10.☆月☆日
⇢ルシフェルお兄様がナックル伯爵邸へ訪れたあの日…
私がルシフェルお兄様を"君わた"の主人公という先入観と自分が殺されてしまうという恐怖に囚われすぎてしまっていた事がよくなかったと反省した。
あの日、ルシフェルお兄様はお祖父様達の話が終わるまで私の話を親身になって聞いてくれた。
それから何度かルシフェルお兄様は父親であるカイザー公爵の代理でナックル伯爵邸へ視察の為訪れお祖父様から種の経過報告を受けていた。
私はその都度ルシフェルお兄様とお茶の時間を過ごした。
毎回お茶の時間にルシフェルお兄様は私の大した事もない話をにこにこしながら聞いてくれた。
それにルシフェルお兄様は"君わた"のルシフェルとは大違いで本当に私に親切にしてくれるしカイザー公爵の代理としての任務にも真剣に取り組んでいた。
その姿は紛れもない王子様の様だった。
ルシフェルお兄様がナックル伯爵邸に4度目の視察に訪れた日だった。
いつもの様にルシフェルお兄様とお茶の時間にしようとした時…
お兄様が私にプレゼントだといって箱を渡してくれた。
箱の中身は高価なティーセットだった。
それも私好みの可愛らしいティーセットだった。
ルシフェルお兄様は私が美味しいお茶を淹れてくれるお礼だと言っていた。
むしろ私の方がルシフェルお兄様に話を聞いてもらって楽しいお茶の時間を過ごさせてもらっているので少し気が引けた。
そんな私を察してかルシフェルお兄様はティーセットは私とのお茶の時間に使おうと優しく言ってくれた。
こういう気遣いをさり気なく出来るところがさすが"君わた"の主人公だなと思った。
いつもの様にルシフェルお兄様とお茶を飲もうとした時…
突然お兄様がやって来た。
特にお兄様が訪問するという連絡を貰っていなかったので驚いた。
私が前世の記憶を思い出してここにへ来た日からお兄様とは顔を合わせていなかったので正直どう接したらいいのか分からなかった。
私が一方的にお兄様を避けていた事もあって余計にだった。
するとお兄様はいきなりルシフェルお兄様を見るなり言いがかりをつけた。
お兄様はルシフェルお兄様が何故ナックル伯爵邸にいるのか何を企んでいるのかと怒りを込めて一方的に言っていた。
私はお兄様の一方的な言い分に腹が立ち思わずお兄様に強めに言った。
確かに私も前世の記憶を思い出してすぐの時は恐怖でここへ逃げてきた。
ルシフェルお兄様がここへやって来た時もお兄様から私の居場所を聞き出してまで私を殺しに来たのかと正直恐怖でどうにかなりそうだった。
だけどそれは私の先入観からの思考であって実際にルシフェルお兄様は私の居場所をお兄様から聞き出したのでもなくただ公爵様の付き添いだった。
それに加えて私を見るなり私の事を本気で心配してくれていたし私がお兄様との事を悩んでると打ち明けたら親身に話を聞いてくた上に無理にお兄様と今の関係を変えようとしなくてもいいのではないかと本気で心配してくれていた。
現に今もこうして楽しいお茶の時間を過ごさせてもらっていた。
だからこそお兄様が一方的にルシフェルお兄様を責める事に腹が立った。
私が強めに言ったことにお兄様はとても戸惑っていた。
それもそのはずだった。
これまで私がお兄様に強めに言った事なんて一度もなかったからだった。
そんな戸惑うお兄様と腹を立てた顔をしていた私を見兼ねてルシフェルお兄様が私にお茶を温め直しきて欲しいとお願いしてきた。
きっとルシフェルお兄様がお兄様をなだめようとしているのだとすぐに分かった。
私は素直にお茶を温め直しに行った。
私がお茶を温め直しに行っている間に2人がどんな話をしたのかは分からないけれど私が戻った時にはお兄様は落ち着いている様だった。
きっとルシフェルが上手く説明してくれたのだと思った。
お兄様の突然の訪問で驚いたけれど改めて3人でお茶を飲み始めてすぐにお兄様の言葉で私は一瞬で気持ちが沈んでしまった。
それは…
皇后様から私に皇宮への招待状が届いたという話だった。
どうやら皇后様がお茶に目がない方のようで私が調合するお茶の話を聞きたいそうだ。
私はなるべく"君わた"の主要人物達に接触したくないと思っていた。
"君わた"の主人公であるルシフェルお兄様もお兄様も漫画の描写とは違うというのは身を持って分かったけれど主要人物であるロザンとキールもお兄様達同様に漫画の描写と違ったとしてもなるべく会いたくはなかった。
だからいくら皇后様からの招待でもなるべくなら皇宮へ行きたくなかった。
お兄様も私をあまり皇宮へ行かせたくないと思っているのか複雑な表情を浮かべていたがこの招待はどうやら断る事が出来なさそうだった。
私は"君わた"を一応読んだのは読んだけれどあまりにも内容がヘビーだったから流し見程度でしか読まなかった。
だから正直に漫画の内容もうる覚えだった。
ただ、アナベルが誰よりも残酷な死を迎える事は内容が強烈だっただけにより記憶に残っていた。
だけど他の内容はうる覚えであまり覚えてないけれどアナベルが皇宮へ行くという内容はなかったような気がした。
それとも私が覚えていないだけか…
何にせよ幸いなのは皇后様に会うわけでロザンとキールはアカデミーにいるし皇宮で会うことは可能性としては低いという事だった。
