3.♡月♡日
⇢昨日…アナベルと運命的な再会を果たしたが…
二人きりになる時間がなく苛立ちを覚えた。
早く俺を覚えているか聞きたくてたまらなかった。
しかし、アナベルと二人きりになれるどころか話の流れでアナキスがアナベルを街へ案内するとなった。
アナベルと隙を見て二人きりなりたかったからもちろん俺もついて行くつもりだった。
だが…何故だかロザンとキールまで同行することになった。
二人は俺の友達だがアナベルに関しては友達だろうがなんだろうが関係ない。
俺とアナベルの時間を邪魔する事は許せない。
それに…二人のアナベルを見る目も俺は気に食わなかった。
俺はもちろんだがロザンとキールも普段は女に見向きもしない癖にアナベルに見惚れていた。
加えて二人がアナベルの名前を馴れ馴れしく呼んだ…。
俺が一番先にアナベルの名前を呼ぶつもりだったというのに…。
その後…結局俺もアナベルの名前を呼べることになった。
俺はアナベルに俺の名前を呼んでほしくてそれを告げると彼女は戸惑っていた。
戸惑うその姿がまた可愛くてたまらなかった。
もっとアナベルの戸惑う姿が見たいと思ったほどに…。
結局、アナベルが俺をいきなり名前を呼ぶのは難しかった様で"お兄様"と付けて呼ぶ提案をされた。
ルシフェルお兄様と呼ばれるのは…悪くなかった。
その後、街へと繰り出して色々と見て回った。
街を見て目を輝かせるアナベルはとても愛らしかった。
アナベルとデートをする日を想像してった程だった。
途中、虫けらみたいなアカデミーに通う女たちのせいでアナベルが怪我をするトラブルが起きて俺は思わずアナベルがいるのを忘れて女たちを痛い目に遭わせてやるところだったがアナベルの一声で我に返った。
まぁ…結局あの後すぐにあの女たちを二度とアカデミーへ通えない様に裏から根回ししておいたが…。
結局、街にいる間はアナベルと二人きりでまともに話すことが出来なかった。
まぁ…これからアナベルと二人きりで過ごす時間を作ることはいくらでも出来るから問題はなかった。
ただ…アナベルと再会して一つの謎が生まれた。
それは…アナベルは絶対に俺が探していた少女だ。
それはアナベルを見た瞬間にあの少女だと気づいたし何よりも俺自身に拒絶反応がなかったので間違いなかった。
だが…アナベルとアナキスの話を聞いている限りアナベルは首都に来たのは初めての様だし俺を見ても何も反応がなく覚えていないようだった。
あの事件は首都の街のはずれにあった山で起こった。
あの日アナベルが俺を救ってくれた少女なら首都には来たことがあるという事だ。
だが…首都へ来るのは初めてだと喜ぶアナベルの反応を見ても嘘ではなさそうだった。
もしかしたら…あの時の少女ではないよか?とも一瞬思ったが俺が間違える訳がない。
それに…アナベルが好きな絵本の話と街にある店での店主のあの発言を聞くとやはりあの時の少女はアナベルで間違いない。
だとしたら…何故アナベルは首都へ来るのが初めてだと?
