1.♡月♡日
新連載です✎
楽しんで読んで頂けたら幸いです☆
⇢今日、ようやく見つけた…。
俺の可愛い愛しのエンジェル…。
アナベル・フルート。
君と初めて出会った日からどれほどの時が経っただろう…。
どれだけアナベル…ベル…君を探していたことやら。
もう…君には一生会えないのではないかと思い気が狂いそうだったよ。
君は…俺の事など覚えていないだろうが私は君を忘れたことなど一度もなかった。
君は俺を人生の闇から救ってくれた唯一無二の存在…
君に近づく者達を見ているだけでも虫唾が走る…
いっそのとこ君に近づく者たちを殺してしまえばいいのか…?
だが…そんな事をしたら君はきっと悲しみ俺を許さないだろう…。
だから…君の為に殺すのはやめておくとしよう…。
でも…こうしてまた君に会う事が出来たのはきっと私達が運命の赤い糸で繋がっているからだね…。
これからは…ドロドロに甘やかして…ドロドロに溶けるほど愛してあげるからね…。
もう…これからは君を一生離さないし逃すつもりもないから覚悟してね…。⇠
♡
俺の名前はルシフェル・カイザー。
18歳だ。
ベルサール帝国のカイザー公爵家の長男で次期当主である。
美男美女の両親の元に生まれた俺は容姿には非常に恵まれていた。
だが…この容姿のせいで悲劇は起こった。
それは遡ること…
10年前…
当時、俺は8歳の少年だった。
俺はカイザー公爵家の一人息子な事もあり幼い俺に媚を売り父に取り入ろうとしてくる貴族も少なくなかった。
それに加えて…俺を使い上手く父の愛人になろうとしてきた者も多かった。
カイザー公爵家の当主は代々一人の女性を生涯愛しぬいた。
その為…当主は妻以外の女性には一切の興味も示さなかった。
そんな事を知っているにも関わらず父の愛人になろうとする者がいる中で事件は起こった。
その頃の俺気軽に出かける際は周りの目を掻い潜る為にあえて女装をし出かけていた。
女装をしていたらカイザー公爵家の人間だと気づかれなかったからだ。
しかし…その日は俺が女装をしている事に気づいた成り上がりの貴族の女がいた。
俺は一瞬の隙をつかれその女に薬をかがされたのだった。
必死で抵抗するも意識が遠のいた。
意識が戻った時には見知らぬ小屋の様な場所へと連れてこられ埃臭いベッドに寝かせられていた。
周りを見渡し誰もいないことに気づくと俺はその場から逃げようとした。
しかし…俺はロープの様なもので手足を縛られた状態だった。
「クソッ!」
俺はどうにか手足のロープを解こうともがいた。
しかし…そこへ…
「あら…目が覚めたのね…。」
俺をここへ連れてきた女がやってきて俺を舐め回すようにニヤリと笑いながら見て言った。
「貴様…何者だ?」
俺は女を睨み付けながら言った。
「私…?私はラペス伯爵家の長女のアマンダよ。」
女はニヤリと不気味な笑みを浮かべて言った。
(ラペス伯爵家…。あのクソ野郎の娘か…。確か…ラペス伯爵家の令嬢は父上の愛人になりたいとう噂を耳にしたことがあったな…。おの女俺を拐って父上に近づくつもりなのだな。)
俺は女の言葉を聞いて考えていた。
「お前…父上の愛人になりたいんだろ?でも…そんな事無理に決まってるだろう?お前みたいな頭が悪そうな奴でもそれくらいわかるだろう?俺を拐って俺を盾にでもして父上に言い寄るつもりだろうが無駄なことだ…。命が惜しくないならこのロープを外せ…。今外せば命だけは助けてやる…。」
俺は冷たく鋭い視線で女へ言い捨てた。
「ふふ…。」
女は俺の言葉を聞くと笑った。
(なんだ?頭でもおかしくなったのか?)
俺は女を見てそんな事を考えていた。
「あなたを盾にするつもりでここへ連れてきたと思ってるの?ふふふ…。何て浅はかな考えだこと…。」
女は不気味な笑みを浮かべて言った。
(どういう意味だ?!)
俺は考えた。
「カイザー公爵様の愛人になれない事は百も承知よ…。でもね…私考えたのよ…。愛人になれなくても公爵様のお側にいたいと…。」
女が俺を見て言った。
「それで…考えたの…。どうすれば公爵様のお側にいられるのかを…。」
女は俺を見て不気味な笑みを浮かべて言った。
「あなたと私で既成事実を作ればいいと…ね…。」
女は更にニヤリと勝ち誇った様な笑みを浮かべて言った。
「なんだと…?」
俺は女の言葉に衝撃を受け顔を歪ませて言った。
「今日はね…私…子供を授かりやすい日なの…。だから…今日あなたとの既成事実を作れる最高の日ってわけなのよ…。」
女は笑みを浮かべて言った。
(この女…正気の沙汰でないな…。8歳の俺と既成事実だと?!)