私が皇宮に行くという事になったので私は急遽フルート侯爵邸に戻る事となった。
私の現実逃避はこれにて終了した。
私は帰りの馬車の中で久しぶりにお兄様と会話という会話をした。
最初はお互いどこか気まずい雰囲気だったけどお兄様からルシフェルお兄様に私がお兄様に対する態度を悩んでいると聞いたと言ってきた。
私は前世の記憶を思い出した事で無惨に殺されたくないという一心でお兄様に甘えることを躊躇した。
だけどルシフェルお兄様同様にお兄様も"君わた"のアナキスとは違い幼い頃から私の事を誰よりも可愛がって大切にしてきてくれた存在だった。
だから"君わた"のアナキスという人物像に囚われずこれからもお兄様と今まで通り仲良くしようと決めた。
フルート侯爵邸に戻りまたいつも通りの日常が戻った。
いつもの様に茶葉を調合したり街に出かけたりと私は相変わらずの日々を送っていた。
自室で本を読んでいる時に棚に飾ったあるティーセットが目に入った。
ルシフェルお兄様から貰ったティーセットを持って帰ってきたけど使うのが勿体なく思えたのとルシフェルお兄様に2人でお茶を飲む時間に使おうと言われた言葉が脳裏に残っていたからか持って帰ってきて一度も使わず棚に綺麗に飾っておいたのだ。
自邸に戻ってきたから当分はルシフェルお兄様とのお茶の時間はないと思うと少し残念に思えた。
前世の記憶を思い出した時は誰よりも会いたくないと思っていたのに今はその相手とお茶の時間を取れない事を残念だと感じるなんて不思議な気分だった。
そして毎日はあっという間に過ぎ皇宮へ訪れる日がやってきた…
その日は両親とお兄様と一緒に皇宮へ向かう予定だったけど前日に領地内で問題が起きてしまい急遽両親が一緒出来なくなり結局お兄様と2人で皇宮へ向かうことになった。
皇宮へ向かう馬車の中でお兄様は緊張している私を安心させる様に優しく話しかけてくれた。
お兄様のお陰で少し気が楽になり助かった。
そして、皇宮へ到着すると皇后様の待っている温室へと案内された。
本当は私1人で皇后様に会う予定だったが私が1人では心細いだろうとロザンお兄様が事前にお兄様の同席を皇后様にお願いしてくれた様だった。
"君わた"の漫画には皇后様はほぼ出てこずロザンお兄様が闇落ちした際に一瞬皇后様が描写されていたけれど顔が影になっているような描写だった為に顔自体は見えなかったのでこれが初見だった。
顔はロザンお兄様とは似ていないけれど"君わた"の主要人物やそれに関わる登場人物は私も含めて無駄に美形というだけあって皇后様も美しい方だった。
雰囲気は柔らかく上品で優しい雰囲気はロザンお兄様とよく似ている気がした。
緊張している私にも優しく接してくれた。
何よりも話していて皇后様は本当にお茶が好きなのだと感じた。
私はいつの間にか緊張もほぐれて皇后様とお茶についての話をたくさんしながら美味しいお茶を御馳走になった。
私は皇后様にと用意していた調合した茶葉を贈った。
皇后様とのお茶の時間はそれほど長いものではなかった。
きっと皇后様が気を使ってくれたのだと思った。
私は皇后様とのお茶の時間を終えると帰るためにお兄様と共に馬車を待たせていた場所へ向かった。
しかし、この日はまさかの休日で私はロザンお兄様が皇宮へ帰っていたら鉢合わせてしまうかもしれないと思ったけどかろうじて鉢合わせにならずに済みそうだと安堵していた。
たけど安堵もつかの間中庭を通り過ぎようとした時にロザンお兄様が小走りで私達の元へやってきた。
何故かキールお兄様も一緒にいた。
ロザンお兄様にせっかく皇宮へ来たのだから皇宮を案内したいと言われた。
私は内心早く帰りたかったけれど皇太子であるロザンお兄様を無下に出来るわけもなく結局皇宮を案内してもらうことになった。
ロザンお兄様とキールお兄様は本当に仲がいいのが見ていて分かった。
特にロザンお兄様は凄く優しい表情を浮かべていた。
きっとキールお兄様が一緒だからだろうとすぐに分かった。
"君わた"の内容通りロザンお兄様はキールお兄様に想いを寄せているのだろうとすぐに察した。
キールお兄様はお兄様が一緒でも平気そうに見えだけど内心はルシフェルお兄様と何だかんだいっても絡んでいるお兄様の事をよく思っていないかもしれないと思うと複雑な気分になった。
そんな事を色々と考えながら案内してもらっていると前から2人の人物がこちらに向かい歩いてきているのが見えた。
だけど私はその2人の顔がはっきり見えた瞬間に全身の血の気が引くのを感じた。
私達の方へと歩いてきている2人は"君わた"の登場人物達で双子の悪役令嬢アードン伯爵家のパトリシアとグレイシアだった。
私は主要人物である4人のことばかりに気を取られていてこの双子の存在をすっかり忘れていた。
"君わた"のヘビーさが増したのもこの双子の悪役令嬢がいたからだった。パトリシアとグレイシア、特にグレイシアはお兄様への執着が酷く妹である私がお兄様にベッタリなのが気に食わず私に嫌がらせをしていた。
だけど嫌がらせなんてレベルではなく命まで狙ってきたのだかられっきとした犯罪行為だった。
パトリシアはルシフェルお兄様への執着が酷かった。
パトリシアとグレイシアはアカデミー内でも問題児とされていてルシフェルお兄様とお兄様に近づく女性たちを痛めつけていた。