アナキスは何か知っているのだろうか…。
もしかすると…あの日アナベルの身に俺が知らない何かが起こったということなのだろうか…。
まぁ…それもこれからアナベルと過ごすうちに謎が解けるだろう…。
それに…たとえアナベルが俺を覚えていなくても関係ないことだ…。
これからじっくりアナベルに俺の愛を知っていってもらえばいいのだから…。
もう一つ気になったのは兄妹仲がとてもいいようだが兄妹というのはあれ程仲がいいものなのだろうか…。
俺は一人っ子なのでわからないがアナベルは幼い頃からアナキスが大好きなようだな。
仲がいいのは良いことだが二人が仲良さそうにしている姿を間近で見ると嫉妬心が湧いてくる…。
アナベルの横にいるのが兄であるアナキスだとしても見るに耐えれなくなる。
アナベルの頭を撫でるのも…抱きしめるのも…優しく微笑みかけられのも…一緒に寝るのも…すべて俺だけがしてやりたいことだ…。
そのうちその全てを俺がアナベルにする日はそう遠くはないだろう。
その日、アナベルを見送った後に俺はさりげなくアナキスへアナベルは普段どの様に過ごしているのかを尋ねた。
そして…アナキスから聞き出した情報元に俺は今日フルート侯爵家の領地へと行ってきた。
理由は…もちろんアナベルの普段の行動やアナベルの好きなものを把握する為だ。
アナベルが領地の街へ出かける時間に合わせて俺もアカデミーを出てフルート侯爵家の領地へ向かった。
領地へ着くとアナベルが来るであろう方向付近でアナベルが来るのを待っていた。
そして…アナベルが街へとやって来た。
慣れ親しんだ場所だけにアナベルは慣れた足取りで街を歩いていた。
俺はアナベルに見つからない様にアナベルの後をつけてアナベルの行動全てを観察した。
アナベルが出入りしている店、アナベルがお気に入りの食べ物、アナベルが好きな色、好きなデザイン、アナベルの男性の理想像…これらのアナベルに関する事は大体把握した。
それに…俺にとって特別な物も手に入れた。
俺は、今日把握したアナベルの情報を元に早速アナベルに近づく計画を立てた。
アナベル待っていてくれ…。
すぐに君に会いに行くから…。⇠
♡
俺は、アナベルと劇的な再会を果たした。
俺はすぐにでもアナベルへ俺の事を覚えているか聞きたかった。
しかし…そんな事を聞くどころかアナベルと二人になるのすら無理だった。
(早くアナベルと二人きりになりたいのに…ロザン達が邪魔だな…。)
俺は内心苛立ちながらそんな事を考えていた。
(それに…ロザンとキールのアナベルを見る目が気に入らない。普段は女に見向きもしない癖にアナベルを見た途端明らかにアナベルに見惚れていた。確かにアナベルは本当に驚く程に美しく見るからに汚れなど知らない雰囲気だから見惚れてしまうのはわかる…。だが…アナベルは俺の運命の相手だ。いくら友達だからといってもアナベルだけはだめだ。)
俺はチラりとロザンとキールを見て苛立ちを堪えながら考えていた。
俺がそんな事を考えていたらいつの間にかアナキスがアナベルを首都の街に案内する事になった。
俺はもしかするとアナベルと二人になるチャンスがあると思い自分も街へ同行しようと考えた。
しかし…あろうことかロザンとキールも当たり前の様にアナキス達へ同行しようとついてきた。
(何故…お前たちまでついてくるんだ?とアナキスが言ったがその通りだ。いや…俺はいいとしてロザンとキールはついてくる必要ないだろう。ロザンは皇太子なんだぞ?大人しくアカデミーにいろ!キールもいつも昼寝してる時間だろ?!今日もいつもの様に寝ていろ!)
俺は苛立ちながらそんな事を考えていた。
すると…
「違ったのか?!…まぁ…いいじゃないか!皆で行った方がアナベルも楽しいよな?」
キールが言った言葉が耳についた。
(なに…?!今…キールはアナベルの名前を呼んだのか?!)