俺は女を見て考えていた。
「あなたとの子供を授かれば公爵夫婦は嫌でも私とあなたの結婚を認めざるえない…。そして…あなたと私が結婚して私はカイザー公爵家の一員になるの…。そして…私は公爵様のお側にいる事ができるのよ…。」
女は狂った様に笑いながら言った。
「ペッ…!とんだ…イカれ令嬢だな…。」
俺は女へ唾を吐き捨てながら言った。
「………。なんて無礼な…子…。でも…そんなに威勢を張っても所詮あなたは今身動きが取れない身…。それに…きっと体は正直でしょうからね…。」
女は吐き捨てられた唾を見て冷たい視線になり言ったあと…俺に近づき俺の下半身を触りニヤリと微笑みながら言った。
「触るな!」
俺は女に言い吐き捨てた。
(この女本気だな…。このままではまずい…。)
俺は女に体を触られゾッとしたものを感じながら考えていた。
すると…女はニヤリとしながら俺の股間を握り触りだした。
俺はその瞬間全身から血の気が引くような嫌悪という言葉だけでは現せない様な感覚に陥った。
「お前…。」
俺は女を睨み付け言った。
「あら…?反応しないわね…。子供だからかしら…?まぁ…いいわ…。」
女は俺の股間を触り続けながら首を傾げながら言った。
そして…女は俺の股間から手を離すと立ち上がりドレスを脱ぎ始めた。
「さぁ…。これが女性の体よ…。」
女はドレスを脱ぎ裸になり俺に言った。
俺は女の体を見て吐き気が込み上げてきた。
(うっ……気持ち悪い…。吐きそうだ…。この女…なんて下品な女なのだ…。)
俺は吐き気をどうにか我慢しながら嫌悪を隠せず表情を歪めながら考えていた。
「さぁ…そろそろ…一つになりましょうね…。」
女はニタニタと微笑みながら俺の元へ近づいてきた。
そして女は…俺のスボンを脱がそうとズボンにてをかけた。
「やめろ!」
俺は表情を歪ませ言った。
「やめろ…?ふふ…やめるわけないでしょう?公爵様のお側にいる為なのだから…。」
女は不気味笑みを浮かべて言った。
「公爵様を思い浮かべてあなたと繋がるのもいいわね…。でも…まずは…キスね…。」
女は更にニヤリとして言うと俺の顔へ自分の顔を近づけてきた。
「ペッッ…。」
俺は女の顔が近づくと女の顔へ唾を吐き捨てた。
「………。」
女は無言で顔についた唾を手で拭き取るとグッと力強く手で俺の顔を固定した。
そして…女はそのまま俺の顔へ自分の顔を近づけてきて俺の頬を舐めた。
俺の体は拒否反応を起こしていた。
全身に鳥肌が立ち吐き気が更に込み上げてきた。
女はニヤリとしてもう一度俺の頬を舐めると唇へ自分の顔を近づけてきた。
俺は抵抗したが両腕を縛られていた上に女に顔をがっちりと掴まれていたので顔を背ける事ができなかった。
(クソッ……。)
俺は恐怖と怒りを覚えていた。
女の唇が俺の唇に触れそうになった時だった………
バーーーン!!
小屋の扉が思い切り開いた。
急に扉が開いた事に驚いた女は咄嗟に体を起こして扉を見た。
(なんだ?!)