それに加えてロザンお兄様とキールお兄様に近づく女性たちにも気に食わないという理由だけで容赦なく痛めつけていた。
"君わた"ではアナベルは最終的はルシフェルの手によって殺されたけれどパトリシアとグレイシアによって殺されてもおかしくなかった程だった。
私は2人を見て恐怖で無意識に体が震えた。
はっきり言って男性の執着より女性の執着の方が恐ろしい事を私は前世で身を持って知っているからだった。
お兄様達も2人に気づくと嫌悪した表情を浮かべていたけど私は自分とにかくこの場から離れたいと思っていたけど体が強張り震えてどうしたらいいのかわからなかった。
その時、お兄様が私の異変に気づいたのかそっと小声で私に耳打ちをしてくれた。
"そこの草陰から皇宮内に入って騎士でも使用人でも誰でもいいから見つけたら私とロザン達のいる中庭にアードン伯爵令嬢達がきていると伝えるんだ。そうすれば大丈夫だから。すぐに私も皇宮内へ駆けつけるから心配しなくてもいい。さぁ行け"
と…
私はお兄様の言葉を聞いて隙を見て近くの草陰に隠れる様に体を小さくして移動した。
そして草陰を抜けるとすぐに皇宮内へと急いだ。
だけど皇宮内のどこに行けばいいのか混乱してしまった。
その時…
突然手を掴まれた。
私は突然の事に体を強張らせて振り向いた。
振り向いた先にはルシフェルお兄様がいた。
私はルシフェルお兄様を見た瞬間に何故か安堵した。
ルシフェルお兄様は何かを察したのか私の手を引いて皇宮内の中庭から死角になる場所へ身を潜めた。
私はもしあの双子に見つかったらどうしようという恐怖からまた体が震えた。
その時…突然ルシフェルお兄様に抱きしめられた。
そして、"大丈夫"と優しく声をかけながら背中を撫でてくれた。
そんなルシフェルお兄様の手がとても温かく感じて私は気づいたら体の震えが止まっていたのだった⇠
☆
私はあの日…
ナックル伯爵邸にカイザー公爵と一緒に来たルシフェルお兄様を見て恐怖で頭が真っ白になりとにかくルシフェルお兄様の視界に入りたくないとまで思っていた。
私は前世の記憶で思い出した"君わた"の主人公ルシフェルはアナベルを惨殺すると恐ろしい人物だと思っていた。
だけど、あの日ルシフェルお兄様は私の思いとは裏腹に私の体調を心から心配していてくれてたし私がお祖父様の所へいる事すらも知らない様だった。
その上、私の悩みを親身になり聞きアドバイスまでしてくれた。
私は"君わた"の話に囚われ主人公ルシフェルは恐ろしい人だという先入観だけで酷い態度をとってしまったと反省した。
(あまりにも原作のルシフェル像と違いすぎて驚いたのはあるけどルシフェル像とは違うルシフェルお兄様は嫌ではないわ。むしろ本当キラキラしていてまるで王子様と話をしている気分になったわ)
私はその日の事を思い出しながらそんな事を考えていた。
あの日からルシフェルお兄様はカイザー公爵の代わりにナックル伯爵邸へお祖父様が育てることになった種の視察へ訪れていた。
私はルシフェルお兄様が訪れる度にお茶の準備をして視察が終わったルシフェルお兄様とのお茶の時間がいつの間にか楽しみになっていた。
ルシフェルお兄様がナックル伯爵邸へ4回目の視察に来た日だった。
私は毎度のごとくお祖父様とルシフェルお兄様が種の話をしている間に庭でお茶の時間の準備をしていた。
("君わた"は基本ヘビーな描写ばかりだったからじっくりと見ず流し読み程度で最後まで見たけどあまりにも主要人物達の闇の深さばかりの内容の印象が強かったけどルシフェルという人物は仕事に凄く真面目な人なのね。ルシフェルお兄様がナックル伯爵邸へ訪れている姿を見れば私でもわかるわ。"君わた"ではここまで登場人物達の事が深く描かれてはいなかったけど実際は漫画で描かれてないところも沢山あるのよね)
私はお茶の準備をしつつふと原作漫画の事を思い出しながらそんな事を考えていた。
そしてルシフェルお兄様がお祖父様との話を終えて庭にやってきた。
「ルシフェルお兄様!」
私はルシフェルお兄様に手を振りながら自然と笑みをこぼしつつ言った。
「やぁアナベル。待たせてしまっまかい?」
ルシフェルが優しい笑みを浮かべて言うもすぐに困った表情を浮かべて言った。
「いえ。そんな事ありません。少し前からお茶の準備を始めましたので」
私は首を振りながら慌てて言った。
(本当にルシフェルお兄様はこういう少しの気遣いも出来る人なのよね)
私はそんな事を考えていた。
「そうかい?それなら良かった」
ルシフェルはホッとした表情で笑みを浮かべて言った。
「さぁどうぞ座ってください。直ぐにお茶をお淹れしますので」
私は笑みを浮かべて言った。
「あっ。そうだ。その前にこれを」
ルシフェルがそう言うと私に箱を差し出した。
「これは?」
私は箱を見て不思議そうに言った。
「アナベルにちょっとしたプレゼントだよ」
ルシフェルは優しい笑みを浮かべて言った。
「プレゼントですか?!」
私は思わず驚き言った。
「あぁ」
ルシフェルは微笑みながら言った。
「ありがとうございます。開けてみてもいいですか?」
私は微笑みながら箱を受け取り言った。
「あぁ」
ルシフェルは微笑みながら言った。
(なんだろう?)