俺は耳を疑うレベルでそんな事を考えていた。
俺と同じ様にアナキスも不快感を表してキールへ言った。
俺もキールと同じく不快感を覚えたのと同時に自分が一番先にアナベルの名前を呼びたかったのに…と思った。
キールは不快だと思う相手以外には割と社交性に長けている明るい性格で俺にも最初からあの様にいきなり俺を名前で呼んでいたのを思い出した。
だからといってアナベルに馴れ馴れしいのが許せるかといえば別の話だ。
キールに続いてロザンまでアナベルを名前で呼ぶと言い出した。
俺は不機嫌になるのをどうにか堪えて自分もアナベルに名前を呼ぶ許可を得た。
俺より先にキールやロザンがアナベルの名前を呼んだのは不本意だったがアナベルの愛称は俺が一番に呼んでやるとこの時強く思ったのだった。
もちろん俺がアナベルの名前を呼ぶのであればアナベルにも俺を名前で呼んで欲しかった。
だから俺はとびきりの笑顔を浮かべて優しくアナベルへ俺の名前を呼ぶように提案した。
もちろんアナベルは俺に言われて戸惑っていた。
戸惑いながらもどうしようか悩んでいるアナベルが可愛くて愛おしくて仕方なかった。
(愛おしいアナベルを思い切り抱きしめて…キスをしたい…。俺が女に対してこんなことを思うのはアナベルだけだ…。それに…もっとアナベルの戸惑った顔が見たいな…。)
俺がそんな事を考えてるとアナベルが戸惑いながらも口を開いた。
アナベルは俺をいきなり名前で呼ぶのは難しいと思ったのか名前にお兄様とつけて呼んでいいかと言ってきた。
"ルシフェルお兄様"
と…。
アナベルにそう言われた瞬間俺は体がゾクゾクするのを感じた。
(ルシフェルお兄様か…。悪くない…。むしろ…すごくいい響きだな。アナベルのあの可愛い口からお兄様と呼ばれるとたまらなくなるな…。当分はルシフェルお兄様と呼ばれる事にしよう。)
俺はそんな事を考えていた。
その後、ロザンとキールも自分達の事をどさくさ紛れにお兄様と呼ばせたことに俺が苛立ったのは言うまでもなかった。
アナベルが俺たちをお兄様と呼ぶことにアナキスはあまりいい気はしなかったのか少し不機嫌な表情を浮かべていた。
だが…そんなアナキスを見かねたアナベルはアナキスの腕にギュッと抱きつき何とも愛おしい笑みでアナキスに何かを話していた。
(兄だからと言うだけであんなにアナベルに密着するなど…。)
俺はそんなアナベル達を見て嫉妬心が剥き出しになりながら考えていた。
そして…ようやく街へと出発した。
普段ならば平民でも使える移動馬車などには乗らないがアナベルがいるというだけで悪くはなかった。
街へ到着するとアナベルは街を見て目を輝かせていた。
(確か…アナベルは首都へ来るのは今日が初めてだと言っていたな…。だが…俺があの事件で拐われて連れて行かれた小屋はこの街のはずれにあった。だからアナベルが俺を助けてくれた少女ならば首都へは少なくとも一度は来たことがあるということになるが…。)
俺は目を輝かせて街を見ているアナベルを見てふとそんな事を思い考えていた。
(アナキスがアナベルに首都の街を案内してやると言っていたしやはり本当にアナベルは首都へ来るのは初めてなのか…?そうなのであれば俺を助けてくれた少女はアナベルではないのか?……いや…そんなはずはない。アナベルのあの髪色と瞳の色は珍しいといえるほど首都ではあの様な髪色は見たことがない。それに今のアナベルは幼い頃の名残を残したまま美しく成長したと言い切れるほどだ。だとすると…何故アナベルは首都へきたことがないと?それに…俺を見ても特に反応がないということは俺を覚えていないのか?)