俺も突然の事に驚き扉の方を見た。
「そ…その男の子を…は…離して下さい…。ま…魔女さん…!」
扉に立っていた小さな少女が体と声を震わせながら女へ言った。
少女は透き通る様な薄紫の髪の毛に薄いピンクの瞳をしてとても綺麗な顔立ちの女の子だった。
「チッ…扉の鍵を締め忘れていたのね…。」
女は舌打ちして呟いた。
(一先ず…相手は幼い少女…。この場を見られてしまっけど上手く丸め込んで口止めしておく程度でいいわね…。)
女は少女を見てそんな事を考えていた。
「お嬢ちゃん…何か勘違いしている様だけれど…まず…私は魔女ではないし…この男の子は私の歳の離れた弟なのよ?」
女は優しく微笑みながら少女へ言った。
「う…嘘だわ!弟を…ベッ…ベッドに縛りつけるなんて…しないもの…。それに…ど…どうしてあなたは…裸なの?」
少女は怯えた表情を浮かべながらも女へ言った。
「……弟が悪い事をしたから躾けているだけなのよ…。躾けていたら暑くなってきてしまったのよ…。」
女は困った表情で言った。
「嘘だ!この女は俺を拐ってきたんだ。」
俺は必死に少女へ言った。
少女は俺の言葉を聞き更に怯えた表情をしていた。
「さ…さらった…?」
少女を体を震わせながら言った。
「そうだ!」
俺は更に言った。
「まぁ…まぁ…何を言っているのかしら…。そんなデタラメを…。」
女はやれやれといった表情で言うと俺の方へ近づいてきた。
そして…女はベッドにそっと座り床に脱ぎ捨てていたドレスをそっと触ると何かをドレスから取り出して少女に見えない様に俺に針の様なものを俺の体に近づけた。
『この針は…毒が塗ってあるの…。この針を少し体に刺しただけで…徐々に体が麻痺して血を吐き…最後には苦しみの中で死ぬほどの毒よ…。刺して欲しくなければ…わかるわよね?』
女はそっと俺の耳元へ顔を近づけ耳打ちした。
(クソ…。)
俺は身動きが取れなくなった。
(せっかく…人がきたというのに…。)
俺は悔しくて唇をグッと噛んだ。
「反抗してるからといってそんなデタラメを言うなんていけない子だわ…。本当は拐われたのではなく…躾けているだけでしょう?」
女はニヤリと微笑み俺に尋ねた。
「……そうだ……。」
俺は仕方くそう言った。
「ねぇ…?この子もこう言っているでしょう?だから…私は魔女でもなくこの子を拐ったのではなく姉として躾けていただけなのよ…。わかってもらえたかしら?」
女は少女へ言った。
「………。ほ…本当?」
少女は少し間をあけた後俺を見て言った。
「あぁ…。本当…だ…。」
俺は少女へ言った。
(本当は違う…。だが…こう言うしかないんだ…。クソッ…。こんな女の言いなりになるなんて…。)
俺は悔しくてたまらなくてそんな事を考えていた。
「…わか…りました…。私の…勘違いだったようですね…。」
少女が言った。
「いいのよ…。わかってもらえたらなら…。さぁ…もう出て行ってもらってもいいかしら…?」
女はにこりと微笑みながら少女へ言った。
少女は小さく頷いていた。
そして…女はベッドから腰を上げると少女を少しでも早く小屋から追い出そうと少女に近づいた。
少女は俺をちらりと見るも俺に背を向けて外へ出ていこうとした。
(待ってくれ…。俺は…本当に拐われたんだ…。その女は嘘をついているんだ…。)
俺は少女を必死に見て考えた。
その時だった…
少女がピタっとその場に止まって持っていたポシェットに手を入れた。
「どうしたの?」
女はイラついた表情で少女へ言った。
女の言葉を聞き少女はクルっと振り返り女の方を見た。
そして…
少女はポシェットの中から手を出すと女に向かって何かを投げつけた。
「きゃぁぁぁーー!」
少女が何かを投げつけると女が顔を手で覆って悲鳴を上げた。
(な…なんだ?!)
俺は状況が掴めず女が悲鳴を上げるのを見てい。
その時…
「だ…大丈夫…ですか?もう…大丈夫…ですよ…。」
俺のすぐ側にいつの間にか少女がいて俺に声を震わせながら言った。
俺は突然の状況に呆然としてしまっていた。
すると少女はポシェットの中から小さなナイフを取り出し縛られていた俺の手足のロープを一生懸命切った。
「は…早く…!」
少女はそう言うと自由になった俺の手を掴み言った。
そして…少女は俺の手を掴んだまま扉へと向かって走った。
俺と少女は外へ向かって走った。
その時…
「きゃっ……。」
少女が声を上げたと思ったら俺と繋いだ手が離れた。
「この…クソガキ…よくも…よくも…。」
悲鳴を上げていた女が少女の髪の毛を掴み自分の元へ引き寄せて物凄い歪んだ表情で少女へ言った。