私はそんな事を考えながら箱を開けて中身を見た。
「うわぁ〜!可愛いい」
私は箱の中身を見た瞬間あまりの可愛さに思わず大きな声で言った。
箱の中身は私好みのティーセットだった。
「気に入ってくれたかな?」
ルシフェルは少し戸惑った笑みを浮かべて言った。
「はい。とても可愛いです。私好みのデザインです。こんなに素敵なティーセットですけど本当に頂いてもよろしいのですか?」
私は笑顔で言ったもののあまりにも高価な物に躊躇しつつ言った。
「もちろんだとも。アナベルにプレゼントしたくて選んだんだからね」
ルシフェルが優しく微笑みながら言った。
(こんな私好みの可愛いティーセットをプレゼントしてくれるなんて嬉しくはあるけどこんな高い物を何もしてない私がもらってもいいんだろうか)
私はティーセットを少し複雑な表情で見ながらそんな事を考えていた。
「いつも美味しいお茶を淹れてくれているお礼だと思ってくれたらいいよ」
ルシフェルは優しく微笑みながら言った。
「ですが」
私は戸惑いつつ言った。
「それなら今日みたいにアナベルと私の2人のお茶の時間だけに使おう。それならば気兼ねなく受け取って使えるでしょう?」
ルシフェルは優しく微笑み言った。
(あっ。きっと私が受け取るのを躊躇していたから私が受け取りやすい様に気を使ってくれてるのね。本当に小さいな気配りまで出来てさすがは主人公キャラだけあるわね)
私はルシフェルお兄様の優しさを感じながらそんな事を考えていた。
「分かりました。では、このティーセットはルシフェルお兄様と2人でお茶を飲む時に使わせて頂きますね。本当にこんな素敵な贈り物をして下さりありがとうございます」
私は嬉しくて笑顔で言った。
「良かったよ。アナベルが喜んでくれて。喜ぶアナベルを見れて私も嬉しくなるよ」
ルシフェルは満面の笑みで言った。
(本当にルシフェルお兄様の笑顔は王子様すぎて眩しいな)
私はそんな事を考えていた。
そして、いつもの様にルシフェルお兄様とお茶を飲もうとした時だった…
「アナベル。ルシフェル」
そこへ慌てた様子のお兄様が走りやってきて私達の名前を呼んだ。
「え?お兄様?」
私はお兄様が突然現れた事に驚いて言った。
(お兄様がここへ来るなんてお祖父様達からも聞いていないわ)
私は戸惑いつつそんな事を考えていた。
「やぁアナキス」
ルシフェルは笑顔でアナキスへ言った。
「アナベル大丈夫か?」
焦った様子でやってきたアナベルが言った。
「?大丈夫ですけど、、お兄様こそどうされたのですか?お兄様がここへ来るとは聞いてなかったので」
私は戸惑いつつ言った。
「私がここへ来たことよりも何故ここにルシフェルがいるかの方が問題視すべきじゃないか?」
アナキスが怒りに満ちた表情でルシフェルを睨みながら言った。
(え?どうしてルシフェルお兄様の話になるの?)
私はお兄様の言っている意味が分からず戸惑いつつそんな事を考えていた。
「お兄様それは一体どいう意味でしょうか?」
私は戸惑いつつもお兄様へ言った。
「何故ルシフェルがこんな所にいるのだ?!何の目的で何を企んでいるのだ?!」
アナキスが来るなりルシフェルに突っかかってきて不満げに怒りをあらわにして言った。
「別に何も企んでないけど」
ルシフェルが戸惑いつつ言った。
(お兄様は何を言っているの?)
私は急にやってきたかと思えば一方的に言うお兄様を見てモヤっとするものを感じつつそんな事を考えていた。
「お前が何も企まずここにいる訳がないだろう?!どうしてここにアナベルがいると知っているのだ?!」
アナキスは更に不満げに怒りをあらわにして言った。
(お兄様はルシフェルお兄様の事を誤解してるわ。ルシフェルお兄様が私がここにいる事は本当に知らなかったのだから)
私は戸惑いつつそんな事を考えていた。
「企んでるだなんて」
ルシフェルが戸惑いつつ言った。
(確かに私も最初はルシフェルお兄様に対して"君わた"の原作の事を考えると先入観で何を考えているのかすら分からない怖い人だも思ってたわ。だけど実際のルシフェルお兄様は原作のルシフェルとは違って本当に心から私の事を心配してくれていたし私が先入観でルシフェルお兄様に対して怯えている姿を見て本当は凄く傷ついただろうにそんな素振りを見せるどころか私を怖がらせないようにと優しく歩み寄ってくれてたわ。いくら私でもルシフェルお兄様の優しさが嘘か本当かくらいわかるもの)
私はルシフェルお兄様の話も聞かず一方的に責める様な言い方をするお兄様を見てモヤっとするものが増しながらそんな事を考えていた。
そして…
「お兄様!そんな言い方は酷いです!」
私は思わずムッとした表情を浮かべてお兄様へ言った。
「ア、アナベル?」
アナキスはアナベルの言葉に動揺を隠せず言った。
「どうしてルシフェルお兄様にその様な言い方をするのですか?ルシフェルお兄様はここへカイザー公爵様と共にお仕事の関係でお祖父様の元を訪問されただけですよ?ルシフェルお兄様はここへ訪問された際に私がここにいる事にとても驚いていましたから私がここに滞在している事はルシフェルお兄様は知らなかったと思います。お兄様も私がここへいるとルシフェルお兄様に伝えてはいないでしょう?それにルシフェルお兄様は私の体調をとても心配してくださってましたし私の話も親身になって聞いてくれました。それなのにどうしてお兄様はそうやってルシフェルお兄様の話も聞かず頭ごなしに言うのですか?」
私は思わず必死な表情を浮かべて言った。
「アナベル、、」
アナキスは更に動揺と焦りを見せつつ言った。
「アナベル落ち着いて。私は気にしてないから大丈夫だから」
ルシフェルは困り笑みを浮かべて優しく言った。
「ですが、、」
私は戸惑いながら言った。
(だけどお兄様が何も知らずに一方的にルシフェルお兄様に言いがかりをつけてるのが凄く嫌だったから)
私は複雑な気持ちでそんな事を考えていた。
「アナベル。お茶が冷めてしまった様だから申し訳ないけれど温め直してきてくれるかい?」
俺は優しく笑みを浮かべて言った。
(あ、まただわ。きっとこの状況だと私がいても気まずい空気になるだろうと配慮してくれて言ってくれたのね。自分は言われるがままで嫌な気持ちになったはずなのにそうやってまた人の事ばかり気にして)
私は何だか申し訳なさがこみ上げてきつつそんな事を考えていた。
「はい、分かりました」
私は戸惑いながらも頷きながら言った。
(せっかくルシフェルお兄様が気を使ってくれてるんだからここは行くべきよね。きっとルシフェルお兄様がお兄様と話をしてくれるんだわ)
私はそんな事を考えていた。
そして、私はお茶を温め直すために邸内へと向かった。
(あの2人大丈夫かしら。またお兄様が一方的にルシフェルお兄様の事を責め立てたりしてないよね?)
