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2/12

2.☆月☆日

⇢今日、私は自分一人でお兄様の通うアカデミーへ行った。


お父様とお母様が出かけたのを見計らってカナエにお遣いを頼んで一人になった隙を狙って。


一人で首都へ行くのは初めてだったけど不安よりワクワクした気持ちが大きかった。


いざアカデミーに着くと人が沢山いるし…お兄様は見当たらないし…お兄様の居場所を誰に聞けばいいのか分からなくてとりあえず歩いているといつの間にか人気のない場所へたどり着いて凄く不安になった。


だけど…近くに小さな温室があったので温室に誰かが居るようだったから道を訪ねようとして温室に近づいたら温室の中にお兄様がいて一瞬で安心した。


だけど…一人で勝手に首都へ来たことでお兄様に心配をかけてしまった…。

次からは首都に行きたい時には家族にきちんと相談しようと思った。


温室ではお兄様のお友達に初めて会った。


カイザー公爵家のルシフェル様。


バースト侯爵家のキール様。


皇太子殿下。


この3人はアカデミーではお兄様が仲良くしている方達みたい。


お兄様が家に帰ってきた際にお友達の事を尋ねてもあまり話してくれなかったからお兄様のお友達に会うことが出来て嬉しかった。


皇太子殿下がいることには驚いたけど目下である私にも丁寧に接してくれて驚いたけど感動した。

他の2人も優しかった。


3人ともいい方達の様で安心した。


それに今日は首都の街をたくさん歩いて回った。

首都の街へ出かけるに憧れてたからとても嬉しかったし楽しかった。

ちょっとしたトラブルもあったけどあっという間に解決して良かった。


お兄様が街を案内してくれるのだと思ってたけど何故だがお友達の皆さんも一緒だったので驚いたけれど皆さん街の色々なところを優しく教えてくれた。


少し不思議に思ったのは…

アカデミーに通う人達は人との距離がとても近いのだなと…。

特にカイザー公爵家のルシフェル様はとても距離が近かった気がする…。

アカデミーに通うレベルの人となると人との距離も近くなるのだなって思った。

だけど…私はお父様やお兄様以外の男性と距離が近かったことがないから実は近すぎる距離に緊張した。

3人に緊張が伝わってなければいいのだけれど…。


フルート侯爵家領地では見たことのない食べ物や宝石や小物や薬草などがたくさんあって思わずはしゃいでしまって少し恥ずかしかった。


あっという間に帰らないといけない時間になったのが残念だった。

お兄様とお別れするのはいつもより寂しく感じた。


だけど…次の休みは連休なのでお兄様が帰ってきたらいつもよりたくさん一緒にいれると言ってくれたので嬉しかった。


家に帰ったらお遣いを早めに終えたカナエが私の居ない事に気づいて家の中は私がいなくなったと大騒ぎになってて大変だった。


私は使用人の皆に黙って出ていったことと心配させたことを謝った。


もちろん…出先から帰宅したお父様とお母様には叱られた。


だけど…今日1日とても楽しい1日だった。


首都まで一人で出て…

お兄様の通うアカデミーも見れて…

お兄様にも会えて…

お兄様のお友達にも会えた…

首都の街も見ることができた…


今日という日は大切な思い出になる1日だった……⇠




私はアナベル・フルート。

15歳。

フルート侯爵家の長女。

家族はお父様、お母様、お兄様の4人家族。


お父様もお母様もお兄様も私を可愛がってくれる優しい家族。


侍女であるカナエは元々私の乳母だった。

私の希望で乳母から侍女になってもらった私の大好きな人の一人。


他の使用人や騎士の人達も皆優しくいい人ばかりだ。


そんな私を兄であるアナキスお兄様は特に可愛がってくれていた。

小さい頃はこっそり自分の部屋を脱げだしてはお兄様の部屋に行ってお兄様と一緒に寝たいと駄々をこねていた。

お兄様はいつも私の駄々を聞いてくれて一緒に寝てくれたし眠れない時は絵本を読んでくれていた。

私はお兄様がよく《王子様と魔女》という絵本を読んでくれていて私は今でもその絵本を大切に宝物の一つとしてとってある。


だけど、3年前にお兄様のアカデミー入学が決まり3年間は家を離れてアカデミーの宿舎に住む事になった。


私はお兄様が数年家を離れる事を寂しく思ったけど自分の我儘でお兄様の邪魔はしたくないと思い寂しい事も我慢することにした。


お兄様は休みの日には家に帰るし手紙もくれると約束してくれたのでそれを楽しみにお兄様のアカデミー卒業まで過ごそうと決めた。


お兄様が家を出てアカデミーに入学してから私は元々小さい頃から見様見真似でやっていた調合作業に力を入れるようになった。


小さい頃は《王子様と魔女》を読んで魔女をやっつける粉を自己流で作って遊んでいた。


今は薬草を調合して軽い傷薬や栄養剤。色々な茶葉を調合したお茶などを作っている。

完成したお茶はいつもアカデミーにいるお兄様へ手紙と一緒に送っている。

お兄様は美味しくお茶を飲んでくれているみたいで嬉しかった。


アカデミーでは毎年年に一度アカデミーで行われる催しに生徒の家族も参加できるという日があった。

私はアカデミーに行けるのを楽しみにしていた。

だけど…2年間その日に限ってアカデミーへ行けない用事が入っていたのだった。


だけど…今年はお兄様がアカデミーに在席する最後の年。

だから…その日にお父様とお母様が2人で出かけるのを知ると私は密かに計画を立てた。


それは…私一人でこっそり家を抜け出して首都にあるアカデミーへ行くこと…だった。


その日…私はお父様とお母様が出かけたのを見計らってすぐにカナエに時間を要するお遣いをお願いした。

そしてカナエがお遣いへ行くのを確認して私は2階の自分の部屋から事前に作っておいた何枚かのシーツを繋げて固く結んだ即席にロープをベットの下から取り出して窓から下へ投げた。