俺は更に考えた。
(俺も成長したとはいえあの頃は今より幼い顔なだけで幼い頃の名残がないわけでないからあの事件の日にアナベルが俺を助けたなら顔見たらあの時の少年が俺だということはわかるはずだが…。俺が探していた少女を間違えるはずないが…。アナベルを見て拒絶反応が起こらなかったのが何よりあの時の少女だという証だからな。)
俺はそんな事を考えていた。
すると…アナベルが綿飴に興味を示した。
アナキスが綿飴をアナベルへ買ってあげるとアナベルは一口食べて目を見開いていた。
そして…とても美味しかったのか笑顔で綿飴を頰張っていた。
その食べる姿が可愛すぎた。
(アナベル…君は何て可愛いんだ…口の回りについている綿飴を俺が舐めたら君はどんな表情をするかな?驚いて固まるかな?それとも顔を真っ赤にして照れるかな?どんな表情をするか見てみたいものだな…。)
俺は綿飴を食べるもアナベルを見てそんな事を考えていた。
その後もアナベルは街にある色々な店に興味津々だった。
楽しそうにしているアナベルを見るとただただ愛おしさが増すばかりだった。
次にアナベルが首都へ来ることがあるならば俺とアナベル二人で出かけて好きなだけアナベルの欲しい物を買ってやろう…。
アナベルは特に薬草を取り扱う店では特に目を輝かせていた。
アナベルはアナキスに送る茶葉を調合している様で何かを調合するのが得意というより趣味の様だった。
俺は店内でアナベルが一人になったのを狙ってアナベルへ優しい笑みを浮かべて声をかけた。
アナベルはフルート侯爵家の領地では見たことがない薬草が手に入るのが嬉しい様だった。
俺はアナベルの言葉を聞き反応を見る限りやはりアナベルは首都へ来るのは初めての様だと感じた。
(一体どうなってるんだ…。)
俺はそんな事を考えていた。
すると…店の店主がアナベルを見て声をかけてきた。
店主はまるでアナベルを知っているかの様にアナベルへ話しかけた。
(この店主…アナベルを知ってるのか?アナベルが小さい時にこの店に来ただと…?)
俺は店主の話を聞いて考えていた。
しかし…アナベルは店主の反応とは裏腹に自分は人違いだと慌てて言った。
アナベルの反応を見る限りアナベルは店主を知らない様だった。
(しかし…店主が言っている少女の特徴はアナベルの見た目の特徴と一致する。店主の言うようにアナベルの…得に髪色は珍しいから一度見たら印象に残るだろう。実際に俺もアナベルの髪色は鮮明に覚えていた。だが…アナベルは自分じゃないと言う…。店主の言うように本当にアナベルがこの店へ来たことがあるとするならば俺が拐われた時期と一致する…。だが…家族で来ていたならばアナベルはまだしもアナキスが覚えていないはずがない…。)
俺は店主の話を聞き疑問が膨らみ考えていた。
すると…そこへアナキスがやってきた。
まるで…店主とアナベルの話を遮るかの様に…。
(アナキスのあの表情にあの反応…やはりアナベルは首都へ来たことがある様だが…。だが…何故そうならばアナベルが覚えていない上にアナキスも店主にアナキスは首都へ来たのは初めてだと言ったんだ?やはり…これは調べてみる必要があるな…。他でもない俺の運命の相手の事だならな…。)
俺はそんな事を考えていた。
そして…その後俺たちはお茶をしようとカフェへと向かった。
その途中…アカデミーへ通う令嬢達が数人近くにいて俺たちに気づき下心を隠す気もない表情で俺たちを見ていた。
(チッ…タイミングが悪いな。鬱陶しい。)
俺はチラりと令嬢達を見て思っていた。
俺以外の3人も令嬢達に気づいていた様だった。
だが…俺たちはそんな令嬢など気づかないフリをしてカフェへ向かおうとしたその時…令嬢達は俺たちへ勢いよく近づいてきた。
(チッ…。)
俺はそんな事を思っていた。
「キャッ…。」
その瞬間…アナベルの声が聞こえた。
アナベルの方を見るとアナベルが地面に尻もちをついていた。