私は淹れ直したお茶を持ち2人がいる場所へ戻りながらそんな事を考えていた。
そして、私はお茶の席へ戻った。
「お待たせしました。お茶を淹れ直してきました」
私は少し気まずいと思いつつ言った。
「ありがとうアナベル」
ルシフェルが優しく微笑みながら言った。
「ありがとう」
アナキスは少し気まずそうにアナベルへ言った。
「はい」
私も少し気まずそうに言った。
「その、、アナベルすまなかった。私の勝手な思い込みでルシフェルに酷い物言いをしてしまったんだ」
アナキスは戸惑いながらアナベルへ言った。
「いえ。分かって頂けたらいいのです」
私はふっと優しく笑みを浮かべて言った。
「あぁ」
そんなアナベルの表情を見てアナキスは安堵した表情で言った。
(良かったわ。誤解がきちんと解けたみたいで。きっとルシフェルお兄様がちゃんと冷静に話をしてくれたのね。きっとルシフェルお兄様はお兄様を好きだからあんな風に一方的に言われても耐えてたんだよね。ちゃんとお兄様にわかってもらえてルシフェルお兄様もきっと安心してるわよね)
私はホッとしてそんな事を考えていた。
「さぁ、お2人共お茶が冷めないうちに召し上がって下さい」
私は微笑みながら言った。
「あぁ」
「いただくよ」
ルシフェルとアナキスは優しい表情で頷きながら言った。
「それでお兄様はどうして突然こちらへ?来られるなら事前に仰ってくれればよかったのに」
私はお茶を飲みながら言った。
(よく考えてみたらきっちりしているお兄様が連絡なしに来るなんて何か急ぎの用でもあったのかしら)
私はふとそんな事を考えていた。
「連絡しなかったのはすまなかった。急を要する事だったので連絡するよりも足を運んだ方が早いと思ったんだ」
アナキスは困った表情を浮かべて言った。
「そうなのですか?それで急を要する事とは何なのですか?」
私は不思議そうに言った。
(やっぱりそうだったのね)
私は納得してそんな事を考えていた。
「それが、突然皇后陛下からアナベルに皇宮への招待の手紙が届いたのだ」
アナキスは表情を歪めて言った。
「え?皇后陛下が私にですか?!」
アナベルは驚き声を大きくして言った。
(え?どうして急に皇后様が私宛に?)
私は驚きそんな事を考えていた。
「あぁ」
アナキスは表情を歪めたまま小さく頷きながら言った。
「何故、皇后陛下が私を皇宮に招待したのですか?私はデビュタントも済んでいませんから皇后陛下にお会いしたことなどないというのに」
私は意味が分からず混乱しながら言った。
「手紙によると以前ロザンが話の流れで皇后陛下にアナベルが調合した茶葉のお茶が美味しいという話をした様でその話を耳にした皇后陛下が是非アナベルに茶葉について聞きたいと言っておられるのだ」
アナキスは複雑な表情を浮かべて言った。
「私の調合した茶葉ですか?皇后陛下はお茶が好きなのですか?」
私は戸惑いながら言った。
アナキスが複雑な表情のまま頷いた。
("君わた"ではそんな話聞いたことなんてなかったけど)
私は戸惑いつつそんな事を考えていた。
「皇宮には必ず足を運ばなければならないのですよね?」
私は困惑気味に言った。
(出来ることなら行きたくないんだけどな)
私は困惑したままそんな事を考えていた。
「そうだね。お断りするのは難しいだろう」
アナキスは複雑な表情を浮かべて言った。
「そうですよね」
私は軽く落胆気味に言った。
(それはそうよね。相手は国の母と呼ばれる高貴なお方だもんね。断るなんて命知らずなことだよね)
私は落胆を隠せないままそんな事を考えていた。
(だけど"君わた"の主要キャラであるロザンとキールにはなるべく関わりたくないのが本音なのよね。いくらお兄様とルシフェルお兄様が原作の2人とは違うといってもロザンとキールもそうだとは限らないもんね。どうにかして行かない方法があればいいけどそんな方法はきっとないわよね)
私は更にそんな事を考えていた。
「そういう訳で療養中なのに突然ですまないが私と共に今日中にフルート侯爵邸へ戻らなければならなくなった。お祖父様とお祖母様には既に話を済ませておいたから後はアナベルが荷物をまとめるだけだ」
アナキスは申し訳なさそうにアナベルへ言った。
「そうですか。分かりました。すぐに荷物をまとめてきますね」
私は複雑な表情を浮かべて小さく頷きながら言った。
(もう自宅に戻らないといけないんだね。最初は死にたくないと思い現実逃避してここへ来たけどルシフェルお兄様に殺される事はないかもしれないと思えてからはルシフェルお兄様とのお茶の時間が心地よく思えてたのよね)
私はそんな事を考えていた。
「ルシフェルお兄様。せっかくのお茶の時間がこの様な形で終わってしまい申し訳ありません」
私は申し訳なさそうに俺へ言った。
(本当にルシフェルお兄様とのお茶の時間は楽しい時間だったしお兄様も楽しそうにしてくれていただけにこんな形になってしまって申し訳ないわ。ティーセットもプレゼントしてもらったばかりだというのに)
私は申し訳ない気持ちでいっぱいになりつつそんな事を考えていた。
「そんな事気にしなくてもいいさ。短い時間だったけどアナベルとお茶の時間を過ごすことが出来てよかったよ」
ルシフェルは優しい笑みを浮かべて言った。
(本当に優しい人だわ)
私はそんな事を考えていた。
「こちらこそ話をたくさん聞いてくださりありがとうございました」
私は寂しそうな笑みを浮かべて言った。
「自邸に戻っても無理せずにね。何かあったら遠慮せずアナキスに頼るんだよ?」
ルシフェルは心配そうな表情を浮かべて言った。