少女は女に髪の毛を掴まれたまま体を持ち上げられたので小さな体は宙ぶらりんになっていた。
「い…痛い……。」
少女は顔を歪めて痛そうにして言った。
俺は…目の前で少女が痛がっていたが女に体を触られた感覚が頭から離れず気持ち悪くなりその場を動くことができなかった。
「よくも…私の邪魔をしてくれたわね…。ただじゃおかないわ…。」
女は怒りに満ちた表情で少女へ言うと少女の頬を思い切り叩き上げた上に少女を宙ぶらりんにさせたままベッドの上にあった針を取り少女めがけて針を刺そうとした。
その時…
少女は痛みに耐えながらも咄嗟にポシェットに手を入れてすぐに手を出しまた女めがけて何かをなげつけた。
「ぎぁぁぁぁぁーーー!」
女はその瞬間少女の髪の毛を掴んだ手を離して顔に手をやり悲鳴を上げた。
女が手を離すと少女は床に落ちた。
「ゔぅぅ……。」
少女は床に落ちた痛みに鈍い声を漏らした。
しかし、少女は痛みに耐えながらも起き上がり俺の元へやってきた。
「はや…く…ここを…離れない…と…。」
少女は俺にそう言うと俺の手をとり外へ出た。
俺と少女は少しでも小屋から離れなければと走った。
小屋が見えなくなるくらいのところまで走ると少女が足を止めた。
「あなたは…ここで待っていてください…。私…が助けを呼んでくるので…。」
少女が俺の方を向くと俺に言った。
「何…言ってるんだ?このまま二人で逃げた方がいいだろう?」
俺は少女が何を言ってのか分からず言った。
「あの…魔女が…追いかけてきたら二人で逃げるとスピードが遅くなるからすぐに追いつかれるかもしれません…。なので…足を縛られて怪我をしているあなたより私が助けを呼びに行ったほうがいいです…。」
少女は俺の足をチラりと見ながら俺に言った。
俺は少女の視線の先に目をやった。
俺の手足は縛られたからか皮膚が赤紫に変色して擦れた場所からは血が出ていた。
ガサガサ…
ガサガサ…
バサッ……
「うわっ…!」
急に頭から何かをかけられた俺は声を出した。
「な…何をするんだ。」
俺は少女へ言った。
「落ち葉です…。この落ち葉で体を覆ってここへ隠れていてください。魔女は私達を追いかけてくるでしょうけど今の魔女さんは視界がボヤけているでしょうから落ち葉を被っていれば魔女の視界から逃れることができると思いますので…。」
少女が俺へと説明した。
「わかりましたか?とにかくここで大人しくしていてください。私は助けを呼んできますね。」
少女はそう言うと走り出した。
「お…おい!」
俺は言った。
しかし…少女は俺の声を聞く前に走って行ったのだった。
(あの少女は一体なんなんだ…?どう見ても俺より幼い上に…ずっと体を恐怖で震わせていた…。それなのに…俺を助けて…。しかし…本当に助けを呼んでくるのだろうか…。初対面の俺に…公爵家とも名乗っていない俺に対してそんなに親切にするだろうか…。)
俺はどこか複雑にそんな事を考えていた。
その後…少女の言った通り女が俺と少女を探し追いかけてきた。
だが…俺は少女の言われた通りに落ち葉で体を覆っていたお陰で気づかれる事はなかった。
しかし…俺は女の姿を見ただけで鳥肌が立ち嫌悪感でいっぱいになり吐き気をもよおしたのだった。
(クソ…。)
俺は自分のそんな状況が悔しくてたまらなかった。
その後…カイザー公爵家の騎士が俺が隠れている場所へやってきて俺を保護してくれた。
俺が外出してから戻らない事で公爵家で大騒ぎになっていた様で公爵家の騎士たちが俺を探し回っていたようだった。
「ここに俺がいると何故わかったのだ?」
俺は騎士の一人へ尋ねた。
「我々がルシフェル様を探しているところへ幼い少女が声をかけてきて我々に助けを求めて来たのです。ルシフェル様を探していたので取り次ぐのをやめようと思っていたのですが…少女が顔に怪我をしている様でしたし少女が言う助けを求めている方の容姿がルシフェル様と似ていたのでもしやと思いここへ来たのです。」
騎士が俺へ説明した。
(あの…少女…本当に助けを呼びに行ってくれたのだな…。)
俺はなぜだか少女が本当に助けを呼びに行ってくれた事にホッとして考えていた。
「それで…その少女はどこにいるのだ?ここまで少女が案内してくれたのではないのか?」
俺は騎士へ尋ねた。
「いえ…。その少女は我々に助けを求めルシフェル様の居場所の位置を教えて下さった後すぐにどこかへ走って行かれてしまわれて…。」
騎士が言った。
「なんだと?……少女の名前は聞いたのか?」
俺は言った。
「いえ…。」
騎士はバツが悪そうに言った。
