えていた。
その時だった…
ルシフェルお兄様が私に庭の案内をして欲しいと提案してきた。
(え?どうして?)
私はルシフェルお兄様の提案に体を強張らせてゾッとしながら考えていた。
思わずルシフェルお兄様の方を見てルシフェルお兄様と目が合った。
(怖い。どうしよう…。ルシフェルお兄様の提案を断りたい。)
私はルシフェルお兄様と目が合い恐怖からまた体をビクりとさせ強張らせながらそんな事を考えていた。
(ルシフェルお兄様は笑みを浮かべているけどあの笑みに裏があるのは知ってる…。一体あの笑みの裏で何を考えているんだろう。)
私はルシフェルお兄様の笑みを見ながらそんな事を考えていた。
だけど私のそんな提案なんて断りたいという願いなど叶うわけもなく格上の貴族の息子の提案を断れる事もなくお祖父様の一声もありあっさりと私がルシフェルお兄様を庭へ案内する事になった。
(どうしてこんな事になったの?私はルシフェルお兄様と遭遇しない様にここまで来たのにどうして今目の前にルシフェルお兄様がいるの?)
私はルシフェルお兄様を庭まで案内する道のりで表情を歪めつつそんな事を考えていた。
(庭で二人きりになるなんて恐怖で吐いてしまいそうだわ…。お祖父様達がいる客間からは庭は見えるけれど死角にはる場所もある。死角になる場所へ案内した瞬間に何か危害を加えられたどうしよう。)
私はもう逃げ出したい気持ちでいっぱいのままそんな事を考えていた。
そして、そんな事を考えていたら庭へ到着した。
すると…
「アナベル…。そこのベンチへ座って少し話でもしないか?」
ルシフェルがアナベルへ声をかけた。
「え?あ、はい…。」
私は急に声をかけられて驚きを浮かべて頷きながら言った。
(話?話って何だろう。お兄様に関する事かな?でも一先ずそこのベンチから客間が見えるからさすがにいくらルシフェルお兄様でも危害を加えてきたりなんてしないよね。)
私はそんな事を考えていた。
そして私とルシフェルお兄様はベンチへ座った。
「まさか、アナベルがナックス伯爵の家にいたなんて驚いたよ。あれから体調は大丈夫だったかい?あの日はアナベルの顔を見ることなく帰ってしまったからとてもアナベルの体調が気になっていたんだ。」
ルシフェルがとても心配そうな表情を浮かべてアナベルへ言った。
「療養も兼ねてお祖父様達のところへ当分の間お邪魔させてもらうことになったのです。お兄様からお聞きになりませんでしたか?」
私は混乱しつつルシフェルお兄様へ言った。
(え?どういうこと?ルシフェルお兄様は私がここにいる事を知っててカイザー公爵に同行したんじゃないの?)
私は混乱しながらもそんな事を考えていた。
「あぁ。連休明けにアカデミーでアナキスにアナベルの様子を聞いたのだけど回復傾向にあると聞いたんだよ。それなにまさか療養しなければならない程だったとは。」
ルシフェルが更に心配そうな表情を浮かべてアナベルへ言った。
(お兄様はルシフェルお兄様には何も話してなかったみたいね。それにルシフェルお兄様の表情は見てるとまるで本当に私の事を心配しているみたい。)
私はルシフェルお兄様の顔を見てそんな事を考えていた。
「療養とはいっていますが体調はほぼ回復したといってもいいと思います。特に後遺症などもありませんし念のためにと言ったほうがいいかもしれません。あの日は、ルシフェルお兄様にもご迷惑かけてしまい申し訳ありませんでした。」
私は目の前のルシフェルお兄様の表情を見て先程までの恐怖心はなくなり言った。
「そうか。回復しているのならば良かった。あの日、私が近くにいながらアナベルを助ける事ができず申し訳ないと思いずっと気にしていたんだ。あの時はアナベルの意識がない姿を見て本当に血の気が引いたよ。アナベルを抱えて部屋まで運ぶ間も意識が戻らず早くアナベルの意識が戻ることを願うことくらいしか出来なかった自分が悔しくてね。」