(本当にどこまでも優しいのね。もしかすると心のどこかでは私がお兄様に頼る事を嫌に思ってるかもしれないというのに)
私はそんな事を考えていた。
「はい」
私は小さく頷きながら言った。
こうしてその日のうちに私はお兄様と共にフルート侯爵邸へと帰る事になったのだった…
帰りの馬車の中で…
「アナベル。今日はすまなかった」
アナキスが申し訳なさそうに言った。
「ルシフェルから話を聞いたんだ」
アナキスが更に言った。
「あっ」
私は言った。
(やっぱりルシフェルお兄様が話をしてくれたんだね)
私はそんな事を考えていた。
「まさかアナベルが私に対してそんな事を悩んでいるなんて知らなかった。しかし、私は今まで通りアナベルには私に沢山甘えて欲しいと思っているんだ。大切な妹によそよそしくされるのは寂しいものだからね」
アナキスは寂しそうな表情で言った。
「お兄様」
私は複雑な表情で言った。
(私が勝手に自分が原作の様に殺されたくないという一心でお兄様を避ける様に行動していた事でお兄様を傷つけてしまっていたのね。お兄様にこんな顔をさせてしまうなんて。ただただお兄様は私の事を大切に思ってくれているだけなのに)
私は胸が締め付けられる様な罪悪感に襲われつつそんな事を考えていた。
「お兄様にそんな思いをさせてしまってごめんなさい。私が勝手にお兄様に頼ったり甘えてばかりいたらいけないと判断して1人こんな行動をとってしまって」
私は申し訳なさがいっぱいでそんな事を言った。
「いや、アナベルが謝ることではないさ」
アナキスは優しく微笑みながら言った。
(お兄様)
私はお兄様の優しい言葉に思わず涙が出そうなのを堪えてそんな事を考えていた。
「これからは今まで通り大好きなお兄様に沢山甘えることにしますね」
私は満面の笑みを浮かべて言った。
「あぁ。そうしてくれると私も嬉しいよ」
アナキスは嬉しそうに微笑みながら言った。
こうして私はお兄様と仲直り?をすることが出来たのだった。
☆
私は自邸に戻るとまた日常生活に戻った。
街に出かけたり茶葉を配合したりと現実逃避をする前と何ら変わりがなかった。
そんな日々を過ごしているとあっという間に皇宮へ訪問する日がやってきた。
家族全員で宮入りする予定だったが急遽領地内で問題が起きた為にお父様とお母様は一緒に行けなくなってしまいお兄様と2人で行くことになった。
「アナベル大丈夫かい?緊張しているのか?」
皇宮へ向かう馬車の中でアナキスが心配そうに言った。
「はい。初めて皇宮へ行く上に皇后陛下にお会いするのも初めてなのでやはり緊張してしまって」
私は緊張で体が強張るのを感じつつ言った。
「初めての事なのだから緊張するのも無理はないさ。だけど心配しなくても私がついているから大丈夫だ」
アナキスは優しく微笑みながらそう言うと優しくアナキスの手を握りながら言った。
「はい。ありがとうございますお兄様」
私は微笑みながら言った。
(そうよね。お兄様がいてくれるんだからきっと大丈夫よね。良かった。お兄様が一緒で。この場に1人だった心細くて大変だったもの)
私はお兄様の手をギュッと握り返しながらそんな事を考えていた。
そして、馬車が皇宮へ到着すると待っていた騎士に連れられて温室へと案内された。
(良かった。皇后様に会うのも1人ではなくてお兄様も一緒で。お兄様の話だとロビンお兄様が気を使ってお兄様の同席をお願いしてくれたって言ってたよね。本当に助かったわ)
私はそんな事を考えていた。
そして、温室の中へと案内されるとそこには皇后陛下がいた。
「フルート侯爵家のアナキス・フルートが皇后陛下にご挨拶申し上げます」
アナキスが皇后の前へ行くと一礼をしながら言った。
「フルート侯爵家のアナベル・フルートが皇后陛下にご挨拶申し上げます」
私もお兄様に続いて一礼をしながら言った。
「フルート令息とフルート令嬢待っていたわ。さぁかけてちょうだい」
皇后でありロビンの母であるヴィオラが微笑みながら言った。
「「はい」」
私とお兄様は頷きながら言った。
そして、私達が席につくとお茶とお茶菓子が運ばれきた。
「今日は突然のお誘いごめんなさいね。でも、ロビンから令嬢の話を聞いて是非ともお会いしたいと思ってしまってね」
ヴィオラは困り笑みを浮かべて言った。
「い、いえ。とんでもございません。今日はお誘い頂きありがとうございます」
私は慌てて言った。
(わぁ〜この方が皇后様なのね。ロザンお兄様と容姿は似てないけれどこの柔らかい雰囲気はロザンお兄様によく似てるわね。"君わた"の原作では皇后様の描写はほぼなく描写されても顔が黒塗りされていたからどんな顔かもわからなかったのよね。だけどやっぱり"君わた"の登場人物だけあって凄く綺麗な方だわ)
私は皇后様を見てそんな事を考えていた。
「ふふ。そう言ってくれると助かるわ。さぁまずお茶を飲んでみてちょうだい」
ヴィオラは優しく微笑み言った。
「はい。いただきます」
私は慌てて言った。
「いただきます」
アナキスは落ち着いて言った。
そして、私達はお茶を飲み始めた。
「あっ、このお茶は」
私はお茶を一口飲んで呟いた。
「あら、気がついたかしら?やはりロザンに聞いていた通りお茶に詳しいようね」
ヴィオラは嬉しそうに微笑みながら言った。
「このお茶はポリーニ国から取り寄せられたのですか?」
私は言った。
「ええ。その通りよ」
ヴィオラは頷きながら微笑み言った。
(やっぱり。このお茶の香りと味はポリーニ国で採れる珍しい茶葉だもんね。私も一度だけお父様達に無理を言って取り寄せてもらった事がある程貴重なお茶なのよね)
私はそんな事を考えていた。