どうやら令嬢達の誰かにぶつかられた勢いで倒れた様だった。
俺はすぐにアナベルの元へ駆け寄った。
(クソッ…よくもアナベルを…。)
俺はそんな事を考えながら令嬢達へ殺意すら覚えた。
俺はアナベルに怪我ないか確かめた。
するとアナベル手を擦りむいていた…。
(あいつら…よくもアナベルに怪我を負わせたな…。)
俺は怒りが込み上げてきて今にも令嬢達の胸ぐらを掴みアナベルが感じた痛みよりも遥かに強い痛みを感じさせてやりたい衝動にかられた。
本当に女という生き物は一部を除けば皆己の欲望を満たす事しか考えていないと改めて感じさせられた。
俺の怒りが込み上げてきていたところ…アナキスも血相を変えてアナベルの元へと駆け寄ってきた。
俺とアナキスが二人して心配している姿を見た令嬢達はアナベルの方を憎しみのこもった目で睨みつけながらアナベルを侮辱する様な物言いをした。
俺はその瞬間アナベルが直ぐ側にいるのにも関わらず怒りを露わにする寸前だった。
もちろん俺だけではなくアナキス、ロザン、キールも同じ様に思っていただろう…。
だが…アナキスがグッと怒りを爆発させるのを堪える様に令嬢達へアナベルは自分の妹だと伝えた。
アナキスからアナベルが妹だと聞いた令嬢達は一瞬で青ざめていた。
それもそうだろう…。
アナキスの妹…そして俺の大切な女を傷つけたんだ…ただで済むはずがないからな。
今にも怒りが爆発してしまいそうな俺たちの空気を察したのかアナベルがアナキスへ喉が渇いたと伝えた。
すると…アナキスは先程までの怒りを鎮めて優しくアナベルへ応えていた。
俺もアナベルのその一言で我に返った。
一先ずは令嬢達を無視してアナベルをカフェへ連れて行く事を優先させた。
いつまでもあの女達の近くにアナベルを居させたくなかったから良かった。
だが…俺はアナベルに怪我を負わせたあの令嬢達を許すつもりはなかった。
俺はアカデミーへ帰り次第すぐに今日遭遇した令嬢達を二度とアカデミーはおろか…貴族が集まるパーティーなどにも顔を出せなくしてやる行動をしようと決めていた。
アナベルを傷つけた代償がどれほど大きかったのかを知るがいい……
その後カフェに着くとアナキスがアナベルの傷の手当てした。
手当てが終わると皆でお茶を飲みながら話をした。
話の中でアナベルは幼い頃から《王子様と魔女》という絵本が好きだと話しだした。
俺はその話を聞いた時にまさに俺が拐われた事件の様だと思った。
それに加え…話の中でアナベルは絵本に出てくる魔女を倒す魔法の粉を再現して使ったと言った。
(その粉は…俺を助ける為にあの時の少女があの忌々しい女めがけてなげかけた物じゃないのか?)
俺はアナベルの話を聞いて考えていた。
だが…アナベルはその粉を調合して作ったけれど使ってはいないと言った。
(いや…アナベルの話通りならアナベルが調合して作った魔法の粉にはスパイスが混じっているということになる…。あの日俺は逃げ出す際に女から微かに鼻にツーンとしたスパイスの臭いを感じた。ということは…やはりあの時の少女はアナベルで間違いない。だが…本人は使ってなくていつの間にかなくなっていたと言っていた…。やはりあの日アナベルには何かが起こったんだ。そのせいでその時の事を覚えていないんだ…。)
俺はアナベルの話を聞いてそういう結論に至った。
その後はあっという間にアナベルが帰らなければならない時間が来てしまい別れの時間となった。
アナベルとせっかく会ったのに別れるのはやるせなかった…。
しかし…俺は既に次の事を考えていたからがっくしなる事はなかった。
俺はアナベルを見送った後にアナキスにさり気なく話をした。
「アナベル…首都へ来てとても楽しそうで良かったな。」
俺はアナキスへ言った。
「あぁ…。アナベルが一人で首都まで来たと聞いたときは肝が冷えたが結果的にアナベルが首都で楽しく過ごしてくれて良かったよ。」
アナキスはホッとした表情で言った。