(クソッ…。どうして名前を聞いておかないんだ。)
俺は騎士が少女の名前すら聞いていないことに苛つきながら考えていた。
(いや…俺が聞かなかったのが悪かったんだよな…。)
俺は何故だか心がぽっかりなった気持ちになり考えていた。
その後…俺が拐われた事…拐った犯人がラペス伯爵家の令嬢だという事実を知ったカイザー公爵は激怒しその事実を皇帝へと伝えた。
そして、ラペス伯爵家のは皇帝の命令により逃亡を図ろうとしたアマンダは即刻捕らえられ処刑。
他のラペス伯爵家の人間は他国の奴隷にさせられたのだった。
俺はラペス伯爵家全員処刑されるべきだと父上に言ったがアマンダの単独の行動なだけあって全員を処刑するのは難しかった様だ。
そして…俺はこの事件がきっかけで母上や皇后様以外の女性に対して拒絶感を示すようになった。
だが俺は事件の日から俺を助けてくれた少女を忘れることが出来なかった。
少女の事を考えると何故だか心が温かくなり時折胸が苦しくもなった。
だがそれ以上に少女に会いたいという気持ちが日に日に強くなっていたのだった。
自分の少女に対するこの気持ちは何なのか分からず俺の知り合いの話だと言い母上に尋ねた事があった。
俺の話を聞いた母上は優しく微笑み俺にこう言った。
「ルシフェル…それは恋心よ…。ルシフェルの知人はきっとその子に恋をしているのよ。」
母上は確信した様に俺に言った。
(恋……か…。)
俺は母上の言葉を聞き考えた。
俺は母上にそう言われた日から俺は少女を探し始めた。
しかし…俺の知っている少女の情報は容姿、自分よりも年下だという事だけだった。
これだけで少女を探すのは大変だった。
結局…少女が誰なのか分からず少女と会えぬまま時は過ぎ10年経ち俺は18歳になった。
俺は16歳の時にアカデミーへ入り今年で卒業だった。
俺の女嫌いは8歳の時から年々増していた。
俺が成長するにつれて俺の容姿と肩書だけに寄ってくる女が増えたからだった。
俺に寄ってくる女を見るたびにあの女…アマンダを思い出し吐き気がしたのだった。
女という生き物は結局は自分の欲望を満たしたいだけの生き物だと…
しかし…その反面あの少女に会いたいという気持ちが溢れていた。
会いたいのに会えない事がもどかしくて何度も気が狂いそうになった。
あの少女は俺より2、3歳年下だろうと思いアカデミー内を探してみたが少女の姿はなかった。
あの時の少女の身なりからすると平民ではなさそうだっが貴族であるとも限らなかった。
俺はアカデミーへ入学してから友人が出来た。
一人は…フルート侯爵家の息子のアナキス
もう一人は…宰相でバースト侯爵家の息子のキール
最後の一人は…皇太子のロザン
だった。
母上は皇后様の妹にあたるためロザンは従兄弟になるため幼い頃より顔を合わす事が多かった。
俺…アナキス、キール、ロザンには共通点があり4人ともに女性に対してあまり良い印象を持っていないという点だった。
それがきっかけで話をする様になり気づけばお互い気兼ねなく付き合えると気付き友人となっていた。
アカデミー内でもこの数年俺たち4人にすり寄ってくる女は数えきれないほどいた。
厚化粧に派手な髪型…キツイ匂いの香水に上目遣いの猫なで声で近づいてくる女達を見るたびに少女に会いたくてたまらない衝動にかられていた。
俺たち4人はそんな女達に嫌気がさすたびにアナキスの家から送られてくるお茶を飲みながら雑談するのが日課になっていた。
ある日…4人でいつもの様にアカデミー内にある皇太子専用の部屋でお茶をしていた時だった。
「相変わらずアナキスの家から送られてくるお茶は美味しいな。フルート侯爵家では昔からこんな美味しいお茶を飲んでいるのか?」
ロザンがお茶を飲み満足気な表情てまアナキスへ尋ねた。
「あぁ。我が家ではいつもティータイムには美味しいお茶を飲んでいたよ。」
アナキスはどこか誇らしげに言った。
「いつも思っていたがどこでこんな美味しいお茶を手に入れるんだ?」
キールがアナキスへ尋ねた。
「このお茶の葉は…僕のアナベルが色々な茶葉を配合しているものなんだよ。」
アナキスは優しい表情で言った。
「ハハハ…相変わらず…妹のアナベルの話になると優しい表情をするよな…。ってそれよりこの茶葉はアナキスの妹が配合しているだと?アナキスの妹は何者だ?」
キールが笑いながら言うもハッとなり言った。
「アナベルは私の大切な可愛い妹だからな…。アナベルは幼い時から色々な物を配合して美味しいものを作るのが得意な子だったんだよ。」
アナキスは穏やかな表情で言った。