「皇后陛下は本当にお茶が好きでいらっしゃるのですね」
私は微笑みながら言った。
(転生してからお茶の話ができる人っていなかったから何だか嬉しいな)
私はそんな事を考えていた。
「えぇ。本当に色々と無理を言って取り寄せたお茶は数しれずなのよ」
ヴィオラはくすくす笑いながら言った。
「だからね、ロザンから令嬢が茶葉の調合をしていると聞いて是非令嬢が調合したお茶を飲んでみたいと思ったのよ」
ヴィオラは微笑みながら言った。
「そうでしたか」
私は微笑みながら言った。
(正直皇宮へ行くのはロザンお兄様の件があってまったく乗り気ではなかったけどこうして皇后様が嬉しそうに話をしている姿を見ると断らなくて良かったのかもしれないわね)
私はそんな事を考えていた。
「今日は何パターンか茶葉を調合した物をお持ちしましたのでよろしければお使い下さい」
私はそう言うと鞄の中から取り出した包装袋を皇后様の侍女へ手渡した。
「あら本当に?ありがとう。とても嬉しいわ」
ヴィオラは嬉しそうに言った。
「用途も記載していますのでその都度その時の気分でお使い頂くとよりいいかと思います」
私は微笑みながら言った。
「本当にありがとう。急なお誘いにものってくれた上に茶葉まで頂けるなんて嬉しいわ」
ヴィオラは微笑みながら言った。
(本当に空気が穏やかで笑顔が素敵な方だわ。こうして喜んでくれる顔を見れたのは幸いだわ。それに今日はロザンお兄様は皇宮にはいないみたいだから会うこともないだろうし心配していたけどどうにか無事に終わりそうで良かったわ)
私は少し安堵してそんな事を考えていた。
それから1時間ほど皇后様とのお茶の時間を過ごした。
皇后様が気を使ってくれたのかお茶の時間はそこで終わった。
きっと慣れない場で緊張している私を気遣ってくれての事だろう。
そして、私は皇后様に挨拶をして温室を後にするとお兄様と待たせていた馬車のところへ向かった。
「最初は緊張してどうしようかと思っていましたがどうにか無事に終わってホッとしました」
私はホッとした表情で言った。
「そうだね。皇后陛下もそんなアナベルに気を使われたのかお茶の時間も終わったよりも短く済んだしね」
アナキスもホッとした表情で言った。
その時だった…
「アナキス、アナベル」
中庭を通過しようとした時に声をかけられた。
(まさか)
私は嫌な予感がしつつそんな事を考えていた。
そんな私の嫌な予感が当たった。
声をかけてきたのはロザンお兄様だった。
しかも何故かキールお兄様も一緒にいた。
(今日は休日だけどロザンお兄様の姿が見えないから遭遇することがないと安心してたところなのにまさか帰り際に遭遇するなんて)
私はそんな事を考えていた。
「ロザンとキール」
アナキスが言った。
「母上とのお茶会はもう終わったのかい?」
私達の元へやってきたロザンお兄様が言った。
「あぁ。つい先程な」
アナキスが頷きながら言った。
「そうだったんだね。もう帰るのかい?」
ロザンが言った。
「あぁ」
アナキスが頷きながら言った。
「もし良かったら皇宮を案内してもいいかな?アナベルはここへ来るのは初めてだからね」
ロザンは笑顔で言った。
「どうだろうか?」
ロザンが言った。
「せっかくだから案内してもらえよ」
ロザンの横にいたキールが笑顔で言った。
(どうしよう。どうしたらいいの?本当は帰りたいのが本音だけど皇太子であるロザンの申し出を断る訳にはいかないよね)
私は複雑な気持ちでそんな事を考えていた。
「では、お言葉に甘えて案内して頂いてもよろしいですか?」
私は笑みを浮かべて言った。
(どうにかやり過ごすしかないよね)
私はそんな事を考えていた。
「アナベル無理することはないぞ?」
アナキスが心配そうに小声で言った。
「大丈夫ですよ」
私は笑みを浮かべて小声で言った。
(本当は大丈夫じゃないけどここで断ったらお兄様にも何か影響しそうだしね)
私はそんな事を考えていた。
「任せてくれ。皇宮内にはバラ園などもあるからアナベルもきっと気に入るよ」
ロザンは嬉しそうに微笑み言った。
「そうですか」
私は微笑みながら言った。
そして、私はお兄様と共にロザンお兄様とキールお兄様に皇宮内を案内してもらう事になった。
(それにしても本当にロザンお兄様とキールお兄様は仲がいいのね。こうして見てるだけでもそれが伝わってくるくらいだもんね)
私は案内されながらそんな事を考えていた。
(特にロザンお兄様は嬉しそうにしてるわね。想い人であるキールお兄様が一緒なんだからそれはそうよね)
私は更にそんな事を考えていた。
(だけどキールお兄様はルシフェルお兄様を想っているんだもんね。今こうしてお兄様も一緒にいる事にキールお兄様はどんな風に思ってるかしら。ルシフェルお兄様はお兄様を想っている事をキールお兄様は知っている訳だから内心は穏やかではないのよね?いつも学園でも4人一緒だから休みの日までお兄様と過ごす事をよく思ってなかったりするのかな)
私は更にそんな事を考えていた。
("君わた"は本当にヘビーすぎるBL漫画だわ。誰も報われず幸せになれないなんて寂しすぎるわ。こうしてロザンお兄様とキールお兄様とお兄様が笑って仲良くいれる方法ってないのかな)
私は原作の内容を思い浮かべつつそんな事を考えていた。
そんな事を考えながら案内されていると前方の方から歩いている人影が見えた。
(ん?誰かがこっちに向かってきてるみたいだけど誰だろう)
私は目を凝らして前方を見てそんな事を考えていた。
そんな事を考えていた次の瞬間私は息を飲んだ。
(あの人たちってまさか)