そして…鞄にお小遣いを入れて肩からぶら下げいざロープを使いゆっくりと下まで降りた。

そして騎士達にバレないように家の外に出て急いで移動馬車へ向かい首都まで向かった。


移動馬車はアカデミー付近で停まったので助かった。


私はアカデミーまで着くとアカデミーの立派さにあんぐりなりながらアカデミーの中へと入った。

アカデミーに入ると人がたくさんいた。

お兄様がどこにいるのか分からず誰かに聞こうも誰に聞いたらいいか分からず一先ず歩いてお兄様を探した。


しばらく歩いていると人気がない場所へと来てしまっていて私は急に不安になった。


どうしよう…と思っていたら少し先に小さな温室が見えた。


私はもしかしたら温室に誰かいるかもしれないと思い温室へと向かって歩いた。

そして温室に誰かいるのが見えた。


そこにはお兄様がいた。

そしてお兄様と目があった。


私はお兄様を見た途端に安心してお兄様へ思い切り手を振った。

お兄様は私に気づいてくれてすぐに私の元へとやって来てくれた。


だけど…私の勝手な行動でお兄様を心配させてしまった…。


この時…私は自分勝手な判断を酷く反省したのだった。


今後は心配かけない様に気をつけようと思ったのだった。


私とお兄様が話をしているとそこへ一人の男性がやってきた。

男性はとても大らかな雰囲気の人だった。

その人は私も一緒に温室に入る様にと案内してくれた。


温室に入ると他に2人の男性がいた。


その3人はどうやらお兄様のお友達のようだった。


驚いたのは先程の大らかな男性はなんと…皇太子殿下だったことだ。

こんな形で時期王国の頂点に立つ方に会うとは思ってなかったから。


だけど…3方とも優しそうな方で安心した。


そして…話の流れで首都の街を案内してもらえることになった。




「それで…どうして君たちまで街に行こうとしてるんだ?」


アナキスが不機嫌そうにルシフェル、ロザン、キールへ言った。


「え?話の流れ的に俺等も一緒にって事じゃなかったのか?」


キールが言った。


「どこをどうとったらそんな解釈になるんだ?」


アナキスは呆れた表情で言った。


「違ったのか?!…まぁ…いいじゃないか!皆で行った方がアナベルも楽しいよな?」


キールが驚いた表情で言うもすぐにニカっと笑って言った。


「え…えぇ…?!」


私は話を急に振られて慌てて言った。


「おい!キール!気安く妹の名前を呼ぶな!」


アナベルはキールギロっと睨みながら言った。


「何だよ!そんな怒らなくてもいいだろ?まったく…いくら妹が可愛いからってよ…。」


キールはムスッとした表情で言った。


「別に名前で呼んでもいいよな?アナベル!」


キールはニカッと笑って言った。


「え?あ…はい。それは構いませんけど…。」


私は戸惑いながらも言った。


「ほら!本人がいいって言ってるんだからいいじゃないか!」


キールがアナキスへ言った。


「アナベル…無理に承諾しなくてもいいんだぞ?」


アナキスは言った。


「いえ…無理はしてないです。お兄様のお友達なのですから名前で呼ばれても構いませんよ?」


私はお兄様へ笑顔で言った。


(急に家族や領地の人達に名前を呼ばれたらから驚いたけど…お兄様のお友達なんだし嫌なわけないもの。)


私はそんな事を考えていた。


「そうか…。」


アナキスは少し不満気な表情で言った。


「よし!では…改めてよろしくな!アナベル!」