ルシフェルが心配と悔しさが混じった様な表情でアナベルへ言った。
「え?ルシフェルお兄様が私を運んで下さったのですか?」
私はルシフェルお兄様の言葉を聞いて驚きで言った。
(私が倒れた時にルシフェルお兄様が運んでくれた?!私はてっきりお兄様が運んでくれたのだとばかり思ってたわ。ルシフェルお兄様は私が倒れた事を喜んでいるのだとばかり思っていたけれど…むしろルシフェルお兄様の表情を見ると喜ぶどころか本当に私を心配している様に見える。)
私は先程までルシフェルお兄様に恐怖心を抱いていたのが申し訳なく思えてきながらそんな事を考えていた。
「あぁ。アナキスから聞いてないのかい?」
ルシフェルが首を傾げながらアナベルへ言った。
「はい。お兄様からはそんな話は聞いていませんでした。」
私は小さく頷きながら言った。
(お兄様からはそんな事は一言も聞いてないしカナエにも言ってなかったみたいね。)
私はそんな事を考えていた。
「そうなんだね。まぁ、わざわざその程度の事をアナベルに話す必要もなかったからアナキスも話さなかったのさ。」
ルシフェルは優しい表情を浮かべてアナベルへ言った。
「そうかもしれませんけど。あの、ルシフェルお兄様私を部屋まで運んで頂きありがとうございました。」
私は少し戸惑いつつ言った。
「そんな事気にしなくてもいいさ。とにかくアナベルが元気そうで本当に良かったよ。こうしてアナベルの元気そうな顔が見れて心からホッとしてるよ。」
ルシフェルはとろける様な優しい笑みを作りアナベルへ言った。
「は、はい。」
私ルシフェルお兄様の優しい表情を見て少し困惑気味に言った。
「あ、そうだ!父上から聞いたのだが母上がフルート侯爵家宛にお茶会の招待状を送ったみたいだね。今回は不参加との返信があったと聞いたのだけど。」
ルシフェルは急に思い出した様にハッとなりアナベルへ言った。
「あ…はい。お父様からカイザー公爵夫人からのお茶会の招待状への件聞きました。せっかくお誘い頂いたのにお断りする形になり申し訳ありません。お父様も私の体調を考慮しての返信だったと思いますので。」
私はルシフェルお兄様に会いたくないが為に断った事を申し訳なく感じながら言った。
(招待状の話を聞いてあの時はとにかく断る選択しかなかった。お茶会の話を私にしてくれたのも私をあわよくばカイザー公爵家にでも閉じ込めるつもりなんだと思っていたから。)
私はそんな事を考えていた。
「断りの理由はアナベルの体調を考慮してだったんだね。てっきり前に私がお茶会の話をした時のアナベルの返事は社交辞令だったのかと少し寂しく思ってたんだよ。」
ルシフェルは困った様な寂しそうな笑みを浮かべてアナベルへ言った。
「そ、そんな!社交辞令だなんて。あの時のルシフェルお兄様からのお茶会の話は本当に嬉しかったのです。」
私ルシフェルお兄様の表情を見て慌てて言った。
(あの時は前世の記憶を思い出す前だったしお茶会の話を聞いた時は心から嬉しかったわ。)
私はそんな事を考えていた。
「本当に?では、アナベルの体調が本調子になったら今度こそ我が家のお茶会へ来てくれるかい?」
ルシフェルはまるで捨てられた子犬の様な弱々しい表情で笑みを浮かべてアナベルへ言った。
「っ!!はい。次は必ず参加させて頂きます。」
私は何とも言えない表情のルシフェルお兄様を見て慌てて言った。
「ハハ。絶対にだよ?アナベルの大好きな苺ショートケーキもたくさん用意しておくからね!母上もアナベルが参加してくれるときっと喜ぶよ。」
ルシフェルは満面の笑みを浮かべて嬉しそうにアナベルへ言った。
(なんて笑顔なの。"君わた"のルシフェルからは想像も出来ない笑顔だわ。本当にあの残忍にアナベルを惨殺するルシフェルなの?)