「これからは…頻繁に首都へ遊びに来るかもしれないな。」
俺はアナキスへ言った。
「いや…アナベルには首都より我が領地の方が過ごしやすいだろうから…次に首都へ来るのはいつになるかわならないだろうな…。」
アナキスはどこか苦い表情で言った。
(やはり…アナキスはどうもアナベルがあまり首都へ来てほしくない様だな。)
俺はアナキスの言葉を聞きそんな事を考えていた。
「そうなのか…。フルート侯爵家の領地の街にはアナベルはよく遊びに出かけるのか?」
俺はさり気なくアナキスへ尋ねた。
「あぁ…。そうだな。アナベルは領地街には頻繁…というより2日に1回出かけている様だ。領地民とも仲がいいからだろうな。アナベルは領主の娘だがあまりそういう事は気にせず領地民と接していたせいか領地民達はアナベルとは気楽に接している様だ。」
アナキスが説明した。
「ふ〜ん…そうなんだな。出来た妹だな。」
俺はそう言った。
(と…いうことは…アナベルは明日は領地の街へ出かけるというわけだな…。)
俺はニヤリとしながらそんな事を考えていた。
「アナベルは幼い頃から優しい子でそれでいて正義感が妙に強い子だったからな…。街へ出かけるのもいつも夕方の領地民達が賑わってる時間に行くんだ。その時間だと色々な人に会えるからだと言っていた。」
アナキスは優しい表情を浮かべて言った。
(本当にアナキスはアナベルの話をする時は優しい表情になるよな…。それより…アナベルは夕方頃から領地街へと出かけるのが…。ハハ…こちらから聞く前にアナキスが話してくれて助かったな…。)
俺はそんな事を考えていた。
「あぁ〜次はいつアナベルに会えるかな〜。次に会った時はアナベルが調合してくれたお茶が飲みたいな、」
キールが俺たちの話を聞いてそんな事を言い出した。
(チッ…お前はアナベルに会わなくていいんだよ!)
俺は苛つきながら考えていた。
「キール…残念だが当分はアナベルに会うことはないだろう…。きっと今日の出来事を父上達が知ったら当分は首都には出てこれないだろうかな…。」
アナキスがキールへ言った。
「チェッ…残念だな…。」
キールは残念そうに言った。
(そう…だからそれならこちらからアナベルに会いに行ったらいいだけの話だ…。)
俺はキールとアナキスのやり取りを聞いてそんな事を考えていた。
そして…この日一日はあっという間に終わったのだった。
♡
翌日…
俺はアカデミーの授業が終わるとすぐに着替えてフルート侯爵家の領地へと出かけた。
アナキスから聞いたアナベルが街へと出かける時間に合わせて向かった。
フルート侯爵家の領地へ到着すると俺はフルート侯爵家がある方向近くでアナベルを待ち伏せることにした。
しばらく待つと予想通り俺が待っていたその場所へアナベルが馬車に乗りやって来た。
アナベルは侍女を連れず一人で訪れていた。
きっとそれだけ安心していい街なのだと思った。
(あぁ…アナベル…。今日も可愛いな…。)
俺はアナベルの姿を見て愛おしくてたまらなくてそんな事を考えていた。
アナベルは街へ着くと慣れた足取りで色々な店へ出入りしていた。
俺はアナベルに気づかれない様にアナベルの後をつけて行動を見ていた。
「アナベル様…こんにちは!」
「アンさん、こんにちは!」
アナベルの行きつけの店だと思われる店の店主がアナベルの姿を見て声をかけるとアナベルは笑顔で応えていた。
その後もアナベルは街の人々と挨拶を交わしたり楽しそうに話をしていた。
(アナベルは本当に領地民達から好かれているのだな…。平民だからと疎かな対応はせず丁寧に一人一人に接しているな…。本当にアナベルは優しい子なんだな…。)
俺はアナベルの行動を追いながらそんな事を考えていた。
(だが…少し前にアナベルが話していた男…恐らくは店の息子だろうがやたらアナベルと親しそうに見えたが…。歳も俺と変わらないくらいだったか…。それにアナベルとの距離もえらく近かった…。あの男とはどういう関係なんだ…?)