キールは笑顔で言った。


「はい。」


私は笑顔で頷きながら言った。


「私も名前で呼んでも構わないか?」


ロザンが優しい表情で言った。


「は…はい!構いませんのでお好きにお呼びください。」


私は殿下に言われて緊張のあまりぎこちく言った。


「そうか…。ありがとう…アナベル。」


ロザンはにこりと微笑み言った。


「は…はい。」


私は慌てて言った。


(皇太子殿下にこんな間近で接してもいいのかな…。殿下に名前で呼ばれるなんて緊張してどう対応したらいいのかしら…。)


私は相手が殿下だけに緊張しつつ考えていた。


「では…私もアナベル…と呼んでもいいかな?」


ルシフェルが優しい微笑みを浮かべて言った。


「え?あ…はい。」


私は頷きながら言った。



「ありがとう…。アナベル…。私の事はルシフェルと呼んでくれたらいいよ。」


ルシフェルは更に優しい微笑みを浮かべて言った。


そんなルシフェルを見てアナキス達3人は驚いた表情をしていた。


(フッ…。女嫌いの俺がアナベルにだけ笑顔を向け優しく話しかけているよが不思議で仕方ないのだろうな…。だが…そんな事はどうだっていいさ…。どの様に思われ様がアナベルは俺の特別なんだから…。)


ルシフェルはそんな事を考えていた。


「え?!ルシフェルですか…?!」


私は突然の事に混乱してしまい言った。


(自分より目上の方を…ましてや…身分も自分より上の方を呼び捨てになんて出来ないわ…。)


私は困惑しつつ考えていた。


「あの…ルシフェル…お兄様ではいけませんか?」


私は恐る恐る言った。


「あぁ……。いいよ。ルシフェルお兄様と呼んでくれ…。」


ルシフェルは満面の笑みで言った。


(天使の様に輝く笑顔だわ…。)


私は率直にそう思った。


「ありがとうございます…。では…そう呼ばせて頂きますね。えっと…ルシフェルお兄様…。」


私は照れながらルシフェルお兄様へ言った。


「あぁ…。」


ルシフェルは更に笑みを浮かべて言った。


(ルシフェルお兄様か…。アナベルにそう言われるのは悪くないな…。)


ルシフェルはアナベルにそう言われて体がゾクゾクするのを感じながら考えていた。


「え?!だったら俺の事もキールお兄様と読んでくれよ!」


キールが横から言ってきた。


「え?!……分かりました…。キールお兄様…。」


私は戸惑いながらも名前を直接呼ぶよりはいいと思い言った。


「ハハハ…!」


キールは満足そうに笑った。


「では…私のこともロザンお兄様と呼んでくれ。」


ロザンが言った。


「え?殿下をですか?!それは…ちょっと…さすがに…。」


私は殿下の言葉に流石に恐れ多くて言った。


「皆は良くて…私は駄目なのか?皇太子というだけで呼んでもらえないのは寂しいな…。私は妹がいないからお兄様と呼ばれるのが夢だったのだが…。」


ロザンは残念そうな悲しそうな表情で言った。


「え?で…ですが…。さすがに…。」


私はどうしたらいいのか分からず混乱しつつ言った。


「では…皇太子としての命令だ…。私をロザンお兄様と呼ぶように。」


ロザンがにこりと微笑み言った。


「命令ですか?……分かりました…。ロ…ロザンお兄様…。」


私はこれ以上何を言っても殿下の事をそう呼ぶまで殿下は引き下がらないと思い諦めて言った。


(こんな風に呼んで罪にならないわよね…?)