私は息を飲みながら一瞬で背筋が凍る様な気持ちになりそんな事を考えていた。
"君わた"の主な登場人物は主人公のルシフェルを始めアナキス、ロザン、キール。
そしてアナベル。
そして、更に"君わた"のストーリーをハードヘビーにする主な登場人物が存在した。
それは…
恋愛ものには大抵登場するであろう悪役、もしくは悪役令嬢。
"君わた"はBL漫画だが悪役令嬢たるものが存在した。
アードン伯爵家の双子令嬢
パトリシアとグレイシア。
お騒がせツインと呼ばれるなるべくしてなったと言わんばかりの双子の悪役令嬢だった。
(私ったら自分が死ぬかもしれなとか死にたくないとかばかり考えるあまりあの2人の存在をすっかり忘れていたわ)
私は双子令嬢を見て背中に冷や汗をかきながらそんな事を考えていた。
("君わた"のストーリーを更にヘビーにしたと言っても過言じゃない悪役令嬢である双子のパトリシアとグレイシア。あまりにヘビーな内容にパラパラ読みをした私でも覚えている程の悪役ぶりだったわ)
私は更にそんな事を考えていた。
(パトリシアとグレイシア、特にグレイシアはお兄様への執着が酷く妹である私がお兄様にベッタリなのが気に食わず私に嫌がらせをしていたわ。だけど嫌がらせなんてレベルではなく命まで狙ってきたのだかられっきとした犯罪行為だったわ。パトリシアはルシフェルお兄様への執着が酷かったわ。パトリシアとグレイシアはアカデミー内でも問題児とされていてルシフェルお兄様とお兄様に近づく女性たちを痛めつけていた。それもなかなか残虐な方法で。ルシフェルに負けないくらいの残虐さを持っていた双子だったわよね。それに加えてロザンお兄様とキールお兄様に近づく女性たちにも気に食わないという理由だけで容赦なく痛めつけていた。不理屈すぎるわ。"君わた"ではアナベルは最終的はルシフェルの手によって殺されたけれどパトリシアとグレイシアによって殺されてもおかしくなかった程だったわよね。たまたまルシフェルが先にアナベルを殺したっだけでね)
私はゾッとしながらそんな事を考えていた。
(今、ここであの2人に私が会ってしまえば私はどうなるの?そもそも私は原作でも皇宮へ行ったことはなかった。だけどこうして今ここにいるってことは原作でパトリシアとグレイシアに会うよりももっともっと前に会うことになってしまう。どうしたらいいの?どうしたらあの2人に遭遇しなくて済む?この状況で勝手に逃げ出す事なんて当たり前に出来ないだろうしどうしたらいいの?)
私は混乱で焦りをつのらせながらそんな事を考えていた。
(男性の執着より女性の執着の方が恐ろしい事を私は前世で身を持って知っているからこそ余計に怖くてたまらない。あの2人なら今この場で私を見たら何かしてきても不思議じゃないくらい恐ろしい存在だわ)
私は段々と体が強張り震えてくるのを感じつつそんな事を考えていた。
(お兄様達も2人に気づいて嫌悪した表情を浮かべているけれどだからって勝手にこの場からいなくなれない。私を守って下さいとも言えるわけない。どうにかしてここから離れたいわ)
私は恐怖で震えが止まらずそんな事を考えていた。
その時…
お兄様が私の異変に気づいたのかそっと小声で私に耳打ちをしてくれた。
「そこの草陰から皇宮内に入って騎士でも使用人でも誰でもいいから見つけたら私とロザン達のいる中庭にアードン伯爵令嬢達がきていると伝えるんだ。そうすれば大丈夫だから。すぐに私も皇宮内へ駆けつけるから心配しなくてもいい。さぁ早く行け」
アナキスは真剣な表情で言って。
私はそんなお兄様の言葉に小さく頷いた。
そして、隙を狙って双子にバレない様に素早く草陰へと入り込んだ。
そして、私は必死に草を掻き分けて草陰を抜けた。
(どこに行けばいいの?皇宮のどこかと言っても勝手に入ってもいいの?)
私は戸惑いつつ辺りを見渡しながら必死にそんな事を考えていた。
(どうにかして誰か見つけて声をかけなきゃいけないのに)
私は焦りだけがつのりそんな事を考えていた。
バッ…!!
その時突然手を掴まれた。
(何?!)
私は突然の事に体を強張らせて振り向きそんな事を考えていた。
(え?)
私は振り向いた先にいたのがルシフェルお兄様だったことに驚きそんな事を考えていた。
私は私の手を掴んだ相手がルシフェルお兄様だと分かった瞬間何故か安堵した。
ルシフェルお兄様は私の様子を見て何かを察したのか私の手を引いて皇宮内の中庭から死角になる場所へ移動して身を隠した。
(ここにいたらパトリシアとグレイシアに会わずに済むかしら)
私はもしあの双子に見つかったらどうしようという恐怖からまた体が震えるのを感じつつそんな事を考えていた。
私が震えているその時…
ガバッ…
突然ルシフェルお兄様に抱きしめられた。
「え?ル、ルシフェルお兄様?!」
私は突然の事に何が起こったのか分からず戸惑いながら小声で言った。
すると…
「大丈夫」
ルシフェルお兄様が優しくそう声をかけながら背中を撫でてくれた。
まるで壊れ物でも扱う様に優しく撫でてくれたのだった。
(温かい、、)
私はルシフェルお兄様の手がとても温かく感じてホッとしながらそんな事を考えていた。
(あ。体の震えが止まってる。いつの間にかパトリシアとグレイシアへの恐怖が消えた様だわ)
私は気づいたら体の震えが止まっている事に気づきそんな事を考えていた。
(どうしてだろう。ルシフェルお兄様を見た時もこうして背中を撫でてくれているのも不思議なくらい落ち着くわ)
私はそんな事を考えていたのだった…
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