(アナキスは…女に対して本当に俺に負けないくらい冷たい態度を取っているが妹の事は本当に大事にしてるんだろうな。アナキスの妹か…一体どんな令嬢なのだろうか…。)
俺はふとそんな事を考えていた。
「なぁ…いつになったら妹に会わせてくれるんだ?アナキスがそんなに大事にしている妹なら尚更会ってみたいというのに。」
キールが少し不満そうな表情でアナキスへ言った。
「わざわざ…君達に会わせる意味があるのか?」
アナキスは眉をひそめながら言った。
「どれだけ過保護なんだよ!」
キールがアナキスへ言った。
「まぁまぁ…キール。我々は兄妹がいないから分からないが可愛い妹を持つと何かと思うところがあるのだろう。」
ロザンがキールをなだめる様に言った。
「妹に結婚の話などが出たらアナキスは気がおかしくなるかもしれないな。」
俺はフッと笑いながらアナキスへ言った。
(アナキスの妹の結婚相手は大変だな…。こんな兄がいたのでは簡単に結婚などは無理だろうな…。)
俺はそんな事を考えていた。
「結婚ね…。まぁ…当分はさせるつもりはないからな。」
アナキスは言った。
「とにかくだ…!いつかは妹に合わせてくれよな!」
キールはニカッと笑いながらアナキスへ言った。
「いつかな…。」
アナキスはフッと笑いながら言った。
俺たちのそんな会話から2ヶ月程経った。
その日アカデミーでは年に一度開催される催し物があった。
この催し物には学生の家族も入場可能となっていた。
1年に一度我が子のアカデミーでの様子を見れる機会だという事もありほとんどの学生の家族が訪れいた。
しかし…俺、アナキス、キール、ロザンの4人の両親は言うまでもなく皇帝、宰相、公爵、侯爵ということもあり優先すべき仕事がある為アカデミーに足を運ぶことはなかった。
一見…家族で過ごす事ができるいい機会の様に見えるが俺たち4人にとっては毎年この日は苦痛の日でもあった。
何故なば…アカデミーに通う学生の姉や妹にあたる令嬢達がここぞとばかりに我々に近づいてくるからだった。
一昨年も昨年もこの日はうんざりする日だった事を俺たち4人はしっかりと覚えていた。
俺たちは今年もそんな令嬢達の行動に嫌気がさして皇太子の許可がなければ入れない温室へと逃げ込んでいた。
「はぁ…もう…勘弁してほしいよな…。」
キールが苛つきを覚えた様な表情で言った。
「まったくだな…。毎年毎年…飽きもせず我々に下心を溢れさせて近づいてくるとは…。」
ロザンは困った表情で言った。
「まず…あの化け物みたいなけばけばしい化粧と鼻が潰れそうなきつい香水の臭いをどうにかしろよと言ってやりたいところだな…。」
キールが呆れた表情で言った。
「本当に…その通りだ…。」
俺は頭を抱えて気持ちが悪いのを落ち着かせようとしながら言った。
「ルシフェル…大丈夫か?また気分が悪いんだろう?」
キールが俺を心配そうに見て言った。
「あぁ…。」
俺は気持ち悪さが治まらないまま言った。
「やはり…昔の件のトラウマからくるものなのだろう?」
アナキスが俺へ言った。
俺は…この3人と仲良くなってしばらくしてアカデミーの学生の女達が俺に近づいてきた際に気分が悪くなり吐きそうだったところを見せてしまった日に過去のあの事件のせいで女性嫌い…恐怖症である事を打ち明けた。
その時から俺たちに女性達が群がってきたらこうしてロザンがこの温室へ連れてきてくれているのだった。
「あぁ…。幼い時の事だというのに未だに治る傾向がないんだ…。」
俺は悔しく思いながら言った。
「無理もないさ…。俺だってルシフェルと同じ目に遭ったらそうなってたと思うからな。」
キールが俺に言った。
「それに加えて…ここの学生の令嬢達もあれではな…。治るものも治らないどころか悪化してもおかしくないな…。」
アナキスが嫌悪した表情で言った。
「この先も…こうして結婚などの事も考えず4人で楽しく過ごせたらいいのにな…。」
ロザンがどこか切ない表情で言った。
「確かにな…。俺たち…特にロザンはいずれは皇太子妃を迎えないといけないもんな…。まぁ…俺たちも家の長男だからいずれは嫌でも結婚しないといけないんだもんな…。」
キールは困った表情で言った。
(結婚か…。考えるだけでも嫌気がさすな…。父上は運命の様に母上と出逢い結婚したが…俺には…無理だな…。運命なんて…。)
俺はなかなか気持ち悪さが治まらないまま考えていた。
その時…俺の頭にあの少女が浮かんだ。
(あの少女ならば…俺はこの悪夢の様な気持ち悪さも感じず心地よい幸せな気持ちになれるのだろうか…。)
俺はふとそんな事を考えた。