私は困りながら考えていた。


「おい!アナベルを困らせるな!」


アナキスが苛つきながらルシフェル達3人へ言った。


「アナベル…。こんな奴らは置いていって早く街へ出かけよう。まったくアナベルを困らせやがって…。」


アナキスが言った。


「お兄様…怒らないで下さい。私は大丈夫ですから。それより早く街へ出かけたいです。」


私は笑顔でお兄様へ言った。


「……。分かった。行こう。」


アナキスは一瞬で優しい表情なり言った。


「……それより…兄は私だけであって欲しかったな。」


アナキスが少し不機嫌そうに言った。


「私にとってのお兄様はお兄様だけですよ?皆さんの事をお兄様とつけて呼ぶ事にしたは皆さんが身分の位が高い方達ですので名前を呼び捨てすることは失礼だと思ったので馴染みのある"お兄様"とつけて呼ぼうと思っただけですから。私にとってのお兄様はアナキスお兄様以外にいませんから。こんな妹思いで優しくて素敵なのお兄様なんてどこを探してもお兄様以外にいるわけないですから。」


私はお兄様の耳元で小声になり心からそう思ったので素直にそう言った。

そして私は久しぶりのお兄様の腕にぎゅ〜っと思い切り抱きついた。


(久しぶりのお兄様の腕だわ。やっぱり落ち着くわ。)


私は嬉しくなりそんな事を考えていた。


「そうか…。それは光栄なことだな…。」


アナキスは嬉しそうに柔らかい表情を浮かべて自分の腕に抱きつくアナベルの頭を優しく撫でながら言った。


(まったく…うちの妹はなんて可愛いんだろうか…。)


アナキスはそんな事を考えていた。


そんな2人の姿をルシフェルは歯をギリっとしながら見つめていた。


その後…私たち5人は首都の街へ移動した。



「わぁ〜〜!!」


私は街に着くなり声を上げた。


首都の街は私が想像していたよりも遥かに素敵なところだった。


「お兄様、あれはなんですか?」


私は近くにあった店の初めて見る食べ物を見てお兄様に尋ねた。


「あぁ…あれは綿飴というお菓子だよ。」


アナキスが興奮するアナベルを見てクスっと笑みを浮かべて言った。


「綿飴…。何だか雲みたいなお菓子ですね。色もピンクに水色…黄色とあって可愛いですし。」


私は初めて見る綿飴に興味津々に言った。


「一つ買ってあげるから食べてみるといいよ。」


アナキスが言った。


「本当ですか?嬉しいです。」


私は嬉しくなり言った。


そしてアナキスがピンク色の綿飴を買ってきてアナベルへ手渡した。


「お兄様ありがとうございます。……っ?!これは…甘くて口の中で溶けていきますね。とても美味しいです。」


私は綿飴をお兄様から受け取り一口食べてとても美味しくて感動して言った。


「それは良かった。」


アナキスは笑みを浮かべて言った。


首都の街には今まで見たことのないものがたくさんあった。


私は初めて見るものや食べるもの一つ一つに感動して思わず子供の様にはしゃいでしまった。


そんな私を見たお兄様達がクスっと笑ったので私は急に恥ずかしくなった。


(私ったら周りも気にせずはしゃいでしまったわ。侯爵家の令嬢として恥ずかしいわ…。)