俺はアナベルと仲良さそう話していた男の存在が気になり妙に気に食わないと思いながら考えていた。
だが…俺はすぐに機嫌が直った。
何故ならアナベルの後をつけたお陰でアナベルの好きな食べ物は…肉よりも魚で野菜はブロッコリーとキノコ類が好きで苦手なのは人参の様だった。
(アナベルは人参が嫌いなのか…。フッ…子供みたいで可愛いな…。)
俺はそんな事を考えていた。
他にも…フルーツはいちごとマスカットが好きでスイーツはいちごのショートケーキが好きな様だった。
食べ物以外にも…アナベルは雑貨などは可愛い物が好きな様だった。
雑貨店に入ると可愛いらしい小物ばかり見ていた。
好きな色は…淡い色のもの…特に淡いピンク色を好んでいる傾向があった。
まるでアナベルの瞳の色の様な…。
(きっと…アナベルの部屋には可愛い小物がたくさん置いてあるんだろうな…。きっとベッドカバーは淡いピンク色なのだろうな…。レースもついていたりするのかな?早くアナベルの部屋をこの目で見てみたいものだ。)
俺はアナベルの部屋を想像しながらそんな事を考えていた。
そして…アナベルが本屋の店主と話をしているの内容に聞き耳をたてたところ…アナベルの理想の男性像は…王子様みたいでアナキスの様な優しく格好いい男性…だった。
(アナキスの様なはおいておいて…王子様みたいな…か…。それならば俺はアナベルの前では徹底して王子様の様な男を演じた方が良さそうだな…。アナベルの為なら死ぬまでアナベルの前では王子様の様な男を演じる事など大した事もないしな…。)
俺はニヤリとそんな事を考えていた。
そして…その後も俺はアナベルの後をつけながらアナベルの行動を見ていた。
アナベルはフルーツジュースの店へ立ち寄りジュースを一つ買い飲んでいた。
アナベルは美味しそうにそのジュースを飲んでいた。
俺はそんなジュースを飲んでいるアナベルの口元を見て体に電流の様なものが流れた様な感覚に陥った。
(なんだ?体が反応している…。あの事件以来女を見ても嫌悪しか感じず自分は不能だと思っていたが…。まさか…ここまで反応するとは…。あぁ…やはりアナベルは俺にとって運命であり特別な存在なのだ…。)
俺は自分の体の反応にゾクゾクしながらそんな事を考えていた。
そして…俺はアナベルが飲み終えて捨てたジュースのゴミを見つめた。
そして…俺はアナベルが捨てたジュースのゴミをゴミ箱から周りの目を盗みそっと拾いストローだけを抜き取り他は捨てた。
(アナベルが口をつけたストロー…。あぁ…アナベルは少しストローを噛む癖があるんだな…。可愛いな…。それに…リップも淡い色を使っているんだな…。)
俺はアナベルの使ったストローを拾い見て体がゾクっとするのを感じながらそんな事を考えていた。
(これから…アナベルの使用済のものをコレクションとして収集しよう…。あぁ…そうしよう…。)
俺は笑みが溢れるのを堪えながら考えていた。
そして…その後アナベルが帰るために馬車に乗り込むのを見届けて俺もフルート侯爵家の領地を離れた。
寮へ戻った俺はアナベルの使用済のストローを袋へ入れ真空して鍵つきの引き出しへ保管した。
(つい先程までアナベルを見ていたのに…もうアナベルに会いたいな…。)
俺はアナベルを思い出しそんな事を考えていた。
(アナキスが次の休みに家に帰ると言っていたな…。)
俺はふとアナベルとアナキスの会話を思い出し考えていた。
「そうだ…。俺も次の休みにアナベルへ会いに行こう…。たが…アナキスに同行するのは難しいだろうな…。となれば…アナキスにはアカデミーで足止めしてもらわないといけないな…。」
俺はアナベルに会うためにいい案が浮かんだ。
(アナベル…すぐに会いに行くから待っててね…。)
俺は自分の口角が上がるのを感じながら考えていた。
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