「おい!あそこ見ろよ。」
キールが急に慌てる様に温室の外を指差しながら言った。
俺たちキールが指差す先を見た。
「あれは…誰だ…?女性か?この場所まで我々を追いかけてきたのか?」
ロザンが表情を歪めながら言った。
「でも…制服も着ていないし…それに…一人だぞ?」
キールが言った。
「あれは……。」
その時アナキスがとても驚いた表情で外を見て言った。
「アナキス…どうした?知り合いか?」
俺は驚くアナキスへ言った。
「あ…あぁ…。恐らくあれは…。」
アナキスが驚いた表情のまま言った。
するとその時…キョロキョロと周りを見ていたその女性…少女らしき人物が俺たちの方を見た。
そして…それと同時にその少女はこちらへ思い切り手を振った。
「お兄様〜!アナキスお兄様〜!」
その少女は先程まで不安そうにしていたのにこちらに気づいた瞬間大きく手を振りながら笑顔で言った。
「アナベル!」
アナキスが言うと温室から飛び出し少女の元へ向かった。
「アナキスの妹?」
キールが驚いた表情で言った。
「どうやら…その様だが…。」
ロザンも驚いた表情で言った。
アナキスは急ぎアナベルの元へ向かった。
「アナベル!何故ここにいるのだ?」
アナキスは慌てた様子でアナベルへ言った。
「あ…それは…その…お兄様を驚かせようと思って…。でも…アカデミーに入ったらお兄様は見当たらないし探していたら迷ってしまってこの場所へ来たのです。」
アナベルは気まずそうに言った。
「どうやってアカデミーまで来たんだ?父上と母上と一緒ではないのか?」
アナキスが言った。
「はい…。一人で来ました…。お父様とお母様はお二人で出かけられたのでその隙に……。」
アナベルは苦笑いを浮かべて言った。
「アナベル!」
アナキスは声を荒らげて言った。
「アナキス…そんなに大きな声をあげると妹君が怯えてしまうだろう…。」
そこへロザンが心配そうな表情でやってきてアナキスへ言った。
「ロザン…。」
アナキスはハッとなり言った。
「すまない…アナベル…。大きな声を出してしまって…。」
アナキスはアナベルの頭を優しく撫でながら言った。
「いえ…。お兄様を怒らせてしまってごめんなさい…。」
アナベルはしょんぼりしながらアナキスへ言った。
「違うんだ…。怒ったのではなくて心配したんだ…。」
アナキスは優しくアナベルへ言った。
「まぁ…まぁ…こんなところで立ち話もあれだから温室の中へ入ろう…。」
ロザンが優しく二人へ言った。
「……あぁ…。」
アナキスは間をあけたあと少しバツが悪そうに言った。
「妹君も…それで大丈夫かな?」
ロザンはアナキスの後ろにいたアナベルへ言った。
「はい…。」
アナベルは小さく頷きながら言った。
ロザンはその時アナベルを見て驚いた。
アナベルは輝く薄紫の綺麗な髪に薄いピンク色の澄んだ瞳を持った美少女だったのだ。
ドキ……
ロザンは思わずアナベルを見てドキっとしたのだった。
「さ…さぁ…行こうか…。」
そんなロザンを??という表情でアナベルが見ているのを見てロザンは慌てて言った。
そんなロザンをアナキスは無言で見ていたのだった。
そして…ロザンがアナキスとアナベルを温室の中へと連れてきた。
「さぁ…妹君こちらへ座るといい…。」
ロザンがアナキスの横の椅子を引いて言った。
「あ…ありがとうございます…。」
アナベルは慌てて言った。
ロザン達が戻ってきた時にアナキスの後ろから歩いてきた少女を見て俺は自分の目を疑った。
アナキスの後ろにいた少女は…間違いなくあの時の少女だった。
俺が忘れることなく探しつ続けていたあの少女…。
あの時と変わらない髪色と瞳の色…。
あの頃より遥かに成長してとても美しく成長したあの時の少女…。
この10年探し続けたのに見つける事ができずにいた少女…
俺を救ってくれたあの少女……
その少女が今…俺の目の前にいる…
その事が信じられないと同時に彼女を見た瞬間…先程までの気持ち悪さが嘘の様に消え去ったのだ。
(運命…これは…運命だ…。)
俺は彼女を見て直感でそう思った。
「アナキス…お前の妹…。」
キールがアナベルを見て衝撃を受けていた。
ロザン同様キールもアナベルの美しさに驚きを隠せなかったのだ。
そんなキールをアナキスは無言で見ていた。
「あ…申し遅れました…。私はフルート侯爵家のアナベル・フルートと申します。」
アナベルはハッとなり慌てて皆へ挨拶した。
「見ての通り…私の妹だ。」
アナキスはどこか浮かない表情で言った。