私は顔を手で覆って恥ずかしいのを誤魔化す様に考えていた。


そして…その後は領地にはない茶葉を見つけたので何個か茶葉を購入した。


「そういえば…いつもアナキスが飲んでいるお茶はアナベルが調合した茶葉だと聞いたが…。」


ロザンがアナベルへ尋ねた。


「はい。お兄様がアカデミーに行かれてからは私が一つ一つ茶葉をを調節して調合した物を送っているのです。」


私は説明した。


「我々も何度も飲ませてもらったがどれも美味しいお茶ばかりだったよ。あんなに美味しい茶葉を作れるなんてアナベルの才能の1つだね。」


ロザンがにこりと微笑み言った。


「そう言って頂けると色々考えて調合した甲斐がありました。」


私は何だか嬉しくなり微笑みながら言った。


「こんなに兄思いな妹を持ってアナキスは幸せもんだな。」


ロザンはにこりと微笑みながら言った。


「逆に私はあんなに優しくて素敵なお兄様がいて幸せ者なのですよ。」


私は心からそう思い笑顔で言った。


「アナベル…。」


そんなアナベルの言葉を聞いたアナキスは嬉しそうに優しい表情を浮かべて言った。


そんなやり取りを見てルシフェルは密かに表情を歪ませていた。


私たちは茶葉を買った後は薬草を扱う店へと入った。


店にたくさんの薬草が置いてあった。


茶葉に続いて薬草も見たことないものが沢山あって私は目を輝かせた。

このお店は古くからある店で首都一薬草の種類が豊富な店だとお兄様が教えてくれた。


「何か良さそうな薬草は見つかったかい?」


私が店内の薬草を色々見ているとルシフェルお兄様が声をかけてきた。


「はい。フルート侯爵家の領地では見たことのない薬草が沢山ありますので普段手に入らない薬草で本で見た必要なものを買おうと思っています。」


私はルシフェルお兄様へ言った。


「そうか…。良さそうな薬草があって良かったね。アナベルは本当に首都へ来るのが初めてなんだね…。」


ルシフェルがにこりと微笑みながら言った。


「はい。こうして初めて首都に来ることができて良かったです。」


私は笑顔で言った。


ルシフェルはアナベルの言葉を聞いて何か考える様な表情を浮かべていた。


「ルシフェルお兄様?」


私はそんなルシフェルお兄様の表情を見て不思議に思い言った。


その時…


「おやおや…これは…えらくしばらくぶりのお嬢さんだね。」


店の店主の男性が薬草を見ていたアナベルへ声をかけた。


「え…?私ですか?」


私は店主に言われて不思議に思い言った。


(しばらくぶり…?私は今日初めて来たんだけどなぁ…。)


私はそんな事を考えていた。


「あぁ。その髪の色は首都では見ない髪の色だから覚えていたんだよ。お嬢さんが幼い時にここへよくご家族と一緒に来てくれたのを。」


店主はニコニコと微笑みながらアナベルへ言った。


「髪の色……。あの…私は今日初めて首都へ来たので恐らくは人違いかと思いますが…。」


私は店主が完全に人違いをしていると思い言った。


「え?そうなのかい?昔の面影もあるしてっきりあの時の少女かとばかり思っていたが…。」


店主はアナベルの言葉に戸惑いながら言った。


店主とアナベルのやり取りを聞いたルシフェルは目を細めて何かを考える表情を浮かべていた。


「店主…この子の言うとおり…この子は今日初めて首都へ出てきたので恐らく店主の勘違いだと思うのだが…。」


そこへアナキスがやってきて店主へ言った。


「そう…かい?そうだったら悪かったね…。幼いのにとても礼儀正しく優しい薬草に興味を持っていた子だったからついその子かと思ってね。人違いならすまなかった。」


店主は気まずい笑みを浮かべて言った。


「いえ…。気にしないでください。大丈夫ですから。」


私は笑顔で言った。


(確かに…私の髪の色は領地でも珍しいと言われるくらいの髪色だからな…。それにしても私の他にもそんな髪色をした人がいるのね。)


私はそんな事を考えていた。


「アナベル…買う薬草が決まったのなら早く買ってお茶でもしよう。」


アナキスが少し暗い表情でアナベルへ言った。


「??はい…。分かりました。」


私はお兄様のそんな表情が少し気になったけど返事して急いで薬草を選んで会計をしてもらった。


(アナベル…。)