私はルシフェルお兄様の表情を見て混乱しつつ考えていた。
「早く体調が万全になるといいね。アナキスもだいぶ心配している様だからね。」
ルシフェルは心配気な表情でアナベルへ言った。
「………。」
私はルシフェルお兄様の言葉を聞き思わず口を閉じてしまった。
「アナベルどうしたの?もしかして体調でも悪いの?」
ルシフェルは心配そうにアナベルへ言った。
「いえ。大丈夫です。」
私はハッとなり言った。
「では、どうしたの?」
ルシフェルは心配そうにアナベルへ言った。
「実は、私これからはお兄様に甘えてばかりなのを控えようと思っているのです。」
私は意を決してルシフェルお兄様へ言った。
("君わた"では、アナベルがブラコンだった事でアナベルはルシフェルから憎悪を抱かれ惨殺された。ということは私がもうブラコンはやめるよと宣言したらルシフェルお兄様は私へ憎悪を抱く事もないはず。だってそうする事でお兄様に想いを抱いているルシフェルお兄様からしたら都合がいいはずだから。)
私はそんな事を考えていた。
「え?急にどうして?!」
ルシフェルはとても驚いた表情でアナベルへ言った。
(え?その反応は何?ここは喜ぶところではないの?私はお兄様にベタベタしないと言ってるのよ?)
私はルシフェルお兄様の反応に戸惑いつつ言った。
「よく考えてみたら小さい頃からお兄様はいつも私にたくさん愛情を注いで可愛がってくれました。それは今でもずっと変わりません。もちろん私もお兄様の事は昔も今も変わらず尊敬していますし大好きなのですがいつまでもお兄様に甘えてばかりじゃ良くないのでは?このままだといつかお兄様の負担になってしまうのでは?と考える様になったのです。」
私は自分で言っておいてお兄様から距離をとるというのはやっぱり寂しいと思いつつルシフェルお兄様へ言った。
「でも、アナベルはそれでいいの?
きっとアナキスはアナベルに甘えられる事が負担になるなど思っていないと思うよ?アナキスとはアカデミーに入ってから知り合ったがいつもアナベルの話をする時は優しい兄の顔をしていたんだよ?そんなに急いで決めなくてもいいんじゃないの?」
ルシフェルは少し間をとった後に真剣かつ心配そうな表情でアナベルへ言った。
「ですけど…。」
私はルシフェルお兄様の言葉と表情を見て聞いて少し驚いた表情で言った。
「一先ずはアナベル自身が体調を万全にしてからまた考えてみたらどうかな?」
ルシフェルは優しい笑みでアナベルへ言った。
(本当に私とお兄様の関係を心配してくれているわ。私は私自身が死にたくなくて身を守る為に話を切り出しというのに。もしかすると、ここは"君わた"の世界だけれど目の前の彼は小説のルシフェルとは違うのかもしれない。だって、話していてずっと ルシフェルお兄様からは私に対する憎悪や殺意なんて全く感じないんだもの。)
私は自分自身を守る事ばかり考えてルシフェルお兄様に一方的に恐怖心を抱いてとった行動を申し訳なく感じないからそんな事を考えていた。
「はい。分かりました。もう少しゆっくり考えてみます。ルシフェルお兄様ありがとうございます。」
私は本当にそう思い自然に笑みが溢れながらルシフェルお兄様へ言った。
「あぁ。」
ルシフェルは優しく笑みを浮かべて頷きながらアナベルへ言った。
その後は私とルシフェルお兄様とでナックス伯爵邸の庭を見て回った。
私はルシフェルお兄様に庭の事を色々と説明した。
ルシフェルお兄様と庭を回っている時間を私はいつの間にか楽しいと思っていた。
(ルシフェルお兄様に対しての恐怖心がなくなったら今度は逆にルシフェルお兄様が輝いて見えるわ。まるで私が小さい頃から憧れていた絵本の中から飛び出してきた本物の王子様みたいだわ。さすが小説の主人公ね。)
私はルシフェルお兄様をチラりと見ながらそんな事を考えていた。
(こんな事は本人は絶対に言えないけどね。)
私は更にそんな事を考えていた。
(私が知っている目の前のルシフェルお兄様なら私を惨殺するなんて事はなさそうだわ。ここは紛れもなく"君わた"の小説の世界であってルシフェルお兄様が主人公な事に変わりはない。だけど…ルシフェルお兄様と過ごした時間やルシフェルお兄様の私に対する態度を見ると直感だけど私はこのまま殺される事なく生き延びる事が出来そうな気がする。本当に小説通りの性格なら今こんな風に二人きりで過ごせてなんていないだろうしね。バッドエンドを迎える結末はきっと避けられるわ。)
私は自分が生きれる希望の光を見出だしたのを感じながらそんな事を考えていたのだった。
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