「アナベル…こちらは私の友人であり皇太子であるロザン皇太子殿下で…その横にいるのが友人でバースト侯爵家のキール…そしてその横にいるのが友人でカイザー公爵家のルシフェルだ。」
アナキスがアナベルへ説明した。
「ロザンだ…。よろしく。」
ロザンが優しく微笑みながらアナベルへ言った。
「あ…よろしくお願いいたします…皇太子殿下…。」
アナベルは慌てて言った。
「キールだ!よろしくな!」
キールはニカッと笑いながらアナベルへ言った。
「よろしくお願いいたします。」
アナベルがキールへ言った。
「ルシフェルだ…。よろしく…。」
俺は目の前にいる彼女に対して表現しきれない程の愛しさが込み上げてきて彼女に愛しそうに微笑みながら言った。
「よろしく…お願いいたします。」
アナベルがルシフェルへ言った。
ルシフェルがあまりにも優しく微笑むのでその姿を見たロザン、キール、アナキスは呆気に取られていた。
(俺が笑みを浮かべる事が不思議で仕方ないだろうな…。だが…どう思われ様と関係ない…。彼女を見つけたのだから…。)
俺はそんな事を考えていた。
「それで…アナベル…。どうして一人でアカデミーまで来たんだい?」
アナキスがアナベルへ尋ねた。
「え…っと…。その…毎年この日にはアカデミーに学生の家族が入る事を許されていると聞きましたがこの2年間はお父様とお母様の用事にお付き合いしていたのでここへ訪れる事ができませんでしたが…今年は私が一人になる時間が出来たので…。いつもお兄様と手紙のやり取りはしていますが実際にお兄様が通っているアカデミーをこの目で見たいと思って…思い切って一人で首都までやって来たのです。」
アナベルはもじもじしながら気まずそうにアナキスへ説明した。
「侍女のカナエはアナベルがここへいる事を知っているのか?」
アナキスが言った。
「いえ…。カナエも知りません…。カナエにはお使いに行ってもらってその隙に屋敷を出てきたので…。首都までは侯爵家の馬車ではなく移動馬車を乗り継いできたので私が居なくなった事にはまだ誰も気づいていないと思います…。」
アナベルが言った。
「はぁ……。一人で出歩く…それも首都とまで移動馬車でなんて…。」
アナキスは頭を抱えてため息をつきながら言った。
「お兄様…ごめんなさい…。」
アナベルは目に涙を浮かべて申し訳なさそうに言った。
「……来てしまったものは仕方ない…。だが…二度とこんな危ない行動はしてはいけないよ?」
アナキスはアナベルを見てやれやれといった表情を浮かべるとアナベルの頭を優しく撫でながら言った。
「はい…。」
アナベルは頷きながら言った。
ロザンとキールは涙ぐむアナベルに見惚れていた。
(ロザンとキールのやつ…彼女に見惚れているのか…?最初に彼女を知ったのは俺だ…。そんな目で彼女を見るなど許さない…。)
そんな二人の表情を見て苛つきを覚えながら考えていた。
「ところで…アナキス…妹がせっかくここまで来たのだからアカデミーの中を案内してやったらどうだ?」
俺はにこりと優しい笑みを浮かべてアナキスへ言った。
(案内するついでに彼女ともっと近づき距離を縮めたい…。そして…俺の事を覚えているか聞きたい…。)
俺はそんな事を考えていた。
「…っ!」
アナキスは俺の表情を見てギョッとした表情で言った。
「え?お兄様…案内してくれるのですか?」
アナベルは目をキラキラさせてアナキスへ言った。
「それは……。」
アナキスは戸惑いながら言った。
(アカデミーを案内すれば…アナベルに視線が集中してしまうだろう…。それだけは避けたい…。)
アナキスはそんな事を考えていた。
「アナベル…今日のアカデミーは沢山の人が来ていて案内する場所も限られてしまう…。だから…首都を案内するのはどうだ?前に首都の街を歩きたいと言っていただろう?」
アナキスは話を逸らす様に言った。
「首都と街ですか?いいのですか?」
アナベルは嬉しそうに言った。
「あぁ。アナベルの行きたい所へ案内してあげるよ。」
アナキスは優しく微笑みながら言った。
「わぁ〜ありがとうございます。」
アナベルは満面の笑みで言った。
(あぁ…何て愛らしい笑顔なのだ…。俺にもあの笑顔で微笑みかけてくれないだろうか…。)
俺は彼女の笑顔を見て心からそう思った。
(彼女のあの笑顔も…困った顔も…怒った顔も…すべて…俺だけに見せて欲しい…。)
俺は彼女を見ているとそんな思いばかり募った。
俺は…こうしてずっと会いたかった少女…アナベル・フルートにもう一度会うことが出来たのだった……
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