アナキスが会計をしているアナキスを見て何かを考える様に思っていた。


そして…私たちは薬草を買い終わると店を出てお茶をする為にカフェへと向かった。


カフェに向かい歩いていると…


「あれ…殿下じゃない?」


「あ…本当だわ。アナキス様やキール様にルシフェル様までご一緒だわ。」


「4人で街へ出かけられるなんて珍しいわね。」


「でも…こんな場所でお会いできるなんて私たちついているわね。」


近くから女性達の話し声が聞こえたきた。


そして…


「ごきげんよう…。」


「こちで何をしてらっしゃるのでさか?」


「よければ私たちとお茶でもいかがですか?」


先程話をしていた女性達が数人で私たちのところへ勢いよくやってきた。


ドンッ…!


「キャッ……。」


私は勢いよくやってきた女性達の中の一人の体が思い切りぶつかりその勢いで跳ね飛ばされてしまいその場に尻もちをついてしまった。


女性達は私にぶつかった事にも気づかずお兄様達の周りを囲んでいた。


(痛っ…。)


私は立ち上がろうとした時に尻もちをついた時に手のひらを擦りむいていた様で痛みを感じた。


「アナベル!」


そんな私の元にルシフェルお兄様が血相を変えて駆け寄ってきた。


「アナベル!大丈夫かい?怪我はないかい?」


ルシフェルお兄様を私を見るなりとても心配そうな表情で言った。


「あ…えっと…少し手のひらを擦りむいてしまったみたいで…。ですが…大丈夫です。」


私はルシフェルお兄様に心配かけまいと言った。


「アナベル!」


そこへお兄様が血相を変えて私の元に駆け寄ってきた。


「お兄様…。」


私は言った。


「怪我をしたのか?」


アナキスが心配そうにアナベルへ言った。


「はい。でも…少し擦りむいた程度なので大丈夫ですよ。」


私はお兄様を安心させる様に笑顔で言った。


するとお兄様は私の擦りむいた手を優しく掴むと擦りむいたところを見ていた。


「アナキス様…そちらはどなたですの?少し擦りむいた程度で大袈裟ではありませんか?ボーっと突っ立っているからそんな事になるんですわ。」


「そうですわ!そんな事より私たちとお茶でもしませんか?」


女性達がアナベルの元に駆け寄ったアナキスやルシフェルを見てアナキスを冷たい目で見て言った。


「えっと…私は…。」


私は急に女性たちにその様に言われて意味が分からず戸惑いながら言った。


(この女達よくも…。)


アナキスは女性たちの言葉を聞き腸が煮えくり返る気持ちで考えていた。


そして…女性達の方を振り返りをとても冷たい目をして女性達を見た。

気づけばルシフェルとロザンとキールも女性達を物凄く冷たい目で見ていた。

アナベルからはその表情が見えない様に…。


「私の妹に何てことをしてくれたのだ…?」


アナキスが女性達を鋭く睨みつけ言った。


「え…?アナキス様の…妹…。」


「そんな…。」


「まさか…妹だったなんて…。」


女性達がザワつきながら顔を一気に青ざめさせ言った。


「妹に怪我を負わせてどう責任を取るつもりだ?」


アナキスは更に圧のこもった冷たい表情で女性達へ言った。


「そ…それは…。」


「…………。」


「………。」


女性達は一気に静まり返った。


私はその場の空気が何だかとってもまずい気がした。


顔はよく見えないけどお兄様が怒っているのは声を聞いてわかった。


私はこの状況をどうにかしなければと考えた。


そして…


「お…お兄様!私…喉が渇きました。」


私は咄嗟にお兄様に向けて言った。


すると…


「あぁ…。分かった。」


アナキスはフッとアナベルの方を見て言った。


私はお兄様の表情を見てホッとした。

お兄様の表情をいつものお兄様の表情だった。


「では…行きましょう!」


私はお兄様へ言った。


「あぁ。」


アナキスは頷きながら言った。


「さぁ…アナベル立てるかい?私の手に掴まって。」


ルシフェルがアナベルに手を差し出し優しく言った。


「あ…ありがとうございます。大丈夫です。」


私はルシフェルお兄様の手を軽く掴み言うと立ち上がった。


そして…私たちは女性達をその場に残してカフェへ向かった。


カフェに着くなりお兄様が私の擦りむいた手を手当してくれた。


そして…その後5人でお茶を飲み始めた。


「あの…先程の女性の方達の顔が青ざめていた様ですが…大丈夫だったでひょうか…。」


私は女性達が気になり言った。


「アナベルがそんな事を気にすることないさ…。」


アナキスが言った。


「そうだよ。アナベルはあの女達のせいで怪我したんだぞ?そんな奴らの事なんて気にする必要ないさ。」


キールも言った。


「あの女性達は我々に対する礼儀も知らない様だったしな。」


ロザンも言った。


そんな中ルシフェルは黙って何やら考えていた。


「そうですか…。」


私は何だかそれ以上は言わない方がいいと思い言った。


「そんな事より首都の街はどうだったかな?」


ロザンがアナベルへ優しく言った。


「はい。想像していたよりもとても素敵な場所でした。初めて見るもの食べるものが沢山あってあれもこれもと目移りばかりしてしまいました。」


私は笑顔で言った。


「そうか…。満足して楽しめた様で何よりだ。」


ロザンは優しく微笑みながら言った。


「はい。今夜はきっと興奮が冷めないと思うので眠れないかもしれません。」


私は笑い混じりに言った。


「そうかもしれないな。」


アナキスがクスクス笑いながら言った。


「アナベルは幼い頃から興奮すると夜眠れなくなっていたからな…。」


アナキスがクスっと笑いながら言った。


「それは…否定できませんね。」


私はクスクス笑いながら言った。


「昔は興奮して眠れない日もそうでない日もいつもお兄様に絵本を読んでとせがんでましたもんね。」


私はクスクス笑いながら言った。


「あぁ…。これまで何度絵本を読み聞かせたことか…。」


アナキスはクスクス笑いながら言った。


そんなやり取りを不服そうに見ていたのはルシフェルだった。


「どんな絵本を読んでもらっていたんだい?」


ロザンがアナベルへ言った。


「色々と読んでもらったのですが…一番好きな絵本は《王子様と魔女》という絵本でした。ある日王子様が魔女に拐われて身動きが取れない様にされて魔女が王子様にいじわるをしようとしたのですがそんな王子様を助ける為に勇者が現れ魔女に魔法の粉を投げつけ魔法の身動きを封じて王子様を助け出すというお話なんです。私はその絵本が好きすぎて絵本に出てくる魔女を倒す為の魔法の粉を自分って作って遊んでいたほどです。実際にその粉を魔女に投げつける機会なんてありませんでしたけどね。」


私は当時の話をした。


「アナベルは小さな頃から何かを調合して遊ぶのが好きだったからな。」


アナキスはどこか切ない表情で言った。


「その粉はどうやって作ったんだ?」


キールが興味津々に言った。


「実は…恥ずかしながら…その粉は庭にあった砂と厨房にあった料理に使うスパイスを数種類と小麦粉を混ぜたものなのです。」


私は少し恥ずかしくなりつつ言った。


「プハっ!何だそれ!」


キールはアナベルの話を聞き思わず吹き出して笑った。


「笑われても仕方ないですね…。あの時は小さくて絵本の絵の色を見て近いものを探した結果それらの材料になったのです。」


私は笑われて少し恥ずかしく思いつつ言った。


「まぁ…子供らしくていいんじゃないか?」


キールはふっと笑いながら言った。


「結局、作るだけ作っておいて使うことはありませんでしたけどね。」


私は言った。


「その作った魔法の粉はどうしたんだい?」


ロザンがアナベルへ尋ねた。


「それが…使わずに置いていたらいつの間にか瓶ごとなくなってたので…使用人の誰かがゴミだと思って処分したのだと思います。」


私は苦笑いを浮かべて言った。


「そうなのか?それが残っていたら是非見せてもらいたかったな。」


ロザンが残念そうに言った。


「そんな…お見せできる様なものではありませんでしたから。」


私は慌てて言った。


そんな会話をルシフェルは一人黙って聞いて何かを考えていた。


「アナベル…楽しい時になんだがそろそろ帰る時間だ…。」


アナキスがアナベルへ言った。


「え?もうそんな時間なのですか?」


私は時計を見て慌てて言った。


(あ…本当だわ。そろそろ帰らないといけない時間だわ…。)


私は時間を確認して残念そうに考えていた。


「また…機会があれば連れてきてやるから。」


アナキスはそんなアナベルを見て言った。


「本当ですか?約束ですよ?」


私はお兄様の言葉を聞いて嬉しくなり言った。


そしてお兄様に小指を差し出した。


私の小指にお兄様が小指を絡めた。


「指切りげんまんですよ!」


私の笑顔でお兄様に言った。


「あぁ。」


アナキスは優しく微笑みながら言った。


その絡みを見たルシフェルはギリっと歯を噛み締めた。


そして…私が家に帰るための乗る移動馬車のところたでお兄様達が送り届けてくれた。


「アナベル…気をつけて帰るんだよ?」


アナキスが少し心配そうにアナベルへ行った。


「はい。分かりました。今日は急に来てしまったのに首都の街も案内してもらってお陰で楽しい時間が過ごせました。」


私は申し訳ない気持ちもありつつ笑顔でお兄様へ言った。


「あぁ。私もアナベルと過ごせて楽しかったよ。ただ…本当に次にこんな勝手なことはしてはいけないよ?」


アナキスが言った。


「はい…。」


私は少し困り顔で言った。


「ロザンお兄様…キールお兄様…ルシフェルお兄様…皆さんも今日はありがとうございました。急に押しかけてきたにも関わらずよくして頂いて感謝しています。」


私は3人へ心を込めてお礼を言った。


(初対面なのにこんなに優しく良くして下さるなんて…本当に安心したし嬉しかったから。)


私はそんな事を考えていた。


「こちらこそ…。アナキスの妹に会えて良かったよ。私も楽しい時間を過ごす事ができたよ。」


ロザンが優しく微笑み言った。


「俺も楽しかったよ。アナベルのお陰で久しぶりに街に出れたからな。」


キールがニカッと笑いながら言った。


「私も…とても…楽しかったよ。アナベルにも会えて本当に良かったよ。」


ルシフェルがにこりと微笑みながら言った。


「次はいつお会いするか分かりませんが…お会いする事があった時にはお兄様のアカデミーの様子を是非聞かせて下さい。」


私は微笑みながら言った。


「あぁ。」


「わかったよ。アナキスの色々を聞かせてやるよ。」


ロザンとキールが頷きながら言った。


「あぁ。是非に…。」


ルシフェルがにこりと微笑み言った。


「……すぐ…会うことになるさ……。」


ルシフェルがニヤリとしてボソりと呟いた。


そのルシフェルの声は誰にも聞こえてはいなかった。


「さぁ…アナベル。馬車へ乗る時間だ。」


アナキスがアナベル言った。


「はい。」


私は名残り惜しい表情で頷きながら言った。


「そんな顔をするな…。次の休みには帰るのだからまたすぐ会えるから。」


アナキスが困り笑顔でアナベルの頭を撫でながら言った。


「はい…。」


私は笑顔で頷きながら言った。


そして…私は馬車へ乗った。

馬車はすぐに出発した。


私は馬車の中からお兄様達が見えなくなるまで手を振った。

お兄様たちも手を振り返してくれた。


(あぁ…。お兄様たち見えなくなったわ…。でも…今日はとても楽しかったなぁ…。一人で領地以外へ出かけたのも初めてだったし…アカデミーへ行ったのも初めてだったし…お兄様のお友達に会ったのも初めてだったし初めてのことだらけで冒険した気分だわ…。)


私は馬車の中でそんな事を考えていた。


(3人のお兄様達にはきっと当分…お兄様がアカデミーを卒業するまでは会うことはないだろうな…。)


私はそんな事を考えていた。


その後…無事に家に着いたのはいいけど家の中では私がいないということで大騒ぎになっていたのは言うまでもなかった…


この時の私はまさか3人のお兄様にその後も会うことになるなんて思ってもみなかった…


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悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!(※不定期更新)


私が悪役令嬢?!…ならばシナリオ無視して全力で推しを守り愛し共に幸せになる所存です!!

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